つれづれの話(執筆者・武藤崇恵)

 こんにちは、武藤崇恵です。
 思い起こせばぐりとぐらの巨大なカステラやクリスマスケーキに始まり、「大どろぼうホッツェンプロッツ」ザワークラウト(目白のピーコックまで車を走らせ、缶詰を買ってもらいましたが、子どもには美味しいものではありませんでした。いまでは大好きで、シュークルートも大好物ですが)、「大きな森の小さな家」大草原の小さな家のとうもろこし挽き割りパン(いま思えば、これはコーンブレッドだったんでしょうか?)や採ったばかりのメープルシロップを雪に流して作るキャンディ。それ以外にも森のクマさんのシチューとか、魔女たちがぐつぐつ煮こむ鍋の中身とか(挿絵だけは鮮明に浮かぶので、せいぜい小学校にあがるころでしょうか)わたしの幼少時代の読書体験は、どういうわけか作中に登場する食べ物の記憶と密接に結びついておりまして、長じてデブ・ファイブに出逢ったのも、もしかしたら神様の思し召しかもしれません。
 というわけで、みなさまからもリクエストをいただきましたし、あと二回は食べ物がらみでいこうと思います。まずはBBQのおともに最適の、安ワインを美味しく楽しむ方法をご紹介します。
 まずは赤ワインを用意してください。アメリカでBBQといえば用意されている、3L入りの箱が二千円以下みたいなもので充分です(この業界の方はご存じ、フェロー近くの「やまや」でも売っています)。あとは季節の果物を適当に。わたしはリンゴとオレンジは必須と思いますが、あとはお好みでよろしいかと。
 ここからが大事です。用意した果物の皮をむき(オレンジは果肉が露出しないように注意!)、皮つきで食べられるブドウや最近生を見かけるベリー類などはそのまま、すべて丸ごと大きなボウルに抛りこみます。ワックスやら農薬やらが気になるので皮はむきますが、オーガニックの信頼のおけるものが手に入るなら、そのままでもいいかもしれません(とはいえ、今日は安ワインを美味しく呑む方法なので、そんなところに予算を使うのはナンセンスな気もいたしますが)。そこに赤ワインをそそぎ、あとは待つだけです。そろそろお気づきでしょうが、できあがるのはサングリアです。え、そんなもの?といわず、ぜひ試してくださいまし。何年も研究を重ねた結果、果汁が自然にじわっと滲みだす程度のまま、何日か冷暗所に放置すると最高に美味しくなるという結論に達しました。一日二日ではまだお味がこなれていないので、騙されたと思って数日放置してください。そうそう、ラップしないと、虫が飛びこむかもしれませんからご注意を。そのあいだにお味は熟成し、安ワインとは思えないものに変貌してくれます。うっかりしていましたが、スパイスも忘れずに。個人的にはシナモンは必須と思いますが(できれば粉ではなく、くるんと丸まった皮にしましょう)丸のままのクローブとか、ナツメグをぱらりとか、そのへんもお好みで。まあ、ちょっと入れるくらいならば、そう失敗はないと思うので、いろいろ試して我が家の味を作りあげてください。
 で、何日か熟成させたら、おしゃれなパンチボウルとかがあればそこに移し、レモンやオレンジのスライスを浮かべたらできあがりです。あ、その前にスパイスや果物はとりだしてくださいネ。好奇心に負けて、果物はどんなお味になったんだろうとかじってみたこともありますが、超マズイのでやめておいたほうが無難です。渋みとか、雑味とか、すべてを吸いこんでしまったお味でした。
 以上は甘いのが苦手な方向けのレシピですが、甘いものがお好きだったり、あまりお酒を召しあがらない方がいるときは、ドールのパイナップルジュースを追加したものも用意します。あれは小さいのが100円のわりには、香りも華やかで、甘くもなるのでオススメです(最近は本物のパイナップルもお安いので、それを入れても楽しいですね)。
 もし冬でしたら、これにちょっと蜂蜜を垂らして温めれば、あっという間になんちゃってグリューワインに変身し、気分だけはスイスのスキー場です。ちょっと趣きを変えてメープルシロップを垂らしますと、今度はカナダのスキー場に瞬間移動できます。どこでもドアも不要です。なにごとも信じる(妄想ともいいますが)ところから始まりますからね! これで身体を芯からといいますか、お腹のなかから温めて、零下何十度の極寒のゲレンデをひたすら滑る、で、また呑んで、冷えきった身体を温めるをくり返すのは冬の醍醐味です。ぜひ、お試しを。少々呑みすぎたところで、外に出た瞬間に酔いは吹き飛びますからご心配なく。もっとも呑みすぎてしまったら、そのままお昼寝にGoという選択肢もございます。それもまた、贅沢で幸せな休日の過ごし方かと。
 そうそう、ワインからは離れますが、冬に身体を温めるのに最適のカクテル、もうひとつありました。ホット・バタード・ラム。「とんでもないパティシェ」にも登場しますが、もっとシンプルなレシピをご紹介しましょう。ラムと百パーセント林檎ジュースをぐつぐついわせない程度に温め、そこにバターをひとかけ落とします。お好みでシナモンやナツメグをぱらり。それでできあがりです。お味はひと言でいうと、液体のアップルパイでしょうか。これ、やみつきになりますよ。とはいえ、これを義姉を教えたら、気に入ってひと冬飲みつづけたそうなんですが、その結果何キロも太ったそうです。というわけで、ほどほどにどうぞ。
 さて、次回は季節を先取りして、夏の夕方にぴったりのカクテル二種をご紹介したいと思います。これをひと口味わえば、目の前には広大なるタラの大地が(風と共に去りぬは映画、原作ともに大好きで、それこそ少女のころにバトラーに恋をしましたが、母も同様と知った瞬間に恋は冷めました。ラストの「明日には明日の風が吹く」を座右の銘としております)、あるいはバハマの大海原が脳裏に浮かぶこと請け合いです。どうぞ、お楽しみに。
 


武藤 崇恵(むとう たかえ)東京都出身&在住。おもな訳書は「ダイエット・クラブ」シリーズ、「パニック・パーティ」バークリーなど。ツイッターアカウント@Takaeeeeeeee。見かけたら、ぜひコメントしてくださいネ。自分の読書体験はかなり偏っていると、いまさらながら驚いております。最近ようやく気づいたのですが、ツイッターではどうでもいいコトばかりに反応する傾向にあります。
 
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