【原書レビュー】え、こんな作品が未訳なの!?【毎月更新】

第二十六回はロリ・アームストロングの巻(執筆者・東野さやか)

海外、とくにアメリカのミステリには元軍人という主人公がよく登場します。ぱっと思いつくだけでも、マイクル・コナリーが生み出したハリー・ボッシュ、ジェレマイア・ヒーリイのジョン・カディ、ジェイムズ・リー・バークのデイヴ・ロビショー、それに忘れ…

第二十五回はアン・ペリーの巻(その4)(執筆者・遠藤裕子)

英国世紀末が好きで、その手の本を集めていると、本棚が暗めなタイトルで埋まり始めます。『ヴィクトリア時代 ロンドン路地裏の生活誌』『ヴィクトリア朝の下層社会』『恐怖の都・ロンドン』『罪と監獄のロンドン』……。こうした本では貧しい人々が主役を演じ…

第二十四回はピーター・テンプルの巻(執筆者・高橋知子)

ここ数年、ミステリー界では北欧が元気ですが、じゃあ南半球はどうなんだろうと視線をぐんと南に飛ばすことがたまにあります。で、最近注目しているのが南アフリカのロジャー・スミス(『血のケープタウン』『はいつくばって慈悲を乞え』/いずれも早川書房…

第二十三回はノア・ボイドの巻(執筆者・寳村信二)

今回紹介するシリーズの著者であるノア・ボイドは現役のFBI捜査官とのことで、はみ出し者の元捜査官、スティーヴ・ヴェイルを主人公とする作品を二冊上梓しています。 デビュー作 The Bricklayer (2010)では、殺人を繰り返しながらFBIを恐喝する〈ルバーコ・…

第二十二回はシンシア・ロビンソンの巻(執筆者・片山奈緒美)

「公園デビューって勇気がいるのよね。ほら、新人ははいりにくいでしょ」 うんうん、たしかに、たしかに。ただし、そうわたしに言った友人が連れているのは幼児ではなく子犬。念願の子犬を飼いはじめて、さてお散歩に近所の公園まで……と思って出かけてみても…

【読書探偵応援団】第二十一回はハーラン・コーベンのYAの巻(執筆者:三角和代)

夏休みが終わって、あーあと思っているキッズにほっとしている親御さんと悲喜こもごもの9月。そんな今月、4人の子持ちハーラン・コーベンが満を持して初めてのYAを発表しました! シンジケートの「秋の読書探偵」企画を応援するみたいなタイミングじゃない?…

第二十回はアン・ペリーの巻(その3)(執筆者・遠藤裕子)

Sins of the Wolf (William Monk Novels)作者: Anne Perry出版社/メーカー: Ballantine Books発売日: 1995/08/30メディア: マスマーケットこの商品を含むブログ (1件) を見る 【おもな登場人物】 ウィリアム・モンク:私立探偵。元警察官。捜査中の事故で記…

第十九回はケイト・チャールズの巻(執筆者・東野さやか)

ふとしたはずみで、「そういえばあの作家はいまどうしているんだろう?」と気になることがあります。もちろん、自分がこれまで手がけた作家や大好きな作家は定期的にウェブサイトに目を通し、ニュースレターを受信するなどチェックを怠りませんが、これまで…

第十八回はR・J・エロリーの巻(執筆者・高橋知子)

今回ご紹介するのは、二〇〇九年に『静かなる天使の叫び』で日本に初めて紹介されたR・J・エロリーの Saints of New York です。タイトルからおわかりのように、舞台はニューヨーク。著者のエロリーはバーミンガム生まれのイギリス人ですが、二〇〇三年に…

第十七回は〈ギーザー・ノワール〉の巻(執筆者・寳村信二)

Damn Near Dead: An Anthology of Geezer Noir作者: Duane Swierczynski出版社/メーカー: Busted Flush Press発売日: 2006/07/07メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見るDamn Near Dead 2: Live Noir or Die Trying作者: Bill Crider,Cha…

第十六回はウェンディ・リン・ワトスンの巻(執筆者・片山奈緒美)

I Scream, You Scream: A Mystery A La Mode (Mystery A La Mode)作者: Wendy Lyn Watson出版社/メーカー: Berkley発売日: 2009/10/06メディア: マスマーケット クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る I Scream, You Scream 昔どこかで聞いた歌の…

第十五回はブルース・アレグザンダーの巻(執筆者・三角和代)

書棚をいじっていたら最下層からシャーロック・ホームズのゲームブックが出てきました。うわあ。いまならばDS等でスマートに遊ぶだろうところを、ページをいったりきたりして付録の地図を参考に謎を解決したものです。今回ご紹介するのは、ホームズの地図…

第十四回はアーリーン・ファウラーの巻(執筆者・東野さやか)

先日、遅まきながら、ジル・チャーチルの『風の向くまま』を読みました。ニューヨークの安アパートで赤貧生活をしている兄妹に、ある日突然、大伯父が残した巨額の遺産相続の話が舞いこむのだけれど、相続対象である屋敷に10年間住むことという条件がついて…

第十三回はティム・ウィロックスの巻(執筆者・高橋知子)

十数年まえ、ティム・ウィロックスの『グリーンリバー・ライジング』や『ブラッド・キング』に魅せられた方がきっといらっしゃるでしょう。心臓に重い拳を食らわすかのような冒頭、灼熱のクライム街道を突っ走るストーリー、そこに繰りひろげられる人間模様…

第十二回はティム・マリーニーの巻(執筆者・寳村信二)

日本で紹介されているティム・マリーニー(Tim Maleeny)の作品は、今のところハーラン・コーベン編集の短編集『殺しが二人を別つまで』(早川書房)に収められている「死が二人を別つまで」一作ですが、マリーニーはこの他にサンフランシスコを舞台にした私…

第十一回はニナ・ライトの巻(執筆者・片山奈緒美)

今回ご紹介する原書は、わたくし犬好き翻訳者のカタヤマがジャケ買いならぬ表紙買いした作品。青空の下、長毛の大型犬が野原をのんびり散歩中。ああ、いいなぁ。大型犬の鷹揚な感じが出ているなぁ。このいかにもお嬢さま犬っぽい大型犬が活躍するミステリな…

第十回はアン・ペリーの巻(その2)(執筆者・遠藤裕子)

先日、アリアナ・フランクリンの『エルサレムから来た悪魔』(舞台が12世紀のイギリスで、主人公がシチリアから来た女医という歴史ミステリ)を読み返しながら、「シチリアではこの時代にもう女のお医者さんがいたんだよね、イギリスとは大違いだなぁ」とし…

第九回はドン・ブラインの巻(執筆者:三角和代)

ドン・ブライン、誰それ? とつぶやいたそこのきみ、早口にて10回連続で唱えてみましょう。原書レビュー枠は、これおもしろいんだけどなぁという作品を真剣に真摯に力説モードで紹介していますが、連日の猛暑につき今回は夏休みモードをチョイス。日頃がんば…

第八回はスティーヴン・ウォマックの巻(執筆者・東野さやか/三角和代)

ハリー・デントンという私立探偵を覚えておいでだろうか。ほら、テネシー州の州都にして、カントリー・ミュージックのメッカであるナッシュヴィルを舞台に活躍するあの人ですよ。ナッシュヴィル在住の探偵? そんなの知らないなあ、って? チッ、チッ、チッ…

第七回はデイヴィッド・エリスの巻(執筆者・白石朗)

ミステリの一サブジャンルに《倒叙もの》があります。おおざっぱにいえば冒頭で犯人が犯行におよび、その犯行を探偵がどうやって解明していくのかに主軸を置いた小説。フランシス・アイルズの『殺意』とかF・W・クロフツの『クロイドン発12時30分』といっ…

第六回はJ・D・ローズの巻(執筆者・高橋知子)

バウンティハンターを主人公にすえたミステリーといえば、ジャネット・イヴァノヴィッチの〈ステファニー・プラム〉シリーズを思い浮かべる人が多いだろうか。軽快なテンポで展開されるストーリーに、ステファニーをはじめ、個性豊かな面々が登場する実に愉…

第五回はジェームズ・ロリンズの巻(執筆者・寳村信二)

ジェームズ・ロリンズの作品は『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(ハヤカワ文庫NV、こちらの作者表記はジェイムズ・ローリンズ)、そして特殊部隊シグマフォースが活躍する『マギの聖骨』と『ナチの亡霊』(いずれも竹書房)が紹介されてい…

第四回はスペンサー・クインの巻(執筆者・片山奈緒美)

「犬界にサム・スペード現る?」Dog on It: A Chet and Bernie Mystery (The Chet and Bernie Mystery Series)作者: Spencer Quinn出版社/メーカー: Atria Books発売日: 2009/09/29メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (2件) を見る あなたは犬派…

第三回はアン・ペリーの巻(執筆者・遠藤裕子)

突然ですが、わたしは英国ヴィクトリア朝が大好き。若いころは夭折の天才挿絵画家オーブリー・ビアズリーに血道をあげ、彼が好んだ世紀末の美術や文学にどっぷりと浸り、果てはヴィクトリア&アルバート美術館に押しかけて、原画を見せていただいたりしたも…

第二回はハーラン・コーベンの巻(執筆者・三角和代)

80年代最★の曲だと思うものは次のどれか(アラフォー以下の人は検索してみてね)。 1.スターシップ「シスコはロックシティ」 2.Mr.ミスター「ブロークン・ウイングス」 3.カジャグーグー「君はToo Shy」 今回ご紹介するのは、へヴィな事件に巻きこまれ…

第一回はロバート・クレイスの巻(執筆者・東野さやか)

翻訳業界に足を突っこんでからというもの、原書を読むのは仕事の一部と化し、楽しむためだけに読む機会がめっきり減った。かつてはピンときた原書を片っ端から注文し、憑かれたように読んだものだけれど、それもいまは昔。とはいえ、新刊情報を聞けばいまで…