文藝春秋10月の新刊

イン・ザ・ブラッド (文春文庫)

イン・ザ・ブラッド／In the Blood (2009)
ジャック・カーリイ／三角和代訳
　ISBN: 9784167812256
　文春文庫　定価872円
　
『百番目の男』『ブラッド・ブラザー』のカーリイ、
　待望のシリーズ最新作、登場。
　
　刑事カーソン・ライダーの身辺に怪事件が相次ぐ。海で漂流していたボートで発見された赤ん坊。焼け落ちた小屋と、そこで発見された銛で殺された男の死体。倒錯プレイの最中に変死したとおぼしき極右のキリスト教説教師。
　続発する事件への対応に翻弄されるカーソンと相棒のハリー。そんな中、ふたりが救け出した赤ん坊を誘拐しようと、武装した男が病院を襲撃。背後に過激な人種差別グループが暗躍しているようだった。そしてふたりの眼の届かぬ異国では、謎の科学者ドクター・マティアスが、何かを探し求めて世界をめぐっていた……。
　ちりばめられた無数の謎の断片。それが少しずつ組み合わさってゆくたび、嘘と秘密が暴かれて、最後には意外＆壮大な真相が！
　
『百番目の男』で日本のミステリ・ファンの度肝を抜き、『デス・コレクターズ』では日本本格ミステリ作家協会の選ぶゼロ年代のベスト・ミステリに選ばれた俊英カーリイの第５作が、傑作『ブラッド・ブラザー』に続く最新刊。現代海外ミステリ作家で、日本の読者に通じるミステリ・マインドの持主は、あまり多くありません。ジェフリー・ディーヴァー、マイクル・コナリー、マイケル・スレイド、そしてこのジャック・カーリイ。これくらいでしょうか。
　なかでもこのジャック・カーリイは、錯綜したプロットを操縦する巧みさ、解決へ向けて論理的に組み上げた構成、大胆な伏線などでは、ディーヴァーを凌駕していると言ってもいいでしょう。新作『イン・ザ・ブラッド』は、そんなカーリイのプロット術が存分に発揮された作品となっています。やがて明らかになる構図は、あの『デス・コレクターズ』を思わせるほど複雑で巧緻です。クライマックスに向けて次々に反転してゆく人間関係。その果ての真相。まさにジャック・カーリイにしか書けない逸品となっています。
　
　

シャドウ・ストーカー

シャドウ・ストーカー／XO (2012)
ジェフリー・ディーヴァー／池田真紀子訳
　ISBN: 9784163826301
　文藝春秋　定価2520円
　
　人間嘘発見器キャサリン・ダンス、第三の事件。
「ダンス最大の難事件であり、ディーヴァーのベストの１つ」
　　　　　　　――ニューヨークタイムズ・ブックレビュー
　
　人間の所作から心理を見抜く技術、キネシクス。そのエキスパートであるカリフォルニア州捜査局の捜査官キャサリン・ダンスは、休暇で訪れたフレズノで奇怪な事件に出くわす。ダンスの友人でカントリーの人気歌手であるケイリー・タウンがストーカーに悩まされているというのだ。エドウィンというその男は美少女であるケイリーにメールを執拗に送りつけ、アドレスを変えてもすぐに探りだしてしまうという。数日後のコンサートにもやってくるというエドウィンの影に、ケイリーは怯えていた。
　しかもその直後、ケイリーの側近の男が惨殺されてしまう。犯行直前、ケイリーには彼女の曲を流すだけの無言電話がかかってきていた。そして問題の殺人事件は、その歌詞をなぞるような状況で行なわれていたのだ。
　ストーカーがついに一線を越えたのか？　それとも？　若き友人の危機に、ダンスは事件解決を約束するが、旅先ゆえに捜査権もなく、拳銃を持つこともできない。そんななか、ふたたびケイリーの歌とともに第二の事件が。ダンスはまだ知らなかった、この連続殺人の陰には、もっと大がかりで巧妙な完全犯罪計画が隠されていることを――！
　
　いかなる嘘も見抜く能力をもつ尋問の天才、《人間嘘発見器》キャサリン・ダンス。『スリーピング・ドール』『ロードサイド・クロス』に続く第三作が刊行されます。ディーヴァーが2010年の日本滞在中にホテルで執筆を開始した本書は、カントリー・ミュージックがモチーフとなっています。ストーカーに悩まされるケイリー・タウンは、近年のディーヴァー作品で、もっとも印象に残るサブキャラのひとりでしょう。プロのミュージシャンとしてのタフさと、少女らしさがまじりあうケイリーの魅力的なキャラクターは、テイラー・スウィフトがモデルになっているともいわれています。
　ちなみにディーヴァーは、かつてフォーク歌手を志したこともあるのです。キャサリン・ダンスの音楽ファンぶりにはディーヴァー自身が大いに投映されているほか、「見立て殺人」のモチーフとなる曲の歌詞はもちろん、彼女のアルバムとして登場する『ユア・シャドウ』収録の全曲の歌詞を書き下ろしています。
　その全歌詞は巻末に掲載されていますが、なんと、これらの歌詞に曲をつけ、女性カントリー歌手トレヴァ・ブロムクィストをヴォーカリストにしたアルバムが、実際にリリースされています。『Jeffery Deaver’s XO the Album』と題されたこのアルバムは、輸入ＣＤでも mp3 ダウンロードでも購入できます。内容はいまどきのポップなカントリー。『シャドウ・ストーカー』のオリジナル・サウンドトラックとして、一緒に楽しむのも一興です。
　
●Jeffery Deaver’s XO the Album (Treva Blomquist)

Jeffery Deaver's Xo (the Album)

　
●Treva Blomquist Official Website
　http://www.trevamusic.com/
　

（文藝春秋・Ｎ）　　

　

ブラッド・ブラザー (文春文庫)

デス・コレクターズ (文春文庫)

百番目の男 (文春文庫)

スリーピング・ドール 上 (文春文庫)

スリーピング・ドール 下 (文春文庫)

ロードサイド・クロス

ロードサイド・クロス 上 (文春文庫)

ロードサイド・クロス 下 (文春文庫)