文藝春秋6月の新刊

 
『ノンストップ!』/Relentless
サイモン・カーニック(Simon Kernick)/佐藤耕士・訳
文春文庫/定価860円/ISBN: 978-4-16-770586-2
刊行日:6月10日
 
 平穏な日常は17行目で破壊される。
 そして44行目からラストまでノンストップ!
 七福神」で村上貴史・杉江松恋両氏が絶賛、
 ミステリ史上最速のサスペンスを体感せよ!!!!!!!!!!!!!!!
 
 まだ発売されてないのに5月度「七福神」にて2名もの福神がベストに挙げた傑作がついに発売!【→書評七福神の5月度ベスト発表!】
 幸福な土曜の午後に突如かかってきた電話――僕が受話器越しに聞いたのは、旧友ジャックが無残に殺されるさまと、その直前に僕の住所を殺人者に告げるジャックの声だった。その瞬間から、僕は殺人も辞さぬ謎の男たちの標的になった。
 何が起きているんだ? なぜ僕が? ただの営業マンなのに?? でも何よりまず逃げろ! 家を飛び出し子供たちを義母に預け、妻の職場に向かった僕を迎えたのは、オフィスの床の血痕。妻はいない。そして次瞬、巨大な刃物を持った男が襲いかかってきた!
 ――だがこれはほんの序の口。冷血の追跡者たちから逃れ、妻子を救い、着せられた濡れ衣を返上する。そんな無茶な! 平凡なサラリーマンが24時間の決死の疾走の果てに見るものは???


 本書の原書を手にとったのはロンドン出張中のこと。「イギリスで40万部のベストセラーになったのよ?」とエージェントにすすめられたものの、「『殺す警官』は面白かったしカーニックは好きだけど、オフビートで癖があるんだよなあ。商売はわきにおいて読んでみるけど、刊行はむずかしいよなー、残念だけど」と思いつつ読み始めました。
 ところが開巻2ページ目。予備動作なしのショートフックを顎にかまされたようなショックが。主人公の日常は瞬時にして粉微塵。物語は視野狭窄を起こさんばかりの勢いで加速していく! 本題に入る前に数十ページ費やすのが普通になっている昨今のミステリにはない顔面直撃感。ディック・フランシスを暴力的にしたような加速。そして51ページ11行目(邦訳では50ページ8行目)を読んだとき、版権を買おうと決意しました。以降、物語は謎と危険を累積しながら走りつづけ、こちらもアドレナリンを血中に累積しながら読まされつづけることに。――二日後、フランクフルトにて読了。即座にエージェントのケータイを鳴らしました。カーニック、化けやがった!と思いながら。
 ここまでエクストリームなスピード感をもたらすサスペンスを読んだことなどありません。近頃の海外ミステリには眠たい日常描写が多すぎるとお思いの方。細かなゴタクはいいから面白い本を読ませろとお思いの方。本書をおすすめします。50ページ8行目までは立ち読み上等。徹夜させてみせます。
文藝春秋翻訳出版部 永嶋俊一郎Twitter ID: Schunag)

ノンストップ! (文春文庫)

ノンストップ! (文春文庫)