2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

往事茫々 1 翻訳者と出会う(執筆者・染田屋茂)

敬愛する元文芸編集者Sさんが、以前ご自分のHPに若い頃の手帳を公開していたことがある。どこどこへ行った、誰と会ったという簡単な記述がほとんどで、本の世界とは無縁の人なら何の面白みもないのだろうが、そこに並ぶ名前たるや、山本周五郎、丹羽文雄…

#7『死体をどうぞ』

さて、ピーター・ウィムジィ卿シリーズもいよいよ後半戦。 前期の比較的軽くて明るい作品とそれに見合ったキャラとして活動していたピーターも、『毒を食らわば』で出会ったハリエット・ヴェインとの恋をきっかけに、作品の重層化(と、それに伴う長大化)と…

アガサ・クリスティー攻略作戦 第八十六回(執筆者・霜月蒼)

偵察任務#04・早川書房編集部編『ミステリアス・ショーケース』(執筆者・矢口誠)

ミステリアス・ショーケース (ハヤカワ・ミステリ)作者: デイヴィッド・ゴードン,ニック・ピゾラット,トム・フランクリン,スティーヴ・ハミルトン,ダグ・アリン,トマス・H・クック,デイヴィッド・ベニオフ,ベス・アン・フェンリイ,早川書房編集部,田口俊樹,…

偵察任務#03.5 『解錠師』と『×××』解答篇(執筆者・矢口誠)

解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)作者: スティーヴ・ハミルトン,越前敏弥出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/12/08メディア: 新書購入: 2人 クリック: 87回この商品を含むブログ (48件) を見る 前回の〈敵状偵察隊〉で…

危機的似非(エッセ・クリティック)(執筆者・平岡敦)

(3)題名のあるエッセー わたしが担当する翻訳者エッセイも、今回で終わりです。前回、前前回とも切羽詰った話でお茶を濁してしまったので(まあ、本当に切羽詰まっていたのですが)、最後ぐらいは本来のエッセ・クリティック、つまり批評的なエッセーらし…

第1回埼玉読書会開催!【再掲】

《配布用のチラシを作成しました。記事の最後にあります。ダウンロードしてお使いください》 東京で第1回読書会が開催されたのが2010年2月のこと。あれから2年と半年が過ぎ、大阪と福岡から始まった地方の読書会の動きも、名古屋、福島、横浜、千葉、そし…

最新海外ミステリーニュース20120825(執筆者・木村二郎)

2012 CWA Dagger Shortlists (Part 2) Announced The Crime Writers' Association of Britain (CWA) has announced the shortlists of the following three categories of the 2012 Dagger Awards: THE GOLD DAGGER: Vengeance in Mind, by N.J. Cooper (Sim…

第1回東東京読書会開催!

【9月30日追記】 本日開催予定の東東京読書会は、大型台風の接近にともなう影響等を考慮し、本会・二次会ともに中止とさせていただきます。近日中に同内容での読書会を開催する意向です。詳細が決まりましたら、またお知らせいたします。 ○第1回東東京読書…

翻訳ミステリー長屋かわら版・第35号

田口俊樹 小説の面白さはふたつしかない。われを忘れるか、身につまされるか、そのどっちかだ。 なんてその昔、さる評論家が書いてるのを読んで、確かにそのとおりだと深く納得した覚えがあります。 その頃はまだ小説の一大傑作を書いて明日にでも芥川賞を取…

『図説・死因百科』――245の死から見たアメリカ(執筆者・大谷暁生)

図説 死因百科作者: マイケル・ラルゴ,橘明美(監訳),臼井美子,荷見明子,坂田雪子,竹若理衣,長谷川由布子,吉川綾香出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2012/06/21メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 6回この商品を含むブログを見る 世の…

トホホなおひとりさまヒロインの隠居生活――『アガサ・レーズンの困った料理』(執筆者・上條ひろみ)

コージーミステリのヒロインといえば、好奇心旺盛で人情に篤く、料理やお菓子作りや裁縫やガーデニングや子育てといった特技を持ち、たいていは品行方正、あまりダークサイドに行っちゃってる人はいない。まあなかには不倫する人やら、証拠を隠匿する人やら…

第三十二回はスー・アン・ジャファリアンの巻(執筆者・辻早苗)

レギュラー陣のみなさんに混じっておじゃま虫します。よろしゅうに。 夏だからというわけでもありませんが、幽霊もののコージーを紹介したいと思います。幽霊の登場するコージーって別に珍しくもなんともないんですけど、Sue Ann Jaffarian の〈A Ghost of G…

危機的似非(エッセ・クリティック)(執筆者・平岡敦)

(2) ルパン危機一髪 というわけで前回は、似非翻訳家に日頃の怠惰のバチが当たり、深夜に恐怖体験をする羽目になった話を書いた。 あれから二週間、ようやく危機的状況のひとつを脱したところです。あっ、そうそう、一週あいだが空いたのは、何もどんづま…

第3回「"真夏の"読書探偵」作文コンクール開催!【再掲】

「真夏の読書探偵」作文コンクール開催! 〜海外の小説や絵本を読んで、おもしろさを伝えよう!〜 今年で3回目、「真夏の読書探偵」作文コンクールを開催します。去年は秋でしたが、今年は学校の夏休みに合わせての開催です。対象は18歳以下ぐらいの小中高…

東京創元社 8月の新刊

『ミステリーズ!』vol.54 AUGUST 2012 東京創元社(雑誌)/定価1260円(税込)/8月11日/ISBN:978-4-488-03054-4 【特集】 真夏の夜に愉しみたい ファンタジー&怪奇の調べ パート1 ファンタジー編 乾石智子 紐結びの魔道師 ●訪ねてきたのは、ひとりの…

第1回埼玉読書会開催!

東京で第1回読書会が開催されたのが2010年2月のこと。あれから2年と半年が過ぎ、大阪と福岡から始まった地方の読書会の動きも、名古屋、福島、横浜、千葉、そして札幌と各地に広がっています。いやあ、壮観、壮観……と高みの見物を決めこんでいたわけでは…

さよなら、ブラッドベリ (執筆者・菊池由美)

2012年6月6日、レイ・ブラッドベリが亡くなった。訃報をはじめてTwitterで見たとき、夏の草原を白いスニーカーでどこまでも走っていく少年が、脳裏にうかんだ。 草の匂い。まぶしい太陽。 ふだんはあまり感傷的ではない自分が、ぐらりとゆらいだ。 91歳と…

悲しみと諦念をたたえた絶品『三十三本の歯』を読め(執筆者・風野春樹)

三十三本の歯 (老検死官シリ先生)作者: コリン・コッタリル,雨沢泰出版社/メーカー: ヴィレッジブックス発売日: 2012/05/19メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 21回この商品を含むブログ (19件) を見る 出版社には申し訳ないのだけれど、いくらなんでも、手…

アガサ・クリスティー攻略作戦 第八十五回(執筆者・霜月蒼)

初心者のためのピーター・ラヴゼイ入門(執筆者・山本やよい)

「読んで、読んで、とにかく読んで! ラヴゼイを読まないのは人生の損失ですよ」と、声を大にして言いたい。ラヴゼイをひとことで言うなら、〝極上の読書の楽しみが味わえる作家〟。イングランドの作家だから、香りのいい紅茶をいれて、ショートブレッドをお…

『女が嘘をつくとき』――嘘についてのささやかな文学研究(執筆者・藤井勉)

女が嘘をつくとき (新潮クレスト・ブックス)作者: リュドミラウリツカヤ,沼野恭子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/05/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (9件) を見る 〈自然現象〉のような女の嘘、序文によると本書はそ…

真夏の読書探偵・フライヤー設置状況

今年の「真夏の読書探偵」作文コンクールでも、応募要項や推薦図書リストなどをいくつか作成しましたが、これをダウンロードしてくださった人たちから、どこの書店や図書館に置いたという情報が寄せられています。去年、獅子奮迅の大活躍だったしねまるさん…

第4回名古屋読書会レポート(後編)「叙述の森」(執筆者・大矢博子)

追撃の森 (文春文庫)作者: ジェフリーディーヴァー,Jeffery Deaver,土屋晃出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/06/08メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 29回この商品を含むブログ (31件) を見る 前編「ツッコミの森」はこちら 中編「瑣末の森…

第4回名古屋読書会レポート(中編)「瑣末の森」(執筆者・大矢博子)

追撃の森 (文春文庫)作者: ジェフリーディーヴァー,Jeffery Deaver,土屋晃出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/06/08メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 29回この商品を含むブログ (31件) を見る 前編「ツッコミの森」はこちら 何を書いてもネ…

角川文庫7月の新刊

ブラックアウト(上下)/Blackout (2012) マルク・エルスべルグ Marc Elsberg /猪股和夫・竹之内悦子訳 定価(上下各税込):820円/発売日:2012年 07月 25日 ISBN(上): 978-4-04-100255-1-C0197/(下): 978-4-04-100254-4-C0197ブラックアウト 上 (角川…

第4回名古屋読書会レポート(前編)「ツッコミの森」(執筆者・大矢博子)

いやあ、すみませんねえ遅くなって。これまではムダに早いだけが名古屋読書会レポの取り柄だったんですが。いやいやいやいや決してオリンピックにハマってるわけでは。そりゃ体操の加藤くんのイケメンぶりにうっとりはしてましたが、ぞれはそれとして、仕事…

書評七福神の七月度ベスト発表!

書評七福神とは翻訳ミステリが好きでたまらない書評家七人のことなんである。 伊調馨が三連覇を果たしたのを確認しながらこの項を書いています。オリンピック開催期間ということでついつい読書時間を観戦に奪われがちな今日この頃ですが、翻訳ミステリマニア…

TVを消して本を読め!第三十三回(執筆者・堺三保/挿絵・水玉螢之丞)

第33回 番外編:ちょいとロサンゼルスまで出かけてきます えー、突然ですが、またもアメリカに移住します。というか、この原稿がネットにアップされる頃には、ロサンゼルス郊外のトーランスという町に住んでいる予定です。次回からは、ハリウッドの現地情報…