【連載エッセイ】五代ゆうの ピーター卿のできるまで【毎月更新】

#11 『忙しい蜜月旅行』

いよいよここまで来た。ほぼ一年かけてなんとか続いてきたピーター卿シリーズ再読、今回は最終作『忙しい蜜月旅行』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、深井淳訳、1937)である。 なおハヤカワには新訳による文庫版(松下祥子訳 ハヤカワ文庫HM305-1)も存在す…

#10『学寮祭の夜』

大作『ナイン・テイラーズ』を経て、ピーター卿シリーズもあと二作を残すばかり。(創元推理文庫版ではラストである)この『学寮祭の夜』(創元推理文庫、浅羽莢子訳、1935)で、いよいよピーターとハリエットの関係はひとつの山場をこえる。 とにかくまずは…

#9『ナイン・テイラーズ』

さて今回は遅刻してしまってまことに申しわけありませんでした。そんなわけでちょっと間が空きながらも『ピーター卿の作り方』第八回、シリーズ中もっとも有名な大作である『ナイン・テイラーズ』の登場である。 ナイン・テイラーズ (創元推理文庫)作者: ド…

#8『殺人は広告する』

連載も後半戦第二回。前回、『死体をどうぞ』でハリエットとともに捜査することにより、(おそらくは自分でも思いがけず)喜劇的な仮面と傷つきやすく繊細な本来の魂の乖離を意識せざるを得なくなったピーターだが、今回および次回の作品にはハリエットは登…

#7『死体をどうぞ』

さて、ピーター・ウィムジィ卿シリーズもいよいよ後半戦。 前期の比較的軽くて明るい作品とそれに見合ったキャラとして活動していたピーターも、『毒を食らわば』で出会ったハリエット・ヴェインとの恋をきっかけに、作品の重層化(と、それに伴う長大化)と…

#6『五匹の赤い鰊』

ピーター卿の成長を追う試みもいよいよ後半戦に入った。今回はシリーズ第六作、『五匹の赤い鰊』(創元推理文庫、浅羽莢子訳、1931)である。五匹の赤い鰊 (創元推理文庫)作者: ドロシー・L・セイヤーズ,浅羽莢子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1996/06…

#5『毒を食らわば』

やっとここまで来たか、という思いがする。ピーター・ウィムジィ卿シリーズ第五作、『毒を食らわば』(創元推理文庫、浅羽莢子訳、1930)の登場である。ここでシリーズの最重要キャラと言える生涯の伴侶、ハリエット・ヴェインに出会うことによって、いよい…

#4『ベローナ・クラブの不愉快な事件』

ピーター・ウィムジイ卿シリーズをピーターのキャラクター的成長から読み解く、というこの試みも第四回。はたして楽しんでくださってる方はいるのかしら、といささかの危惧を抱きつつも、今回もやってまいりました。今日は第四巻、『ベローナ・クラブの不愉…

#3『不自然な死』

さて、セイヤーズのピーター卿シリーズを追うこの試みもようやく三回目。今回はシリーズ第三作、『不自然な死』(1927、創元推理文庫、浅羽莢子訳)である。不自然な死 (創元推理文庫)作者: ドロシー・L.セイヤーズ,Dorothy L. Sayers,浅羽莢子出版社/メーカ…

#2『雲なす証言』

さて、ピーター卿の成長を追う試みも第二回である。今回はシリーズ第二作、『雲なす証言』(1926年、邦訳創元推理文庫、浅羽莢子訳)である。雲なす証言 (創元推理文庫)作者: ドロシー・L.セイヤーズ,Dorothy L. Sayers,浅羽莢子出版社/メーカー: 東京創元社…

#1『誰の死体?』

世間には引き受けてしまってから「どうしよう」と思うことは多々ある。いざ手をつけてみてから、自分の手にはあまりにも問題がでかすぎるのではないかという怖れがこんこんとわいてくるのである。 なんと今回、ドロシー・L・セイヤーズのピーター卿シリーズ…