第20回札幌読書会開催!

 
 6月某日、翻訳家の田口俊樹さんから札幌読書会に一通のメールが届きました。


「いやあ、競馬のあとの酒の席で盛り上がっちゃって、地方の読書会に行こうってことになったんだけど、お馬さんの関係で札幌がいいんだよね。9月2日。どう、ユーたち、読書会やっちゃう? 課題書はなんでもオーケー。K上さんと、早川書房のY口とわたし、あと生徒のK脇って翻訳家も連れてくよ」(注:脚色してます)


 8月に続いて2ヶ月連続の開催となるため、いったん世話人3名で相談しました。
「…やるか?」
「やるべ!」
「やっちゃるべ!!」
(注:脚色してます。本当は“もっと”早かった)


 というわけで、2ヶ月連続やっちゃいます。
 スペシャルゲストとして書評家の北上次郎氏、翻訳家の田口俊樹氏と門脇弘典氏、そして早川書房の山口晶氏を(札幌競馬のメインレース後に)お迎えする特別会です。


 課題書は、田口俊樹氏と言えばこの作家、ローレンス・ブロック『八百万の死にざま』です。
〈アル中探偵マット・スカダー〉シリーズ初期の代表作。「早めに言ってもらえれば、500ページくらい余裕余裕」という常連さんの心強い言葉に背中を押されて決定しました。

八百万の死にざま (ハヤカワ・ミステリ文庫)

八百万の死にざま (ハヤカワ・ミステリ文庫)


 たくさんのご参加、お待ちしております。
 詳細及び申込方法は下記の通りです。


【日時】9月2日(土)16:30〜受付 17:00〜スタート(予定)
    ※読書会終了後に同じ会場で懇親会を行います
【場所】ご参加の方に別途ご案内いたします(最寄は地下鉄大通駅です)
【課題書】『八百万の死にざま』ローレンス・ブロック著/田口俊樹訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)
【参加条件】課題本を読了していることのみ
【参加費】(読書会のみ)2,000円 (懇親会とセット)4,500円
【定員】30名程度
【お申込み方法】
札幌読書会専用アカウント sapporo.readingparty@gmail.com にメールでお申し込み下さい。
件名を「札幌読書会 9/2」とし、メール本文に下記3点をお書き下さい。
・お名前(ハンドルネーム不可)
・ご連絡先電話番号
・懇親会の参加/不参加(後日のお返事でもけっこうです)
【お問い合わせ】
その他ご不明な点があれば sapporo.readingparty@gmail.com までお気軽にお問い合わせ下さい。

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冬を怖れた女 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)

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聖なる酒場の挽歌 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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慈悲深い死 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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墓場への切符―マット・スカダー・シリーズ (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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倒錯の舞踏 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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死者との誓い (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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死者の長い列 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)

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皆殺し (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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死への祈り (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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すべては死にゆく

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償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

【再掲】第11回金沢読書会のご案内

 こんにちは、金沢読書会です。


 わりといろいろな国の作品を課題書にしている当会ですが、今回はオーストラリア発の、注目新人ジェイン・ハーパーによる『渇きと偽り』をとりあげます。


渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ)

渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ)


 おなじみ〈書評七福神の今月の一冊〉のコーナーでも、四月度ベストで3名が推しておられたので、気になる内容はぜひそちらをご覧ください。ほかにも多くの雑誌書評等で紹介された、読み逃しては惜しい今年の新刊です。


 干魃にあえぐ灼熱の町が舞台の本作を読んで、盛夏の読書会にぜひお越しを。自由参加の懇親会は焼き鳥の予定です、なんとなく(笑)。

開催日時:2017年7月29日(土)15:00〜17:00(受付14:45〜)
会場:〈謎屋珈琲店〉2階イベントスペース
課題図書:『渇きと偽り』ジェイン・ハーパー 著/青木創 訳(早川書房
     電子書籍版もあり。当日までに読了してご参加ください。
定員:15名程度
参加費:600円(ドリンク料金 500円+諸経費 100円)


【申し込み方法】
 専用アカウント(kanazawa.dokusho@gmail.com)までメールでお申し込みください。件名を「金沢読書会11」とし、メール本文には下記のフォーマットをご使用ください。お問い合わせもお気軽にどうぞ。



お名前(ご本名フルネーム):

ご連絡先電話番号(携帯可):

懇親会(会費別途 17:30〜の予定):参加/不参加(いずれかを消してください)


 お申し込みのメールには24時間以内に返信さしあげます。こちらからの受付メールが届かない場合は、お手数ですが再度ご連絡ください。
 先着順で受け付け、定員に達した段階で締め切らせていただきます。


 翻訳ミステリー金沢読書会世話人 北田 絵里子(ツイッターアカウント@erk_ktd
 後援 翻訳ミステリー大賞シンジケート

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渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ)

渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ)

邂逅 (シドニー州都警察殺人捜査課) (創元推理文庫)

邂逅 (シドニー州都警察殺人捜査課) (創元推理文庫)

楽園 (シドニー州都警察殺人捜査課) (創元推理文庫)

楽園 (シドニー州都警察殺人捜査課) (創元推理文庫)

夜が来ると

夜が来ると

第36回 探偵が許される中国世界『超能力偵探事務所』(執筆者・阿井幸作)

 
 6月30日に「中国網絡視聴服務協会(中国ネットワーク視聴サービス協会)」が発表した『網絡視聴節目内容審核通則(インターネット視聴番組の内容審査通則)』により、ネット番組の内容に今まで以上に厳格で多岐に渡る禁止事項が敷かれ、中国のネットは騒然となりました。これではサスペンスドラマが作れなくなるのでは?と思うほど暴力表現や警察捜査手段の暴露、現実離れした事件の描写が禁止された他、「非正常の性関係や性行為、例えば近親相姦、同性愛、性的倒錯、性犯罪、性的虐待及び性暴力などの表現や描写」を禁止し、尊重されるべき権利と犯罪行為を同列に扱っていることも非難の的になりました。
 また「先審後播(審査してから放映する)」の規則も加わり、今後は自主規制の風潮が更に厳しくなります。ネットドラマは今まで「自審自播(自己判断で審査し放映する)」制度だったから地上波ドラマよりも自由という風潮がありましたが、2016年10月にネットで放映中だったサスペンスドラマ『暗黒者2』『心理罪』がネットから撤去される事態も起きた当時すでに業界も視聴者も表現規制の波を感じていました。しかしこうして明文化されるとは思っていなかったのではないでしょうか。あくまでも一協会が定めた規則でありますが、これにより制作サイドが萎縮するのは明白であり、審査に通らず放映されない恐れのある内容のドラマを敢えて制作することはなくなるでしょうから、冒険的だったり刺激的だったりする内容のドラマは今後ますます減っていくでしょう。
 
 と言うかこの処置、現在の中国のIPブーム(原作のある作品の映像化ブーム)に冷水をぶっかけて自分で自分の首を絞めることになると思うのですが、そこらへんどう考えているんでしょうかね。
 
 今回の件はネット番組業界のみに通達された規則ですが、規制の影響が小説業界に波及しなくても、例えば自分の作品を映像化して稼ごうとしている作家にとって原作がサスペンスやミステリだとそれだけで対象外になる可能性があるので、今後はこの規則におもねる作品を創る、もしくは規則に合わない作品は創らないことを選択するかもしれません。
 規制の中でも面白いものが生まれる余地は十分にありますが、さすがに環境を根本から変えてしまうような規制にはもう頭を抱えるしかないです。例えば「未成年を殺人事件に巻き込んではならない」みたいな規則ができたら学園ミステリの終焉です。もし将来、ミステリが育ち、名作が生まれる土壌を完全に死滅させられた場合、作家は翻訳を通して海外で作品を発表することを選ぶのでしょうか。しかし、作家にとって母国語で作品を発表できないことは何よりの屈辱だと思うので、結局はやはりこの世界で生き残ることを選ぶのでしょう。またはもう諦めるのか。
 
 長々と最近起きた表現規制について書いてしまいましたが、今回は発想のスケールの勝利と言える中国ミステリ『超能力偵探事務所』(著者:陸菀華)を紹介します。
 


 
 私立探偵事務所の開設が認められている中国の架空都市「幻影城」。そこのサーカス団で働くナイフ投げの葉飛刀はナイフが対象に絶対「当たらない」という超能力を買われ、超能力探偵事務所にスカウトされる。その事務所には同じく超能力を持っているメンバーがいたが、葉飛刀を含めた彼らに言えることは、彼らの超能力が決して万能ではなく、捜査にあまり使えないということ。「幻影城」の探偵事務所ランキングで下から数えたほうが早いほど何の成績も残していない彼らは、同じく個性的な他事務所の協力を借りて都市で次々発生する事件の解決に乗り出すが、徐々に「幻影城」の転覆を謀る秘密組織の存在にたどり着く。
 
 シリーズ1巻(写真左)が2016年8月、2巻(写真右)が2017年6月に出た本作は、ジャンル分けをすると「ユーモアミステリ」あるいはバカミスに分類されます。このシリーズをより魅力的にしているのは一つがテンポの良い会話の掛け合い、そしてもう一つが個性的なキャラクターです。
 

■超「無用な」能力

 葉飛刀の絶対「当たらない」という超能力はあらゆるところに発揮され、投げたナイフは当たらず、選択問題も当たらず、推理も絶対に当たりません。則ち、彼が推理によって導き出した答えは絶対に外れているのです。事務所の良心で、本シリーズで一番探偵らしい活躍をする左柔は他人の左のポケットだけ「透視」できる能力を持っています。そして少年の幽幽は「動物と会話」できる非常に有用な能力を持っていますが、彼自身が人間と喋ることは全くなく、意思の疎通はもっぱら絵です。各々、人知を超えた力を持っていますが、それが探偵活動において決定打にはなりません。
 
 物語は主に葉飛刀と左柔の2人で進みますが、超能力を多用したアンフェアな展開になるのではなく、もっぱら左柔の綺麗に組み立てられた推理によって事件が解決します。決して葉飛刀に手当たり次第に犯人を当てさせ、消去法で犯人を導くというものではありません。とは言え、考えるよりも先に言葉が出る葉飛刀のデタラメの推理からヒントをもらうのも左柔のやり方で、彼女にとって「透視」とはなくても良い能力であり、細かな事実から事件像を組み立てて真相にたどり着くというのが彼女の真価です。だから、本作は作者の創造力やスケールの大きさによって生み出された現実離れした人物、組織、場所などが出てきますが、そもそも舞台となる「幻影城」自体が作者によって生み出された架空の世界なので、その世界で発生するどのような事件も一概に「リアリティがない」とは言えないのです。一見するとどれほどおかしいと思える事件や真相であっても、「幻影城」という犯罪をするために用意された都市での出来事と思えば、探偵や読者は受け入れられるのです。実際、とあるホテルに少年漫画でも描けないほどの驚くべき大仕掛けがあるのですが、発生場所が「幻影城」だからそういうこともあっても不思議ではないのです。本作においては、事件が発生する場所一つ一つがミステリ小説には欠かせない完全犯罪のために造られた「館」として見た方が良いです。
 

バカミス特有のテンポ

 もう一つの魅力はキャラ同士の掛け合いです。一部を抜粋して翻訳してみます。
 

・2巻30ページから
「なんだって?」韓決教授は呆気にとられた。
「何で周を殺したんだと言ったんだよ」葉飛刀はさっきのセリフを繰り返した。
「なんだって?」
「ちょっと!山彦が反響してるんだけど!」葉は焦って「頼むからもうちょっとリズム良くいきませんかね?延ばされるとさっき推理したことを忘れちゃいそうなんで」
「わかったわかった」韓教授は姿勢を正して椅子に座り直した。「じゃあ君の推理を聞かせてくれたまえ。何故私が周を殺害した犯人だと?」
「いや、アンタじゃない!」葉は言い返し、「さっきは指を差し間違えた。俺が聞きたかったのは准教授の蘇鳳梨さんだ。何で周を殺したんだ?」
「お前は何を言っているのかわかってるのか?!」韓教授は突然椅子から立ち上がり葉の前を見下ろして彼の胸ぐらをつかんだ。
 
(中略)
 
「うん。ここからが最も重要なポイントだ。犯人は何故殺害前に女子トイレに行ったのか?何故髪の毛が濡れていたのか?」
「そうね。確かにそれがこの事件で一番重要なポイントね」左柔が珍しく葉の意見に賛同した。
「トイレに行って髪が濡れていたのだから答えは簡単だ!犯人は髪を洗っていたんだ!」
「なんだって?か、髪を?!こんなに驚かされたのは久しぶりだ」教職にある韓教授もこの時ばかりは葉のロジックの前に阿呆のように成り果ててしまった。
「ふふふ、男のアンタには女の子の気持ちなんかわからないだろうな」葉は自分がどれほど馬鹿なことを喋っているのか気付かずに話を続けた。

 
 葉飛刀は始終狂言回しとしてストーリー中を自由に駆け回り、推理が「当たらない」という超能力のせいで失敗ばかりしますが、裏表のない性格の直情型の正義漢ですし、悪気はないのでいくら推理を間違えても読んでいて不快感はありません。
 

中国ミステリと「幻影城」の行方

 新刊の2巻では「幻影城」を混乱に陥れようとする「神秘組織」の構成員が探偵事務所に潜んでいることが明らかになりましたが、物語はまだ続きます。1巻を読み終わったときは「神秘組織」の目的も内容も全然わからなかったので消化不良の感が強く、中国の小説ってシリーズだからといって1巻ずつ読者を納得させるストーリーの終わらせ方をする気がないなと思いましたが、こうやって続巻が出てくれて本当に嬉しかったです。
 
 ところで、現実の中国は私立探偵が禁止されています。それは本作も同じで、あくまでも「幻影城」だけ特例として探偵事務所の設立を認める規定が定められているだけで、その結果事務所が乱立して超能力探偵事務所のような弱小組織から、ミステリ小説家だけの組織「三巨頭探偵事務所」、上述の韓決がトップで教授だけで構成される「教授探偵事務所」、頭も良ければ腕っ節も強い「鷹漢組」(鷹漢とは中国語でハードボイルドを意味する硬漢と同じ発音)など実力のある組織が一つの都市にひしめきあっています。
 
 2巻の出版は今年の6月であり冒頭の「通則」とは無関係のわけですが、「私立探偵を認める規定が施行されている世界」を描いた本書の設定が秀逸である一方、現実世界で深刻な表現規制が敷かれていていつミステリ小説の規制がより強化されるのかわからない現在、本シリーズの終わりにはやはり上記の規定が関わってくるのではと考えられます。
 
 実際、2巻になると犯罪者の口から「幻影城」に探偵事務所があるから犯罪を行うという『バットマン』の「ゴッサムシティ」みたいな論理が語られているので、作中で「平和のために探偵事務所を解体する」という展開が描かれる可能性は高いです。
 
 一人の作者に期待を背負わせるのもどうかと思いますが、作者が今後「幻影城」という世界をどのように描くのかが、中国ミステリ小説家の表現規制に対する生き方の表明になると思うので、無事にシリーズが終わってほしいですね。
 


阿井 幸作(あい こうさく)


中国ミステリ愛好家。北京在住。現地のミステリーを購読・研究し、日本へ紹介していく。
・ブログ http://yominuku.blog.shinobi.jp/
Twitterアカウント http://twitter.com/ajing25
マイクロブログアカウント http://weibo.com/u/1937491737
 

 

 
現代華文推理系列 第三集●
(藍霄「自殺する死体」、陳嘉振「血染めの傀儡」、江成「飄血祝融」の合本版)

現代華文推理系列 第三集

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現代華文推理系列 第二集●
(冷言「風に吹かれた死体」、鶏丁「憎悪の鎚」、江離「愚者たちの盛宴」、陳浩基「見えないX」の合本版)
現代華文推理系列 第二集

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現代華文推理系列 第一集
(御手洗熊猫「人体博物館殺人事件」、水天一色「おれみたいな奴が」、林斯諺「バドミントンコートの亡霊」、寵物先生「犯罪の赤い糸」の合本版)
現代華文推理系列 第一集

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現代中国・台湾ミステリビギナーズガイドブック (風狂推理新書)

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世界を売った男

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虚擬街頭漂流記

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蝶の夢 乱神館記 アジア本格リーグ4

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第40回 リュートが綴る物語―R・トレメイン『音楽と沈黙』(執筆者・佐竹裕)

 
 私事で恐縮ながら、現在の海外の小説への偏愛を形づくるのに自分が多大な影響を受けたと思われるふたりの人物がいる。
 ひとりは、中学時代の担任だった教師のT氏。強烈な個性の持ち主で、ホームルーム中に感極まって涙を流したり、じつはクラシックの音楽家でもあり、当時人気だったTV番組「題名のない音楽会」にもリュートを抱えて吟遊詩人として出演し、素晴らしい歌声を披露したりしていた。
 病弱で多感で夢見がちだったその頃の小生にとって小説は格好の逃げ道だったのだけれど、このT先生たるや、依怙贔屓というか極端というか、本好きの生徒ということだけで何かと優遇してくれていたような部分が多々あったように思えた。おかげで誰はばかることなく、いつでもどこでも読書に没頭できたのも事実。
 もうひとりは、“乱視読者”の異名を持つ英米文学者・若島正氏。もともと数学者だったというユニークな経歴を持つ若島氏には、小生がかつて編集者だった時代に「殺す時間」「失われた小説を求めて」という名物連載でお世話になったのだが、この連載エッセイで氏が取り上げられた未訳作品のひとつひとつが、とにかく面白そうでたまらなかったのだ!
 その後、このエッセイがきっかけとなって多くの作品が日本で日の目を見ることになった。マイクル・ディブディン、ギルバート・アデアエリック・マコーマック、スティーヴン・ドビンズといった、その後、邦訳が複数紹介されるようになった作家たち、シオドア・ローザックフリッカー、映画の魔Fricker)』(1991年)、ドナ・タートシークレット・ヒストリーThe Secret History)』(1992年/近刊の新潮文庫からの再刊タイトルは『黙約』)、チャールズ・ウィルフォード拾った女Pick-Up)』(1954年)など、まさに乱視読者のすぐれた視線が見つけ出した傑作たち……。この連載の一部は氏のいくつかの著作に収録されたりしていたが、現在では『殺しの時間 乱視読者のミステリ散歩』(2006年)でまとめて読むことができる。少々毛色の変わった趣味の海外文学の編集者にとっては隠れバイブルと言っていいだろう。いまなお、ここで取り上げられた作品で邦訳作業が進行中のものがいくつもあるという。
 

音楽と沈黙 1

音楽と沈黙 1

音楽と沈黙 2

音楽と沈黙 2

 先頃ようやく邦訳あいなったイギリスの人気女性作家ローズ・トレメインの『音楽と沈黙Music & Silence)』(1999年)もまた、その若島氏が「失われた小説を求めて」の連載で教えてくれた面白本のひとつである。
 とはいっても、正直いってミステリー作品ではなく歴史ロマンスといったジャンルに分類されるべき作品なのだけれどね。広義の意味でのエンターテインメントとしてご理解いただけたら幸いです。国も作風も違えど、『ここがホームシック・レストランDinner at Homesick Restaurant)』(1982年)や、映画『偶然の旅行者The Accidental Tourist)』(1988年)の原作『アクシデンタル・ツーリストThe Accidental Tourist)』(1985年)で知られるベストセラー作家アン・タイラーのような、主流文学(純文学?)の香りも漂わせたエンターテインメントといった印象で、そこに歴史小説の魅力を加えた作風といった位置づけだろうか。
 
 おそらく乱視読者の目をまず引いたのは、国王が謁見室の真下にある地下室に宮廷楽団を待機させて音楽を奏でさせたという、17世紀デンマークでの史実の部分だったのではないか。
 王に招かれた客人たちは、どこからともなく聴こえてくる妙なる調べに驚愕するという趣向で、じつは床の一部が開いて地下からのパイプを通して演奏を響かせるのだ。しかも楽団はフランス、イタリア、ドイツ、デンマークノルウェーと、近隣の国々から集められた凄腕の演奏家ばかりなのだけれど、冬には暗く凍えそうな地下で長時間の演奏を強いられるのだから、楽士たちにとってはたまったものじゃない。高野史緒『ムジカ・マキーナ』(1995年)ばりに、芸術を追求していくと人間は恐ろしい領域に踏み込んでしまうもののようだ。
 デンマーク国王のクレスチャン4世は、60年にもわたって善政を敷いた名君として知られている実在の人物。彼の幼少時から1630年までを幾人かの登場人物の視点を通して綴られていくのがこの物語なのである。主人公のひとりである若者ピーターは、イギリス人のリュート奏者。そう、中学時代の恩師T氏が奏でていた楽器の弾き手である。リュートは日本でいう琵琶に似たギター状の弦楽器で、主に中世ヨーロッパで広く使用されていた。クレスチャンに求められ、はるばるイギリスからコペンハーゲンにあるローセンボウ城へとやってきたピーターは、謁見室「冬の間」での地下楽団に加わると同時に、国王の寵愛を受ける。というのも、彼の容貌が、国王の今は亡き親友ブロアと似ていたから。
 クレスチャンにはキアステンという溺愛する妻がいるのだけれども、貴族の生まれではないために正式な女王にはなれない。王の深い愛にもかかわらず彼女はかけらも王を愛しておらず、じつはドイツ人の愛人がいることを隠しているのだ。
 奔放でわがままで残酷なキアステンに仕える侍女が、美しく心優しいエミリア。彼女に一目惚れしたピーターは一途に想いを打ち明け二人は愛し合うようになるのだけれども、エミリアを可愛がるキアステンが、この仲を裂こうと画策する。
 かくして、王と妻、王に雇われる楽士と妻の侍女、この2組が絡み合う愛の駆け引きを中心に物語は進んでいく。加えて、貧窮する国家の再建のために奔走する王の現地視察による懊悩、エミリアと家族との確執と不思議な能力を秘めた末弟との姉弟愛、富の力のみを信じる皇太后の黄金への異様な執着、現在の生活を失いたくないキアステンの母の予想だにしない策謀、国王と親友ブロアとの友情とその終焉……と、てんこ盛りの人間ドラマが、デンマークイングランドアイルランドという国をまたがって展開していく。
 いやはや、そのドラマ展開が、それぞれの視点で素早く切り替えられて目まぐるしく進められていくものだから、これはもう歴史ロマンスというより恋愛サスペンスと称していいほどなのである。
 
 国王クレスチャン4世ばかりでなく、その甥にあたる英国王チャールズ1世も、キアステン・モンクも、その後釜となる愛妾ヴィーベケ・クルーセも、実在した歴史上の人物。史実の隙間を縫って、まるで見てきたかのような臨場感とリアリティとで縦横無尽に物語を紡いでいくトレメインの手腕は、みごととしか言いようがないだろう。
 イギリスの作曲家でありリュート奏者でもあったジョン・ダウランドも実在した人物で、実際には本作の時代を数年遡った1598年から8年間、デンマーク王クレスチャン4世にリュート奏者として仕えていたという。青年楽士ピーターの造型はおそらくこの高名な作曲家を参考にしているのかもしれない。このダウランド作曲による「涙のパヴァーヌ(Lachrimae)」は、まさに本作のテーマ曲だと言えるのだ。国王クレスチャンを、自らの心を慰めるため、作中、何度となくピーターはこの曲を奏でる。
 その旋律に歌詞をつけた「流れよ我が涙(Flow, My tears)」としても知られている楽曲だけれど、フィリップ・K・ディックの代表作のひとつ『流れよわが涙、と警官は言ったFlow My Tears, The Policeman Said)』(1974年)のタイトルがここからとられたことも、つとに有名。パヴァーヌという楽曲ジャンルそのものの起源についてはというと諸説あるのだけど、もともとスペインで生まれた舞踊のための曲が派生したものとも言われている。キース・ロバーツの『パヴァーヌPavane)』(1968年)は、16世紀イギリスを舞台とし女王エリザベス1世に焦点をあてた改変世界ものSFの傑作で、女王がこの舞曲を愛していたと伝えられることからタイトルとなっている。もちろん、ラヴェルの歴史的名曲「亡き王女のためのパヴァーヌ(Pavane pour une infante defunte)」なども頭に浮かぶことだろう。ほかにも、作中にはやはり高名な作曲家でヴァイオル(伊名ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者のアルフォンソ・フェッラボスコ2世の楽曲や、ジプシー音楽への言及も頻出する。
 
道化と王 (ヨーロッパ歴史ノベル・セレクション)

道化と王 (ヨーロッパ歴史ノベル・セレクション)

 じつは、トレメインのもうひとつの代表作にして本作よりいち早く邦訳刊行されていた『道化と王Restoration)』(1989年)にもまた、乱視読者の心を釘付けにしたであろう場面が、物語前半に用意されている。17世紀のイングランド。時の国王チャールズ2世の道化となる医師予備軍の主人公ロバートは、ある晩、親友の医学生仲間ジョンに呼び出されて、生きたまま心臓がむき出しになっている男に会わせられ、金を払って心臓に直接触らせてもらうことになる。触られてもまったく痛みは感じないという男の言葉から、あらゆる感情の基盤であるはずの器官がそんなにも鈍感であることを知る、というものだ。
 この後、ロバートは国王の愛人と偽装結婚させられ断じて妻に手を出してはならないと命じられるが、妻に恋してしまうことに。王の道化となって富と名誉と贅沢な暮らしを手にし堕落していった男が、大きな挫折を知って本来の自分の歩むべき道を見つけるという、一種の成長小説にもなっている、これまた巻措くあたわずの一気読み本。ひねりを加えた悪漢小説の一種として、フラナリー・オコナーの名作『賢い血Wise Blood)』(1952年)すら想起させる。
 マイケル・ホフマン監督、ロバート・ダウニー・Jr主演で1995年に映画化され、日本では『恋の闇 愛の光(Restoration)』というタイトルで公開された。ちなみに、不思議な力を宿した赤ん坊を描いたトレメインのファンタジー短篇を原作とした、『Rickey リッキー(Rickey)』(2009年)という映画化作品もあるという。
 
 いやはや、T先生と若島先生の存在なくして、こんな作家の作品と出会い、その味わいを理解できることもなかったのかと思うと感慨ひとしお。いつかはリュート演奏をマスターして、吟遊詩人の跡を継ぎたいとも思う、今日この頃なのでした。
 
YouTube音源
●"Lachrimae" by Hopkinson Smith

アメリカのクラシック・ギタリスト、ホプキンスン・スミスによるジョン・ダウランド作曲「涙のパヴァーヌ」。BRQヴァンター・フェスティヴァルでのリュート演奏。
 
●"Fantasie" by Jan Akkermann

*ジョン・ダウランド作曲「ファンタジー」。オランダのプログレ・バンド出身ギタリスト、ヤン・アッカーマンによる1974年のTVショーでのリュート演奏。
 
●"Fantasie" by Jan Akkermann

*ライラ・ヴィオルという珍しい楽器による、アルフォンソ・フェッラボスコ2世作曲「アルメイン(Almaine)」。演奏はスペインのヴィオル奏者フェルナンド・マリン。
 
◆関連CD【CD】
●"Songs from the Labyrinth" by Sting
Songs from the Labyrinth

Songs from the Labyrinth

*スティングによるジョン・ダウランド作品の歌唱集。2006年に発表。
 
●"Tabernakel" by Jan Akkerman
流浪の神殿<FUSION 1000>

流浪の神殿

*ヤン・アッカーマンのソロ・アルバム第2作『流浪の神殿』(1973年)。ジョン・ダウランド作品を2作取り上げている。
 
◆関連DVD
●『恋の闇 愛の光』
恋の闇 愛の光 [DVD]

恋の闇 愛の光 [DVD]

●『Rickey リッキー』

Ricky リッキー [DVD]

Ricky リッキー [DVD]

●『偶然の旅行者』

 

佐竹 裕(さたけ ゆう)


 1962年生まれ。海外文芸編集を経て、コラムニスト、書評子に。過去に、幻冬舎「ポンツーン」、集英社インターナショナルPLAYBOY日本版」、集英社小説すばる」等で、書評コラム連載。「エスクァイア日本版」にて翻訳・海外文化関係コラム執筆等。別名で音楽コラムなども。
  好きな色は断然、黒(ノワール)。洗濯物も、ほぼ黒色。
 

 

ここがホームシック・レストラン (文春文庫)

ここがホームシック・レストラン (文春文庫)

アクシデンタル・ツーリスト (Hayakawa Novels)

アクシデンタル・ツーリスト (Hayakawa Novels)

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)

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パヴァーヌ (ちくま文庫)

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賢い血 (ちくま文庫)

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殺しの時間-乱視読者のミステリ散歩

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ムジカ・マキーナ (ハヤカワ文庫JA)

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フリッカー、あるいは映画の魔

フリッカー、あるいは映画の魔

シークレット・ヒストリー〈上〉 (扶桑社ミステリー)

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シークレット・ヒストリー〈下〉 (扶桑社ミステリー)

シークレット・ヒストリー〈下〉 (扶桑社ミステリー)

●↓『シークレット・ヒストリー』再刊版!

黙約(上) (新潮文庫)

黙約(上) (新潮文庫)

黙約(下) (新潮文庫)

黙約(下) (新潮文庫)

 
拾った女 (扶桑社文庫)

拾った女 (扶桑社文庫)

ダーティ・トリック (扶桑社ミステリー)

ダーティ・トリック (扶桑社ミステリー)

閉じた本 (創元推理文庫)

閉じた本 (創元推理文庫)

奇妙な人生 (扶桑社ミステリー)

奇妙な人生 (扶桑社ミステリー)

 

第5回浜松読書会レポート(執筆者・山本三津代)

 
 最近、朝から蝉の声が喧しく「梅雨も明けてないのに早すぎ!」とつっこんでしまうこともしばしば。
 皆さま、いかがお過ごしでしょうか?


 さて、梅雨入り前の5/27(土)ヨハン・テオリン『冬の灯台が語るとき』早川書房)を課題書に浜松読書会が行われました。

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ミステリ文庫)

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 もとはと言えば、真冬に真冬のミステリーを熱く語ろう! しかもウナギ岬とか出てきて浜松のご当地名物とつながるし、ちょうどいいじゃん的な考えで課題書に決まったんですが、真冬開催がお流れになり、ほぼ真夏じゃね? な気温の中で真冬の話で盛り上がることに相成りました。


 折しも、浜松はNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』を一大プッシュの真っ只中。読書会前にドラマ館やゆかりの地巡りもいかが? と朝も早よから快晴の浜名湖ドライブをキメてからの会場入り。実際の気賀関所近辺を目の当たりにして「あの頃(ドラマ)のほうが栄えてるね」とぽろっと言われたのはいい思い出です。


 そんなこんなで、読書会スタート。


 まず、自然描写の巧みさにポイントをおいた感想が参加者の大半から上がりました。
「渦雪の場面が最高潮に盛り上がった」「物語の進行と天候の悪化がリンクしてる」「渦雪? え? ブリザードじゃなくて??」とここでポケミスしか読んでなかった世話人がちょっと混乱。ポケミスでは【ブリザード】、文庫では【渦雪】に変わっていることが判明。
 後日、翻訳者の三角さんに確認したところ、文庫化にあたりポケミスでは英米語からの【ブリザード】と表記していたのを、本来のスウェーデン語の意味合いを重視して改訳されたとのことです。実際【渦雪】の方がどんな風に吹雪くのか想像しやすい気がしますね。
(文庫と言えば、約一名レイアウトに惑わされてラストを読みそこなっていたことが、読書会中に発覚したことをここでご報告しておきます)


 ホラー、オカルト的な要素がかなり含まれている作品だったのでその辺りについても意見が多く出ました。まとめると『冬の灯台が語るとき』はクリスマス&ジェントルゴーストストーリーであってホラーではない、怖さよりも優しさを感じる作品という結果になりました。幽霊出てくるの? 怖そう…と敬遠していた皆さん、怖くないですよ〜! 黒魔術師にやたらと傾倒する厨二な若者とかも出てきたし、どちらかと言えばスピリチュアルとか幻想文学とかに分類できそうな感じです。


 登場人物ではやはりイェルロフがダントツ人気。かっこいいのは当然wとして「老人らしいところがいい」「若いモンには負けん! とかの気負いがない所がいいよね」とのこと。四部作の中でこの【冬】は出番が少ないのが残念ポイント。その一番の理由は、夏は一人暮らしをしていても、厳しい冬は施設に入居するので自由に動き回れないからですかね(このスウェーデンの老人ホームの自由度の高さについても感心しきり)。
 意見が分かれたのは今作の主人公ヨアキムについて。妻を亡くして二人の幼い子どもと残された後の行動について肯定的に見る人と否定的に見る人で真っ二つ。スウェーデン人の気質なのか、ヨアキムの個性なのかはわかりませんが、英米の作品において大事な人を亡くした男性は酒浸りになるパターンが多いと感じていたので、今作における彼の言動は今まであまり見られない型だというところに落ち着きました。


 肝心のミステリー部分について。「前半は仕込みなので情報が入り乱れて惑わされた」「本筋がわかり難くて、中盤までなかなか読めなかった」「なんだかんだ言って一番のミステリーは過去パートだったよね」「謎って意味では××よりも○○の方がより謎めいてる」「○○はポケミスの登場人物紹介には書かれてないのに文庫は入ってるんだもん、やっぱり重要なんだよ!」○○が誰なのか、未読の方はぜひ読んでご確認ください。


 番外としてイェルロフの大姪ティルダの不倫相手に対して「(悪人じゃないのはわかるけど)死ねばいいのに…! って思った」という意見に皆が賛同していたのは印象的でした。


 さて読書会の最後は恒例の【次に読むならコレ!】を挙げてもらいました。
 北方の島が舞台のミステリーとしてアン・クリーブス『大鴉の啼く冬』他(シェトランド島シリーズ)、ヴィヴェカ・ステン『静かな水のなかで』、ハンナ・ケント『凍える墓』
 ゴースト関連でキャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』、アリス・キンバリー『幽霊探偵からのメッセージ』(ミステリ書店シリーズ)、キャロライン・ヘインズ『ダリアハウスの陽気な幽霊』
 灯台で北欧と言えばコレ! トーベ・ヤンソンムーミンパパ 海へ行く』ムーミンパパが灯台守になるお話)。


 前回の課題書も北欧ミステリーだったので、被らないように皆さんかなり悩まれてあげてくださいました。ありがとうございました。


 次回の浜松読書会は秋頃開催予定、課題書はM・J・カーター:著 高山真由美:訳『紳士と猟犬』早川書房)です。
 告知の際には、よろしくお願いいたします。


浜松読書会世話人 山本三津代(@nirokuya

これまでの読書会ニュースはこちら


黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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赤く微笑む春 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

赤く微笑む春 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)

水の葬送 (創元推理文庫)

水の葬送 (創元推理文庫)

静かな水のなかで 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

静かな水のなかで 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

凍える墓 (集英社文庫)

凍える墓 (集英社文庫)

クリスマスに少女は還る (創元推理文庫)

クリスマスに少女は還る (創元推理文庫)

ミステリ書店(1) 幽霊探偵からのメッセージ (ランダムハウス講談社文庫)

ミステリ書店(1) 幽霊探偵からのメッセージ (ランダムハウス講談社文庫)

ダリアハウスの陽気な幽霊 (創元推理文庫)

ダリアハウスの陽気な幽霊 (創元推理文庫)

新装版 ムーミンパパ海へいく (講談社文庫)

新装版 ムーミンパパ海へいく (講談社文庫)

紳士と猟犬(ハヤカワ・ミステリ文庫)

紳士と猟犬(ハヤカワ・ミステリ文庫)

NY Timesベストセラー速報20170723(執筆者・佐藤桂)

アメリカのベストセラー・ランキング
7月23日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)


1. CAMINO ISLAND    Stay
John Grisham ジョン・グリシャム

Camino Island

Camino Island

プリンストン大学の図書館で厳重に保管されていた古い原稿が盗まれた。若い女性作家のマーサーは謎めいた女性から依頼を受け、フロリダの島で人気書店を営みながら裏では稀覯本の闇取引で儲けているというブルースを、秘密裏に調査することになる。


2. MURDER GAMES    Stay
James Patterson and Howard Roughan ジェイムズ・パタースン、ハワード・ローワン

Instinct (previously published as Murder Games) (English Edition)

Instinct (previously published as Murder Games) (English Edition)

犯罪心理学の権威であるラインハートは、ニューヨーク市警の要請を受け、連続殺人事件の捜査に協力する。現場にはトランプのカードが残されており、ラインハートはそれが犯人の署名的行動ではなく、つぎの犠牲者を示す手がかりになっていると推理する。


3. USE OF FORCE    Stay
Brad Thor ブラッド・ソー

Use of Force: A Thriller (The Scot Harvath Series Book 17) (English Edition)

Use of Force: A Thriller (The Scot Harvath Series Book 17) (English Edition)

アメリカ海軍特殊部隊SEALS出身のエージェントが活躍するスコット・ハーヴァス・シリーズの第16作。地中海が激しい嵐に襲われてから数日後、大物テロリストの死体が岸に打ちあげられる。その男が大規模なテロ攻撃をおこなうために移動中だったと考えたCIAは、ハーヴァスに調査を依頼する。


4. INTO THE WATER    Up
Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

Into the Water: The Sunday Times Bestseller

Into the Water: The Sunday Times Bestseller

イギリスの小さな町を流れる川の底から、ネルという名のシングルマザーの死体が発見される。そのあたりは地元では“溺死の淵”と呼ばれ、かつての魔女狩りで魔女とされた女たちが命を絶った場所として知られていた。ネルは魔女に強い興味を持ち、淵の歴史を書き綴った手稿を遺していた。


5. THE DUCHESS    Down
Danielle Steel ダニエル・スティー

The Duchess: A Novel

The Duchess: A Novel

19世紀イングランド。公爵の娘アンジェリクは父にかわいがられて育ったが、18歳のときにその父が亡くなると、異母兄に疎まれて放逐されてしまう。パリに渡ったアンジェリクは、父の遺産を元手に上流階級向けのクラブを開く。


6. THE IDENTICALS    Stay
Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

The Identicals: A Novel (English Edition)

The Identicals: A Novel (English Edition)

恋も仕事も長つづきしない気まぐれなハーパー。完璧主義でやかまし屋のタビサ。両親の離婚後、長年のあいだナンタケット島とマーサズ・ヴィニヤード島に別れて暮らしてきた双子の姉妹は、行きづまった人生を立て直そうと、互いの家を交換することに決める。“サマー・ノベルの女王”と呼ばれる人気作家の最新作。


7. WIRED    New!
Julie Garwood ジュリー・ガーウッド

Wired (English Edition)

Wired (English Edition)

FBI捜査官のリアム・スコットは、情報を漏らした裏切り者を突きとめるため、大学に通うかたわらモデルもしている美しい天才ハッカー、アリソン・トレントに協力を求める。ロマンティック・サスペンスのFBIシリーズ(ブキャナン・レナード・シリーズ)第13作。


8. A GENTLEMAN IN MOSCOW    Up
Amor Towles エイモア・タウルズ

A Gentleman in Moscow

A Gentleman in Moscow

1922年、反体制的な詩を書いたとしてスターリン政権によりモスクワ中心部のメトロポール・ホテルに軟禁されることになったロストフ伯爵。彼がそこで過ごした30年間を描く。2011年に“THE RULES OF CIVILITY”でデビューした著者の長篇第2作。


9. THE SILENT CORNER    Down
Dean Koontz ディーン・クーンツ

The Silent Corner

The Silent Corner

FBI捜査官ジェイン・ホークは夫の自死を不審に思い、理由を突き止めようとする。大きな力を持つ何者かが秘密を守るべく迫りくるなか、ジェインはひそかに真相へと近づく。強さとやさしさを備えた魅力的なヒロインの活躍する新シリーズの第1作。


10. THE FORCE     Up
Don Winslow ドン・ウィンズロウ

The Force: A Novel (English Edition)

The Force: A Novel (English Edition)

ニューヨーク市警で精鋭チームを率いるデニー・マローンは、麻薬と暴力がはびこり、人種間の争いが絶えない街を18年守ってきたタフな警察官で、“マンハッタンノースのキング”とも呼ばれている。だが、その道に通じたすえにみずから薬に手を出し、賄賂を受け取るようになり、ついにはヘロイン密輸に絡む大金を手にする。映画化が予定されているクライムノベル。


【まとめ】
上位3作が先週と変わらず、新作はひとつだけという、動きの小さいランキングになりました。7位に登場したジュリー・ガーウッドのFBIシリーズは、第1作の『心うち砕かれて』(二見書房)から第9作『傷痕に優しいキスを』(ヴィレッジブックス)まですべて邦訳が出版されていて、まもなく第10作「『暗闇に重なる吐息』(ヴィレッジブックス)が刊行される予定です。


佐藤桂(さとう けい)

神奈川在住の翻訳者。BBC版シャーロック4の鬱展開に打ちひしがれております。マイクロフトが好きです。


心うち砕かれて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

心うち砕かれて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

傷痕に優しいキスを (ヴィレッジブックス)

傷痕に優しいキスを (ヴィレッジブックス)

暗闇に重なる吐息 (ヴィレッジブックス)

暗闇に重なる吐息 (ヴィレッジブックス)

最新海外ミステリーニュース20170716(執筆者・木村二郎)

2017 Thriller Award Winners Announced
(国際スリラー賞受賞作発表)
 
The International Thriller Writers(ITW) has announced the winners for the 2017 Thriller Awards as follows:
 
Best Hardcover Novel: BEFORE THE FALL, by Noah Hawley (Grand Central)

晩夏の墜落 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

晩夏の墜落 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 
Best First Novel: THE DRIFTER, by Nicholas Petrie (Putnam)
The Drifter (A Peter Ash Novel Book 1) (English Edition)

The Drifter (A Peter Ash Novel Book 1) (English Edition)

 
Best Paperback Original Novel: THE BODY READER, by Anne Frasier (Thomas & Mercer)
The Body Reader (Detective Jude Fontaine Mysteries Book 1) (English Edition)

The Body Reader (Detective Jude Fontaine Mysteries Book 1) (English Edition)

 
Best Short Story: "Big Momma," by Joyce Carol Oates (Ellery Queen's Mystery Magazine, March-April 2016)
 
Best Young Adult Novel: STEEPLEJACK, by A. J. Hartley (Tor)
Steeplejack: Book 1 in the Steeplejack series (English Edition)

Steeplejack: Book 1 in the Steeplejack series (English Edition)

 
Best E-Book Original Novel: ROMEO'S WAY, by James Scott Bell (Compendium)
Romeo's Way (A Mike Romeo Thriller) (Mike Romeo Thrillers Book 2) (English Edition)

Romeo's Way (A Mike Romeo Thriller) (Mike Romeo Thrillers Book 2) (English Edition)

 
2017 ThrillerMaster Recipient: Lee Child
 
2017 Silver Bullet Award Recipient: Lisa Gardner, for charitable work
 
2017 Thriller Legend Award Recipient: Tom Doherty, for publishing & supporting thrillers
 
The winners were announced at on July 15, 2017, at the Grand Hyatt in New York City during ThrillerFest XII. (July 16. 2017)
 

候補作一覧はこちら

 

晩夏の墜落 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

晩夏の墜落 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

晩夏の墜落 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

晩夏の墜落 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 
新装版 キリング・フロアー 上 (講談社文庫)

新装版 キリング・フロアー 上 (講談社文庫)

新装版 キリング・フロアー 下 (講談社文庫)

新装版 キリング・フロアー 下 (講談社文庫)

前夜(上) (講談社文庫)

前夜(上) (講談社文庫)

前夜(下) (講談社文庫)

前夜(下) (講談社文庫)

ネバー・ゴー・バック(上) (講談社文庫)

ネバー・ゴー・バック(上) (講談社文庫)

ネバー・ゴー・バック(下) (講談社文庫)

ネバー・ゴー・バック(下) (講談社文庫)

 
棺の女 (小学館文庫)

棺の女 (小学館文庫)

素顔は見せないで (ヴィレッジブックス)

素顔は見せないで (ヴィレッジブックス)

愛しき人は雨に消されて (ヴィレッジブックス)

愛しき人は雨に消されて (ヴィレッジブックス)