「非英仏語圏ミステリベスト100」結果発表!(その3)(執筆者・松川良宏)

 

  • 「非英仏語圏ミステリベスト100」結果発表!(その1)は【こちら】
  • 「非英仏語圏ミステリベスト100」結果発表!(その2)は【こちら】

 
 続いて、64位〜100位の発表です。

【64位(11ポイント/2票) 16作】

 『スミラの雪の感覚』は1993年のガラスの鍵賞(北欧最優秀ミステリ賞)受賞作。
 『制裁』は2005年のガラスの鍵賞受賞作。
 『きたれ、甘き死よ』は1999年のドイツ・ミステリ大賞受賞作。

密室 (角川文庫 赤 520-8)

密室 (角川文庫 赤 520-8)

タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫)

タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫)

制裁 (ランダムハウス講談社文庫)

制裁 (ランダムハウス講談社文庫)

冬の生贄 上 (創元推理文庫)

冬の生贄 上 (創元推理文庫)

犯罪心理捜査官セバスチャン 上 (創元推理文庫)

犯罪心理捜査官セバスチャン 上 (創元推理文庫)

スミラの雪の感覚

スミラの雪の感覚

スノーマン 上 (集英社文庫)

スノーマン 上 (集英社文庫)

死者の声なき声 上 (創元推理文庫)

死者の声なき声 上 (創元推理文庫)

きたれ、甘き死よ (現代ウィーン・ミステリー・シリーズ)

きたれ、甘き死よ (現代ウィーン・ミステリー・シリーズ)

黒のクイーン (創元推理文庫)

黒のクイーン (創元推理文庫)

両シチリア連隊

両シチリア連隊

判事と死刑執行人

判事と死刑執行人

  • 作者: F.デュレンマット,Friedrich D¨urrenmatt,平尾浩三
  • 出版社/メーカー: 同学社
  • 発売日: 2012/05
  • メディア: 単行本
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オリーブも含めて

オリーブも含めて

盗まれた夢―モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤ〈1〉 (モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤ (1))

盗まれた夢―モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤ〈1〉 (モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤ (1))

アムステルダムの異邦人 (創元推理文庫 190-1)

アムステルダムの異邦人 (創元推理文庫 190-1)

 
【80位(10ポイント/1〜2票) 6作】

 『妖女ドレッテ』江戸川乱歩が戦前の一時期、日本の探偵小説はこの作品の方向を目指すべきではないかとまでいったほどのドイツミステリの古典的名作。

妖女ドレッテ (1959年) (世界推理小説全集)

妖女ドレッテ (1959年) (世界推理小説全集)

蜘蛛女のキス (集英社文庫)

蜘蛛女のキス (集英社文庫)

探偵ダゴベルトの功績と冒険 (創元推理文庫)

探偵ダゴベルトの功績と冒険 (創元推理文庫)

楽園を求めた男―私立探偵カルバイヨ (創元推理文庫)

楽園を求めた男―私立探偵カルバイヨ (創元推理文庫)

顔に傷のある男 (1977年) (世界ミステリシリーズ)

顔に傷のある男 (1977年) (世界ミステリシリーズ)

ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)

ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)

 探偵ダゴベルト・シリーズの短編「奇妙な跡」江戸川乱歩編『世界短編傑作集』第2巻(創元推理文庫、1960年)などで読める。

世界短編傑作集 2 (創元推理文庫 100-2)

世界短編傑作集 2 (創元推理文庫 100-2)

 
【86位(9.5ポイント/2票)】

  • ネルーダ事件』ロベルト・アンプエロ(チリ)

ネルーダ事件 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ネルーダ事件 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 
【87位(9ポイント/1〜2票) 5作】

  • 『スミルノ博士の日記』S・A・ドゥーゼ(スウェーデン)(2票)
  • 『夜と灯りと』(短編集)クレメンス・マイヤー(ドイツ)(1票)
  • 『ブラックアウト』マルク・エルスベルグオーストリア)(1票)
  • 『捜査』スタニスワフ・レムポーランド)(1票)
  • 『最後の証人』金聖鍾[キム・ソンジョン](韓国)(1票)

夜と灯りと (新潮クレスト・ブックス)

夜と灯りと (新潮クレスト・ブックス)

ブラックアウト 上 (角川文庫)

ブラックアウト 上 (角川文庫)

捜査 (ハヤカワ文庫 SF 306)

捜査 (ハヤカワ文庫 SF 306)

最後の証人〈上〉

最後の証人〈上〉

 戦前の日本で高い評価を受けていたスウェーデンミステリの古典、『スミルノ博士の日記』はほかに『小酒井不木探偵小説全集』第6巻(翻訳集1)(本の友社、1992年)でも読むことができる。
 
【92位(8.5ポイント/2票)】

催眠〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

催眠〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 
【93位(8ポイント/1票) 6作】

  • 『パパ、ママ、あたし』カーリン・イェルハルドセン(スウェーデン
  • 『カイウスはばかだ』ヘンリー・ウィンターフェルト(ドイツ)
  • 『祖母の手帖』ミレーナ・アグス(イタリア)
  • 『Q』ルーサー・ブリセット(イタリア)
  • 『枯草熱(こそうねつ)スタニスワフ・レムポーランド
  • 『アウェイゲーム モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤ』アレクサンドラ・マリーニナ(ロシア)

パパ、ママ、あたし (創元推理文庫)

パパ、ママ、あたし (創元推理文庫)

カイウスはばかだ (岩波少年文庫)

カイウスはばかだ (岩波少年文庫)

祖母の手帖 (新潮クレスト・ブックス)

祖母の手帖 (新潮クレスト・ブックス)

Q 上

Q 上

枯草熱 (1979年) (サンリオSF文庫)

枯草熱 (1979年) (サンリオSF文庫)

アウェイ ゲーム (光文社文庫)

アウェイ ゲーム (光文社文庫)

 
【99位(7.5ポイント/2票)】

 ヴァランダー警部シリーズ第4作。

笑う男 (創元推理文庫)

笑う男 (創元推理文庫)

 
【100位(7ポイント/1票)7作】

 『踊る骸(むくろ)』はすでに6作邦訳されているエリカ&パトリック事件簿シリーズの第5作。10月にはシリーズ第7作『霊の棲む島』が邦訳出版予定。
 『謝罪代行社』は2010年のフリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ語圏推理作家協会賞)受賞作。

踊る骸 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

踊る骸 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

霊の棲む島 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

霊の棲む島 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

グルメ警部キュッパー (ランダムハウス講談社文庫)

グルメ警部キュッパー (ランダムハウス講談社文庫)

謝罪代行社(ハヤカワ・ミステリ1850) (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

謝罪代行社(ハヤカワ・ミステリ1850) (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)

ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)

火葬人 (東欧の想像力)

火葬人 (東欧の想像力)

影のドミノ・ゲーム (創元推理文庫)

影のドミノ・ゲーム (創元推理文庫)

 ロシア(ソ連時代含む)からは58位にドストエフスキーカラマーゾフの兄弟が入ったほか、64位にアレクサンドラ・マリーニナ『盗まれた夢』、93位に同作者の『アウェイゲーム』、100位にユリアンセミョーノフペトロフカ、38』が入った。アレクサンドラ・マリーニナソ連崩壊後の1993年にデビューしたミステリ作家。モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤ・シリーズが6冊邦訳されている。先に邦訳されたのは『盗まれた夢』だがこれはシリーズ第3作で、『アウェイゲーム』がシリーズ第2作。第1作は邦訳されていない。現代ロシアの代表的なミステリ作家にはほかにボリス・アクーニンがいる。ファンドーリンの捜査ファイル・シリーズが3作訳されており、今回のアンケートでも票を投じた方はいたが、ベスト100には入らなかった。
 
 日本での邦訳状況だけを見ると「ソ連ではSF小説は盛んだったが、ミステリ小説はなかった」と勘違いしてしまいそうだが、実際はスパイ小説も含めるのならば、ソ連ではずっとミステリ小説が書かれ続けていた。1940〜50年代にかけてはニコライ・シパーノフ(1896-1961)がソ連シャーロック・ホームズを生み出そうという意気込みで探偵ニール・クルチーニン・シリーズを書いていたし、1950年代半ばからはアルカージー・アダモフ(1920-1991)らが警察による集団的捜査をリアルに描く作品を発表。1960年代には、謎とその解決に重点を置いたフーダニット物を執筆するパーヴェル・シェスタコーフ(1932-2000)、ヴィクトル・スミルノフ(1933- )、ニコライ・レオーノフ(1933-1999)らがデビューしている。以上に挙げた5人は邦訳はない。ユリアンセミョーノフ(1931-1993)はソ連時代の人気ミステリ作家。1950年代後半に作家デビューし、1960年代に入ってからミステリを書き始めた。ペトロフカ、38』は1963年の作品で、日本では1965年にポケミスで出版されている。モスクワ警察特別捜査班の刑事3人が強盗事件を捜査する話で、ユーモアありサスペンスありの傑作である。
 
※107位以下は筆者のサイトにまとめてあります(非英仏語圏ミステリベスト100)。
 
「非英仏語圏ミステリベスト100」結果発表、「その4」では、北欧ミステリベスト10、ドイツ語圏ミステリベスト10、「その他」ミステリベスト10、および作家ランキングを発表します。
 

松川 良宏(まつかわ よしひろ)


 アジアミステリ研究家。『ハヤカワ ミステリマガジン』2012年2月号(アジアミステリ特集号)に「東アジア推理小説の日本における受容史」寄稿。「××(国・地域名)に推理小説はない」、という類の迷信を一つずつ消していくのが当面の目標。
 Webサイト: http://www36.atwiki.jp/asianmystery/
 twitterアカウント: http://twitter.com/Colorless_Ideas
 
堕ちた天使―アザゼル

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リヴァイアサン号殺人事件―ファンドーリンの捜査ファイル

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アキレス将軍暗殺事件 (ファンドーリンの捜査ファイル)

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