第6回熊本読書会レポート(執筆者・吉村栄師)
みなさま、こんにちは。
熊本ミステリー読書会の吉村です。
今年の翻訳ミステリー大賞と読者賞、気になりますね〜。
そろそろ結果が出ている頃でしょうか?
さて、第6回読書会についてのレポート。
課題書の発表後、本書の訳者である夏来様からのツイートをいただいてたので、(実はご本人と知ったのは、開催後でしたが)何とか満員になればいいなと思っていましたが、心配は杞憂に終わりホッとしました。
快諾していただいたポアンカレ書店様、ありがとうございました。
カルト的な人気を博しているという噂は聞くものの、一部ではバ○ミスだの、怪作だのという声もある今回の『赤い右手』、参加者の皆様の感想はいかがでしょうか……。
ちなみに国書刊行会の内容紹介にはこう書かれています。
「若いカップルが拾ったヒッチハイカーは、赤い眼に裂けた耳、尖った歯をしていた。そして連続殺人が……。悪夢のような文体で不可能を可能にした探偵小説におけるコペルニクス的転回ともいうべき問題作。」
もしあなたがハネムーンの途中で、こんな物騒なヒッチハイカーに出会ったら車に乗せますか?
しかも死んだ猫まで抱いていたとしたら――
私なら乗せません。そう言ってしまうと身も蓋もないのですが、舞台は終戦直後のアメリカですから、戦勝ムード(?)に浸っていたのかもしれません。
話は主人公である医師、リドルの口から語られていきます。
まずは初参加のお二人の感想から。
「カットバックの記述が最初読み辛くて苦労した。途中、辻褄が合わない点等もあったが、面白かった」
「このミス2位ということで期待して読んだ。○○のくだりであの人が犯人だろうと思っていたが、最後作者にやられた」
なかなか好感触だったようです。
「人物の相関が分かり難く、読み返す必要があった。導入部の新聞に8月9日の記述があり、思わず長崎を想起していた」
「新作だと思っていたが、1945年の作品と知って驚いた。古めかしい感じがした割には面白かった。」
「タイトルにもなっている『赤い右手』と真相の繋がりが、最後まで分からなかった」
「この作品がフランス推理小説大賞を受賞したということに、妙に納得してしまった。」
「冒頭付近にも出ていたヒントに当時気付いていたら、早く真相にたどり着けたのではないか」
「熱にうなされたような文体というか、修飾過多なところ、一部句点が全くないような文章について、原文がどうなっているのか気になった」
「思わせぶりな書き方に惑わされた。とって付けたようなあの物言いは果たして必要だったのか? 最後はまんまと覆された」
「日本人で言えば、夢野久作、舞城王太郎のような表現に近いと思うが多用し過ぎている気がする。映像化することを想像したが、トリックを考えると難しいかも(笑)」
「個人的にはすごく気に入った。学生の頃読んでいた禍々しい感じがよく出ている」
「肝心要のトリックがアレだったので興ざめしてしまった。あの状況なら普通は気づくはず」
「著者が前職で海軍の飛行機の教官(?)をやってたということで、宮崎駿の『紅の豚』や、本書と近い頃に出たA・サン=テグジュペリの『星の王子さま』を連想した」
「好き嫌いが分かれると思った。いくら小説とはいえ、ああいうことが普通ありえるか? と思ってしまう。最後アクションシーンが出てくるあたりは、やっぱアメリカ的だなと感じた」
「主人公の回想録が最後まで信用できなかった」
以上は、文庫版を読まれた方の感想。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、実は国書版の解説に本作の問題点という章があり、これがまたよく書かれているのです。
「15年ぶりくらいに再読したが、当時としては特徴的な叙述だと思う」
「日本人作家でも似た書き方をする作家はいるが、ここまでやる人はなかなかいない」
「アレがないと成立しない点や、明らかに無理があるだろうと思われる点など、今だったら、編集者に校正でダメ出しされるだろうと思うところもあったが、諸々踏まえても面白かった」
「結局のところ、よくあるあの手の殺人に思えるけど、ここまでやる必要があったのか?」
「死に婿が池というネーミングが狙い過ぎと感じた。全体的にヒロイン、ダリーの影が薄かった」
「アメリカは州ごとに法律が違う点や、日本と結婚の手続きが違うことは理解していたが、ここに出てくる三日法(結婚の猶予期間?)は初めて知った」
……というわけで、懇親会ではみんなで解説を回し読みしたのは言うまでもありません。
小林晋さんの解説がないと、全体像はともかく細部まで理解するのは難しかったのではないでしょうか。
最後に、これまで数回参加してくれていたNさんとMくんの2人が、今回を最後に4月から熊本を離れて新天地へ行くとのこと。
福岡読書会の方に参加する機会もあると思いますので、福岡の皆様、その折にはどうぞよろしくお願いします。
4月も早10日ほど過ぎてしまいましたが、おふたりの今後の活躍を祈念しております。
次回は6月の予定です。引き続き皆様のご参加お待ちしております。お楽しみに!
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