第7回福島読書会レポート(執筆者:飛鳥栄司)

 
 
 第7回福島読書会レポート 「 ”モース警部” は推理も恋も ”妄想警部” 」

執務中にビールを飲む主役のモース警部と執務中という理由でオレンジジュースしか飲ませてもらえない相方ルイス刑事にちなんで、ビール(ノンアルコールですが・・・)とオレンジジュースが振る舞われてウッドストック行最終バス』の読書会がスタート。
参加者は福島読書会のマドンナ 翻訳家の那波かおりさんを始め、名古屋読書会、横浜読書会からの刺客を含めた13名。名古屋、横浜の読書会の刺客からは、
「福島読書会はちゃんとミステリの読書会をやっているなという印象」
「福島読書会のチョイスはミステリの王道だなぁ」
というツッコミ(名古屋と横浜はどんな読書会をやってるんだろう・・・)があり、会場がざわつくと言った滑り出し。


さて、ウッドストック行最終バス』の感想ですが、予想どおりモース警部の評判は良くなく、
「仕事中に酒を飲んでいる」
「やたらと女に惚れやすい」
「推理を外してルイス刑事に八つ当たりしすぎ」
などと変人度合いに一斉にダメ出し。さらには、テレビドラマのモース警部は嫌なイギリス人の代表だったとの散々な言われよう。そんななか、モース警部を彼氏にしてもいいという(守備範囲の広い)爆弾発言も!。
ルイス刑事とのコンビについては、
「モースと組んでかわいそうだと思ったが、ツッコミの鋭さが増していく姿を見ていると思った以上にいいコンビだと印象が変わった」
という意見もあり、
「ルイスがモースを見捨てないからモースがよく見えてくる」
「ルイスがモースの推理を整理するところが、ミステリ的に読者にやさしい感じになっている」
ルイス刑事はベタ褒めの福島読書会。
「モースは自分の上司には絶対に嫌だ!」
という結果に。


読み方もいろいろで、
「コントに近い感覚でドリフのコントのオチのBGMを頭にかけながら読んでいた」
という、モースに負けないくらいの変人もいました。
「登場人物一人ひとりをしっかり書き込んでいて、神の目線で書かれている点が特徴的」
だという崇高なご意見も。


ミステリ的には、
「手紙のスペル間違いを用いた暗号が面白い」
クロスワードパズルの鍵作りのプロだからなのか、解決までには手の内をすべて提示しているので正攻法だと思う」
「モースの仮説爆弾は直撃はないけれど、正解の近くまでいくので結果的にミスディレクションになっている」
といった本格ミステリ要素を存分に含んでいると好評価。
ノースオックスフォードの男性住民の数10,000から始まる、仮説方程式から、デタラメな推理の割には、重要人物にたどり着く面白さがなんとも言えないということで全会一致の結論。


作者がクロスワードパズルの鍵作成のプロということもあり、ミステリ的にも人物の書き込み的にも隙のない作品に仕上がっていて良い作品なので、2作目以降もぜひ読んでみたいという声が多数あがりました。
締めくくりとして、福島読書会が導き出したウッドストック行最終バス』のキーワードは、
「”モース警部” は推理も恋も ”妄想警部”」
「モース警部シリーズは、ミステリ界の寅さん」
ということにあいなりました。


賑やかな読書会を終えて、恒例の杉乃家の浪江焼きそばを堪能したあとに、二本松の提灯祭りへ繰り出すのでした。


福島読書会 飛鳥栄司

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