2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

吉澤康子のイチ押し本

『エルサレムから来た悪魔』アリアナ・フランクリン(創元推理文庫 上下巻Mフ20-1、20-2) エルサレムから来た悪魔 上 (創元推理文庫)作者: アリアナ・フランクリン,吉澤康子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2009/09/30メディア: 文庫 クリック: 4回この…

私設応援団・これを読め!『愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える』(執筆者・吉野仁)

愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える (光文社古典新訳文庫)作者: ジャン=パトリックマンシェット,Jean‐Patrick Manchette,中条省平出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/01/08メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (40件) を…

ランダムハウス講談社発のひとりごと (執筆者・ランダムハウス講談社編集部(SS))

半老人の繰り言、でもグチではありません 若い人たちが海外旅行や留学に関心を持たなくなっているという。インターネットを使えば、情報も商品も写真も動画も即座に手に入るのだから、わざわざ時間と金をかけて出かけるまでもないということだろうか。異郷の…

第一回はロバート・クレイスの巻(執筆者・東野さやか)

翻訳業界に足を突っこんでからというもの、原書を読むのは仕事の一部と化し、楽しむためだけに読む機会がめっきり減った。かつてはピンときた原書を片っ端から注文し、憑かれたように読んだものだけれど、それもいまは昔。とはいえ、新刊情報を聞けばいまで…

ミステリマガジン&通信・翻訳ジャーナル

当サイトに〈書評七福神〉として寄稿いただいている池上冬樹さんが、「ハヤカワミステリマガジン」(早川書房)12月号の池上冬樹さん連載コラムで、翻訳ミステリー大賞について採り上げてくださいました。少々遅くなりましたが、ご紹介いたします。ミステ…

2009年、私のベスト10暫定版第9回 その1(執筆者・小山正)

ドン・ウィンズロウの大作『犬の力』の人気が高いねえ。それに匹敵するのが、北欧から登場した超弩級の新人スティーグ・ラーソンの大作『ミレニアム』シリーズだ。両者のどちらを上位とするかは個人の自由だが、私の場合は後者が上。『犬の力』も良かったが…

2009年、私のベスト10暫定版第9回 その2(執筆者・小山正)

(承前) 1位は、今年最もオシャレだったフレンチ・ミステリ。美人女子大学生オルタンスは金物屋が次々と襲われる事件に巻き込まれた。一方、彼女がバイトで勤めるパン屋には彼女目当ての客が殺到し、事件そっちのけで町中が大騒ぎとなるが・・・。ニヤニヤし…

書評七福神の11月度ベスト発表!

書評七福神とは!?「書評七福神」とは、翻訳ミステリーが好きで好きでたまらない書評家七人のことである。 日々貪るように翻訳ミステリーを読んでいる七人に、この一ヶ月で読んだ中でいちばんおもしろかった/胸に迫った/爆笑した/虚をつかれた/この作者…

なぜ文庫にならなかった!? 埋もれた傑作、ベスト5 その1(執筆者・日下三蔵)

ミステリ・マニアの中には、したり顔で「埋もれた傑作などないよ」という人がいる。なるほど、みるべき処のある傑作、秀作であれば、なんらかの形でマニアの口の端にのぼるはずだから、これは一面での真理ともいえるが、過去に出版されたミステリはあまりに…

なぜ文庫にならなかった!? 埋もれた傑作、ベスト5 その2(執筆者・日下三蔵)

(承前) 騎士の陥穽 (1951年)作者: W.フォークナー,大久保康雄出版社/メーカー: 雄鶏社発売日: 1951メディア: ? クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 二冊目は、ウィリアム・フォークナーのミステリ短篇集『騎士の陥穽』(1951年/雄鶏社/大久…

なぜ文庫にならなかった!? 埋もれた傑作、ベスト5 その3(執筆者・日下三蔵)

(承前)私のすべては一人の男 (1967年) (ハヤカワ・ノヴェルズ)作者: ナルスジャック,ボアロー,中村真一郎出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1967メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 三冊目は、フランスのコンビ作家、ボワロー、ナルスジャ…

なぜ文庫にならなかった!? 埋もれた傑作、ベスト5 その4(執筆者・日下三蔵)

(承前) 絶体絶命 (1958年)作者: フレデリック・ダール,中込純次出版社/メーカー: 三笠書房発売日: 1958メディア: ?この商品を含むブログ (1件) を見る 四冊目は、同じくフランスの作家フレデリック・ダールの長篇『絶体絶命』(1958年/三笠書房/中込純次…

会心の訳文・第四回(執筆者・伏見威蕃)

乙娘が機を織っている。となりの部屋から聞こえる。母親は寝てしまった。機織の音がうるさいと毎晩文句をいう。乙娘は夜っぴてやらなければならず、ときには夜明けまでやることもある巴巴*1(わたし)は乙娘が湯浴みするまで起きている。 What shall I give …

講談社 11月の新刊

〈アジア本格リーグ〉 第2回配本は、今年「ミステリー百年」を迎えた韓国と、21 世紀に入り新世代作家の台頭が目覚しい中国、東アジアの2作品。韓国美術界を舞台 に、関係者の失踪や謎の死、贋作問題と不可解な事件が続発する『美術館の鼠』は、 ハリウッド…

東京創元社発のひとりごと 第二回(執筆者・東京創元社編集部S)

――あなたは熱さ寒さには強いですか? 全国の翻訳ミステリ愛好家の皆様、こんにちは。東京創元社編集部、翻訳ミステリ担当のSと申します。今年の三月に新卒で入社した新米編集者です。 さて、私が書けることってなんだろう・・・・・・と悩んだ結果、まだ記憶にあた…

2009年、私のベスト10暫定版第8回(執筆者・石井千湖)

1.アラン・ムーア『フロム・ヘル』みすず書房 めくってもめくっても真っ黒な世界。〈脳内の水面下でおこなわれる活動はすべて魔術なのだ〉というガル博士の虜になり、気がつけば息をするのも忘れるほどのめりこんでいました。特に下巻第十章「この世で一番…

秋深し、今宵は短篇ベスト5 その1(執筆者・小山正)

秋も深まり、暖かい飲み物が恋しい季節になった。先日も新宿東口の老舗名曲喫茶店らんぶるに行き、熱いコーヒーを飲みながら、買ったばかりのジョージ・R・R・マーティンの中・短編集『洋梨型の男』(河出書房新社)を読むことにした。 古いスピーカーから…

秋深し、今宵は短篇ベスト5 その2(執筆者・小山正)

(承前) さて、私が選ぶ「短篇小説ベスト5」は以下の通りである。もっとも、その時の気象状況とエッチな気分と腹の空き具合でベスト5の中身は変わるのだが、今はこんな気分♪1 ワーナー・ロウ「リンカーンのかかりつけの医者の息子の犬」 2 ウィリアム・…

高橋恭美子の自薦イチ押し本

『ビューティ・キラー1 獲物』チェルシー・ケイン(ヴィレッジブックス) ビューティ・キラー1 獲物 (ヴィレッジブックス F ケ 3-1)作者: チェルシーケイン,高橋恭美子出版社/メーカー: ヴィレッジブックス発売日: 2008/06/20メディア: 文庫 クリック: 2回…

クレイグ・トーマス『ウィンターホーク』解説 その1(執筆者・北上次郎)

※編集部より※ 「翻訳ミステリー大賞シンジケート」では、新刊だけではなく、過去に刊行された名作の紹介も積極的に行っていきます。その一環として、現在では品切になっているなどして手にはいりにくくなった文庫の解説を再録します。新刊ではないので手に取…

クレイグ・トーマス『ウィンターホーク』解説 その2(執筆者・北上次郎)

(承前) しかし、ト−マスに現代冒険小説の書き手としてもっとも期待する私としては、それだけでは困るのである。この間のト−マス作品はすぐれたスパイ小説ではあっても、前記したように構造的に見ると冒険小説とは言いがたいのだ。 「ヒギンズよりもト−マス…

扶桑社発のひとりごと 第二回(執筆者・扶桑社(と))

翻訳出版において、重要な版権ビジネスの場に、ブックフェアがあります。 読者のみなさんのなかにも、東京国際ブックフェアに行かれたかたもいらっしゃると思いますが、ああいったイヴェントが世界各都市で開催されているのです。みなさんが見るのは、おもに…

2009年、私のベスト10暫定版第7回・その1(執筆者・古山裕樹)

1ドン・ウィンズロウ『犬の力』(角川文庫)犬の力 上 (角川文庫)作者: ドン・ウィンズロウ,東江一紀出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/08/25メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 175回この商品を含むブログ (190件) を見…

2009年、私のベスト10暫定版第7回・その2(執筆者・古山裕樹)

(承前) 2位にはロバート・リテルの大河スパイ小説を。40年近くにおよぶ米ソの諜報戦からソ連崩壊にまで及ぶ、CIAの物語だ。 個々のエピソードは、冷戦の最前線を舞台にしている。ハンガリー、キューバ、アフガニスタン……。米ソが直接衝突しなかっただ…

2009年、私のベスト10暫定版第7回・その3(執筆者・古山裕樹)

(承前) 6位の『狼のゲーム』は、暗黒ロシアを舞台にした、暴力過剰の物語。本書については、先日「私設応援団」で紹介したとおり。 7位は、ジョン・ル・カレの、一見すると冷戦回顧風味の作品。ただし、実は9・11をテーマにした作品である。冷戦時代…

ヴィレッジブックス 11月の新刊

『トワイライト4 上・下』/BREAKING DAWN ステファニー・メイヤー(Stephenie Meyer)/小原亜美・訳 上巻・定価525円(税込)/09年11月11日/ISBN:9784863321892 下巻・定価672円(税込)/09年11月11日/ISBN:9784863321908 (上巻あ…

TVを消して本を読め!第一回(執筆者・堺三保)

その設定、どこかで見たような……(笑) ども、堺三保です。今回からミステリ小説に関連した、アメリカの映画やテレビドラマの話題を紹介していこうと思っておりますので、御用とお急ぎでない方は、しばしおつきあいいただければ幸いです。 さて、もしかした…

クラシック音楽の扱いがマトモなミステリ、ベスト5・その1(執筆者・酒井貞道)

この手の記事を書く場合、「クラシック音楽はミステリによく似合う」などと適当に論旨をでっち上げて始めるのが王道だろう。しかし嘘を書くには、私はあまりにもクラシック音楽とミステリの双方を愛し過ぎている。だから正直に書くことにしよう。 クラシック…

クラシック音楽の扱いがマトモなミステリ、ベスト5・その2(執筆者・酒井貞道)

(承前) 今回は、そのような使用にとどまらず、クラシック音楽がもっと魅力的な扱いを受けている作品で、ミステリとしても水準以上の作品を5つ選んでみた。番号は振りますが、順位ではありません。1ジョン・ガードナー『マエストロ』(創元推理文庫) マ…