【毎月更新】やまねこ翻訳クラブ「読書探偵」応援企画

1969年:『ベーグル・チームの作戦』とニューヨーク・メッツ(執筆者・ないとうふみこ)

去る4月19日、アメリカを代表する児童文学作家、E・L・カニグズバーグが亡くなった。一番ポピュラーな作品は、おそらく小学生の姉弟が家出してメトロポリタン美術館にこっそり寝泊まりする『クローディアの秘密』だろう。この『クローディア〜』を含め、…

見て、さわって、読んで楽しむ「しかけ絵本」(執筆者・杉本詠美)

「しかけ絵本ブーム」といわれはじめてもう何年もたちますが、その人気は単なるブームに終わらず、いまやすっかり定着した感があります。平面のものが一瞬にして立体になったり、つまみひとつで変化やいろいろな動きが生まれたりするふしぎ。本のページにし…

イカ、追加入りました!――2007年出版の原著に(執筆者・吉井知代子)

3月に刊行された拙訳書『科学者たちの挑戦 失敗を重ねて成功したウソのようなホントの科学のはなし』を、裏話をまじえながら紹介させてください。大昔から近代まで、科学者たちは飽くなき挑戦を重ね、ときに失敗もし、数々の発見をしてきました。そういった…

『サティン入江のなぞ』――フィリパ・ピアスの知られざる傑作。(執筆者・ないとうふみこ)

フィリパ・ピアスの名をきいてすぐにぴんとこない人でも、『トムは真夜中の庭で』の作者といえば、「ああ」と思い当たるのではないだろうか。1958年に発表された『トム〜』は、主人公が親元を離れて親戚のもとで暮らす設定といい、イギリスの豊かな自然を背…

いらなそうで、いるもの、な〜んだ?(執筆者・おおつか のりこ)

今回は、絵本の翻訳の話をします。 レイモンド・ブリッグズの『ゆきだるま』は、原作の味をそこなわないアニメーション化のおかげもあり、日本でも人気がすっかり定着しました。はじめてこの絵本を目にしたとき、コマ割りによる躍動感の一方で、色鉛筆のかさ…

『ポールとビルジニ』――孤島の純愛物語に流した涙の思い出(執筆者・杉本詠美)

「子どものころに読んで印象に残っている本は?」 先日、とあるアンケートでこう尋ねられました。好きだった本、くりかえし読んだ本はいろいろあるけれど……わたしはちょっと考えて、『ポールとビルジニ』と答えました。わたしはこの本を小学校のたぶん4年生…

書店での読み聞かせは、スリルとサスペンスに満ちている!(執筆者・武富博子)

「絵本を訳したいと思うなら、実際に絵本を子どもたちに読んでみるといいですよ。子どもは正直だから、その絵本をおもしろいと思っているかどうかすぐにわかります」。何年も前に、児童文学翻訳家である恩師こだまともこ先生に、そんなアドバイスをいただい…

原書のない翻訳書の話(執筆者・宮坂宏美)

今回はちょっとめずらしい「原書のない翻訳書」の話をさせていただこうと思います。そんなものがあるの? と思うかたもおいででしょうが、なにをかくそう、拙訳書の「ランプの精リトル・ジーニー」シリーズ(21巻からは「リトル・ジーニーときめきプラス」シ…

 チームで翻訳! 〜百年前の本をめぐって〜(執筆者・田中亜希子)

今、わたしは日々大汗をかきながら「オズの魔法使いシリーズ」の新訳に4名のチームで取り組んでいるのですが(4名ともやまねこ翻訳クラブの会員で、内3名が訳者、1名がコーディネイター兼編集協力者です。詳しくはこちらをどうぞ)、チーム翻訳といえば…

「これ、子どもに通じるかな」――児童書翻訳者は、謎の食べ物をどう訳す?(執筆者・内藤文子)

第3回読書探偵作文コンクールの応募も締め切られ、現在、審査がおこなわれています。わたしは今年も二次選考をお手伝いさせていただくので、どんな作品に出会えるかと今からわくわくしています。ご応募くださったみなさま、どうもありがとうございました。 …

中学生男子に本を読ませる小作戦--親ばか注意(執筆者・吉井知代子)

やまねこ翻訳クラブは「月刊児童文学翻訳」というメールマガジンを発行しています。そのなかで、わたしは2000年6月から約4年間、「親ばか絵本日誌」というエッセイを連載し、息子が生後3か月から5歳ころまで、ふたりで絵本を楽しんだ記録を親ばかモード…

さよなら、ブラッドベリ (執筆者・菊池由美)

2012年6月6日、レイ・ブラッドベリが亡くなった。訃報をはじめてTwitterで見たとき、夏の草原を白いスニーカーでどこまでも走っていく少年が、脳裏にうかんだ。 草の匂い。まぶしい太陽。 ふだんはあまり感傷的ではない自分が、ぐらりとゆらいだ。 91歳と…

映画化に浮かれた頭でかんがえた「馬が語らない」ということ(執筆者・おおつか のりこ)

モーパーゴおじさん、とわたしがかってに知りあいのごとく呼ぶマイケル・モーパーゴは、ほんとうはイギリス児童文学界の大御所です。それに、第二次世界大戦中の生まれなので、ほんとうはおじさんというよりも、もうおじいさんです。 大御所ですから、これま…

SFは好きですか?――注目のディストピア小説と冒険スチームパンク(執筆者・杉本詠美)

「SFは好きですか?」 そうきかれると、答えに躊躇する。べつに嫌いではないと思うが、「好きです」と堂々と言う自信はない。「SFが好き」と言うにはその手のものをかなり読みこんで、一家言もっているくらいでないといけないんじゃないか――というような…

くりかえし読む、時間をかけて読むということ(執筆者・林さかな)

3人目の子どもを出産後、フルタイムで働きながらの子育てに一区切りをつけました。核家族で毎日をてんやわんやの大忙しの日々を過ごしていたので、子どもの笑顔を楽しむ時間もままならなくなっていたからです。自分で時間をコントロールできる仕事にシフト…

戦時下が舞台。でも現代に通じる少年の旅――『海辺の王国』再読(執筆者・ないとうふみこ)

何年ものあいだひとつの場面がくっきりと脳裏に焼きついて、折々に思い出される本というのがあります。わたしにとっては、ロバート・ウェストールの『海辺の王国』がそんな1冊。でもなぜかその場面だけが印象に残りすぎて、前後があやふやだったので、久し…

イースターによせて――わたしの「ウサギ遍歴」(執筆者・武富博子)

春といえばイースター。イースターといえばウサギ。ということで、今回はウサギの話を。 ちなみにイースターとは、キリストの復活を祝うキリスト教のお祭りのことで、それが春の訪れを祝う古来のお祭りと結びつき、英語圏やドイツ語圏などではこの時期にウサ…

子どもと本と震災(執筆者・林さかな)

2011年の「秋の読書探偵」では一次審査をつとめました。子どもたちの感想文を読むのはとても楽しく、本が好きだという気持ちがどの子の文章からも伝わってきました。感想文には震災にふれたものもありました。わたしは福島県会津若松市在住です。福島県の内…

オズ・コジツケ・ミステリー(執筆者・宮坂宏美)

2011年の「秋の読書探偵」をお手伝いさせていただいたご縁で、今月から月に1回、やまねこ翻訳クラブのメンバーがエッセイを書かせていただくことになりました。テーマは「絵本・児童書・YA+ミステリー」……かな? まあ、何が飛び出すかはそのときのお楽し…

ほんやくって、なあに?(執筆者・宮坂宏美)

小中高生のみなさん、こんにちは! ほんやく者の宮坂宏美(みやさかひろみ)といいます。今回は、おもに小学生のみなさん向けに「ほんやく」について書いてみたいと思います。というのも、このホームページがおこなっている作文コンクールでは、「ほんやくさ…

絵本を楽しむこと、そして扉をひらくこと(執筆者・ないとうふみこ)

昨年、わたしは学習塾で英語の講師をしていたのだが、中1に代名詞を教えているとき、ちょっとショックなできごとがあった。Jane という名前を he に置きかえた子がいたので、「女性を表す代名詞は she だよ」と指摘したら、「えーっ、ジェーンって女?」「…

子どもの読書の特権は(執筆者・ないとうふみこ)

何十年か前、小学校の卒業文集に「尊敬する人 リンドグレーン」と書いた。スウェーデンの国民的作家、アストリッド・リンドグレーンのことだ。「長くつ下のピッピ」シリーズや「名探偵カッレくん」シリーズ、そして「やかまし村」シリーズをぐるぐるぐるぐる…

はじめまして、やまねこ翻訳クラブです(執筆者・武富博子)

みなさま、こんにちは。越前敏弥さんにお声をかけていただき、「秋の読書探偵」作文コンクールの応援にやってまいりました。これから4回にわたり、やまねこ翻訳クラブの会員たちが応援記事をお届けします。どうぞよろしくお願いいたします。 やまねこ翻訳ク…