第20回福島読書会のお知らせ

 
【重要】開催時間が変更になりました。下記【日時】をご確認ください。(7月27日追記)


『Yの悲劇』を読んでいない位なら『Xの悲劇』も『Zの悲劇』も手にとったことはないだろう。そしてまた『ABC殺人事件』も覗いたことがないだろう。つまり探偵小説のAからZまで知らないだろう。(丸谷才一『深夜の散歩』より)


 柿沼瑛子さん、那波かおりさんにもご参加いただいた、ロス・マクドナルド「W」の悲劇とも称すべき『ウィチャリー家の女』読書会の余韻もさめやらぬうちに、次回「Y」の読書会のお知らせです。クリスティー『ABC殺人事件』でスタートした翻訳ミステリー福島読書会も20回目。残り2回となりました。ゴール目前です。課題書は問答無用、「Y」といえばこれしかありません。


Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)

Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)


 今回の読書会は「エラリー・クイーン著、ドルリー・レーン4部作読了者のための、角川文庫版『Yの悲劇』」と名付けました。テキストに指定した角川文庫版の翻訳者、越前敏弥さんにもご参加いただいて、レーンの登場する4作まとめてネタバレありで『Yの悲劇』読書会をおこないます。
 今回の参加資格は
(1)レーン4部作をすべて読了していること
(2)角川文庫版『Yの悲劇』を、あの、最後の一行まで読んでいること
のふたつです。これまで井上良夫、妹尾アキ夫、大久保康雄、鮎川信夫平井呈一、砧一郎、田村隆一、宇野利泰、鎌田三平、各氏の翻訳で『Y』をお読みのかたも、ぜひこの機会に越前敏弥さん翻訳の角川文庫版を再体験してください。


 8月末の福島が、6月弘前『中途の家』、7月仙台『スペイン岬の秘密』、8月札幌『Yの悲劇』と偶然にもつづいた夏のクイーン祭りの大トリとなります。
 今回も福島読書会恒例、課題書にちなんだ食べモノを準備してみなさまのご参加をお待ちしております。



***募集要項 ***
日時:2017年8月27日(日)14:00開場 受付14:15 14:30〜16:30
※時間が変更になりました。(7月27日追記)
13:05開場 受付13:15 読書会13:30〜16:30


場所福島県二本松市 市民交流センター2階創作スタジオ


課題書4冊:レーン4部作のほかの3作に関して指定はありませんが、『Yの悲劇』は角川文庫版指定エラリー・クイーン著 越前敏弥訳)


定員:12名


参加費:500円 学生無料
*8月の札幌『Yの悲劇』読書会参加者無料。
*前日8月26日(土)福島県郡山市で開催される、福島『魔都』読書会(詳細は福島読書会ブログまで)参加者無料。


申込方法
◎専用アカウント(nazotoki2013@mail.goo.ne.jp)までメールでお申し込みください。タイムスケジュールなどのお問い合わせもこちらまで。


◎読書会のタイトルがいかにも長いですね、「ヤシオリ作戦」にしましょう。お申込みメールの件名をヤシオリ作戦参加」とし、メール本文にお名前と連絡のとれる電話番号をご記入ください。また、ツイッターアカウント@nazotoki2012でも受け付けております。


◎先着順で受け付け、定員に達した段階で締め切らせていただきます。ご了承ください。


◎読書会前と後に、越前敏弥さんを囲んで「二本松の美味いラーメンを食べる会」開催。自由参加、別会費。
詳細は参加者のかたに直接お知らせいたします。


主催:翻訳ミステリー福島読書会AtoZ
後援:翻訳ミステリー大賞シンジケート
 

これまでの読書会ニュースはこちら

 

Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)

Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)

Yの悲劇 (1950年) (ぶらっく選書〈第10〉)

Yの悲劇 (1950年) (ぶらっく選書〈第10〉)

Yの悲劇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

Yの悲劇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

Yの悲劇 (新潮文庫)

Yの悲劇 (新潮文庫)

Yの悲劇 (1957年) (世界探偵小説全集)

Yの悲劇 (1957年) (世界探偵小説全集)

Yの悲劇 (角川文庫 赤 507-1)

Yの悲劇 (角川文庫 赤 507-1)


Xの悲劇 (角川文庫)

Xの悲劇 (角川文庫)

Zの悲劇 (角川文庫)

Zの悲劇 (角川文庫)

レーン最後の事件 (角川文庫)

レーン最後の事件 (角川文庫)

中途の家 (角川文庫)

中途の家 (角川文庫)

スペイン岬の秘密 (角川文庫)

スペイン岬の秘密 (角川文庫)

第22回福岡読書会のご案内

 
 第22回福岡読書会は、8月26日(土)に開催されます。


あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)


 課題書はすでにお知らせしているとおり、あなたの人生の物語テッド・チャン著/浅倉久志他訳 ハヤカワ文庫SF)となっております。5月に公開された映画『メッセージ』の原作である表題作を含む、全八編の短編集です。短編集としてローカス賞を受賞した他、収録作の多くがヒューゴー賞ローカス賞ネビュラ賞などを受賞しているというバケモノのような短編集でもあります。


 この短編集について、ぜひみなさまとこころゆくまで語り合いたいと考えております。ご参加を、心よりお待ち申し上げます。

日 時 2017年8月26日(土)15:30〜17:30(懇親会別途予定あり)
場 所 福岡市某所
   (参加申し込みをされた方に別途ご案内いたします)
課題書 あなたの人生の物語
   (テッド・チャン著/浅倉久志他訳 ハヤカワ文庫SF)
    ※電子書籍あり
定 員 25名
参加費 500円


【申し込み方法】
 メールでのお申し込みとなります。件名を「第22回福岡読書会」として(見落とし防止のため、ご協力をお願いいたします)、福岡読書会専用アカウント fukuokamysteryreadingcircle@gmail.com へ、以下のフォーマットをご利用のうえ、お申し込みください。


―――――お申し込みフォーマット―――――


お名前(ご本名でお願いいたします。商業紙に発表のあるプロの方の筆名は可です):
緊急連絡用の電話番号:
懇親会の出欠:
出版関係者およびそれに準じるかたですか:
ご年代:(自由回答です)
お住まいの都道府県:(自由回答です)


―――――フォーマットここまで――――――


※定員に達した時点で受付を締め切ります。
※読書会終了後は、近くのお店で懇親会をおこないます(会費別途、学生割引あり)。お申し込みの際に出欠をお知らせください。
※シンジケートでの告知掲載から、一週間をめどに、受付確認のメールをお送りしますので、@gmail.comからのメールを受信できるようあらかじめ設定をお願いいたします。
※携帯電話からのお申し込みで、こちらからのメールが届かない事例がおこっております。お申し込みから一週間を過ぎても、こちらから返信がない場合はお知らせください。


(福岡読書会世話人 大木、村上)

書評七福神の六月度ベスト発表!

 
書評七福神とは翻訳ミステリが好きでたまらない書評家七人のことなんである。


 今月も書評七福神がやってまいりました。東京では今年初の真夏日を記録し、うだるような暑さが到来しております。こういうときは無理な外出を避け、冷房の効いた室内で翻訳ミステリー読書といきたいですね。ではでは、始まります。

 
(ルール)

  1. この一ヶ月で読んだ中でいちばんおもしろかった/胸に迫った/爆笑した/虚をつかれた/この作者の作品をもっと読みたいと思った作品を事前相談なしに各自が挙げる。
  2. 挙げた作品の重複は気にしない。
  3. 挙げる作品は必ずしもその月のものとは限らず、同年度の刊行であれば、何月に出た作品を挙げても構わない。
  4. 要するに、本の選択に関しては各人のプライドだけで決定すること。
  5. 掲載は原稿の到着順。


北上次郎
『砕かれた少女』カリン・スローター/多田桃子訳
マグノリア・ブックス
砕かれた少女 (マグノリアブックス)
 先月当欄で取り上げたカリン・スローターの『サイレント』は6月刊、こちらは5月刊の翻訳だから、先にこちらを紹介するべきだった。ウィル・トレント・シリーズの弟2弾である。サラ・リントンを始めとするグラント郡シリーズの主要キャラがこちらに合流する前の作品だが、それでもこれだけ面白いのだから、カリン・スローターの作家としての力量が図抜けているということだろう。フェイスがここから登場したことを初めて知る。これでウィル・トレント・シリーズは1〜4作まで翻訳されたことになるので、あとはグラント郡シリーズの翻訳が待たれる。こちらのシリーズ、弟1巻の『開かれた瞳孔』が復刊されたら(2〜6が未訳)、絶対にみんな、ぶっ飛ぶ。


川出正樹
『彼女たちはみな、若くして死んだ』チャールズ・ボズウェル/山田順子
創元推理文庫
彼女たちはみな、若くして死んだ (創元推理文庫)
 若い女性が犠牲者となった10の事件からなる先駆的な犯罪実話集『彼女たちはみな、若くして死んだ』を強力に推す。ヒラリー・ウォーを虜にし、『失踪当時の服装は』を書かせ、〈警察捜査小説〉確立のきっかけとなった本書は、ミステリ界にパラダイム・シフトを引き起こすきっかけとなった重要なノンフィクションだ。扇情的な書き方を廃し、犠牲者や犯人らの内面描写を一切行わず、冷徹に淡々と事実のみを綴る独特なシンプルな筆法は、逆に悲劇に見舞われた人間が抱いたであろう心情をくっきりと浮かび上がらせる。
 相手を同じ人間と見なさず、歪んだ欲望と自己承認欲求に根ざした勝手な理屈で女性の命を奪う男たちによる残酷な犯罪は、今日に至るまで連綿と繰り返されている。なればこそ、 覗き見趣味がしたたる実話読み物とは一線を画すチャールズ・ボズウェルのジャーナリストとしての矜恃がはっきりとうかがえる不朽の作品集を、多くの方に読んで欲しい。
 フィクションでは、ルーマニア人作家E・O・キロヴィッツによる、嘘と真のモザイクを敷きつめた〈鏡の迷路〉を歩まされているかのような企みとサスペンスに充ちたWhydunit『鏡の迷宮』(集英社文庫)と、探偵役のドライデンが、いつにも増して因縁深い事件とかかわったゆえに英国流本格ミステリと米国流私立探偵小説の融合というジム・ケリーの特長がより色濃くなった『凍った夏』(創元推理文庫)がお薦め。


千街晶之
『閉じられた棺』ソフィー・ハナ/山本博・遠藤靖子訳
クリスティー文庫
閉じられた棺 (クリスティー文庫)
 たとえ遺族公認の「名探偵ポアロ」シリーズ続篇であろうと、(前作『モノグラム殺人事件』もそうであったように)ソフィー・ハナの作品世界はアガサ・クリスティーのそれとは全く違うし、彼女が描くポアロも全然ポアロらしくない。だが、クリスティーパスティーシュとしてどうかという観点から離れるなら、これほどよく出来た黄金期風本格ミステリを書ける現代作家もなかなかいない。大富豪の遺言状書き換えが事件を呼ぶという定番の古めかしい設定からスタートしつつ、その後の展開はなかなか予想できない。矛盾した証言、次々と明らかになる意外な事実、関係者たちの嘘を暴いてゆくポアロの鋭い洞察、そして最後に鮮やかに立ち上がってくる殺人者の人物像と、隅々まで面白くてわくわくさせられる。ソフィー・ハナのことはクリスティーの後継者として見るのではなく、全く別の個性を持つ優れた作家として評価しよう。


吉野仁
『その犬の歩むところ』ボストン・テラン/田口俊樹訳
文春文庫
その犬の歩むところ (文春文庫)
 ほかの作家が同じような話「犬によって救いや癒しを受けた人たちの物語」を書けば、大半はただ泣かせるパターンの寄せ集めになるかもしれないが、ボストン・テランはちがう。陳腐な人情劇とはまったく異なる骨太なドラマがここにある。心の琴線への響きが強く深いのは、文章表現が巧いからだろうか。なによりアメリカ現代史の有名な事件や災害が残した暗部について考えさせられる側面はもちろん、犬という生き物の愛おしさをあらためて思い知る。そのほか、サンドローネ・ダツィエーリ『死の天使 ギルティネ』は帯に「ジェフリー・ディーヴァー絶讃」とあるが、まさにイタリアのディーヴァーと呼びたくなるほど外連味あふれる犯罪の連続と個性豊かなキャラクターの活躍で楽しめた。このシリーズ、必読です。


霜月蒼
『神様も知らないこと』リサ・オドネル/川野靖子訳
神様も知らないこと (ハーパーBOOKS)
 幼い姉妹が父親の死体を庭に埋め、父の死を受けて自殺した母親の死体を隠すところで物語ははじまる。ふたりは両親の死を誰にも告げぬまま生活をつづけようとする。聡明だが不良気味の姉と、イノセントで少し変わり者の妹、ふたりの隣人で一人で暮らす老人の一人称で物語は語られ、徐々に三人それぞれが置かれた苛酷な環境が明らかにされてゆく……。
 派手な事件は何も起こらない。けれども、ガラスの上をつなわたりするような少女たちの危うい歩みと、世の偏見のために忍従を強いられる隣人の生がはらむ破滅の予兆は、読む者を捉えて離さないだろう。世界の酷薄さから眼をそらさず、死や悪をめぐる描写は手加減せず、でも少女たちが体験するささやかな幸せは鮮烈に描かれるし、最後には人間への信頼のようなものをきちんと残して物語は閉じる。
 6月は他にも、好調ハーパーBOOKSの『嘘つきポールの夏休み』、ディーヴァーとイタリア流ジャーロを組み合わせたようなスリラー『死の天使ギルティネ』、テラン『その犬の歩むところ』など快作が多数の月でした。


酒井貞道
『フロスト始末』R・D・ウィングフィールド/芹澤恵訳
創元推理文庫
フロスト始末〈上〉 (創元推理文庫)
フロスト始末〈下〉 (創元推理文庫)
 名シリーズ最後の作品である。警察署の繁忙を目まぐるしく描きつつ、重い事件と軽やかな台詞回しを両立し、おまけに人間模様を活き活きと描き出す。要はいつも通りの芸風で、いつも通り最上級に面白い。この水準を最初から最後まで維持したのは奇跡だ。少々重い要素が散見されて、作者の若干の変調を観測できる辺りは興味深いが、ここから更なる変化/発展を遂げるかを確認することは、作者の死(10年も前だ!)によって絶対に不可能となった。ならば本シリーズが無事に訳し終えられたことを喜び、感謝するのを優先したい。他にはジム・ケリー『凍った夏』も素晴らしい出来栄えであった。


杉江松恋
『書架の探偵』ジーン・ウルフ酒井昭伸
新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
 人口が10億人まで減少した22世紀の地球、オンデマンドで印刷される以外に紙の本が作られることはなくなった時代に、それでも実物を陳列する図書館は存在していた。そこで貸し出されるのは「作家」だ。作家の脳をスキャンし、その記憶を写した複生体(リクローン)たちが図書館の書架で生活し、貸し出しを待つ日々を送っていた。SF・ミステリー作家の複生体であるE・A・スミスもその一人だ。ある日彼は美貌の女性コレット・コールドブルックに長期で借り出される。彼女は最近になって父と兄を相次いで亡くしていた。その兄が死の直前に手渡してきたスミスの著書『火星の殺人』になんらかの秘密が隠されていると考え、作者自身であるスミスに接近してきたのだという。しかしスミスには、自分がその『火星の殺人』なる本を上梓したという記憶がなかった。
 私立探偵小説のプロットを応用すると同時に、本に関する小説というビブリオ・ミステリーの性格も備えた意欲作である。ミステリーに関する造詣が深いがために自著にまつわる謎解きに主人公が駆り出されるという話の構造に自己言及の要素が含まれており、現実とその複製である虚構との関係について読者は各処で思いを馳せることになる。読み進めれば読み進めるほどに本の世界の中に引き込まれていくのである。これほどまで自然に没頭させられる小説はまたとない。素晴らしい読書体験を約束してくれる一冊だ。
 今月はチャールズ・ボズウェルの里程標的犯罪ノンフィクション『彼女たちはみな、若く死んだ』が刊行されており、ヒラリー・ウォーのファンとしては読まずにいられない一冊であった。また、パトリック・ジュースキント『香水』を思わせる殺人者小説、トーマス・ラープ『静寂 ある殺人者の記録』も素晴らしいのだが、書架で貸出を待つ作家、という設定だけでもう忘れられなくなるジーン・ウルフの作品を選んだ。豊作の6月であった。
 


 ひさしぶりの全員バラバラ月でした。それだけ票が割れるほどに傑作が目白押しだったということでしょう。翻訳ミステリー界は今年も絶好調です。2017年も下期に入りました。次はどんな傑作が刊行されるのか、期待は膨らむばかりです。(杉)

 

書評七福神の今月の一冊・バックナンバー一覧

 

砕かれた少女 (マグノリアブックス)

砕かれた少女 (マグノリアブックス)

彼女たちはみな、若くして死んだ (創元推理文庫)

彼女たちはみな、若くして死んだ (創元推理文庫)

閉じられた棺 (クリスティー文庫)

閉じられた棺 (クリスティー文庫)

その犬の歩むところ (文春文庫)

その犬の歩むところ (文春文庫)

神様も知らないこと (ハーパーBOOKS)

神様も知らないこと (ハーパーBOOKS)

書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

サイレント 上 (ハーパーBOOKS)

サイレント 上 (ハーパーBOOKS)

サイレント 下 (ハーパーBOOKS)

サイレント 下 (ハーパーBOOKS)

開かれた瞳孔 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

開かれた瞳孔 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

鏡の迷宮 (集英社文庫)

鏡の迷宮 (集英社文庫)

凍った夏 (創元推理文庫)

凍った夏 (創元推理文庫)

モノグラム殺人事件 (クリスティー文庫)

モノグラム殺人事件 (クリスティー文庫)

死の天使ギルティネ(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

嘘つきポールの夏休み (ハーパーBOOKS)

嘘つきポールの夏休み (ハーパーBOOKS)

ある人殺しの物語 香水 (文春文庫)

ある人殺しの物語 香水 (文春文庫)

静寂 (ある殺人者の記録)

静寂 (ある殺人者の記録)

第2回 Empathy for the Devil――『アンダーカバー』(執筆者:今野芙実)

 
 みなさんこんばんは。第二回のミステリアス・シネマ・クラブです。このコラムではいわゆる「探偵映画」「犯罪映画」だけではなく大きな「謎」があるすべての映画をミステリ(アスな)映画と位置付けてご案内しております。
 
 前回は日常系SFをご紹介しましたが、今回はより翻訳ミステリー大賞シンジケートらしい作品を。小説でも映画でも多方面から人気が高い「潜入捜査官もの」です。『フェイク』『インファナル・アフェア』『新しき世界』といったシリアスでハードなものから『21ジャンプストリート』(および続編『22ジャンプストリート』)のようなライトなコメディまで、名作多数のこのジャンル。特にシリアスな題材での「潜入」という状態がもたらす足元の不安定、正しい理由があるとしても「フリをする」「欺く」という行為そのものが持つ背徳性といったものに惹かれてならないという方は多いのではないでしょうか。ええ、私もその一人です。
 
 今回ご紹介するのは、その名作群に連なるものであり、同時にこのジャンルを今、この時代にどう語るべきかという意識を強く感じる「ジャンルのアップデート」作。ダニエル・ラグシス監督の『アンダーカバー』です。
 
 

『アンダーカバー』(Imperium)[2016.米]

アンダーカバー [DVD]

アンダーカバー [DVD]

 

あらすじ:放射性物質が大量に行方不明になる事件が発生し、大型テロの可能性が浮上し、若きFBI捜査官ネイト・フォスター(ダニエル・ラドクリフ)は上司からネオナチ武装組織への潜入捜査という任務を与えられる。白人至上主義者たちの扇動者に近づき、テロ計画について調査するのだ。なぜ捜査官の中でも決して「タフ」なほうではない僕が? 戸惑いながらスキンヘッドの一員に加わり、ネオナチグループに入り込むネイト。しかし、なかなか決定的なテロ計画の証拠は見つからず……

 


 
 決定的な事件になかなか至らない停滞で不穏を醸成する脚本の丁寧さ、巧みな音楽使い、ストーリーの根幹にある価値観の真っ当さ、鈍色のサスペンス性、諸々の美点をひとつひとつ語りたくなる大変現代的なエスピオナージです。『Thinking Like a Terrorist: Insights of a Former FBI Undercover Agent』の著書を持つ元FBI捜査官、マイク・ジャーマンの実際の潜入経験が元になっているとのこと。
Thinking Like a Terrorist: Insights of a Former FBI Undercover Agent

Thinking Like a Terrorist: Insights of a Former FBI Undercover Agent

 
 私はこの著作自体は未読なのですが、このタイトルが根底にあるテーマと深く響きあっていることはご覧になった方ならきっとお分かりになることでしょう。身分秘匿捜査の手法やテロ計画を探ることのスリル以上に、今作の最大の魅力は潜入捜査を通じて「共感すること」への優れた考察が提示される構成にある、と私は感じました。
 
 この映画、言葉がもたらす共感の複層的な表現が見事です。序盤で主人公ネイトが逮捕された青年を尋問するとき、相手の母語で語り掛けることが引き出す真実。そのネイトは逮捕現場ではタフな同僚たちからの疎外感を味わい、部屋でもオフィスでもずっとヘッドホンでクラシック音楽を聴いている内向的な青年で、FBIのチーム内では「共感されない」存在。彼は潜入捜査の中で「(自分も大好きな)ブラームスの話ができて、親切であたたかく、家族を大事にする穏やかな男性」が白人至上主義者であるということに悲しみと混乱を感じ、ヘイトスピーチシュプレヒコールする「ホワイト・パワー」デモで群衆から向けられる敵意にネオナチグループのメンバーたちが抱く恐怖と緊張にも、彼らの組織内で認められたい感情の強さにも気づく。
 
 自分の倫理からは悪魔の組織にさえ思える団体の一員のフリをするということは、「彼らのように」思考し、「彼らのような」パフォーマンスをし続け、共感させ、仲間になっていくこと。それは彼らが「悪魔ではない」ことを知ることでもある。がゆえに、あまりに厳しいことで、主人公は終始、自分自身の感情と相手の立場で考えることでの「共感」により引き裂かれ続けるのです。か、過酷……
 
 ネオナチのマッチョな世界に身を投じる羽目になった、優秀なプロフェッショナルではあるが内向的で争いを好まない青年、その都度の共感に引き裂かれながら知性と誠実さで自身を本来の自分につなぎとめ続けるネイトを演じたダニエル・ラドクリフが名演を見せています。繰り返し名乗りの練習をする地味なシーンひとつさえ地味にならない、唯一無二の主演力。彼が「見た目より大人だな」と言われながら重用されていくことが頷ける存在感があるからこそ成立するストーリーであるともいえるでしょう。
 
 やがて明らかになっていくのはネイトの潜入先のグループやその上位組織が一枚岩ではないどころかあまりにも脆弱なこと。上下関係を競い合っていて、雑な武装と曖昧な計画で成り立っていること。彼らが「プロ」には程遠い、それゆえのあやうさの塊であること……しかし問題のテロ計画についてなかなか調査が進まない……その状況がじっくり描かれた先にある展開を説明することはもちろん避けておきましょう。
 
 さて、このストーリーから(否応なしにも)想起されるのは、国内外の社会や政治においてこの1年余りではっきりと見えてきてしまった価値観の異なるものの分断と差別的言辞の頭が痛くなるような話の数々です。しかしそんな題材を扱いながらこの映画は最後まで冷笑的にならず、どんなところにも「人間」がいるということから目を離していません。倫理の底が抜けてしまった、いわゆる post-truth の時代と言われる今、ネオナチメンバーのあやうさや扇動者の醜悪さを強調する以上に「ただ、彼らの視点で考えられる」捜査官の「共感と対話」を軸にしてこの題材を描いた態度は作り手が「言葉」と「人間」の危険性と希望の両方をまとめて引き受けた覚悟だと感じました。厳しい上司がネイトと交わすエピローグの対話はその象徴のよう。それがどんな言葉なのかは、ぜひご覧になってお確かめください。
 

■よろしければ、こちらも
サイコパスを探せ! 狂気をめぐる冒険』(ジョン・ロンソン)

サイコパスを探せ! : 「狂気」をめぐる冒険

サイコパスを探せ! : 「狂気」をめぐる冒険

 
サイコパス」と呼ばれる人格障害を巡って宗教団体、犯罪者、被害者、医師、学者といろんな方向から一筋縄でいかない話を取材していくこのノンフィクションはある種のミステリーとして読める1作。ジョン・ロンソンは身分を隠した「潜入」型の取材をしているわけではないのですが、価値観や主義主張、有名無名問わず、とにかくフットワーク軽く「まずはじかに聞きに行く/出来る限りは対話する」を貫いています。まったくストーリーに関連はありませんが、この態度は『アンダーカバー』の誠実さと通底している、かもしれません。
 可笑しいのはすぐに答えに飛びつかない、ではなく簡単に共感してしまって答えらしきものに飛びついてはふと我に返って「あ、やっちまった……」を繰り返す語り口。これがなんとも率直でエキサイティング。どこかすっとぼけた調子の「狂気を巡る冒険」の先には、いたって真っ当な「明確ではないことを単純化してしまうことのあやうさ」が見えてきます。
 
 人間はそう簡単に「あっち側」と「こっち側」に切り離せるものじゃない。コトはそう単純じゃない。そんな視点を持った作品に出会ったとき、私は最も現代のフィクションを観る/読む楽しみを感じるのかもしれない……なんてことを考えながら、それでは、今宵はこのあたりで。また次回のミステリアス・シネマ・クラブでお会いしましょう。
 
今野芙実(こんの ふみ)


 webマガジン「花園Magazine」編集スタッフ&ライター。2017年4月から東京を離れ、鹿児島で観たり聴いたり読んだり書いたりしています。映画と小説と日々の暮らしについてつぶやくのが好きなインターネットの人。
 twitterアカウントは vertigo(@vertigonote)です。

 
新しき世界 [Blu-ray]

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ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち (光文社新書)

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実録・アメリカ超能力部隊 (文春文庫)

実録・アメリカ超能力部隊 (文春文庫)

 

第八十六回はミネット・ウォルターズの巻(執筆者・河出 真美)

 
 デビュー作「氷の家」で英国推理作家協会(CWA)最優秀新人賞を受賞、続く第二作「女彫刻家」で「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10二冠を達成、その後も寡作ながら評価の高い作品を発表し続け、近年では日本語翻訳版の最新刊「悪魔の羽根」が各種ミステリランキングを騒がせたのも記憶に新しい英国ミステリの女王、ミネット・ウォルターズ。今回ご紹介するのは二〇一五年に出版されたウォルターズの現時点での最新作、 “The Cellar” 「地下室」です。
 

The Cellar

The Cellar

 
 “Muna’s fortunes changed for the better on the day that Mr and Mrs Songoli's younger son failed to come home from school.”
 「ソンゴリ夫妻の下の息子が学校から帰らなかったその日、ムーナの運命はいい方へと変わった。」
 
“The Cellar”はこのどこか不穏な一文で幕を開けます。物語の主人公は十四歳の少女、ムーナ。彼女は八歳の時に孤児院から連れて来られ、以来ソンゴリ家の地下室(=Cellar)で寝起きし、彼女がそれぞれ“旦那様”“お妃様”と呼ぶ夫のエブカと妻のイェトゥンデ、その息子のオルバヨとアビオラからなるソンゴリ一家にひどい仕打ちを受けながら、学校にも行けず、読み書きすら習えずにこき使われています(そんなムーナの境遇から、ウォルターズのインスピレーションの源は年若い女性が連れ去られ監禁されたエリザベス・スマート誘拐事件やクリーブランド監禁事件にあるのではないかと論じるレビューもあります)。ムーナは教育の機会を奪われているために読み書きこそできないものの、高い知能を持ち、復讐の機会を窺っています。チャンスはアビオラ失踪事件が発生した時やってきます。捜査のため警察がソンゴリ家にやって来ると、自分たちがムーナを不当に扱っていることを知られたくないソンゴリ一家は、彼女が夫妻の娘で、脳に障害があるため家にこもっているということにするのです。こうしてまともな服、部屋、ベッドを手に入れたムーナ。ですが、彼女の望みはこんなものではありません。復讐はまだ始まったばかりです。
 
 この本のすごいところはなんと言っても主人公ムーナにあります。彼女の台詞で一番印象深いのがこちら。
 
 “I am what you made me, Princess. All I know is what you’ve taught me.”
 「私を作ったのはあなたたちです、お妃様。私の知っていることはみんなあなたたちに教わったことです」
 
 境遇だけ見れば「かわいそう」という形容詞がぴったりきそうなものですが、ムーナは決して「かわいそう」ではありません。たとえばムーナが愛情あふれる家族の元からさらわれてきた普通の少女だったら、家族恋しさに泣き、必ず戻ると誓い、懸命に頭を働かせて、誰か信頼できそうな人間に助けを求めるという、もっと穏当なやり方で脱出を図っていたかもしれません。でもムーナは違います。元々孤児院にいて、特定の誰かに愛情を注がれていたわけではないムーナはまともに感情を育てる間もなくソンゴリ一家による身体的、精神的な暴力に晒され、上の台詞のとおり、彼らによって教えられたことしか知らない生き物、つまり暴力しか知らない怪物へと作り変えられたのです。そう、この物語は哀れな少女が恐ろしい怪物たちをこらしめる物語ではありません。痩せっぽちの体からは想像できないほどの冷たさと恐ろしいほどの頭のよさを備え持ったムーナと非道なソンゴリ一家という怪物対怪物の物語なのです。
 
 ムーナの怪物ぶりはその考え方にはっきりと現れています。作中、ムーナのことを気にかけてくれる数少ない登場人物が親切な隣人のヒューズ夫妻です。十四歳にしては体が小さいのではないか、寒い思いをしているのではないかとムーナを思いやり、何かと助けようとしてくれるふたり。よくある筋書きならここで外の世界には優しい人もいるんだと気づき、氷のような心も溶けて暴力に疑問を抱くようになったり、夫妻に恩義を感じたり愛情を覚えたりするところですが、ムーナにかぎってそんなことはありません。ムーナの関心はただただ彼らが何かに勘付くのではないか、自分の邪魔になるのではないかという点に限られています。やがてムーナに愛着を抱くようになっていくソンゴリ一家の一員に対してもそう。今まで散々な目に遭わされてきたことを思えば当然かもしれませんが、その人物の涙を見ながらムーナが感情を動かされることはなく、弱くて馬鹿なやつだと思うばかり。作中、徹底して彼女が自分以外の誰かを気遣うことはありません。誰もが復讐の対象か、さもなくばただの背景に過ぎないのです。その思考はまさにサイコパスのそれ。犯罪学や行動科学に関心があるというウォルターズだからこその描き方かもしれません。
 
 ムーナが次々と復讐を遂げていく様を見守りながら読者が覚えるのは、だからカタルシスではありません。ひたすらに恐怖です(作中、ある登場人物がたどった運命が明かされる場面の阿鼻叫喚と言ったら!)。特に後半、ムーナが復讐のために何をしてきたのかが明らかになってくると、その怪物ぶりの前では相当にひどいことをしているはずのソンゴリ一家が小物に見えてくるほど。“I go to sleep each night wanting to hear you beg. My dreams are happy ones – full of blood – and I feel better when I wake”「毎晩あなたたちが懇願する声を聞きたいと思いながら眠るんです。そして幸せな――血にまみれた夢を見ると、目が覚めたときには気分がよくなっているのです」なんて台詞は、少なくともソンゴリ一家程度では思いつきもしないでしょう。更に終盤、 “humour and laughter were as alien to her as smiling and speaking”「ユーモアも声を上げて笑うことも、ほほ笑みやしゃべることと同じで、彼女には縁がなかった」と描写されるほど、滅多に笑顔を見せることがないムーナが笑いながら××で××を××する場面などは叫びたくなるインパクトです。
 
 この本でムーナの、そしてソンゴリ一家の悪夢の舞台となるのがタイトルにもなっている地下室なのですが、ガーディアン紙のインタビューで、ウォルターズは自宅の地下室に通じる扉を開け、本に出てくるのとほぼ同じだと語っています。自宅の地下室であんなことやこんなことが起きる話を書けるウォルターズ、やっぱりすごいです。
 子どもの失踪事件という幕開けから、賛否両論必至、最後に笑うのは××なの? ええええっ!?となるラスト(米国版・カナダ版は英国版と違うバージョンだとか)まで、ハードカバー版で二四六ページというコンパクトさも手伝って読みやすく、先を読むのが怖い、でも読まずにいられない、悲鳴と衝撃に満ちた物語、“The Cellar”。日本語訳はまだまだ先(今作より早く書かれた長編が一作、中編が一編未訳のまま)のはずの今作、待ちきれない方はぜひ英語版でお読みください。
 
●"The Cellar" by Minette Walters
https://store.shopping.yahoo.co.jp/umd-tsutayabooks/mabu9780099594659w.html
 

河出真美(かわで まみ)

好きな海外作家の本をもっと読みたい一心で、作家の母語であるスペイン語を学ぶことに決め、大阪へ。新聞広告で偶然蔦屋書店の求人を知り、3日後には代官山蔦屋書店を視察、その後なぜか面接に通って梅田 蔦屋書店の一員に。本に運命を左右されています。おすすめ本やイベント情報をつぶやくツイッターアカウントは @umetsuta_yosho。2017年暫定ベストは "A Monster Calls"https://store.shopping.yahoo.co.jp/umd-tsutayabooks/bung9781406339345w.html
 

【原書レビュー】え、こんな作品が未訳なの!? バックナンバー一覧

 

The Cellar

The Cellar

氷の家 (創元推理文庫)

氷の家 (創元推理文庫)

女彫刻家 (創元推理文庫)

女彫刻家 (創元推理文庫)

A Monster Calls

A Monster Calls

怪物はささやく (創元推理文庫 F ネ 2-1)

怪物はささやく (創元推理文庫 F ネ 2-1)

NY Timesベストセラー速報20170716(執筆者・青木創)

アメリカのベストセラー・ランキング
7月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)


1. CAMINO ISLAND    Stay
John Grisham ジョン・グリシャム

Camino Island

Camino Island

プリンストン大学の図書館で厳重に保管されていた古い原稿が盗まれた。若い女性作家のマーサーは謎めいた女性から依頼を受け、フロリダの島で人気書店を営みながら裏では稀覯本の闇取引で儲けているというブルースを、秘密裏に調査することになる。


2. MURDER GAMES    New!
James Patterson and Howard Roughan ジェイムズ・パタースン、ハワード・ローワン

Instinct (previously published as Murder Games) (English Edition)

Instinct (previously published as Murder Games) (English Edition)

犯罪心理学の権威であるラインハートは、ニューヨーク市警の要請を受け、連続殺人事件の捜査に協力する。現場にはトランプのカードが残されており、ラインハートはそれが犯人の署名的行動ではなく、つぎの犠牲者を示す手がかりになっていると推理する。


3. USE OF FORCE    New!
Brad Thor ブラッド・ソー

Use of Force: A Thriller (The Scot Harvath Series Book 17) (English Edition)

Use of Force: A Thriller (The Scot Harvath Series Book 17) (English Edition)

アメリカ海軍特殊部隊SEALS出身のエージェントが活躍するスコット・ハーヴァス・シリーズの第16作。地中海が激しい嵐に襲われてから数日後、大物テロリストの死体が岸に打ちあげられる。その男が大規模なテロ攻撃をおこなうために移動中だったと考えたCIAは、ハーヴァスに調査を依頼する。


4. THE DUCHESS    New!
Danielle Steel ダニエル・スティー

The Duchess: A Novel

The Duchess: A Novel

19世紀イングランド。公爵の娘アンジェリクは父にかわいがられて育ったが、18歳のときにその父が亡くなると、異母兄に疎まれて放逐されてしまう。パリに渡ったアンジェリクは、父の遺産を元手に上流階級向けのクラブを開く。


5. SEVEN STONES TO STAND OR FALL    New!
Diana Gabaldon ダイアナ・ガバルドン

Seven Stones to Stand or Fall: A Collection of Outlander Short Stories

Seven Stones to Stand or Fall: A Collection of Outlander Short Stories

20世紀スコットランドの従軍看護師クレアが18世紀にタイムスリップしたことからはじまるロマンチック・アドベンチャーアウトランダー・シリーズの短編集。


6. THE IDENTICALS    Down
Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

The Identicals: A Novel (English Edition)

The Identicals: A Novel (English Edition)

恋も仕事も長つづきしない気まぐれなハーパー。完璧主義でやかまし屋のタビサ。両親の離婚後、長年のあいだナンタケット島とマーサズ・ヴィニヤード島に別れて暮らしてきた双子の姉妹は、行きづまった人生を立て直そうと、互いの家を交換することに決める。“サマー・ノベルの女王”と呼ばれる人気作家の最新作。


7. INTO THE WATER    Down
Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

Into the Water: The Sunday Times Bestseller

Into the Water: The Sunday Times Bestseller

イギリスの小さな町を流れる川の底から、ネルという名のシングルマザーの死体が発見される。そのあたりは地元では“溺死の淵”と呼ばれ、かつての魔女狩りで魔女とされた女たちが命を絶った場所として知られていた。ネルは魔女に強い興味を持ち、淵の歴史を書き綴った手稿を遺していた。


8. THE SILENT CORNER    Down
Dean Koontz ディーン・クーンツ

The Silent Corner

The Silent Corner

FBI捜査官ジェイン・ホークは夫の自死を不審に思い、理由を突き止めようとする。大きな力を持つ何者かが秘密を守るべく迫りくるなか、ジェインはひそかに真相へと近づく。強さとやさしさを備えた魅力的なヒロインの活躍する新シリーズの第1作。


9. TOM CLANCY: POINT OF CONTACT     Down
Mike Maden マイク・メイデン

Tom Clancy Point of Contact (A Jack Ryan Jr. Novel Book 3) (English Edition)

Tom Clancy Point of Contact (A Jack Ryan Jr. Novel Book 3) (English Edition)

ジャック・ライアン・ジュニアを主人公としたスリラー第3作。ジャックの所属する“ザ・キャンパス”ことヘンドリー・アソシエイツ社は、軍需企業社長をつとめる元上院議員から依頼を受ける。表向きは買収を検討中のシンガポール企業の財務調査だったが、ジャックとともに財務アナリストとしてシンガポールへ飛んだ元CIA職員のブラウンは、ある密命を帯びていた。


10. COME SUNDOWN    Down
Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

Come Sundown: A Novel (English Edition)

Come Sundown: A Novel (English Edition)

ボディーンはモンタナ州で、家族4世代でリゾート施設を備えた牧場を経営している。ある夜、家出したと聞かされていたおばのアリスが、牧場の近くで惨殺死体となって発見される。じつはアリスは家出をしたあと何者かに誘拐されており、その家から逃げ出していたのだった。この事件をきっかけに、ボディーンと彼女の家族の絆が試されることになる。


【まとめ】
2位から5位までを新作が独占しました。2位のパタースンとローワンの共著はこれが8作目で、第1作『殺意がふたりを分かつまで』が邦訳刊行されています。3位のスコット・ハーヴァス・シリーズは安定した人気で、年に一冊のペースでの刊行がつづいています。邦訳は第11作の『ブラック・リスト――極秘抹殺指令――』が最新です。4位は常連のダニエル・スティール。美しく聡明な女性が苦境に立たされ、試練を乗り越えていくというストーリーが、いつもどおり読者を引きつけています。5位のアウトランダー・シリーズはヴィレッジブックスから邦訳が刊行されていますが、2014年にテレビドラマ化されたのを受け、ハヤカワ文庫から第1部『時の旅人クレア』の新装版が出版されました。


青木創(あおき はじめ)

先日告知のあったとおり、7月29日の金沢読書会でジェイン・ハーパー著『渇きと偽り』が取りあげられます。どうぞよろしくお願いいたします。そのほかの訳書に、E・ヴィンター『愛と怒りの行動経済学』、D・ワッツ『偶然の科学』など。


殺意がふたりを分かつまで (ヴィレッジブックス)

殺意がふたりを分かつまで (ヴィレッジブックス)

ブラック・リスト ?極秘抹殺指令?(上) (SB文庫)

ブラック・リスト ?極秘抹殺指令?(上) (SB文庫)

ブラック・リスト ?極秘抹殺指令?(下) (SB文庫)

ブラック・リスト ?極秘抹殺指令?(下) (SB文庫)

時の旅人クレア〈1〉―アウトランダー〈1〉 (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈1〉―アウトランダー〈1〉 (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈2〉―アウトランダー〈2〉 (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈2〉―アウトランダー〈2〉 (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈3〉アウトランダー〈3〉 (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈3〉アウトランダー〈3〉 (ヴィレッジブックス)

アウトランダー 時の旅人クレア1 (ハヤカワ文庫NV)

アウトランダー 時の旅人クレア1 (ハヤカワ文庫NV)

アウトランダー 時の旅人クレア 2 (ハヤカワ文庫NV)

アウトランダー 時の旅人クレア 2 (ハヤカワ文庫NV)

アウトランダー 時の旅人クレア 3 (ハヤカワ文庫NV)

アウトランダー 時の旅人クレア 3 (ハヤカワ文庫NV)

渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ)

渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ)

愛と怒りの行動経済学:賢い人は感情で決める

愛と怒りの行動経済学:賢い人は感情で決める

偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)

偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)

【再掲】第19回大阪読書会のご案内

拾った女 (扶桑社文庫)

拾った女 (扶桑社文庫)


 ハリーが拾った女はアル中のヘレンだった。離れがたい魅力の持ち主ヘレンとの生活が、しだいにハリーの人生に影を落としていく。


 普段はちょっと前に翻訳された作品を取り上げることの多い大阪翻訳ミステリー読書会ですが、今回取り上げる『拾った女』は去年出版されたばかり。各種ベスト10上位に入賞し、今年の翻訳ミステリー大賞の候補作にもなりました。本国では1955年に出版されていたので、今となっては50年代アメリカの時代的な雰囲気を漂わせるレトロ感たっぷりな作品として楽しめます。そして読み進めるうちに、あんなことやこんなことが気にかかる。それにあの……あの……あれは……。ということで、みなさまのご参加を心よりお待ちしております。


・会場の場所等は申しこんだ方にメールでお知らせします。
・会場は食べ物の持込みが禁止なのでご遠慮ください(飲み物はOKです。自動販売機は同じフロアにあります)。
・150文字程度(もっと少なくても多くてもOK)の簡単な自己紹介をお願いします。申し込みの時ではなくても、読書会の3日前くらいまでに送ってくだされば結構です。
・場所は未定ですが読書会後の21時頃より懇親会を行います。お時間に余裕のある方はぜひご参加ください。お申し込みの際に参加の有無を教えてくださればうれしいです(ぎりぎりでなければ後からの変更も可能です)。


 ご参加お待ちしています。

開催日   2017年7月14日(金)
場所    各鉄道会社の大阪駅、梅田駅等から5〜15分以内のところ
時間(予定)18:30開場、18:45開始、20:45終了(懇親会の予定あり)
参加費   500円(学生300円)当日受付でお支払いください。
参加方法  kanmys_dk2011@yahoo.co.jp 宛に連絡してください。


 ○定員は20名です。20名になり次第、募集を締め切らせていただきます。あらかじめご了承ください。