第9回本屋大賞特別企画〈翻訳小説部門〉企画者・白川浩介さんインタビュー(執筆者・猫谷書店)
みなさまこんにちは、猫谷書店です。昨日に引き続き、本日も〈翻訳小説部門〉の話題でございます。
本日は、本屋大賞実行委員であり〈翻訳小説部門〉を企画・実行なさった、オリオン書房の白川浩介さんにメールでインタビューをさせて頂きました。白川さんはお若く、誠実さが体から滲み出てくるような風貌の眼鏡男子でいらっしゃいます。元々文学を中心にした翻訳小説がお好きで古本の蒐集もなさっていたという白川さん。通常業務の他、本屋大賞の準備でご多忙の時期にもかかわらず、快く答えてくださいました。
Q 本屋大賞の企画として、〈翻訳小説部門〉を作られたきっかけを教えてください。
A 第1回目が終わった時から、〈翻訳小説部門〉を作るべきというご要望は大勢の方からいただいておりました。私自身も翻訳文学は好んで読ませていただいているので、すぐにでもと思っておりましたが、なかなかマンパワーが足りず(本屋大賞を運営しているスタッフはみんな本業とは別に「兼業」でやっているので)、いままで延び延びになっていました。
そんな矢先、とある書店員さんからの熱いリクエスト(?)をいただき、また本屋大賞自体も「中二賞」(※)など特別企画をやる余裕も多少生まれて来たこともあって、今回実験的に立ち上げてみました。
Q 実際に行ってみて、感触はいかがでしたか?
A 正直に申し上げてどれぐらいの数の投票をいただけるのか、またどんな本が投票されるのかまったく未知数だったのですが、予想以上の数の投票をいただいたのが嬉しく、かつ意外でした。数や質についてはもちろん色んなご意見はあるかとは思いますが、投票のコメントを読むにつけ、「〈翻訳小説部門〉、待ってました!」という書店員さんの声が聞こえて来る様で、とても嬉しかったです。あとは我々のこの思いがお客さまにどう評価いただくのか、謙虚な気持ちで待ちたいと思います。
Q 『犯罪』が大賞を受賞しましたが、白川さんから見て『犯罪』の印象はいかがでしたか? また、投票された方の意見で印象に残ったものなどあれば、教えてください。
A 昨年末のミステリー年間ランキングで2位だったのが多い作品ですが、1位になれなかったのは質の問題ではなく「ミステリー」というカテゴライズにフィットし切れない作品だったからだと思います。それだけに「勿体ない」と思う方は多かったのではないでしょうか。「ジャンルにとらわれない」や「奥深い」といった投票コメントが多かったのも印象的です。
派手なカタルシスやフックがふんだんにある作品ではないだけに、選ばれたのが少々意外にも思えましたが、「罪」と「罰」といった文学の一つの根源に触れる様な、本当にいい作品が選ばれた、と嬉しくてなりません。
Q 今回の上位四作品は、『犯罪』、『紙の民』、『メモリー・ウォール』、『忘れられた花園』とミステリや文学、SFなどのジャンルに特化したものではなく、ジャンルの垣根を越えたものが入賞した印象を受けました。 これらの作品が支持を集めたのはなぜだとお考えになりますか?
A 正直に申し上げて、現段階では分かりません。これから吟味が必要だと思いますが、案外、我々が思っているほど「ジャンル」は強固には存在しないのかな、などとも思います。
Q 「このミステリーがすごい!」や「Twitter文学賞」など様々なランキングが行われました。 今回の翻訳大賞の結果は他とは少し違いますが、(『二流小説家』や『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』など)、その理由はなぜだと思いますか?
A これも正直、現段階では分かりません。時期的に投票期間が「このミス」の結果が出た後なので、「このミス」1位の作品を敢えて避けて投票された方が多かったのかもしれませんが、推測でしかありません。
個人的には色々とバラエティーに富んで(このミス1位の『二流小説家』も、twitter文学賞海外部門1位の『オスカー・ワオ』も大変優れた作品だと思っております)素敵なことだ、と思っております。
余談ですが、本屋大賞の〈翻訳小説部門〉は、国内部門と違って一次投票・二次投票と二段階選抜をしませんでした。時期的・時間的に難しいからというのもありますが、たとえば『二流小説家』と『オスカー・ワオ』と『犯罪』と『紙の民』を改めて読んで順位をつけることが可能なのか、大いに疑問に思えたからです。それだけバリエーションも評価のポイントも豊か(ゆえに集中して「評価」して盛り上げるのが難しいのかもしれません)なのが海外文学の魅力でもあると思います。
Q 翻訳小説好きの書店員さんとして、お仕事なさる上で苦労される点や、工夫されている点などありますか?
A 今回、〈翻訳小説部門〉を立ち上げる時に色々な方に相談を持ちかけたのですが、その時にある方から「作品ではなく、作家(や翻訳者)のキャラクターで売るのが今の文芸書の売り方のメインストリームになっている様に見受けられる」と言われて、完全に同意は致しませんがかなり首肯させられる部分は多かったです。有名な翻訳者の方が訳された本はそれでも一定の売上が見込めますが、大変失礼ですがそうでない方が訳された本の場合はどうすればよいか、また、これは翻訳に限った話ではありませんが、売りやすいフック(感動ポイント・ビックリポイント)には乏しいのだけれど端整な構造や文体を持つ小説などを売り伸ばすにはどうしたら良いのか、はまだまだ研鑽してゆかねばと思っております。
Q 翻訳小説はどのような方がよく買っていかれる印象がありますか? 年齢層や、ブームなど、あればお聞かせください。
A それがハッキリ見えたら苦労はしません……(笑)
Q 白川さんご自身のオススメ翻訳小説は何ですか? ランキング対象であった2011年刊行のものと、 刊行年は関係なくお気に入りの作品を教えてください。
A 2011年刊行のものですと、エリック・マコーマック『ミステリウム』(国書刊行会)、パトリック・ネス作シヴォーン・ダヴド原案『怪物はささやく』(あすなろ書房)はおススメしやすいです。ナボコフ『カメラ・オブスクーラ』(光文社古典新訳文庫)の新訳もぜひ皆様にお手に取っていただきたいところではありますが。。。
刊行年関係なしですと、ポール・オースター『最後の物たちの国で』と、アントニオ・タブッキ『レクイエム』あたりでしょうか。あ、ともに白水Uブックスですね。
Q 最後に、翻訳小説への愛を叫んでください!
A パターンや、お約束を軽々と裏切ってくれるのが多いのが翻訳小説の魅力だと個人的には思っております。他の国の文学なので入口でちょっとつまずくことはあるかもしれませんが、そこで引き返されるのは勿体なさすぎる。入口から奥への魅力に気付いていただけるべく、本屋として研鑽を積みたいと思います。宜しくお願い申し上げます!!
(※)「中二賞」……本屋大賞2011特別企画「中二男子に読ませたい!中二賞」のこと。書店員が投票した本のコメントを読んだ現役中学二年生男子が選んだ。
受賞作は山田玲司『非属の才能』(光文社新書)北尾トロ『キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるかデラックス』(朝日文庫)。
白川さん、お忙しい中本当にありがとうございました! これからも翻訳小説伝道書店員としてのご活躍を期待していますっ!
それでは、午後は授賞式の模様を影山君がレポートします! 酒寄先生の壇上のご様子は? シーラッハ氏のコメントはあるのか? 乞うご期待。それではさよならさよなら〜。
猫谷書店(ねこやしょてん) |
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翻訳ミステリ愛の書店員です。昨年【『死刑囚』売上100冊できるかなっ?】を寄稿させて頂きました。相変わらず本屋で働く毎日です。 |
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