2009年、私のベスト10暫定版第9回 その1(執筆者・小山正)
ドン・ウィンズロウの大作『犬の力』の人気が高いねえ。それに匹敵するのが、北欧から登場した超弩級の新人スティーグ・ラーソンの大作『ミレニアム』シリーズだ。両者のどちらを上位とするかは個人の自由だが、私の場合は後者が上。『犬の力』も良かったが、心から胸がときめいたのは『ミレニアム』だった。
確かに『犬の力』は読みごたえ満点だし、小説としての完成度も高い。だから多くの人がベスト10投票で高得点を入れるのも頷ける。私自身も各種投票で高得点を入れた。
が、しかし。南北アメリカの麻薬戦争という題材と、そこに巻き込まれた人間たちの壮絶なドラマは、小説ではないけれどもウォルター・ヒル監督によるマニア好みの映画『ダブル・ボーダー』(一九八七)や、マイケル・マン制作のTVムービー『ドラッグ・ウォーズ/麻薬戦争』(一九九一)、近年だとスティーヴン・ソダーバーグ監督の傑作映画『トラフィック』(二〇〇〇)などで経験済みだった。そんな既視感もあったのだろう、私は複合建築のような巨大な謎解きミステリ『ミレニアム』のほうが新鮮さと衝撃度において勝っていると思った。やっぱり私は、稚気があって、知的興奮をともない、ミステリ・マインドにあふれる小説が大好きなのだ(もっと言うと・・・『犬の力』と『ミレニアム』のどちらを上に置くかで、その人のミステリ感がわかる、と言えるだろう。これはベスト10というモノの実態を解析する上でも重要なことだと思う。でも、それはまた別の話だ)。
さて今回の「私の暫定的なベスト10」は天の邪鬼にやらせて戴く。だって、ベスト10の投票も終わり、なんとなく「これが1位かな?」「2位はたぶんあれだ」というのが邪推できるこの時期にあって、私が今さら「第1位は『ミレニアム』で、第2位は『犬の力』」などと書いてもねえ。それより、ベスト10の投票とか関係なく偏愛・盲愛した私的ベスト10をご紹介した方がよっぽど楽しい。でもね、バカミス・ベスト10ではありませんよ。バカミスはもっと入念に時間をかけて厳選するものなので、こちらは別の機会に発表したい。
というわけで、以下が「私のベスト10暫定版改め、ベスト10には決して入らないだろうけれども、でも本当にすばらしい作品だった“番外地・裏ベスト10”」。興が乗ってきたので洋書も挙げちゃえー。
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