飜訳ミステリー長屋かわら版・第54号
田口俊樹
翻訳者のみなさんへ
今回は事務局の不手際もあり、翻訳ミステリー大賞の候補作が七作になってしまい、ご負担をかけてしまうこと、まことに申しわけなく思っています。
でも、言うまでもありませんが、七作ともどれも読んで損のない秀作です。
締め切りまで残すところ二週間となりました。
第一次投票をなさっておられなくても、七作すべて読んでいただければ、ご投票いただけます。
おひとりでも多くの方々のご投票、お待ちしています。
(たぐちとしき:ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズ、バーニイ・ローデンバー・シリーズを手がける。趣味は競馬とパチンコ)
ドゥマゴ文学賞を受賞した
『余白の祭』を読んで教わ
ったのですが、
俳句の精神というのは、
おのれを抱え込まないことらしい。
昔の国語の授業で
「作者の言いたいことは何ですか」
みたいなことが試験に出ませんでしたか?
なので、わたしも俳句ってみずからを表現
する手段だと思っていたのだけれど、
どうやらちがうようなのです。
(無知をさらけ出して、お恥ずかしい限り。でも、
ほんとうに知らなかった)。
俳句というと浮世離れした年寄りの趣味(失礼!)
などと思っていましたが、とんでもないことです。
「俺の絵や映画、俺の表面だけを見てくれればいい。
それが俺だ。背後に何も隠されちゃいない」というアンディー・
ウォーホルの言葉を思い出してしまいました。
個人的な感情を表現しないポップアートの
精神に通じるのではないでしょうか。
さて、年一度のお祭り、第五回のコンベンションが
近づいてまいりました。もう、申し込みは
されましたか? まだの方、お早めにどうぞ。
みなさまとお会いできるのを
楽しみにしています。
では、当日、会場で。
(よこやまひろあき:AB型のふたご座。音楽を聴きながらのジョギングが日課。主な訳書:ペレケーノス『夜は終わらない』、ダニング『愛書家の死』ゾウハー『ベルリン・コンスピラシー』アントニィ『ベヴァリー・クラブ』ラフ『バッド・モンキーズ』など。ツイッターアカウント@maddisco)
加藤文太郎(1905-1936)といえば昭和11年に吹雪の槍ヶ岳・北鎌尾根に消えた伝説の岳人。その加藤を主人公にした小説といえば、新田次郎『孤高の人』が有名だけど、谷甲州『単独行者』は、加藤の当時としてはきわめて先鋭的な厳冬期単独登山のようすを詳細に描いていて、緊迫した山岳ドキュメンタリーか、はたまた山岳冒険小説を読んでいるような興奮がある。とりわけ上巻の最後の「厳冬期北アルプス横断」のくだりは、作品中のまさに白眉だと思う。こんな本が出ているのを今まで知らなかったとは。途中からは、加藤本人の山行記録や文章をまとめた『単独行』も青空文庫版をダウンロードし、小説の進行に合わせて併読。上下巻で二晩徹夜するという幸せな読書でした。
(すずきめぐみ:文芸翻訳者・馬券研究家。最近の主な訳書:バリー『機械男』 サリス『ドライヴ』など。 最近の主な馬券:なし orz。ツイッターアカウント@FukigenM)
行きつけのガソリンスタンドがまた閉店。“また”と書いたのは近所の行きつけスタンドの閉店が、これで4軒めか5軒めだから。ま、愛読雑誌は廃刊、愛用ソフトウエアは開発終了、足に馴染むスニーカーやゲラ用の赤ペンはいつしか廃番、好きなレトルトカレーは決まって棚から消えるから、そういう星の下に生まれているのかもしれません。とはいえ、長年の愛聴ミュージシャンと愛読作家は息長く活躍している人が多いので文句をいってはいけないか。矢野顕子さんの新譜『飛ばしていくよ』はすばらしいし、カッコいいトラックをこのアルバムに寄せていた AZUMA HOTOMIさんの『フォトン』には西島大介氏のイラストのかわいいステッカーのおまけもついていたし。
そんな話とは関係なく、第五回翻訳ミステリー大賞授賞式&コンベンション、ただいま参加申込み受付中。こちらの記事を参照のうえ、お早めにお申込みください。
もちろん、フィクション翻訳者諸兄姉は、翻訳ミステリー大賞二次投票もお忘れなく。
(しらいしろう:1959年の亥年生まれ。最新訳書はグリシャム『巨大訴訟』、キング『11/22/63』、アウル『聖なる洞窟の地』、グリシャム『自白』、ブラッティ『ディミター』など。近刊はジョー・ヒル『NOS4A2』(仮題)。ツイッターアカウント@R_SRIS)
ツイッターをやってる人の多くはきづいたでしょうが、3月末の翻訳ミステリー読者賞投票締め切りへ向けて、珍ツイートが飛び交うお祭り騒ぎになっていました。その模様はこちら。まとめてくれたのも、さかんに発言しているのも、全国の読書会の常連メンバーで、各地の読書会を発火点として翻訳ミステリー熱がひろがっていくのがライブで感じられたしだい。そして、最大の発火点である翻訳ミステリー大賞授賞式&コンベンションは今月19日開催。内容の詳細はここ。お申しこみはお早めにどうぞ。
翌週末の26日には、紀伊國屋グランフロント大阪店で2部構成のイベントをおこない、後半は「翻訳ミステリー大賞・読者賞を徹底的に語る!」と題したトークを関西翻訳ミステリー読書会有志や中谷友紀子さん(候補作のひとつ『ゴーン・ガール』訳者、関西在住)といっしょにやります。関西在住のかたで、授賞式&コンベンションに来られないかた、ぜひこちらに来てください。
そんなわけで、投票用の読書で忙しくて、〈地球防衛未亡人〉はどうにか最終日に駆けこんで観たけれど、そのせいでいまはもう一度〈日本以外全部沈没〉を拝みたい禁断症状が……
(えちぜんとしや:1961年生。おもな訳書に『解錠師』『夜の真義を』『Yの悲劇』『ダ・ヴィンチ・コード』など。趣味は映画館めぐり、ラーメン屋めぐり、マッサージ屋めぐり、スカートめくり。ツイッターアカウント@t_echizen。公式ブログ「翻訳百景」 )
仕事場で弁当を食べながら『ザ・メンタリスト』を1話見るのがこのところの日課。
基本的に1話でひとつの事件が解決する警察もの(カリフォルニア州サクラメントにある州捜査局の話)なのですが、初回で主人公の妻子を殺したレッド・ジョンという連続殺人犯を追うことが、いわば縦糸となって全体をつなげている。ちょっと個性を誇張された捜査官たちが愉しいし、横糸が弱いときには縦糸が意外な展開を見せたりして飽きさせない。
シーズン3では競馬を題材にしたエピソードもあって(あのトリックはディック・フランシスも使っていないのでは?)ますます脂が乗ってきた感じなのだが、そのシーズン3の最終回にもう近年ないほどびっくり! そうなるの。いやこれ、シーズン4見るなと言われても無理でしょ。ブルーノ・ヘラー恐るべしです。
(かがやまたくろう:ロバート・B・パーカー、デニス・ルヘイン、ジェイムズ・カルロス・ブレイク、ジョン・ル・カレなどを翻訳。運動は山歩きとテニス)
先日の世界フィギュアスケート選手権、盛り上がりましたね。前回ソチオリンピック関連(というか、冬期オリンピック種目関連)のミステリーをいくつか紹介しましたが、フィギュアスケートを忘れてました。ほかにもあると思いますが、わたしが最近読んだなかではこれ、レーナ・レヘトライネンの『氷の娘』です。フィンランド代表のペアの選手のひとりが殺され、女刑事がフィンランドフィギュアスケート界の人間関係の闇に切りこんでいくというストーリーで、トウループもサルコウもアクセルもデススパイラルもロシア人コーチも登場します。一九九七年発表なので、浅田真央ちゃんは出てきませんが。フィギュアスケートのシーズンが終わって淋しいなという人におすすめです。
話変わって、今年も翻訳ミステリー大賞授賞式&コンベンションが近づいてまいりました。コンベンションの小部屋企画でわたしが担当するコージー部屋では、「翻訳ミステリーお料理の会」とのコラボで、ミステリーに出てくるスイーツを含めた食べ物・お料理について、みなさまと語らいたいと思っています。
「お料理の会」にはわたしも立ち上げからスタッフとして参加させてもらっていて、第一回調理実習では、拙訳のジョアン・フルークのハンナ・シリーズに出てくるチョコチップクッキーを作成しました。今後の調理実習のメニューの参考にしたいので、「この作品のアレが気になる」「どんな味なの?」「どうやって作るの?」などなど、みなさまの気になっているミステリーのなかの食べ物や料理をぜひ教えてください。もちろんハンナ・シリーズのレシピからもいくつかクッキーを焼いていくつもりなので、試食しにきてくださいね。「お料理の会」のメンバーで、お菓子作りのプロとしか思えない森嶋マリさんの絶品スイーツも必食ですよ! そのまえに二次投票もお忘れなく!
(かみじょうひろみ:英米文学翻訳者。おもな訳書はジョアン・フルークの〈お菓子探偵ハンナ〉シリーズ、カレン・マキナニーの〈朝食のおいしいB&B〉シリーズなど。趣味は読書とお菓子作りと宝塚観劇)
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