第39回 殺し屋同士の仁義なき怒濤の頂上決戦!――『殺し屋を殺せ』(執筆者・♪akira)

 
 全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは!
 以前この連載で実施したアンケート“あなたが腐だと思う映像作品”でダントツの一位を獲得したTVシリーズ、ジョン・リース(体力)とハロルド・フィンチ(知力)が犯罪を未然に阻止する『パーソン・オブ・インタレスト 犯罪予知ユニット』と、伝説の殺し屋キアヌ・リーブスが飼い犬の復讐のため、群がる殺し屋軍団に立ち向かう映画『ジョン・ウィック』(2014/米)をお好きな方は多いはず。このサイコーな二作品を小説で読めたらなあ……なんて妄想を抱いたことのあるあなた、なんと! そんな小説が出たんですよ! しかも合体して!! マジすか先輩!!!<誰?
 というわけで今回は、クリス・ホルム『殺し屋を殺せ』田口俊樹訳/ハヤカワ文庫NV)をご紹介します。
 

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)

 夕刻を過ぎても熱気が漂うマイアミ。不動産会社オーナーのモラレスは、自社ビル前の路上で迎えの車を待っていた。いつもなら着いているはずの時間だが、その日に限って遅れている。そんなモラレスを、近くに駐車した車からじっと見張る男がいた。すると突然一発の銃声が響き、ひとりの男が地面に倒れる。白昼の惨劇に周辺は騒然となるが、真の驚きはその先に待っていた……。
 
 車中の男こと主人公は、もと米軍特殊部隊員のマイクル・ヘンドリクス。入隊時の心理テストと新兵訓練で、生来の殺人者としての才能を見込まれた彼は、アメリカ政府の裏の仕事を引き受ける密偵として暗躍していました。しかしあることをきっかけにその仕事から足を洗った彼は――
 

殺人を生業とする者を抹殺するのは、ある種の公共サーヴィスみたいなものだ。

 
 という信念から、殺し屋のターゲットになっている人物を見つけ、天才的な殺人テクニックでその殺し屋を殺して、ターゲットから報酬をもらうというビジネスを始めたのです。しかも前もって殺し屋を排除するのではなく、そいつがターゲットを暗殺しようとしている真っ最中に殺るという超絶技。いうなれば、腕利きの殺し屋 VS もっと腕利きの殺し屋仁義なき頂上決戦!
 
 銃とナイフさばきとサバイバル術では他の追随を許さないヘンドリクスの殺しの特徴は、派手で大胆不敵。衆人環視の公共の場所や、セキュリティの厳しい空港で遂行された数々の殺人は、周囲の誰ひとりとして巻き込むことなく成功し、なおかつ目撃すらされません。しかし、こんなおよそ不可能な犯罪を可能に変えているのは、ヘンドリクスの親友でコンピューターの天才、レスターです。彼は同じく軍で秘密工作を行っていたのですが、ある事情で除隊した後、ヘンドリクスの相棒となります。普段はメイン州で酒場を経営していますが、計画が実行される時は遠隔で指示を送り、必ず無事にヘンドリクスを逃すレスター。
 

 ヘンドリクスのことがほんとうにわかっているのは、今はもうこの世でただひとりレスターしかいなかった。

 
 というぐらい、ジョンとハロルド、もといヘンドリクスとレスターは、まさに一連托生のパートナーなのですよ! 
 しかしそんな二人の前に、派遣社員(?)を失った裏世界の大手ナンバーワン派遣業者、殺し屋だけを殺してまわる謎の男“ゴースト”を血眼で捜すFBI捜査官、犯行のむごさにかけては天下一品の殺し屋、そして仕事を超えて趣味で拷問や殺人を行う究極の殺人鬼などが次々と現れます。負けたらあとは死ぬだけの一発勝負。レスターの後方支援を得たヘンドリクスが、殺しのテクニックだけではなく、頭脳も機転もチャンスさえも駆使し、いかに難関を突破するかが本書最大の読みどころ。そのスピーディで臨場感あふれる描写の数々は、まるで眼の前でアクション映画のロケを観ているような興奮を味わえること間違いなしです!! スパイもの顔負けな変装シーンや、あっと驚く逃走方法など、ラストに近づくにつれてどんどんテンションが上がっていきますが、そんな読者の期待をはるかに上回る怒濤のクライマックスが待ちうけています!

 本書はアンソニー賞最優秀長編賞を受賞し、9月に出たばかりの続編 Red Right Hand (あ、赤い右手??)は本国 Amazon のレビューも好評のようです。超期待してますので、早川書房さま、続編もよろしくお願いします!
 


 そしてクリスマスも近づく12月16日(金)、この冬一番ミステリファンに観てほしい新作映画が公開されます!ドント・ブリーズ? 息しちゃいけないって何? 死霊のはらわたサム・ライミだし、ポスタービジュアルも怖いんだけど、ホラー? とか思われたあなた、それが違うんですよ〜。これがもう、想像を絶する驚きまた驚きのショッキング・スリラーなのです!!
 

 
■あらすじ■

 舞台は不況の嵐が吹きまくるデトロイト。生活費のために友人男子二人と空き巣を繰り返していたロッキーは、ある日、町外れに住む盲目の老人が家に大金を隠し持っているという情報を聞く。未来のない生活から抜け出すために、三人は最後の大仕事としてその家に押し入ることを決めた。しかし、チョロい仕事で楽勝と踏んでいた彼らを待っていたのは、想像を絶する恐怖と絶望だった……。
 
 


 これ以上の情報を入れずに劇場に観にいってください! っていうのが最も適切な薦め方だと思うのですが、とにかく、絶対にどこかで驚きます!!!(私は少なくとも3回マジでびっくりしましたw)
 とりわけすごいのが、「○○だったのか……じゃあしょうがないよね」と思った直後にその考えが120%覆されるという強烈な展開が、次から次へと繰り出されるんですよ!
 不気味なオープニングから驚愕のラストまで、先読みしようとすればするほど、おそらく予想と全然違う真相が待ちうけています。そして観終わったら絶対に誰かと話したくなるので、読書会とセットなども激しくオススメかと。88分間、ノンストップで翻弄される快感をぜひ。


  
 

ドント・ブリーズ
監督フェデ・アルバレス(『死霊のはらわた』(13))
脚本フェデ・アルバレス、ロド・サヤゲス(『死霊のはらわた』(13))
製作サム・ライミ(『死霊のはらわた』(81/13)『スパイダーマン』シリーズ)、ロブ・タパート(『死霊のはらわた』(81/13)
出演スティーヴン・ラング(『アバター』)、ジェーン・レヴィ(『死霊のはらわた』(13))、ディラン・ミネット(『プリズナーズ』)、ダニエル・ゾヴァット(『イット・フォローズ』)
 
配給ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
 
オフィシャルサイト http://www.dont-breathe.jp/
 
12.16(金)全国ロードショー!

 
akira


  BBC版シャーロックではレストレードのファン。『柳下毅一郎の皆殺し映画通信』でスットコ映画レビューを書かせてもらってます。トヨザキ社長の書評王ブログ『書評王の島』にて「愛と哀しみのスットコ映画」を超不定期に連載中。

  

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)

RED RIGHT HAND

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