【原書レビュー】え、こんな作品が未訳なの!?【毎月更新】

第五十六回はサミュエル・W・ゲイリーの巻(執筆者・高橋知子)

今年の夏も暑い。 子どものころ、何度も「暑〜い」と言っていると、親に「暑い、暑いと言っても涼しくなりません。よけいに暑い」とよく言われた。まあ、確かにそうだけど。でも、暑い。毎朝目がさめるたびに、「ああ、今日も暑い」と思ってしまう。 ならば…

第五十五回はトム・エイブラハムスの巻(執筆者・寶村信二)

今回取り上げるトム・エイブラハムスはヒューストンのテレビ局で記者やニュース番組のアンカーとして活躍、昨年デビューした新進作家です。 そのデビュー作 Sedition (2013年) は、新しい副大統領の宣誓式当日に米国大統領、デクスター・フォアマンが執務室…

第五十四回はブラッド・スミスの巻(執筆者・片山奈緒美)

はじめての単行本の訳書が出てまもなくのことだ。たぶん2002年の年末だったと思う。当時、札幌に住んでいたわたしは、市内の翻訳学校の忘年会におよばれした。まだ新しいその学校で翻訳を学ぶ人たちに、プロになった経験談を話してあげてほしいと言われて出…

第五十三回はローラ・リップマンの巻(執筆者・三角和代)

梅雨に入ってからだと品薄になってしまうらしいので、早めにレインブーツを新調しました! リバティ柄で数色が使われているからどんな服でも合せられる、貧乏性なんでそう考えたんですが(あはっ)、わたしはこの色でいくとこだわって選ぶ人もいますよね♪ だ…

第五十二回はテリー・シェイムズの巻(執筆者・東野さやか)

先日、本がつまった段ボール箱を片っ端からあけて探し物をしていたら、ジェイムズ・スウェインの『カジノを罠にかけろ』と『ファニーマネー』が出てきました。わあ、なつかしい! これ、大好きだったなあ。62歳の元刑事が、ラスヴェガスのカジノでイカサマハ…

第五十一回はアン・ペリーの巻(その7)(執筆者・遠藤裕子)

A Breach of Promise: A William Monk Novel作者: Anne Perry出版社/メーカー: Ballantine Books発売日: 2011/10/04メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る 【おもな登場人物】 ウィリアム・モンク:私立探偵。元警察官。捜査中の事故で記憶を…

第五十回はマイク・ローソンの巻(執筆者・高橋知子)

今回はマイク・ローソンによるポリティカル・サスペンス、〈ジョー・デマルコ・シリーズ〉の一作目、The Inside Ringをご紹介します。 The Inside Ring (Joe Demarco Book 1) (English Edition)作者: Mike Lawson出版社/メーカー: Grove Press発売日: 2018/0…

第四十九回はピーター・スピーゲルマンの巻(執筆者・寶村信二)

今回取り上げる作品はピーター・スピーゲルマンの Thick as Thieves(2011)です。 Thick as Thieves (Pocket Black Lizard)作者: Peter Spiegelman出版社/メーカー: Vintage Crime/Black Lizard発売日: 2012/07/10メディア: ペーパーバックこの商品を含むブ…

第四十八回はA・S・A・ハリソンの巻(執筆者・片山奈緒美)

The Silent Wife: A Novel作者: A. S. A. Harrison出版社/メーカー: Penguin Books発売日: 2013/06/25メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る シカゴの高級コンドミニアムに住む40代のジョディとトッド。いっしょに暮らして20年が経つふ…

第四十七回はウィンストン・グレアムの巻(執筆者・三角和代)

前回担当月に、英国推理作家協会(CWA)賞の第1回はジョン・クリーシー賞(新人賞)もゴールド・ダガー(最優秀長編賞、当時の名称はクロスド・レッド・ヘリング賞)も未訳という話をしましたので、今回は最優秀長編賞、いってみましょう。『マーニイ』(…

第四十六回はジョージ・ペレケーノスの巻(執筆者・東野さやか)

翻訳小説でよくお目にかかる表現に「悪いときに悪いところに居合わせた」というのがあるけれど、ちょっとした間の悪さで事件の加害者にもなれば被害者にもなるものです。行き過ぎた悪ふざけや冗談でも、タイミングしだいではとんでもない悲劇をまねくことだ…

第四十五回はトッド・ロビンスンの巻(執筆者・高橋知子)

名コンビ、迷コンビ、珍コンビ。翻訳ミステリーには魅力のあるコンビが登場する作品が多々ありますが、今回ご紹介するのは“名”とも“迷”とも“珍”とも言えるコンビが突っ走ってくれるトッド・ロビンスンの The Hard Bounce です。 The Hard Bounce作者: Todd R…

第四十四回はジェイミー・フレヴェレッティの巻(執筆者・寶村信二)

今回取り上げる作家は、化学者のエマ・カルドリッジを主人公としたシリーズを執筆しているジェイミー・フレヴェレッティです。 Running from the Devil作者: Jamie Freveletti出版社/メーカー: Harper発売日: 2010/05/25メディア: マスマーケットこの商品を…

第四十三回はリタ・メイ・ブラウンの巻(執筆者・片山奈緒美)

今回ご紹介するのは、リタ・メイ・ブラウンの犬ミステリー・シリーズの1作目"A Nose For Justice"です。 A Nose for Justice: A Novel (Mags Rogers)作者: Rita Mae Brown出版社/メーカー: Ballantine Books発売日: 2011/10/04メディア: マスマーケットこの…

第四十二回はキリル・ボンフィリオリの巻(執筆者・三角和代)

ふと気づいたのです。英国推理作家協会(CWA)賞の第1回受賞作はゴールド・ダガー(1955年、当時の名称はクロスド・レッド・ヘリング賞)もジョン・クリーシー(1973年新設)も未訳なんですね。これは取りあげなければ。今回は、kindle版があって先に手に…

第四十一回はベン・レーダーの巻(執筆者・東野さやか)

アメリカ国内には現在、正式な手続きをへずに入国した不法移民が1100万人いると言われ、いまもなお増えつづけています。そのおよそ7割がヒスパニックと呼ばれるメキシコおよび中南米出身者で、大半はメキシコから国境を越えてやってきます。砂漠や山岳地帯…

第四十回はアン・ペリーの巻(その6)(執筆者・遠藤裕子)

アン・ペリーのモンク・シリーズ、今回はシリーズ8作目の《The Silent Cry》(1997)です。 The Silent Cry: A William Monk Novel作者: Anne Perry出版社/メーカー: Ballantine Books発売日: 2010/09/28メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る…

第三十九回はジーン・ケリガンの巻(執筆者・高橋知子)

今回ご紹介するのはアイルランド発のクライム・ノヴェル、ジーン・ケリガンの"The Rage"です。 The Rage作者: Gene Kerrigan出版社/メーカー: Vintage発売日: 2012/05/03メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る 舞台となるのはダブリン。暴行罪…

第三十八回はオーウェン・ラウカネンとクリス・パヴォーンの巻(執筆者・寶村信二)

今回は2012年にデビューした二人の新人、オーウェン・ラウカネン(The Professionals)とクリス・パヴォーン(The Expats)を紹介します。 The Professionals (A Stevens and Windermere Novel)作者: Owen Laukkanen出版社/メーカー: Putnam Adult発売日: 20…

第三十七回はテス・ジェリッツェンの巻(執筆者・辻早苗)

実はずっとずっとテス・ジェリッツェンのファンをやっています。ジェリッツェンのサスペンスは日本でも紹介されているのですが、残念ながらノン・シリーズものは二作、〈リゾーリ&アイルズ〉のシリーズは三作で邦訳が止まってしまっています。 そんな状態な…

第三十六回はシンシア・バクスターの巻(執筆者:片山奈緒美)

獣医は探偵に向いている? 犬や猫の飼い主なら、ワクチン注射やちょっとした体調不良のたびにペットを動物病院に連れていくたいへんさを一度ならず感じているはず。狭い待合室で吠え続ける犬やバリケンのなかで怯え続ける猫。そんな場所で長く待たねばならず…

第三十五回はチャーリー・ヒューストンの巻(執筆者:三角和代)

あのシリーズはその後どうなってるの? というモヤモヤにお応えするのが目的のひとつでもある原書レビュー枠、今回は9月に刊行されたハーラン・コーベンのスピンオフYAの続編をご紹介しようと思っていたのですが、おもしろいんだけれど1作目を読んでいない…

第三十四回はビル・フィッチューの巻(執筆者・東野さやか)

突然ですが、虫が苦手です。 庭仕事をしてるときに耳もとでブーンという羽音がしたりするともうだめ。たとえそれがミツバチでも、家に飛びこんで、しばらくたってからそうっと様子をうかがい、いなくなっていたら庭仕事を再開し、また羽音が聞こえたら家に飛…

第三十三回はアン・ペリーの巻(その5)(執筆者・遠藤裕子)

アン・ペリーのモンク・シリーズ、今回は7作目の《Weighed in the Balance》(1996)です。タイトルは、旧約聖書のダニエル書第5章にある一節" weighed in the balance and found wanting(測ってみたら足りないことがわかった)"から来ているものと思われます…

第三十二回はスー・アン・ジャファリアンの巻(執筆者・辻早苗)

レギュラー陣のみなさんに混じっておじゃま虫します。よろしゅうに。 夏だからというわけでもありませんが、幽霊もののコージーを紹介したいと思います。幽霊の登場するコージーって別に珍しくもなんともないんですけど、Sue Ann Jaffarian の〈A Ghost of G…

第三十一回はパトリシア・ハイスミスの巻(執筆者・柿沼瑛子)

追記(2016-01-25) 以下の記事は 2012年7月6日に掲載したものです。記事で触れられている『キャロル』は、その後2015年12月に本記事の筆者、柿沼瑛子さんの翻訳で河出文庫より邦訳が刊行されました。 同翻訳書の刊行と前後して、2015年12月8日には柿沼瑛…

第三十回はアラン・グリンの巻(執筆者・高橋知子)

今回取りあげるのは、2004年にデビュー作『ブレイン・ドラッグ』(原題:The Dark Fields)が日本で紹介されたアラン・グリンの四作め Bloodland(2012, Picador)です。 『ブレイン・ドラッグ』は、脳を活性化させるデザイナー・ドラッグに手を出したフリー…

第二十九回はマシュー・ダンとマーク・グリーニーの巻(執筆者・寶村信二)

今回紹介する二人の作家、マシュー・ダンとマーク・グリーニーは共に情報組織の工作員を主人公とする作品を書いていますが、その設定はかなり対照的です。 ダン描くところの主人公はMI6(英国情報局秘密情報部)工作員のウィル・コクラン。著者自身も元MI6と…

第二十八回はスコット・アンダーソンの巻(執筆者:片山奈緒美)

今回ご紹介する Triage を初めて読んだのは、たぶん刊行まもない98年か99年、タイトルのトリアージ(*)という言葉がまださほど世の中に浸透していないころだ。このタイトルが意味する重みをぜひ日本の読者に伝えたいと思い、ある出版社に翻訳企画の持ちこ…

第二十七回はジョー・R・ランズデールの巻(執筆者:三角和代)

ランズデールと聞いて、みなさん思い浮かべるのはアメリカ探偵作家クラブ長篇賞受賞の『ボトムズ』? それともノワールな『テキサス・ナイトランナーズ』やSFの『モンスター・ドライヴイン』ですか? アメリカ・ホラー作家協会の共同設立者のひとりであり、…