2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

翻訳ミステリー長屋かわら版・第5号

翻訳者の近況を伝えるコーナー、5回目のきょうは、年末のご挨拶を兼ねて。 田口俊樹 何も悪いことはしてないのに、とうとう還暦になっちまった今年もあと一日を残すのみ。早いもんです。 歳をとっていいことなんかな〜んもありませんが、ただひとつ発見しま…

第4回『ハートの刺青』

87分署シリーズ第四作『ハートの刺青』です。結論を先取りしてしまうと、作品としては決して悪くないのですが、色々と問題のある作品でした。何がどう問題なのかはおいおい書いていくとして、まずはあらすじをまとめてしまいたいと思います。ハートの刺青 (…

ヴィレッジ・ブックス12月の新刊●12/20発売

ショパンの手稿譜(しゅこうふ)/THE CHOPIN MANUSCRIPT(2007) ジェフリー・ディーヴァーほか(Jeffery Deaver and the others)/土屋晃ほか 訳 定価819円(税込)/2010年12月20日発売/ISBN978-4-86332-300-1ショパンの手稿譜 (ヴィレッジブックス)作者: ジ…

第二の刺客:J・B・スタンリー(その2)

シリーズは二作目が肝要である。それは「ロボコップ」シリーズが名作扱いされ、「スターシップ・トゥルーパーズ」シリーズ*1がB級映画の扱いをされていることからも分かる。二作目でコケると三作目はどんなに面白く作っても見てもらえないわけだ。いや、『…

第十二回はティム・マリーニーの巻(執筆者・寳村信二)

日本で紹介されているティム・マリーニー(Tim Maleeny)の作品は、今のところハーラン・コーベン編集の短編集『殺しが二人を別つまで』(早川書房)に収められている「死が二人を別つまで」一作ですが、マリーニーはこの他にサンフランシスコを舞台にした私…

キャロル・オコンネルの話——死んだ人間は死んだ人間?(執筆者・務台夏子)

ひとつのテーマにこだわり、同じテーマで繰り返し物語を書く作家は多い。キャロル・オコンネルにも、そういったこだわりのテーマがある。ひとつは、罪の意識を抱いた子供と、その子供に(長い年月の後に)もたらされる救い、というテーマだ。マロリー・シリ…

第3回読書会のお知らせ

翻訳ミステリー大賞シンジケートが主催する読書会の第3回が、下記の要領で開かれます。 今回はなんと―― 東京、福岡、大阪の3都市での同一週連続開催です! 場所日時会場(*)時間(予定) 東京1月25日(火)渋谷駅近辺18:30開場 19:00開始 21:00終了 福岡1月27日…

武田ランダムハウスジャパン12月の新刊

アンティーク鑑定士は疑う/The Big Steal (2009) エミール・ジェンキンス(Emyl Jenkins)/田辺千幸訳 定価:903円(税込)/刊行日:2010/12/10 ISBN:978-4-270-10373-9アンティーク鑑定士は疑う (RHブックス・プラス)作者: エミールジェンキンス,田辺千…

扶桑社発のひとりごと 20101224(執筆者・T)

第4回 さて、前回は、本を作るとどれぐらいの利益が出るかを考えました。 例として、初版1万部・定価1000円で計算してみたところ、出版社の利益は1冊あたり190円という話でした。 もちろん、現実にはウラがあって、宣伝費を削減したり、経費を切り…

講談社文庫12月の新刊

死角―オーバールック― /The Overlook (2007) マイクル・コナリー/古沢嘉通訳 発行年月日:2010/12/15 ISBN:978-4-06-276850-4 定価(税込):830円死角 オーバールック (講談社文庫)作者: マイクル・コナリー,古沢嘉通出版社/メーカー: 講談社発売日: 201…

第四回 『騙しのD』

「キンジー・ミルホーン」シリーズとのお付き合いも早いもので、もう4作目。『死体のC』では前二作から一転、暗いトーンの作風になっていたが、『欺しのD』は如何に。欺しのD (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: スー・グラフトン,嵯峨静江出版社/メーカー: …

アガサ・クリスティー攻略作戦 第四十一回(執筆者・霜月蒼)

集英社文庫12月の新刊

『道化の館』上・下/THE LIKENESS (2008) タナ・フレンチ(Tana French)/安藤由紀子・訳 集英社文庫/定価各880円(税込)/2010年12月16日発売 ISBN:9784087606164, 978-4-08-760617-1道化の館 上 (集英社文庫)作者: タナ・フレンチ,安藤由紀子出版社/メ…

初心者のためのディーン・クーンツ入門(執筆者・瀬名秀明)

ディーン・R・クーンツではありません。彼はもはやバート・レイノルズ似の口髭に禿頭でもありません。クロスジャンル・エンターテインメントの文法を20世紀に創造したこの作家は、ときに劇的な変貌を遂げて、作風を知悉したはずの熱心な読者さえあっといわ…

小学館文庫12月の新刊

テッサリアの医師/ The Doctor of Thessaly (2009) アン・ズルーディ(Anne Zouroudi)/ハーディング祥子訳 定価:790円(税込)/発売日:2010/12/07 ISBN:9784094084702 テッサリアの医師 (小学館文庫)作者: アンズルーディ,Anne Zouroudi,ハーディング祥子…

キャロル・オコンネルの話——Live and Let Live(執筆者・務台夏子)

キャロル・オコンネルってどんな人なんだろうか? まず、犬好きである。これは私の思いこみ。機会があったら確認します。 それから、いい人である。こちらはオコンネルの自己申告。オコンネルの代表作と言えば、非情な天才女性刑事、キャシー・マロリーを主…

東京創元社発のひとりごと(編集部・S)

「目録奴隷解放宣言2――俺とお前の総目録。」 ●はじめに みなさまこんにちは。いつも「冒険小説にはラムネがよく似合う」で冒険小説についての記事を書いている東京創元社編集部のSと申します。今回は、私がここ一年ばかり編集に携わっていた、『東京創元社…

第3回読書会のお知らせ

翻訳ミステリー大賞シンジケートが主催する読書会の第3回が、下記の要領で開かれます。 今回はなんと―― 東京、福岡、大阪の3都市での同一週連続開催です! 場所日時会場(*)時間(予定) 東京1月25日(火)渋谷駅近辺18:30開場 19:00開始 21:00終了 福岡1月27日…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第4号

翻訳者の近況を伝えるコーナー、4回目です。 田口俊樹 第二回『翻訳ミステリー大賞』の第一次選考に投票してくださったみなさん、ありがとうございました。 このサイトでもすでに報告があったとおり、候補作、五作が決まりました。 でもって、その五作の中…

書評七福神の11月度ベスト発表!

書評七福神とは翻訳ミステリが好きでたまらない書評家七人のことなんである。 いつのころからか、11月にはミステリーがあまり刊行されないという不思議な慣習ができてしまいました。しかし貪欲な読書家は、一休み、中休みなどといわずに良書を探し求めている…

第3回『麻薬密売人』

87分署シリーズ第三作『麻薬密売人』です。私のようにハヤカワ・ミステリ文庫で読んでいる場合、通し番号が2から5に飛ぶので要注意。3の『われらがボス』は、長編第26作と大分先、4の『ハートの刺青』は原著刊行年からすると、次回の紹介になります。 前置き…

第ニの刺客:J・B・スタンリー(その1)

どうも、頭の中が高校生以下で「告白→即付き合えてラッキー」だと思っているので大人の恋愛には程とおい小財満です。*1 大人の恋愛は置いといて、今回の課題本はJ・B・スタンリー『ベーカリーは罪深い ダイエットクラブ1』。ダイエットクラブ、ダイエット…

TVを消して本を読め! 第十四回(執筆者・堺三保)

第14回 懐かしのヒーロー「グリーン・ホーネット」復活 さて今回は映画の話題。といっても、実はまだ私も見てないし、出来は大変不安な一本なのですが。 皆さんは「グリーン・ホーネット」という六〇年代のテレビドラマをご存じでしょうか? 四〇代後半より…

東京創元社 12月の新刊

『悪魔に食われろ青尾蠅』/Devil Takes the Blue-Tail Fly ジョン・フランクリン・バーディン(John Franklin Bardin)/浅羽莢子・訳 創元推理文庫/定価735円(税込)/12月11日/ISBN:978-4-488-13503-4悪魔に食われろ青尾蠅 (創元推理文庫)作者: ジョ…

キャロル・オコンネルの話——この文章がすごい!(執筆者・務台夏子)

オコンネルの最新作『愛おしい骨』には、二匹の犬が登場する。一方は、主人公一家が過去に飼っていた犬で、もうだいぶ前に世を去り、なんと剥製にされている。もう一方は、生きている犬。野良犬だけれども、主人公一家の家政婦ハンナに少しずつ誘い寄せられ…

第二回翻訳ミステリー大賞・第一次選考、結果発表!

去る12月8日(水)、渋谷のフォーラム8で開催された「ミステリー忘年会」の席上で、「第2回翻訳ミステリー大賞」第1次選考を通過した5作品が発表されました。今年は獲得点数を発表していませんので、五十音順に紹介します。 ●『音もなく少女は』 音もな…

新潮文庫12月の新刊

猛き海狼(上・下)/An Honorable German(2009) チャールズ・マケイン(Charles McCain)/高見浩訳 定価:各660円(税込)/刊行日:2010年12月1日 ISBN:978-4-10-217781-5/217782-2猛き海狼〈上〉 (新潮文庫)作者: チャールズマケイン,Charles McCain,高見…

扶桑社発のひとりごと 20101210(執筆者・T)

第3回 さて、前回まで出版というビジネスのアウトラインを見てきました。日本では、毎日200点あまりの新刊が出ている計算になる、というんですから、たいへんなことですよね。 そうなると、こんな疑問がわきますよね―― 出版ってもうかるの? 本って、ど…

第三回 『死体のC』

前回、「キンジー・ミルホーンシリーズは好きじゃないんだよなー……」とぶっちゃけたところ、「スー・グラフトンは『死体のC』で一皮むけるのだよ。」というアドバイスを、とある先輩ミステリ評論家からいただいた。むむ、それならどう「一皮むける」のか、…

第二回翻訳ミステリー大賞・第一次選考、結果発表!

昨日、渋谷のフォーラム8で開催された「ミステリー忘年会」の席上で、「第2回翻訳ミステリー大賞」第1次選考を通過した5作品が発表されました。今年は獲得点数を発表していませんので、五十音順に紹介します。 ●『音もなく少女は』 音もなく少女は (文春…