Twitterにて「非英仏語圏ミステリベスト100」アンケート実施!(執筆者・松川良宏)

 
 フランスミステリのオールタイムベストを選出する先日のアンケート企画「フランスミステリベスト100」に続いて、今度は北欧やドイツ、イタリア、スペインその他のミステリの邦訳を対象とする「非英仏語圏ミステリベスト100」を実施いたします!
 
※投票開始は1週間後、9月10日(水)の午後9時です
 

 

◆数えてみると意外と多い!? 非英仏語圏ミステリ

 
 近年、北欧やドイツ語圏のミステリを中心に、非英語圏ミステリの邦訳が目立つようになってきています。2008年〜2009年に邦訳出版されたスティーグ・ラーソン『ミレニアム』スウェーデン)をきっかけにして北欧ミステリの邦訳が増加し、2011年に邦訳出版されたフェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』(ドイツ)をきっかけにしてドイツ語圏ミステリの邦訳が増加したと見ていいかと思います。
 
 そんなブームのさなかにあるとはいえ、「非英仏語圏ミステリ」(企画者にとっても耳慣れない言葉ですが、非英語圏ミステリからさらにフランス語圏のミステリを除いたもの)なんてまだまだ数が少なすぎて、そこからオールタイムベストを選出するなんてあまり意味がないんじゃないか、と思う方もいらっしゃるかと思います。しかし実際は、非英仏語圏ミステリの邦訳は決して少なくはありません。どれを「ミステリ」として数え上げるかにもよりますが、ドイツ語圏ミステリはシーラッハの『犯罪』以前にすでに100冊ほど翻訳されていましたし、北欧ミステリも『ミレニアム』以前に50冊ほど邦訳がありました。近年の増加分も合わせると、北欧およびドイツ語圏のミステリだけで240冊ほどにもなります。(雑誌に翻訳掲載された中短編などをカウントするともっと多くなります)
 
 また、ウンベルト・エーコ薔薇の名前を擁する「イタリアミステリ」勢も、数えてみると40冊ほど訳されていますし、スペインからはカルロス・ルイス・サフォン『風の影』やホセ・カルロス・ソモサイデアの洞窟』など20冊ほどが訳されています。以上、北欧+ドイツ語圏+イタリア+スペインでもう300冊になるわけです。さらにオランダやロシア、チェコなどその他の欧州諸国から約50冊、そして中南米やアフリカ、日本以外のアジアからも計50冊ほどが訳されています(アフリカやアジアの作家が英語で書いたミステリを除く)。これで約400冊。そして先ほどのカウントでは北欧やドイツ語圏の少年少女向けミステリは除いていたので、それを加えるとさらに70冊ほど増えます。
 
 というわけで、「ベスト100」と銘打ったものの本当に100作品以上挙がるのかと心配もしてはいますが、この範囲からオールタイムベストを選出する意義も充分にあるのではないかと思います。ちなみに、2012年版『東西ミステリーベスト100』海外編で100位以内にランクインした「非英仏語圏」作品は以下の4つでした。
 

 
 投票される方は、世界各地のミステリをくまなく読んでいる必要はまったくありません。たとえば、北欧ミステリしか読んでいない、ドイツ語圏ミステリしか読んでいない、あるいは『薔薇の名前』しか読んでいない、そういう方の投票も歓迎いたします。読んだ数の多少にかかわらず、お気に入り作品・ほかの読者へのお勧め作品がありましたらぜひともご投票ください。最大で10作まで投票可能ですが、投票作が1作でも2作でも、お気軽に参加していただければ幸いです。
 

◆「非英仏語圏ミステリベスト100」日程および投票・集計方法

 
【日程】

  • 投票期間:2014年9月10日[水]21時(午後9時)〜9月22日[月]24時
  • 結果発表:2014年9月23日[火]、Twitterにて(「翻訳ミステリー大賞シンジケート」でも結果を載せていただける予定です)

 
【投票・集計方法】
 1人最大で10作まで投票可能です。順位はつけてもつけなくても構いません(※9作以下で投票する場合、順位をつけるかつけないかによって、自分の投票の合計点数が変わります。ポイントの集計法に関する注意事項をよくお読みください)。順位と作品タイトルと作者名、「順不同」である場合はその旨を明記し、ハッシュタグ #非英仏語圏ミステリ をつけてツイートするか、または企画者( @Colorless_Ideas )にリプライをお送りください。
 投票が確認できましたら、企画者よりリプライをお送りいたします。投票して24時間が経っても反応がない場合は、検索漏れ等で企画者がツイートに気づいていない可能性がありますので、リプライでご連絡ください。
 
 長編だけでなく短編集や短編への投票も可能です。シリーズまとめての投票(たとえば「特捜部Qシリーズ」「刑事オリヴァー&ピア・シリーズ」など)はお控えください。ただし、スティーグ・ラーソン『ミレニアム』は特に第2作と第3作が密接につながっているということもあり、また2012年版『東西ミステリーベスト100』でも三部作まとめての集計となっているので、これのみ例外として、三部作まとめての投票をお願いいたします。個別のタイトルを挙げた場合にも、集計する際には三部作への投票として合算いたします。
 
 1位10点、2位9点、3位8点……10位1点として集計します。投票作が10作に満たない場合でもポイントは同じように付与します。たとえば投票作に『薔薇の名前』と『笑う警官』の2作を選び、それぞれを1位、2位とした場合、やはり1位に10点、2位に9点が加算されます。
 「順不同」での投票の場合は、投票作品数が10作品でもそれ未満でも、点数は一律で「5.5点」とします。たとえば投票作に『薔薇の名前』と『笑う警官』の2作を選び、「順不同」での投票とした場合、どちらにも5.5点が加算されます。
 
 期間内であれば投票のやり直しは可能とします。その場合は、企画者( @Colorless_Ideas )にリプライでお知らせください。
 

◆「非英仏語圏ミステリベスト100」対象作品

 
 英語・フランス語以外で執筆されたミステリ小説の邦訳。地域でいうと、北欧5か国(スウェーデンデンマークノルウェーアイスランドフィンランド)やドイツをはじめとするヨーロッパ諸国、アフリカ、中南米、日本以外のアジアのミステリ小説が対象となります。「ミステリ小説」の範囲はみなさまに任せます。
 

 
 なお迷いましたが、今回のオールタイムベスト・アンケートは完全に言語で区切ることとし、オランダやアフリカ、アジアの作家らが英語・フランス語で書いたミステリは対象外といたします。
 
オランダ語圏】
 ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンクは各作品をオランダ語と英語の両方で執筆・発表していたので、今回のアンケートでは投票可能とします。
 ロバート・ファン・ヒューリックは英語でミステリを執筆した作家であり、ヤン・デ・ハルトグも邦訳作は英語で執筆されたものであるため、今回は対象外とさせていただきます。
 
【アフリカ】
 アフリカのミステリ小説で今回のアンケートの投票対象になるのは、デオン・メイヤーまたはデオン・マイヤー(南アフリカ)の『追跡者たち』『流血のサファリ』の2作だけかと思われます(原語:アフリカーンス語)。
 ロジャー・スミス南アフリカ)『血のケープタウン』、『はいつくばって慈悲を乞え』などの英語で執筆された作品、ヤスミナ・カドラ(アルジェリア)『テロル』などのフランス語で執筆された作品は今回は対象外とさせていただきます。
 
【アジア】
 カルパナ・スワミナタン(インド)の『第三面の殺人』、ヴィカース・スワループ(インド)の『6人の容疑者』、ジャムヤン・ノルブ(インド生まれのチベット人)の『シャーロック・ホームズの失われた冒険』、ミゲル・シフーコ(フィリピン)の『イルストラード』などは英語で執筆された作品なので、今回は対象外とさせていただきます。
 
【その他】

  • ホセ・ラトゥール(キューバ)の『追放者』は著者本人が英語版とスペイン語版の両方を執筆しているので、投票可能とします。ハバナ・ミッドナイト』スペイン語で執筆された作品なので投票可能です。短編のハバナイトメア」「ゴラム」は原語がスペイン語か英語か不明ですが投票可能とします。
  • アルナルド・コレア(キューバ)のキューバ・コネクション』は原語がスペイン語か英語か不明ですが投票可能とします。
  • クリスチャン・モルク(デンマーク)の『狼の王子』は著者本人が英語版とデンマーク語版の両方を執筆しているので、投票可能とします。
  • 【追記】ウラジーミル・ナボコフ(ロシア出身/当初はロシア語、後年は英語で創作活動)はミステリの一種といえる作品を何作か書いています。1人の作家の作品について、これは投票可能でこれは不可と区切るのも少々おかしいので、ナボコフの作品はすべて投票可能とします。
  • キャメロン・マケイブ(ドイツ)の『編集室の床に落ちた顔』は英語で執筆された作品なので、今回は対象外とさせていただきます。
  • 【追記】フィンランドで暮らしながらフィンランドを舞台とするミステリシリーズを英語で執筆したアメリカ人作家、ジェイムズ・トンプソンの作品(『極夜 カーモス』、『凍氷』)は今回は対象外とさせていただきます。
  • 【追記】ペレ(ブラジル)の『ワールドカップ殺人事件』は、実際にはアメリカのミステリ作家のハーバート・レズニコウが英語で執筆した作品であるため、対象外とさせていただきます。

 

◆その他の注意事項

 
(1)「フランスミステリベスト100」では、1作家の長編2作品を収録している単行本については書籍単位での投票を受け付けず、個別の作品への投票をお願いしましたが、今回の「非英仏語圏ミステリベスト100」では書籍単位で投票を受け付けます。
 
A.レオナルド・シャーシャ(イタリア)『ちいさなマフィアの話』白水社、1994年)
B.マルチェロ・フォイス(イタリア)『弁護士はぶらりと推理する』(ハヤカワ・ミステリ文庫、2004年)
C.ルイス・セプルベダ(チリ)『センチメンタルな殺し屋』(現代企画室、1999年)
 
(AとBは本国で別々に刊行された2長編を1冊にまとめて翻訳出版した書籍、Cは本国でも2作収録の単行本として刊行されているものです)
 
 ただし、ポケミスで刊行されたデュレンマット(スイス)『嫌疑』(「嫌疑」と「裁判官と死刑執行人」の2長編を収録)については書籍単位ではなく、個別作品への投票をお願いいたします。これは、片方しか読んでいない投票者も多いだろうと思われるからです。収録作のうち「嫌疑」の方だけが早川書房《世界ミステリ全集》第12巻(1972年)に収録されており、また近年には「嫌疑」が『疑惑』、「裁判官と死刑執行人」が『判事と死刑執行人』というタイトルで単行本出版されています。
 
(2)シュトゥーダー刑事シリーズの長編2編と短編12編を収録したフリードリヒ・グラウザー『老魔法使い』国書刊行会、2008年)は書籍単位で投票を受け付けます。
 
(3)『ベルリン・ノワール(扶桑社、2000年)など、非英仏語圏ミステリのアンソロジーは書籍単位での投票も可能とします。
 

 

 
  


松川 良宏(まつかわ よしひろ)


 アジアミステリ研究家。『ハヤカワ ミステリマガジン』2012年2月号(アジアミステリ特集号)に「東アジア推理小説の日本における受容史」寄稿。「××(国・地域名)に推理小説はない」、という類の迷信を一つずつ消していくのが当面の目標。
 Webサイト: http://www36.atwiki.jp/asianmystery/
 twitterアカウント: http://twitter.com/Colorless_Ideas
 

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