【期間限定】2009年、私のベスト10暫定版【毎週更新】

2009年、私のベスト10暫定版第9回 その1(執筆者・小山正)

ドン・ウィンズロウの大作『犬の力』の人気が高いねえ。それに匹敵するのが、北欧から登場した超弩級の新人スティーグ・ラーソンの大作『ミレニアム』シリーズだ。両者のどちらを上位とするかは個人の自由だが、私の場合は後者が上。『犬の力』も良かったが…

2009年、私のベスト10暫定版第9回 その2(執筆者・小山正)

(承前) 1位は、今年最もオシャレだったフレンチ・ミステリ。美人女子大学生オルタンスは金物屋が次々と襲われる事件に巻き込まれた。一方、彼女がバイトで勤めるパン屋には彼女目当ての客が殺到し、事件そっちのけで町中が大騒ぎとなるが・・・。ニヤニヤし…

2009年、私のベスト10暫定版第8回(執筆者・石井千湖)

1.アラン・ムーア『フロム・ヘル』みすず書房 めくってもめくっても真っ黒な世界。〈脳内の水面下でおこなわれる活動はすべて魔術なのだ〉というガル博士の虜になり、気がつけば息をするのも忘れるほどのめりこんでいました。特に下巻第十章「この世で一番…

2009年、私のベスト10暫定版第7回・その1(執筆者・古山裕樹)

1ドン・ウィンズロウ『犬の力』(角川文庫)犬の力 上 (角川文庫)作者: ドン・ウィンズロウ,東江一紀出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/08/25メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 175回この商品を含むブログ (190件) を見…

2009年、私のベスト10暫定版第7回・その2(執筆者・古山裕樹)

(承前) 2位にはロバート・リテルの大河スパイ小説を。40年近くにおよぶ米ソの諜報戦からソ連崩壊にまで及ぶ、CIAの物語だ。 個々のエピソードは、冷戦の最前線を舞台にしている。ハンガリー、キューバ、アフガニスタン……。米ソが直接衝突しなかっただ…

2009年、私のベスト10暫定版第7回・その3(執筆者・古山裕樹)

(承前) 6位の『狼のゲーム』は、暗黒ロシアを舞台にした、暴力過剰の物語。本書については、先日「私設応援団」で紹介したとおり。 7位は、ジョン・ル・カレの、一見すると冷戦回顧風味の作品。ただし、実は9・11をテーマにした作品である。冷戦時代…

2009年、私のベスト10暫定版第6回・その1(執筆者・中辻理夫)

1『静かなる天使の叫び』R・J・エロリー(集英社文庫) 静かなる天使の叫び (上) (静かなる天使の叫び) (集英社文庫)作者: R・J・エロリー,佐々田雅子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2009/06/26メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (20件) を見…

2009年、私のベスト10暫定版第6回・その2(執筆者・中辻理夫)

(承前) 同じことが2位のドン・ウィンズロウ『犬の力』にも当てはまる。メキシコの麻薬ビジネス撲滅を魂の底から目指す捜査官、犯罪組織、彼らのあいだで炸裂する闘争を、粘っこくもドライに描いている。怒りの絶え間ないぶつかり合いが、やはり三十年にも…

2009年、私のベスト10暫定版第5回・その1(執筆者・霜月蒼)

1『犬の力』ドン・ウィンズロウ(角川文庫) 犬の力 上 (角川文庫)作者: ドン・ウィンズロウ,東江一紀出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/08/25メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 175回この商品を含むブログ (190件) を見…

2009年、私のベスト10暫定版第5回・その2(執筆者・霜月蒼)

(承前) 2は、あまりに無茶なスピード感とプロットでおれの度肝をダース単位で引っこ抜いた怪作。荒唐無稽といえばそうなんだが、こんな話、思いついても書くやつはいないだろうし、無理をぶっ通して道理を地の底にねじこんでしまったような力技には爽快感…

2009年、私のベスト10暫定版第5回・その3(執筆者・霜月蒼)

(承前) 以下は駆け足で。 昨年度最強のイヤミス『制裁』の著者チームの第2作が6。前作同様に世界の醜悪さと真正面から切り結ぶヘヴィ・ノヴェル。そんなものなど読みたくないと思う向きには無理にはすすめないが、社会の暗部と切り結ぶ文学的ツールとし…

2009年、私のベスト10暫定版第4回・その1(執筆者・杉江松恋)

1『犬の力』ドン・ウィンズロウ 犬の力 上 (角川文庫)作者: ドン・ウィンズロウ,東江一紀出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/08/25メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 175回この商品を含むブログ (190件) を見る犬の力 下 …

2009年、私のベスト10暫定版第4回・その2(執筆者・杉江松恋)

(承前) 『ミレニアム』を2位とすることにはまったくためらわなかった。小説の実力からいって当然である。先になんでもありと書いたが、どの要素も均等に優れているという意味ではない。たとえば『ミレニアム1』は犯人捜しの要素を持った小説だが、フーダ…

2009年、私のベスト10暫定版第4回・その3(執筆者・杉江松恋)

(承前) あとは若干駆け足気味に。4位から6位まではほとんど同着と言ってもいいほどで、自分の中では評価に差はない。『ユダヤ警官同盟』は、もしもイスラエル建国が行われなかったら、という歴史改変小説であり、アメリカに借地をして集住していたユダヤ…

2009年、私のベスト10暫定版・第3回 その1(執筆者・川出正樹)

1位 ドン・ウィンズロウ『犬の力』(東江一紀訳/角川文庫) 犬の力 上 (角川文庫)作者: ドン・ウィンズロウ,東江一紀出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/08/25メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 175回この商品を含むブロ…

2009年、私のベスト10暫定版・第3回 その2(執筆者・川出正樹)

(承前) ところが八月になって、この熱き想いをも凌駕するとんでもない傑作が現れた。ドン・ウィンズロウの『犬の力』だ。 これにはまいった。完全にノック・アウトされた。舞台はアメリカ――メキシコ国境地帯を中心とした中南米諸国。麻薬に憑かれた三人の…

2009年、私のベスト10暫定版・第3回 その3(執筆者・川出正樹)

(承前) この調子で書いていると、とめどなく長くなりそうなので、ここから先は駆け足で。 第六位の『法人類学者デイヴィッド・ハンター』は、今回あげた十作中、最も読まれていないだろうと想われる一作だ。いかにもなタイトルはこの際おいとくとして、先…

2009年、私のベスト10暫定版・第2回(執筆者・池上冬樹)

1位 スティーグ・ラーソン『ミレニアム』三部作(ヘレンハルメ美穂・岩澤雅利訳/早川書房)ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上作者: スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ美穂,岩澤雅利出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/12/11メディア: ペーパーバ…

2009年、私のベスト10暫定版・第1回 その1(執筆者・北上次郎)

1位ジョン・ハート『川は静かに流れ』(東野さやか訳/ハヤカワ文庫)川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ジョン・ハート,東野さやか出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/02/06メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 20回この商品を含むブログ (5…

2009年、私のベスト10暫定版・第1回 その2(執筆者・北上次郎)

(承前) しかし、ここでも1位にするのはシャクなので、無理に2位にしてみた。我ながら強引だとは思うけれど許されたい。で、1位がジョン・ハート『川は静かに流れ』。某翻訳家が主宰する読書会のテキストになったとき、36名中18名(半分だ!)に批判され…

2009年、私のベスト10暫定版・第1回 その3(執筆者・北上次郎)

(承前) 10作全部にコメントをつけるつもりでいたが、このペースでやっていくと長くなりすぎるので、あとは数作のみにして残りは省略する。 まず、『グラーグ57』は、あの『チャイルド44』の続篇で、あるいは前作に比べると落ちるのではないか、という批判…