【隔週連載】扶桑社Tのひとりごと

扶桑社発のひとりごと 20120120(執筆者・扶桑社T)

第22回(最終回) さて、このコーナーでは、翻訳出版の現場について、あれこれと紹介してきました。 書籍の利益構造にはじまり、原書の選択と取得、海外の出版事情、著作権などについて裏話をつづけてきましたが、翻訳編集者の具体的な仕事をご説明したとこ…

 扶桑社発のひとりごと 20111209(執筆者・扶桑社T)

第21回 前回は、編集者のチェックについて(言い訳まじりに)説明しました。校正作業というものは、じつはジャンルは問わずおなじような事情ではないかと思います。 そこで今回は、翻訳ならではの問題についてお話しします。 翻訳編集でよくぶつかるのが、原…

扶桑社発のひとりごと 20111111(執筆者・扶桑社T)

第20回 ごぶさたです。 「翻訳編集って、どんな仕事?」を解説しようという、なんだか自分の首を締めそうな話をはじめてしまったこのコラム、前回はゲラを作るところまで説明しましたので、そのつづきです。 原稿をゲラにしたら、いよいよ肝心の、訳文のチェ…

扶桑社発のひとりごと 20111014(執筆者・扶桑社T)

第19回 これまでは、翻訳に不可欠な著作権についてご説明をしてきましたが、編集の現場に話をもどしましょう。 「翻訳編集って、なにをするの?」という根本的な疑問についてです。 以前、翻訳する原書を選ぶ作業についてはお話ししました。これは翻訳編集の…

扶桑社発のひとりごと 20110826(執筆者・扶桑社T)

第18回 前回は、著作権におけるアメリカの特殊な立場を概観しました。今回は、アメリカと日本との関係をたどってみたいと思います。 アメリカがベルヌ条約に加入しなかったため、ヨーロッパをはじめとする国々はアメリカと個別に著作権の取り決めをしなけれ…

扶桑社発のひとりごと 20110812(執筆者・扶桑社T)

第17回 前回は、国際的な著作権の取り決めであるベルヌ条約と日本の関係についてお話ししましたが、最後にすこし触れたように、アメリカはこのベルヌ条約に1989年まで加入しませんでした。 今回は、そのアメリカの著作権状況について考えます。 19世紀…

扶桑社発のひとりごと 20110722(執筆者・扶桑社T)

第16回 前回は、古い作品の翻訳出版をする場合、翻訳権をハンドルできる人をどうやって探すかについてお話ししました。 いまさらですが、そもそも翻訳権とはなにかをおさらいすることにしましょう。 翻訳権とは、著作権の一部です。 著作権については、いま…

扶桑社発のひとりごと 20110701(執筆者・扶桑社T)

第15回 これまでは、海外で出版される新作について、どのように翻訳出版を検討するかをお話ししてきましたが、数年前の作品や、場合によっては数十年前の作品を手がけることもあります。 もちろん、ふつうは新しい作品のほうが有利です。時事性の強いノンフ…

扶桑社発のひとりごと 20110617(執筆者・扶桑社T)

第14回 前回は、ブックフェアで行なわれる著作権ビジネスについてご説明しました。 翻訳出版をしている出版社には、さまざまな形で新作が届くわけですが、では、編集部ではそのマテリアルをどのように検討しているのでしょうか。 読者のみなさんのなかには、…

扶桑社発のひとりごと 20110520(執筆者・扶桑社T)

第13回 前回は、日本の出版社がどのようにして新作の原稿を検討するかのプロセスについてお話ししました。 では、そもそもこういった将来出版される作品の企画を、日本の出版社はどのようにして知るのでしょう。 権利者の側がセールスをする重要な場としてあ…

扶桑社発のひとりごと 20110506(執筆者・扶桑社T)

第12回 前回は、海外の出版社が書店に対してどのように新刊のプロモーションをするかをお話ししました。 翻訳出版のセールスも、おなじ要領で行なわれます。むしろ、じっさいに現物を仕入れる自国の書店への働きかけよりも、早いうちから進みます。翻訳権売…

扶桑社発のひとりごと 20110415(執筆者・扶桑社T)

第11回 出版にまつわるあれこれをお話ししてきましたが、いよいよ、日本の出版社がどうやって翻訳する作品の権利を取得するのか、という翻訳出版のキモの部分に入ってきました。 まずは、どのように海外の本が日本に紹介されるのか、そのプロセスから見てい…

扶桑社発のひとりごと 20110401(執筆者・扶桑社T)

第10回 前回まで、海外での出版事情を見てきました。 ご存じのとおり、欧米は契約社会であり、もちろん出版界も例外ではありません。したがって、著者=エージェント=出版社が契約書を結び、しっかりと役割を決めているため、作業がスムーズに進んでいます。…

扶桑社発のひとりごと 20110318(執筆者・扶桑社T)

第9回 震災お見舞い申しあげます。 余震のつづく、東京都港区海岸1丁目のビル7階にある扶桑社からお送りします。 前回、エージェント制度のなかでどのように新人がデビューするかを見てきました。 いまとなっては著名な作家も、はじめはエージェントから…

扶桑社発のひとりごと 20110304(執筆者・扶桑社T)

第8回 さて、出版における海外と日本のちがいを見てきましたが、それ以外にも大きなちがいといえば、エージェント制度でしょうか。 文芸エージェントは、最近ではボイルドエッグズとそれにつづくアップルシード・エージェンシーの活躍などにより、日本でも…

扶桑社発のひとりごと 20110218(執筆者・扶桑社T)

第7回 海外と日本の出版システムの大きなちがいとして、アドバンスと実売印税があるとご説明してきました。そしてその根本には、日本の再販制という、これまた大きな制度上のちがいがあったわけです。 ところで、この出版および流通システムの差が、本の売…

扶桑社発のひとりごと 20110128(執筆者・扶桑社T)

第6回 前回、海外と日本の出版システムの大きなちがいについてお話ししました。それは、アドバンス(印税前払金)を払うことと、実売で印税を計算することでした。そして、このような異なるシステムの狭間に立つ翻訳出版には、いろいろな困難がともなうので…

扶桑社発のひとりごと 20110114(執筆者・T)

第5回 この連載では、いろいろと出版の裏側をお話ししています。 なんだか不景気な内容ですみません。でも、こういった点を知っていただければ、いわゆる「出版不況」についても理解を深めていただけるのではないかと思うのです。 さて、前回までは、出版社…

扶桑社発のひとりごと 20101210(執筆者・T)

第3回 さて、前回まで出版というビジネスのアウトラインを見てきました。日本では、毎日200点あまりの新刊が出ている計算になる、というんですから、たいへんなことですよね。 そうなると、こんな疑問がわきますよね―― 出版ってもうかるの? 本って、ど…

扶桑社発のひとりごと 20101119(執筆者・T)

第2回 「ひとりごと」と題しながら、なんだか妙な話をはじめてしまい、前回は、出版ビジネスの大枠をご説明し、近所の書店にほしい本が置かれていない理由にたどり着きました。 それでも、世間に本はあふれていますよね。いったい、どれぐらいの種類の本が…

扶桑社発のひとりごと 20101105 (執筆者・T)

第1回 このところの翻訳ミステリーの充実ぶりは、すごいですねえ。各社、強力なラインナップで、すばらしいかぎりです(われわれ扶桑社も、残念ながら数は減っていますが、鋭意努力中)。 ところが、それにもかかわらず、翻訳ミステリーは元気がないのだと…