【隔週更新】翻訳ミステリー長屋かわら版

翻訳ミステリー長屋かわら版・第58号

田口俊樹 翻訳者のみなさん、翻訳ミステリー大賞選定の第一次投票締め切りまで、ひと月を切りました。 もうお決まりでしょうか? かく言う私、あと一冊を決めかねていて、積んどく書になっている話題作を今月中にできるだけ読もうと思っています。毎年そんな…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第57号

田口俊樹 もう十何年もまえになりますが、オーストラリア人の若い女性とざる蕎麦を食べてたときのこと。 その女性、日本語はぺらぺらで、箸もきちんと使えるんだけど、見ていると、蕎麦をつゆにたっぷんたっぷんに浸して、二、三本ずつつまんじゃ、おそるお…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第56号

田口俊樹 納涼、ミステリー祭です、パチパチパチ。 七月五日(土)午前六時、自宅最寄り駅の京王線「国領」から各駅停車の新宿行きに乗りました。 なんでそんなに早起きしたのかというと、夏競馬第一弾、北上次郎や土屋晃ほか競馬オヤジ大参戦、毎年恒例の福…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第55号

田口俊樹 な〜んも書くこと思いつかず、人頼みでごめん。 「『お客さんからパワーをもらった』なんて言うミュージシャンがいるけど、ふざけたこと言ってるんじゃないよ! 客からお金もパワーももらってどうするんだ。こっちがあげるんだよ、パワーは」 先日…

飜訳ミステリー長屋かわら版・第54号

田口俊樹 翻訳者のみなさんへ 今回は事務局の不手際もあり、翻訳ミステリー大賞の候補作が七作になってしまい、ご負担をかけてしまうこと、まことに申しわけなく思っています。 でも、言うまでもありませんが、七作ともどれも読んで損のない秀作です。 締め…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第53号

田口俊樹 去年の暮れのことですけど、私、また振り込め詐欺に引っかかりそうになっちゃいましてね。ええ、二度目です。 最初のはもう七、八年前になります。話が長くなるんで触れませんが、今回も電話の相手は息子でした。まえのときには、ごめんなさい、ご…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第52号

田口俊樹 長屋のかわら版にはなじまない話題かもしれないけれど、特定秘密保護法。 これ、ひどすぎません? 六十すぎた爺さん婆さんはみんな左翼だ、とはあるジャーナリストの名言ながら、こればかりは右も左もないと思う。 去年の暮れに朝日新聞にこの法律…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第51号

田口俊樹 三川基好という翻訳者がいました。大学の先生をしながら、ジム・トンプスンなんかを訳してました。 惜しいことに六年前に五十七歳で早世したのですが、私とは中学、高校、大学、さらには翻訳という仕事も一緒という関係で、ふたりといない私の友人…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第50号

田口俊樹 早いものです。今年も翻訳ミステリー大賞選出のための第一次投票締め切りまで余すところひと月となりました。 音頭取りが投票できなきゃどうにもならんのですが、正直なところ、私の場合、あれとあれ、まだ二作しか決まってない、五作投票しなきゃ…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第49号

田口俊樹 空耳ならぬ空目。確か同じ長屋の住人、越前さんのブログかツイッターで見て、わりと最近知ったことばなんですけど、若い人たちの新語かと思ってネットで確かめたら、昔からあることばなんですね。 年配者の常として、そうとわかると、なんかいいこ…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第48号

田口俊樹 老犬ブチが死にました。1月14日に文字どおり倒れてちょうど7ヵ月、8月14日の夜のことでした。17歳9ヵ月。その日は奇しくも101歳で大往生を遂げた義父の命日でした。 私はたまたま親しい編集者たちとの飲み会で外出していたのですが、…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第47号

田口俊樹 また老犬介護の話でナンですが、私、最近は夜中に鳴かれても眼が覚めなくなりました。私も順応性がありますねえ。で、講師をしている翻訳学校でそのことを話したら、愛犬家の生徒に、明らかに非難を含ませた声音で問い返されました。「先生、そうい…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第46号

田口俊樹 ちょっと世話になったりしたもんで、ふと思いつき、マイクル・Z・リューインさんにお中元を贈りました。輪島塗の夫婦箸。するとお礼のメールに次のような質問が添えられてました――「ところで、トシ、この大きいほうはメインディッシュ用で、小さい…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第45号

田口俊樹 寝たきり老犬の介護が、もうた〜いへん。 うちの愛犬、今年の正月半ばにすごく雪が降った日、夕方に散歩に連れ出そうとしたら、犬小屋から出てきて、よろよろってよろけて、横ざまに雪の上に倒れて、それっきり立てなくなってしまいました。 慌てて…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第44号

田口俊樹 覚えておいででしょうか。前回翻訳ミステリー長屋かわら版・第43号 - 翻訳ミステリー大賞シンジケートの続きです。あいだがあきすぎて、書いてる本人もなんだか気抜けしちまったけど、今しばらくおつきあいのほどを。 Here's looking at you, kid. …

翻訳ミステリー長屋かわら版・第43号

田口俊樹 暮れに机の引き出しの中身を整理していたら、何年もまえにアイルランドで買って、それっきり忘れてしまっていた絵はがきが出てきました。 緑の牧草地を背景に、大人のヤギ(親ヤギ?)がうしろを振り向き、ちょっと小首を傾げるようにして子ヤギを…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第42号

田口俊樹 近所の「松屋」でオリジナル・カレーを食べて店を出ようとしたときのこと。 片言の日本語で「あしたやりますか?」と呼び止められました。振り向くと、フィリピン人の女性店員(名札が胸についているのだけれど、名前がどうしても覚えられない)が…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第41号

田口俊樹 昨日告知したとおり、第四回翻訳ミステリー大賞の候補作を決めることができました。 投票してくださった翻訳者のみなさん、改めてお礼申し上げます。 言うまでもありませんが、どれも秀作ぞろいです。 第一次投票は見送られた方々も第二次投票には…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第40号

今回は、先ごろ発刊された《東西ミステリー ベスト100》がお題です。週刊文春臨時増刊 東西ミステリー ベスト100 2013年 1/4号 [雑誌]出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/11/21メディア: 雑誌購入: 7人 クリック: 145回この商品を含むブログ (33件) を見…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第39号

田口俊樹 ダメ男は生涯ダメ男のままということだろう。四十歳でふらふらしているやつは六十になってもふらふらしている。 書評七福神九月ベストに載った北上次郎氏のサビッチ評です。あのスコット・トゥローの名作『推定無罪』と新作『無罪』の主人公のね。…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第38号

田口俊樹 宣伝めいて恐縮ながら。 すでにこのサイトでも告知のあったことながら。 今月、ローレンス・ブロック氏が来日します。 でもって、ふたつばかり催しをします。 19日19時――池袋『リブロ』にて新刊『償いの報酬』刊行記念講演&インターヴュー&サ…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第37号

田口俊樹 遅まきながら、アーナルデュル・インドリダソンという著者名がどうしても覚えられない『湿地』(柳沢由美子訳)を読みました。 面白かったあ! いいですねえ、この主人公のエーレンデュル捜査官。頑固おやじで、辛辣すぎて受けないジョークを言った…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第36号

田口俊樹 話題としてはまさしく十日の菊の感なきにしもあらずのオリンピックですけど、見ていて思ったことなどを。 勝者の美学ってありますよね。 フェンシングでは太田選手が雄叫びをあげてましたけど、日本の剣道では勝った選手がガッツポーズをしただけで…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第35号

田口俊樹 小説の面白さはふたつしかない。われを忘れるか、身につまされるか、そのどっちかだ。 なんてその昔、さる評論家が書いてるのを読んで、確かにそのとおりだと深く納得した覚えがあります。 その頃はまだ小説の一大傑作を書いて明日にでも芥川賞を取…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第34号

田口俊樹 先日、拙宅から最寄駅まで歩いていたときのこと。 二、三歳の男の子が道の真ん中に坐り込んで駄々をこねていました。昼間の暑いさかりで、もう歩くのが嫌になっちゃったんですね。お母さんに抱っこをせがんでいます。 お母さんのほうはなんとか歩か…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第33号

田口俊樹 「古いジョークが最高のジョークなんだよ。だから残るんだよ」 今訳している本で、ある男がそんなことを言います。なるほどと思い、自分が覚えている一番古いジョークを思い出しました。 もう半世紀近くもまえの話。中学校にはいった頃でしょうか、…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第32号

田口俊樹 趣味のパチンコ。あんまり賢そうな人はやってませんが、あれはあれでけっこう奥の深い遊びでしてね。当たりが来ないときにはとことん来ない。だいたい三百数十回に一回は当たるように設定されてるんですが、千回、二千回とやっても来ないことがある…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第31号

田口俊樹 第三回翻訳ミステリー大賞授賞式およびコンベンションをつつがなく、いや、前回以上の盛り上がりの中、閉幕することができました。これもひとえにみなさまのご支援、ご協力の賜物です。お忙しいところ、ご出席くださった方々には改めてお礼申し上げ…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第30号

田口俊樹 大統領選に向けての共和党の候補者選び。中傷合戦がすさまじいですね。 中でもネガティヴCMというやつ。Rombo というロムニーをランボーみたいにした30秒スポットなんか、まさに笑えぬナンセンスですよね。笑っちゃったけど。 不倫を敵陣営に暴…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第29号

第三回翻訳ミステリー大賞二次投票要項 第三回翻訳ミステリー大賞授賞式&コンベンションのお知らせ その1 田口俊樹 全国ン百万の(妄想です)翻訳ミステリーファンのみなさん! 来月14日、いよいよ第三回翻訳ミステリー大賞授賞式およびコンベンションを…