翻訳ミステリー長屋かわら版・第18号
田口俊樹
最高級短パンを新調しました。
田口家御用達のイトーヨーカ堂で。
店員さんに勧められるまま新素材のやつを買いました。
いやあ、これが実に快適。
店員さんの言ってたとおりとても涼しい。
通気性が抜群なんですね。
日夜こういう生地の研究をしている人が日本のどこかにいるんですね。
エライなあ。
で、先日、犬を散歩させていたときのこと。
普段にもましてやけに涼しい。
ひょいと見ると、チャックが開いてました。
涼しいわけだ。
ボケ老人、老犬を連れて徘徊中です。
(たぐちとしき:ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズ、バーニイ・ローデンバー・シリーズを手がける。趣味は競馬とパチンコ)
長いトンネルをぬけると……そこは、
パラダイスではなかったのですね。
春から抱えていた仕事を終わらせ、
さて、ゆっくりプールへでも
行こうと思っていた矢先、
気の緩みか、疲れが出たのか、
思い切り転び、眉の上を縫うほどの
怪我をしてしまいました。
お岩さん状態。外出する時は
キャップにサングラス、
ますます怪しいおじさんに
なっちまいました。
エルロイ祭りの時までには、
普通の顔に戻れるか……
(よこやまひろあき:AB型のふたご座。音楽を聴きながらのジョギングが日課。主な訳書:ペレケーノス『夜は終わらない』、ダニング『愛書家の死』ゾウハー『ベルリン・コンスピラシー』アントニィ『ベヴァリー・クラブ』ラフ『バッド・モンキーズ』など。ツイッターアカウント@maddisco)
鈴木恵
旅先で時間をつぶすために入ったティーショップで、ふといつもとはちがうことがしてみたくなり、メニューに載っていた「物語のお茶」なるものを注文したら――というのが『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』所収の『ティーショップ』という短篇。そのお茶を注文すると、もれなく不思議な物語が付いてきてちゃうのである。
ぼくも子供のころはよく、洋服箪笥の奥を探ったり、水たまりに足を突っ込んでみたりして、異世界への入口を探したものだけど、こんどはひとつ、見知らぬ土地へ行ったら飲み屋ではなくティーショップに入ってみよう、なんて思っております。
(すずきめぐみ:文芸翻訳者・馬券研究家。最近の主な訳書:『生、なお恐るべし』『ピザマンの事件簿2/犯人捜しはつらいよ』『ロンドン・ブールヴァード』。最近の主な馬券:なし orz。ツイッターアカウント@FukigenM)
8月頭にニューヨークを駆け足旅行してきました。20年ぶりに訪れるこの街は、自由の女神やエンパイア・ステート・ビルなどの観光スポットでもセキュリティが強化されていて、グラウンドゼロ近くの 9/11 Memorial Preview Site を訪問したこともあり、いろいろ思うところがありました。
うれしかったのは、そのグラウンドゼロとも縁浅からぬ、ネルソン・デミルが生んだ“中年の星”ジョン・コーリーが、ふだん勤務している連邦政府ビル(フェデラル・プラザ26番地のジェイコブ・K・ジャーヴィッツ・ビルディング――FBIのニューヨーク支局のあるビルですね)と、そのジョンが講義をうけもっているジョン・ジェイ・カレッジを、バスの車窓ごしとはいえ今回初めてこの目で見られたことです。
この旅行以外は、あれを進めつつこっちのゲラを見ているという、例年どおり仕事漬けの夏を満喫中。
(しらいしろう:1959年の亥年生まれ。進行する老眼に鞭打って、いまなおワープロソフト「松」でキング、グリシャム、デミル等の作品を翻訳。最新訳書はキング『アンダー・ザ・ドーム』。ツイッターアカウント@R_SRIS)
越前敏弥
ボケ老人とか怪しいおじさんとか老眼鏡とかの話が長屋に蔓延していますね。実はこの長屋、年齢順に並んでるんだけど、上から5人までがすでに半世紀以上を生き抜いてきたんだから、しかたがないか。
そんなわけで、わたしはきのう"リーディンググラス"をかけているのに「大島優子」を「大関優子」に空目。古いな。古すぎる。だいいち、大島優子のファンたちは大関優子の改名後の名前にさえ「だれ?」と思うのかも。わたしにとっての大関優子は、なんと言っても〈犬神家の一族〉で松竹梅3姉妹から水をぶっかけられて引きずりまわされる青沼菊乃! あの半裸の襦袢姿、あの形のいいお×ぱ×はまぶたに鮮烈に焼きついて、生涯けっして……
はい、本の話も少し書かなきゃいけませんね。きのう読了したのは山本弘『詩羽のいる街』。いささか説教くさい部分もあるけど、こういう世界観、こういう落とし方は大好き。この作者、と学会の会長としてしか知らなかったけど、こういう小説を書く人なんですね。不勉強ですみません。ほかのも読みます。
(えちぜんとしや:1961年生。おもな訳書に『夜の真義を』『Yの悲劇』『ダ・ヴィンチ・コード』など。趣味は映画館めぐり、ラーメン屋めぐり、マッサージ屋めぐり。ツイッターアカウント@t_echizen )
加賀山卓朗
自分で書いた「ウサギのようにびくびくして」が「ウナギのようにぴくぴくして」に見え、こりゃだめだと眼鏡を購入。近視はないので、中近距離用というやつです。レンズって高いのね。値段を見たとたん、やっぱりやめましたと席を立ちそうになりました。
訳していたのは、来週発売のジョン・ディクスン・カー『火刑法廷』新訳版。密室と怪奇の巨匠カーの真骨頂、めちゃくちゃおもしろいので、未読のかたは(既読のかたも)ぜひ手に取ってみてください。
(かがやまたくろう:ロバート・B・パーカー、デニス・ルヘイン、ジェイムズ・カルロス・ブレイク、ジョン・ル・カレなどを翻訳。運動は山歩きとテニス)
上條ひろみ
現在、九月リリース予定のジョアン・フルークのゲラ(印刷所に入れる、本の体裁になった原稿)と格闘中。ハンナシリーズの十二作目です。
いつも悩みの種なのが「ナカグロ」。昔の翻訳ってナカグロが多いですよね。「ニュー・ヨーク」とか「グレープ・フルーツ」とか。今はあまり使わない傾向にありますが、わたしは幼いころからの読書で刷り込まれているせいなのか、無意識に多用しているようなんです。なんかそれがかっこいいと思っていた時期もあったなあ。で、ゲラを見て、ここはいらないだろ、といちいち削るわけですが、ハンナシリーズに出てくるお菓子の名前はほとんどカタカナで、しかも長いのが多い。「トリプルトリートチョコレートチーズケーキパイ」とか、長すぎ! 読みやすさを考えて適宜ナカグロを入れるようにしていますが、膨大な数のお菓子の名前を見ながら、「アリ」か「ナシ」かを判定していると、大好きなお菓子もだんだん記号に見えてきて……暑さのせいでしょうか。お話の舞台はクリスマスのミネソタで、えらい寒いんですけど。
(かみじょうひろみ:神奈川県生まれ。ジョアン・フルークの〈お菓子探偵ハンナ・シリーズ〉(ヴィレッジブックス)、カレン・マキナニーの〈朝食のおいしいB&Bシリーズ〉(武田ランダムハウスジャパン)などを翻訳。趣味は読書とお菓子作り)
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