【毎月更新】藤原編集室通信(出張版)

藤原編集室通信(出張版) 第10回(最終回)

或る日の編集室――業務日誌より ×月×日 『少年少女昭和SF美術館』(平凡社)の収録予定本が三箱、Oさんから届く。昭和20〜50年代のSF児童書、最終的には400点前後になるか。早速、スキャナーにかけて画像データ化にとりかかる。星を散りばめた宇宙空間に銀色…

藤原編集室通信(出張版) 第9回

プラハのユダヤ人街の方へ 来月予定しているレオ・ペルッツ『夜毎に石の橋の下で』(国書刊行会)は、〈晶文社ミステリ〉で刊行した『最後の審判の巨匠』以来、ずっとあたためていた企画です。(いまあらためてみたら、もう七年が経っていました。「象は忘れ…

藤原編集室通信(出張版) 第8回

探偵小説とテクノロジー、あるいは疎外された名探偵 当編集室ではミステリや海外文学の紹介企画のほかにも、数は多くありませんが、文化史、文学研究などの人文書にも力を入れています。一回お休みを頂いているあいだに専念していたのが、おもに19世紀西欧の…

藤原編集室通信(出張版) 第7回

H・R・ウェイクフィールド、あるいは最後の怪奇小説家 ジョン・ディクスン・カー『蝋人形館の殺人』も無事刊行となり、今月の当編集室はH・R・ウェイクフィールドの怪奇小説集『ゴースト・ハント』(仮題。創元推理文庫近刊)に取りかかっています。 カーの…

藤原編集室通信(出張版) 第6回

悪魔のようなバンコラン 先日、ジョン・ディクスン・カー『蝋人形館の殺人』(創元推理文庫、3月下旬刊)を責了にしたばかりです。旧訳のハヤカワ・ミステリ版が1954年刊ですから、(児童向けのリライト版は数種あったものの)今回がなんと58年ぶりの新訳と…

藤原編集室通信(出張版) 第5回

殺人は出版する――黄金時代探偵小説の出版事情:セイヤーズの場合 『ジョン・ディクスン・カー/奇蹟を解く男』、『別名S・S・ヴァン・ダイン』と、ミステリ作家の伝記を手がけてきましたが、そこで明かされる当時の出版事情には、出版を生業とする者のひとり…

藤原編集室通信(出張版) 第4回

うしろを見るな 翻訳ミステリに解説はつきものですが、いわゆる「ネタバレ解説」について文句を言う人がいます。犯人やトリックはもちろん、作品の内容について解説で明かすなんて怪しからん、というのですが、当編集室の考えでは「怒る貴様がおかしいぞ」で…

藤原編集室通信(出張版) 第3回

シャーロック・ホームズの影の下に ドイル傑作集5『ラッフルズ・ホーの奇蹟』(創元推理文庫)がいよいよ来月刊行となります。ミステリ、怪奇、東洋、冒険と、ゆるやかなテーマ別編集で刊行してきたこのシリーズも、今回の科学ロマンス篇で完結。第1巻が2004…

藤原編集室通信(出張版) 第2回

小学校の図書室の方へ The past is a foreign country(過去はひとつの異国である)とは、 L・P・ハートリーの『恋を覗く少年』冒頭の有名な一文ですが(※1)、当編集室今月の新刊、森英俊・野村宏平編著『少年少女 昭和ミステリ美術館』(平凡社)は、そう…

藤原編集室通信(出張版) 第1回

S・S・ヴァン・ダインになった男 S・S・ヴァン・ダイン。 かつてこの名前は魔法のような響きを持っていました。『グリーン家殺人事件』『僧正殺人事件』で探偵小説史に不滅の金字塔を打ち建てた、偉大なる本格ミステリの巨匠。本名ウィラード・ハンティント…