【随時更新】私設応援団・これを読め!【新刊書評】

ひたすらクールな進化形クライムノヴェル――ホッブズ『ゴーストマン 時限紙幣』(大谷耀&日向郁)

世界を熱狂させた25歳の天才、デビュー 21世紀ミステリ界に、颯爽たるヒーローがついに登場 イギリス推理作家協会賞受賞作 のみならず なんと 第2回出版社対抗ビブリオバトル堂々のチャンプ本! ゴーストマン 時限紙幣作者: ロジャーホッブズ,Roger Hobbs,田…

黒くて楽しい不条理な嘲笑――スパーク『バン、バン! はい死んだ』(執筆者・深緑野分)

バン、バン! はい死んだ: ミュリエル・スパーク傑作短篇集作者: ミュリエル・スパーク,木村政則出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/11/06メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (23件) を見る Little Jack Horner, Sat in the corne…

世界最高の殺し屋という生き方――グリーニー〈グレイマン・シリーズ〉(執筆者・大谷耀)

「世界最高の殺し屋って誰?」という質問をされたら、多くの日本人はゴルゴ13と答えるのではないだろうか。もしくは、殺人許可証を持っている世界的なヒーローということで、ジェームズ・ボンドという答えもあるかもしれない。ともあれ、その金看板を背負え…

大人気SFの続篇はSFミステリの傑作だった!――『パラークシの記憶』(執筆者・北原尚彦)

パラークシの記憶 (河出文庫)作者: マイクル・コーニイ,山岸真出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/10/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (26件) を見る 待ちに待っていた本が出た。本当に待っていた。何せ、マイクル・コーニイである。しかも本…

読後そっと空を見あげたくなる一冊――『ステイ・クロース』(執筆者・三角和代)

ステイ・クロース (ヴィレッジブックス)作者: ハーラン・コーベン,田口俊樹出版社/メーカー: ヴィレッジブックス発売日: 2013/09/20メディア: 文庫この商品を含むブログ (13件) を見る ミステリ界隈でスティーヴン・キングの傑作『11/22/63』に登場するアメ…

時間旅行のツアーはいかが――『ゴッサムの神々』(執筆者・最上直美)

(ニューヨーク最初の警官) (創元推理文庫)" title="ゴッサムの神々 (ニューヨーク最初の警官) (創元推理文庫)">ゴッサムの神々 (ニューヨーク最初の警官) (創元推理文庫)作者: リンジー・フェイ,野口百合子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/08/10メ…

かなり異常な泥棒の、かなり奇妙な物語――『泥棒は几帳面であるべし』(執筆者・三門優祐)

泥棒は几帳面であるべし (創元推理文庫)作者: マシュー・ディックス,?山祥子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/07/12メディア: 文庫この商品を含むブログ (6件) を見る インターネットの新刊情報サイトや、新刊書店で本を探す時に(特に翻訳がまだな…

ヘインズ『クラッシャーズ』特別クロスレビュー(執筆者・若林踏 & 大谷耀)

クラッシャーズ 上 墜落事故調査班 (文春文庫)作者: デイナヘインズ,Dana Haynes,芹澤恵出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/07/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (7件) を見るクラッシャーズ 下 墜落事故調査班 (文春文庫)作者: デイナヘインズ,Dan…

冒険小説よ、永遠なれ――『暗殺者の正義』(執筆者・福田和代)

あ・つ・い! 日本列島、隅から隅までとにかく暑い。熱波の夏がやってまいりました。こんな日には冷えたビールが一番……そしてビールのお供には、枝豆と冷ややっこ、そして暑さと時間を忘れる面白本を一冊、といきたいものではありませんか。 さあ、皆さまお…

ここはドイツの八つ墓村ですか?――『白雪姫には死んでもらう』(執筆者・YOUCHAN)

特別本が多いわけではないが、それでも増え続ける本の収納には困っていた。本棚ではない収納エリアの隙間に、買った本はとりあえず置く、を繰り返していたら、その隙間すら無くなった。しかたがないので、一念発起して本棚をもう一本追加した。けれど結局、…

家事アドバイザーは大忙し――『感謝祭は邪魔だらけ』(執筆者・上條ひろみ)

感謝祭は邪魔だらけ (創元推理文庫)作者: クリスタ・デイヴィス,島村浩子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/11/29メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (12件) を見る 刊行からちょっと時間がたってしまったので、今さらかもしれません…

ポストゲノムに対するパワーズからの応答――『幸福の遺伝子』(執筆者・内田桃人)

幸福の遺伝子作者: リチャードパワーズ,Richard Powers,木原善彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/04/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る リチャード・パワーズの新作『幸福の遺伝子』は、そのストレートなタイトルからもわかるとお…

虚構が殺す、誰を殺す?――『ゴーン・ガール』(執筆者・三門優祐)

ゴーン・ガール 上 (小学館文庫)作者: ギリアンフリン,Gillian Flynn,中谷友紀子出版社/メーカー: 小学館発売日: 2013/06/06メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (103件) を見るゴーン・ガール 下 (小学館文庫)作者: ギリアンフリン,Gillian Flynn…

いざ乗りこもう秘密の城へ――『第四の館』『蛇の卵』(執筆者・橋本輝幸)

第四の館 (未来の文学)作者: R・A・ラファティ,柳下毅一郎出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2013/04/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (24件) を見る蛇の卵 (Seishinsha SF Series)作者: R.A.ラファティ,R.A. Lafferty,井上央出版社/メーカー: 青…

ポップでキュートでグロテスクに疾駆する一冊――『機械男』(執筆者・大谷暁生)

機械男作者: マックスバリー,Max Barry,鈴木恵出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/05/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (27件) を見る 全てが企業の営利に優先される近未来(ちなみにセカンドネームはその人の所属する企業名になっている)。政府…

世界中で話題の公式続篇が遂に登場――『シャーロック・ホームズ 絹の家』(執筆者・北原尚彦)

絹の家 シャーロック・ホームズ作者: アンソニー・ホロヴィッツ,駒月雅子出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/04/27メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (13件) を見る 正典(コナン・ドイル本人によるシャーロック・ホームズ譚)の新訳を進めて…

21世紀に生まれた『ゴッドファーザー』――『夜に生きる』(執筆者・最上直美)

夜に生きる 〔ハヤカワ・ミステリ1869〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)作者: デニス・ルヘイン,加賀山卓朗出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/03/08メディア: 新書購入: 2人 クリック: 24回この商品を含むブログ (26件) を見る こないだ大統領夫人から…

これは悪夢なのか?――『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』(執筆者・高山真由美)

とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 ---ジョイス・キャロル・オーツ傑作選作者: ジョイス・キャロル・オーツ,栩木玲子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/02/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (26件) を見る これは悪夢なのだろうか? …

コナリー・ワールドの新たな入口――『スケアクロウ』(執筆者・加藤篁)

スケアクロウ(上) (講談社文庫)作者: マイクル・コナリー,古沢嘉通出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/02/15メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (15件) を見るスケアクロウ(下) (講談社文庫)作者: マイクル・コナリー,…

マクロイ『小鬼の市』特別クロスレビュー(執筆者・深緑野分 & ストラングル・成田)

■めくるめく推理活劇譚の傑作 (執筆者・深緑野分) さあさ、翻訳ミステリ愛好家の紳士淑女の皆様、ずずいっとこちらへ。今回の目玉作品は、アメリカミステリ界の女王、ヘレン・マクロイの長編ミステリでございますよ。 『家蝿とカナリア』『暗い鏡の中に』…

なんでもありのシリアルキラー大全?――『六人目の少女』(執筆者・佐竹裕)

六人目の少女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)作者: ドナートカッリージ,Donato Carrisi,清水由貴子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/01/01メディア: 単行本 クリック: 28回この商品を含むブログ (20件) を見る 自分が翻訳ミステリーの書評からしばら…

つめたい世界でたちすくむ孤独な魂――『アサイラム・ピース』(執筆者・牧眞司)

アサイラム・ピース作者: アンナ・カヴァン,山田和子出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2013/01/22メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 410回この商品を含むブログ (32件) を見る 伝説の作家――と言ってよいだろう。ふつうの文学史ではまず言及されること…

仄暗い場所で朽ちていった人間の魂について――『冥闇』(執筆者・三門優祐)

冥闇 (小学館文庫)作者: ギリアンフリン,Gillian Flynn,中谷友紀子出版社/メーカー: 小学館発売日: 2012/10/05メディア: 文庫この商品を含むブログ (23件) を見る はじめまして、あるいはお久しぶりです。三門優祐です。 今回は、ギリアン・フリン『冥闇』に…

出るのよ待望のシリーズ3作目が!――『護りと裏切り』(執筆者・遠藤裕子)

護りと裏切り 上 (創元推理文庫)作者: アン・ペリー,吉澤康子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/01/29メディア: 文庫この商品を含むブログ (25件) を見る護りと裏切り 下 (創元推理文庫)作者: アン・ペリー,吉澤康子出版社/メーカー: 東京創元社発売…

物語で生きている人のために――『宙の地図』(執筆者・中野善夫)

宙の地図 (上) (ハヤカワ文庫NV)作者: フェリクス・J.パルマ,F´elix J. Palma,宮崎真紀出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/11/22メディア: 文庫 クリック: 11回この商品を含むブログ (20件) を見る宙の地図 (下) (ハヤカワ文庫NV)作者: フェリクス・J.パ…

歴史ミステリへの接近――『首斬り人の娘』(執筆者・最上直美)

いきなりこういうことから書き出すのはナンなのだが、「私設応援団・これを読め!」なのに力強く応援しているわけではないし、ジツハ「これは読まないで」などと思っていたりもする。もちろんそれは本書の出来が悪いとか面白くないとか、そういうことではな…

ちがいのわかる大人の都会派コージー――『モカマジックの誘惑』(執筆者・上條ひろみ)

長年紅茶党で、わが家にはコーヒーメーカーもない。スターバックスの台頭で、ホイップクリームやらトッピングといった付加価値をつけたグルメコーヒー(なのか?)がもてはやされ、コーヒーはえらく高価になったし、注文の仕方もなんだか面倒くさそうで、な…

理性と知性と科学に満ちた一冊――『エコー・メイカー』(執筆者・橋本輝幸)

エコー・メイカー作者: リチャードパワーズ,Richard Powers,黒原敏行出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/09メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (26件) を見る ネブラスカ州カーニーはアメリカの片田舎。名物とよべるのは渡りの途中に立ち…

思わず応援したくなるヒロイン――『疑惑のスウィング』(執筆者・上條ひろみ)

打ちっぱなしなら経験あるけど、コースに出たことはなし。十八番ホールまであって、アンダーパー、オーバーパー、オン、OBぐらいまでならわかるけど、ボギーって? イーグルって? アルバトロスって? そんなまったくのゴルフ初心者(わたしもそうです)でも…

アイリーン・アドラーとは何者だったか? 歌手に決まってんじゃん!――『おやすみなさい、ホームズさん』(執筆者・酒井貞道)

おやすみなさい、ホームズさん 上 (アイリーン・アドラーの冒険) (創元推理文庫)作者: キャロル・ネルソン・ダグラス,日暮雅通出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/11/19メディア: 文庫 クリック: 5回この商品を含むブログ (11件) を見るおやすみなさい…