【テーマ・エッセイ】なんでもベスト5【毎週更新】
こんにちは。杉江松恋です。 ふと思い立ってtwitter上で、#あなたの好きなホームズ作品を教えてください、とツイートしてみたところ、来るわ来るわ。ご意見がどんどん集まりました。自分だけで楽しむのはもったいないのでtogetterにまとめたのですが、さらに…
前回の〈わが愛しのゲイ・ミステリ・ベスト5〉が思わぬご好評をいただいて、またしても調子に乗って出てきてしまいました。パート1ではどちらかといえば「お手本」となるべきゲイ・ミステリのスタンダードという基準で作品を選びましたが、今回はむしろわ…
ベルリンの壁が崩れたころは高校生だった。翻訳ミステリーに興味を抱いたのもそのころだ。だから、 数々のスパイ小説に出会ったころには、「冷戦が終結したのでスパイ小説もおしまい」なんて烙印を押されていたのだ。……どんな烙印を押されていても、その魅力…
ダルビッシュはくれてやるから、この野球ミステリを復刊させろ いや驚いたね。何がって奥さん、ダルビッシュの値段っすよ。違うよ養育費じゃなくてレンジャース移籍契約金の方。ここは一発「おすすめ大リーグ野球ミステリベスト5」を書こうとして好きな作品…
芝居がかった死 〜 演劇ミステリのススメ 出演者は女性のみ、そんなシェイクスピア劇と遭遇した。その名も「悩殺ハムレット」。ここのところ小劇場の世界ではよく話題にのぼる若手実力派の〈柿喰う客〉という劇団が今秋上演した作品で、女優だけでシェイクスピ…
今から11年前に雑誌「ユリイカ」が臨時増刊「総特集 ジェイムズ・エルロイ ノワールの世界」を出した。私は霜月蒼とともに巻末ブックガイドの執筆に当たったのである。そのときに霜月と喧々諤々の討論をして、現代読者に「こういう作家のこういう作品を指し…
じわじわきている。ゾンビ・ブームが。例によって本国アメリカでの余波を受けてのことだが、なにがなし今日のわが国の不安な世情とあいまって、確実に拡散・浸透しつつあるようだ。といっても、まだゾンビものの翻訳は数えるほどしかない。だから今回は紹介…
「ゲイ・ミステリ」のベスト5というお題をいただいた時は、両手両足いっぺんに叩きたくなるほどうれしかったのですが、困ったことに気がつきました。私の大好きな英国女流ミステリ作家たちの『〇〇〇〇の〇〇』とか『〇〇〇〇〇〇〇は〇〇〇た』といった傑…
『アンストッパブル』公開記念! 魅惑の鉄分たっぷり翻訳ミステリー 皆様、こんにちは。鉄子です。乗り鉄です。鉄道は、摩訶不思議な方向感覚を持つ(つまり Houkou-Onchi)わたしにとって一番確実な移動手段であるばかりか、読んだり寝たり眺めたりと有意義…
子どものころ、『ブラッディ・ドール』シリーズ(北方謙三)は私の教科書であった。学生時代、マイ・シェーカーを手に入れて、ひそかに振り方を練習した。長じて不良会社員になると、夜な夜な大阪キタの繁華街、堂山町のショットバーに出没し、年齢も性別も…
インフルエンザで熱をだして判断力がおちているのを見透かしたように、「無料奉仕どうですか〜」なメールをいただきました。理性病んでます。 依頼人は、わたしのような腐海の住人の食性が知りたいのだそうです。しかし百人いれば百通りの好みがありますから…
本格ミステリー小説の醍醐味はやはり〈密室〉にあるように、本格のSM小説にかかせないものは〈鞭〉だろう。――蘭光生『SM博物館』 変態本格とは単に変態が登場する本格ミステリではなく、本格ミステリの醍醐味であるトリックやどんでん返しに変態性が深く…
『ピーナッツバター殺人事件』(「老人たちの生活と推理」シリーズ) コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希訳 創元推理文庫ピーナッツバター殺人事件 (創元推理文庫)作者: コリン・ホルト・ソーヤー,中村有希出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2005/06/11メ…
ビロードの爪 (創元推理文庫)作者: E.S.ガードナー,小西宏出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1961/02/17メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (4件) を見るバタフライ〈上〉 (角川文庫)作者: キャサリンハーヴェイ,小沢瑞穂出版社/メーカー: …
去年の暮れ近くだったかな、杉江(松恋)さんに「翻訳ミステリ大賞シンジケートのサイトになんか書いてくださいね」って言われたのは。 それで、これはもう、ネットなんだから大丈夫、30年分の“溜まってるもの”書いちゃえ、「こんな(翻訳)出版界に誰がした…
サイト管理人から、「なんでもベスト5」というコーナーに書け、と凄まれ(若干誇張があります)、こうしておずおずと書きだしたわけだ。とはいえ、今回とり上げるのは「ベスト」ではない。だって、私はまだ、アジアの現代ミステリーって五冊しか読んだこと…
ミステリー界の巨匠ドナルド・E・ウェストレイクが二〇〇八年の大晦日の夜に休暇先のメキシコで亡くなってから、すでに一年経ってしまった。日本におけるウェストレイクの評価はまだまだ低いので、彼の多彩な才能を知っていただくために、木村二郎の選んだ…
ミステリ・マニアの中には、したり顔で「埋もれた傑作などないよ」という人がいる。なるほど、みるべき処のある傑作、秀作であれば、なんらかの形でマニアの口の端にのぼるはずだから、これは一面での真理ともいえるが、過去に出版されたミステリはあまりに…
(承前) 騎士の陥穽 (1951年)作者: W.フォークナー,大久保康雄出版社/メーカー: 雄鶏社発売日: 1951メディア: ? クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 二冊目は、ウィリアム・フォークナーのミステリ短篇集『騎士の陥穽』(1951年/雄鶏社/大久…
(承前)私のすべては一人の男 (1967年) (ハヤカワ・ノヴェルズ)作者: ナルスジャック,ボアロー,中村真一郎出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1967メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 三冊目は、フランスのコンビ作家、ボワロー、ナルスジャ…
(承前) 絶体絶命 (1958年)作者: フレデリック・ダール,中込純次出版社/メーカー: 三笠書房発売日: 1958メディア: ?この商品を含むブログ (1件) を見る 四冊目は、同じくフランスの作家フレデリック・ダールの長篇『絶体絶命』(1958年/三笠書房/中込純次…
秋も深まり、暖かい飲み物が恋しい季節になった。先日も新宿東口の老舗名曲喫茶店らんぶるに行き、熱いコーヒーを飲みながら、買ったばかりのジョージ・R・R・マーティンの中・短編集『洋梨型の男』(河出書房新社)を読むことにした。 古いスピーカーから…
(承前) さて、私が選ぶ「短篇小説ベスト5」は以下の通りである。もっとも、その時の気象状況とエッチな気分と腹の空き具合でベスト5の中身は変わるのだが、今はこんな気分♪1 ワーナー・ロウ「リンカーンのかかりつけの医者の息子の犬」 2 ウィリアム・…
この手の記事を書く場合、「クラシック音楽はミステリによく似合う」などと適当に論旨をでっち上げて始めるのが王道だろう。しかし嘘を書くには、私はあまりにもクラシック音楽とミステリの双方を愛し過ぎている。だから正直に書くことにしよう。 クラシック…
(承前) 今回は、そのような使用にとどまらず、クラシック音楽がもっと魅力的な扱いを受けている作品で、ミステリとしても水準以上の作品を5つ選んでみた。番号は振りますが、順位ではありません。1ジョン・ガードナー『マエストロ』(創元推理文庫) マ…
ジョン・フランクリン・バーディンの『悪魔に食われろ青尾蠅』は1948年の作品で、サイコ・サスペンスの先駆として名高い。クラシック音楽の観点から注目したいのは、この作品の主人公エレンがチェンバロ奏者であること、および主に弾かれるのがバッハの《ゴ…
のっけから私事にわたってしまうことをお許し願いたいのだが、僕の家内がフーダニットという名のミステリー劇専門の劇団活動をやっていることはご存じの方が多いと思う。今年2009年で活動10年目、板に乗せたお芝居も20近くの演目数を数えている。中…
(承前) 第1位「罠」(ロベール・トマ) 我が劇団でも処女公演と十周年記念公演と二回トライさせてもらったお芝居。 もうネタを知っている方も多いと思うが、このラストで陰画と陽画が見事に反転する鮮やかさは、やはり並みではない。役者さんたちに聞くと…
(承前)第4位 十二人の怒れる男(レジナルド・ローズ) これまた知らぬ人のない名作。十二人の陪審員たちが、ひとりの少年の殺人をめぐって白熱した論議を繰り返すドラマ。 シドニー・ルメットが演出したヘンリー・フォンダ主演の映画は何度見ても面白い。…
1ハンス=オットー・マイスナー『アラスカ戦線』(ハヤカワ文庫NV) アラスカ戦線 (ハヤカワ文庫 NV 22)作者: ハンス・オットー・マイスナー,松谷健二出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1972/08メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブロ…