【毎週更新】月替わり翻訳者エッセイ

ワクワクの言葉を探して(執筆者・青木悦子)

その2 詩歌はことばの宝箱 こんにちは。前回はわたしがワクワクする言葉を探して生きさまようになった(笑)きっかけについて書きましたが、今回は、そうした言葉がそれこそ綺羅星のごとく見つかる場所のことをお話ししようと思います。ずばり、それは「詩…

ワクワクの言葉を探して(執筆者・青木悦子)

その1 いろいろな出会い こんにちは。 今月のこの欄を担当することになりました青木悦子です。これから四回、よろしくお付き合いください。 さて、唐突ですが、これを読んでいる方で、新聞や本やテレビで見聞きした、気に入ったり何か引っかかったりする言…

Kindle版ハワイ本訳書リリース顛末記(執筆者・大野晶子)

3 これからは提案型だ! 今回は紙で刊行された作品を電子化するのではなく、はなから電子だったので、通常の仕事とは異なることをいくつか体験しました。 ご存じのように電子書籍リーダーは文字の大きさを変えることができ、読者の設定によって1ページにど…

Kindle版ハワイ本訳書リリース顛末記(執筆者・大野晶子)

2 目指すはインディーズ系出版社 前回のいきさつはこちら。 電子書籍リーダーKindleに刺激され、電子書籍専門の出版事業に乗りだそうと決意したU氏。のちにご本人から聞いたところによれば、想像をはるかに上まわるKindleの出来のよさに、すっかり感心して…

Kindle版ハワイ本訳書リリース顛末記(執筆者・大野晶子)

1 ある酒宴にて はじめまして。今月この欄を担当させていただく大野です。過去にミステリを訳したことがないわけではないのですが、ほとんどがノンフィクションかロマンスなので、残念ながらミステリがらみのいいネタは持ち合わせておりません。そこで、フ…

The long and winding road(執筆者・尾之上浩司)

(3)これから 前回は、ついムキになってしまって、だらだらと書いてしまったので、反省。 言いたかったのは、世の中、予想もできないようなトラブルがあっちこっちに転がっているので、それにつまずいて転ぶことがある。でも、一度転べば、二度と同じよう…

The long and winding road(執筆者・尾之上浩司)

(2)時限爆弾処理員の日常 前回、「ともかく努力し勉強すること」に尽きると思う、と書いた。といっても、翻訳の基本的なノウハウについては識者のみなさんが、いろいろと語ってこられたので、ぼくのような生半可な人間が口をはさむ余地は残っていない。 …

The long and winding road(執筆者・尾之上浩司)

(1)紆余曲折の向こう側 突貫仕事に追われていた初秋、翻訳ミステリー大賞シンジケートから不意のメールがとどいた。「翻訳家エッセイの執筆者が底をつきかけているので、ご協力いただけないか」という打診だった。 これといった突出した訳業がそんなにあ…

わたしが影響を受けた本(執筆者・白須清美)

第3回 早いもので2012年もあと二週間。このエッセイも最終回となりました。怖い本、乙女な本ときて、最後に紹介するのは仕事部屋のすぐ手が届くところに置いてあり、何かの拍子にふと手に取ってしまう、まさに私の“座右の書”です。 ユリイカ臨時増刊『総特…

わたしが影響を受けた本(執筆者・白須清美)

第2回 先日、『杉江松恋の、読んでから来い!』でも取り上げられた『極北』の作家、マーセル・セロー氏のトークショー(於・中央公論新社)に行ってきました。トークの内容も素晴らしかったですが、質疑応答ではこの本を読んだ人たちがそれぞれに考えたこと…

わたしが影響を受けた本(執筆者・白須清美)

第1回 皆様こんにちは。今月の翻訳者エッセイを担当させていただく白須清美と申します。師走の慌ただしい時期ですが、どうぞお付き合いのほどよろしくお願いします。 依頼のメールによりますと「翻訳や読書に関係したことであれば、内容、分量はまったく自由…

シャーロックレイジー(執筆者・北原尚彦)

第4回 『ドイル傑作集』完結 いよいよ今回で、わたしの出番も最終回となりました。一か月というのはあっという間ですね。次の週末は、もう師走ですよ。 一回目こそ翻訳裏話でしたが、回を追うごとにどんどん翻訳とはテーマが離れていってしまいました。です…

シャーロックレイジー(執筆者・北原尚彦)

第3回 グリンペンの底無し沼のごとき古書収集 前回は洋書の話をしましたので、今回は日本の古書の話を致しましょうか。 最初に古本屋へ行くようになったのは中学生の時分で、「ミステリマガジン」のバックナンバーを買うためだったと記憶しています。エラリ…

シャーロックレイジー(執筆者・北原尚彦)

第2回 洋書を買う愉しみ 前回、『ヴィクトリアン・アンデッド シャーロック・ホームズvs.ゾンビ』の話をしました。ではそもそも、どのようにしてその原書を見つけたかと……という訳で、今回は洋書の探し方、入手方法の話をしましょう。 わたしの若い頃は、ネ…

シャーロックレイジー(執筆者・北原尚彦)

第1回 ホームズvs.ゾンビ ご指名に預かりました北原尚彦と申します。4週間、よろしくお願い致します。自分はたぶん、これまでにこのコーナーに登場した翻訳者の中でも、最も異色な部類だろう、と思います。翻訳だけでなく、創作をしたり、古本エッセイを書…

調べものをめぐる私的あれこれ(執筆者・匝瑳玲子)

わたしのエッセイも最終回。ここまで書いてきて、調べものでずいぶんといい思いをさせてもらってきたことをあらためて実感している。翻訳はひとりでする作業なので、調べものもたいてい、ひとりでする。編集者の協力を別にすれば、基本的に単独で完結しやす…

調べものをめぐる私的あれこれ(執筆者・匝瑳玲子)

翻訳者はみな同じだと思うが、自分が訳した本はかわいい。出版までの数か月のあいだ一言一句じっくりつき合い、校正も含めて何度も読みとおすわけだから、濃密な時間をともに過ごした者としてそれは自然な感情だろう。仮に初読の際には距離感があったとして…

調べものをめぐる私的あれこれ(執筆者・匝瑳玲子)

初めて翻訳の仕事をいただいたのは、十五年前のことだった。緊急医療にたずさわる医師たちが文章を寄せたエッセイ集の共訳で、二十一篇のうち、わたしは四篇を担当することになった。一般読者向けの本なので、ものすごく専門的というわけではなかったが、ち…

調べものをめぐる私的あれこれ(執筆者・匝瑳玲子)

翻訳をやっていて何が愉しいって、調べものだ。 ……と書いたら、ちょっとばかり語弊があるだろうか。 翻訳者は外国語で書かれたものを日本語に訳すのが仕事だけれど、横のものを縦にするだけで任務完了となることはなかなかない。「調べもの」といって、原書…

今週のお題(執筆者・野口百合子)

3 もし もし、である。 もし、あの宝くじが当たっていたら……もし、この人と結婚していなかったら……ではなく、もし、織田信長が本能寺の変で死ななかったら、もし、南北戦争で南軍が勝っていたら、という、歴史改変小説の話だ。 もし、第二次大戦でナチ・ド…

今週のお題(執筆者・野口百合子)

2 尼 尼、である。密林ともいう。 翻訳者がリーディングを頼まれたとき、作品の評価にはもちろん自分のすぐれた洞察力と豊富な読書経験をもってあたるわけだが(ゴホゴホ)、すでに本国で発売されている作品の場合、どうしても、ちょっとだけ、ちょっとだけ…

今週のお題(執筆者・野口百合子)

1 萌え 萌え、である。 いまでこそ、「シャーロック」のカンバーバッチくんに「萌え〜」などと便利に使われているが、かつては架空のキャラクターに対するこの感情をうまくあらわす言葉がなかったように思う。 自分がいまこういう仕事をしているのは、はる…

危機的似非(エッセ・クリティック)(執筆者・平岡敦)

(3)題名のあるエッセー わたしが担当する翻訳者エッセイも、今回で終わりです。前回、前前回とも切羽詰った話でお茶を濁してしまったので(まあ、本当に切羽詰まっていたのですが)、最後ぐらいは本来のエッセ・クリティック、つまり批評的なエッセーらし…

危機的似非(エッセ・クリティック)(執筆者・平岡敦)

(2) ルパン危機一髪 というわけで前回は、似非翻訳家に日頃の怠惰のバチが当たり、深夜に恐怖体験をする羽目になった話を書いた。 あれから二週間、ようやく危機的状況のひとつを脱したところです。あっ、そうそう、一週あいだが空いたのは、何もどんづま…

危機的似非(エッセ・クリティック)(執筆者・平岡敦)

(1)深夜の怪異 表題については……ただの冗談です。読み流してください。 でもよく考えると、案外、今のわたしを的確にあらわしているかもしれないぞ。というのも周知のとおり、わたしは毎回その場しのぎの仕事をしている似非翻訳家だし、そのせいで目下、…

あしたはあしたの風が吹く(執筆者・高山真由美)

第4回 アッティカ・ロックをめぐるあれこれ 夜明けで終わる物語が好きです。 空の色が徐々に変わり、夜が朝に取って代わられるとき、つかのま幻が見えたり(あるいは幻が消えたり)、主人公の心境に変化があったりする。 つい最近ではあれがそうでした(ネ…

あしたはあしたの風が吹く(執筆者・高山真由美)

第3回 ジェラルディン・ブルックスをめぐるあれこれ 読むぶんにはとくに問題なくさらりと読めるのに、いざ訳そうとするととても日本語にしづらいテキスト、というのがあります(あくまで当社比です)。ジョー・R・ランズデールの文章がそうでした(短篇を…

あしたはあしたの風が吹く(執筆者・高山真由美)

第2回 『リヴァトン館』をめぐるあれこれ 前回からの流れとしてたぶんおわかりでしたでしょうけれど、今回はきのうの第2回千葉読書会のレポートをお送りいたします。 会場は和室でした。洋館の話なのに和室。 そして今回はお客さまがありました。千葉読書…

あしたはあしたの風が吹く(執筆者・高山真由美)

第1回 まずはご挨拶かたがた 翻訳者エッセイ、内容は自由、というからにはやはり仕事のことを書くべきでしょうか。 たまに異業種の宴席などに顔を出すと、当然「仕事は何を?」のような話になり、翻訳をしていると答えると「え、翻訳家? 珍しいよね」とか…

本屋めぐりはママチャリで(執筆者・青木純子)

第4回 リーディングの愉悦 翻訳の一連の工程のなかでいちばん好きな作業といえば―― 断然リーディング(下読み)! あるときは「エージェントからおススメ本が届いてますけど、読んでみます?」、またあるときは「きっと面白いはず!」とか「なにやら面白そ…