【読書探偵応援団】初心者のためのジョン・グリシャム入門(執筆者・白石朗)
先日久しぶりに映画〈ザ・クライアント 依頼人〉を(途中から)見て、いまは亡きブラッド・レンフロ演じる少年マークの活躍に(途中からだけど)手に汗を握りました。
原作はいわずと知れたジョン・グリシャム。1991年の第二長篇『法律事務所』で一躍世界的なベストセラー作家としての地位を確立、以来――今秋発売予定の最新作をふくめて――25作の長篇を発表(*)、それ以外にも短篇集とノンフィクションが各1冊あり、いずれもが英米のみならず全世界で記録的なベストセラーになっています。
(*)そのうち2冊はジュブナイル。
グリシャムは、“リーガル・サスペンス”という新たなジャンルを切りひらいたことで知られています。グリシャム以前にも法律の世界に題材をとったミステリやエンタテインメントは数多くありましたが、その多くは法廷での丁々発止の論戦を山場にした“裁判小説”“法廷ドラマ”でした。しかしグリシャムは法廷ドラマにとどまらず、“訴訟社会”アメリカで法律とかかわらざるをえない人々にフォーカスをあわせました。そのうえで容易に感情移入できる登場人物を、身近な、しかしスリリングな危機的局面にいきなり投げこみ、途中下車のできないジェットコースターをスタートさせる“グリシャム・マジック”と呼ばれるスタイルで多くの読者をとりこにしたのです。
- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2002/12
- メディア: 文庫
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なにより、主人公と同年代の少年少女にぜひとも読んでほしい作品です。
- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/01
- メディア: 文庫
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- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/01
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この作品ののち、グリシャムは現代アメリカのかかえる種々の問題をエンタテインメント作品のかたちでとりあげていきます。保険会社(『原告側弁護人』1995)、陪審制度とタバコ訴訟問題(『陪審評決』1996――映画化〈ニューオーリンズ・トライアル〉では銃器の製造物責任訴訟に置きかえられています)、ホームレス問題(『路上の弁護士』1998)、製造物責任訴訟や巨額の損害賠償金問題(『甘い薬害』2003)などです。
どれもスリリングな読書を約束してくれますが、卑見ではグリシャムの“南部”作家としての顔が出ている作品にこそ、秀作があると思えます。
- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/12
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- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 新潮社
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それはともかく、この作品に登場する元陪審員のカリア――南部黒人の“肝ったま母さん”の典型――が作中でつくる南部料理がじつにおいしそうなのです。主人公の若者は、この女性と知りあったことで、いくつもの人生における大事なことを学んでいきますが、そのひとつが南部の食文化のすばらしさでした。
- 作者: ジョン・グリシャム,白石朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/09/06
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そんな話、おもしろいの? 最初にシノプシスだけをきいた筆者もそうでした。しかし、その予想は喜ばしくもあっけなく、徹底的にひっくりかえされました。綿花栽培の過酷さ、季節労働者たちのうけいれ、家族の絆と微妙な不協和音、町での喧嘩沙汰、淡い初恋、そして周囲の人がルークに打ち明ける秘密の数々。灼熱の太陽、南部の赤土のにおい、綿花畑を吹きわたる風、恐ろしい洪水で牙をむく川などなど、読み手をその土地に連れていってくれるような自然描写もあいまって、一読忘れがたい作品になっています。
なお文庫版には児玉清氏のすばらしい解説もついています。ぜひともご一読を。
- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/06/27
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- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/06/27
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グリシャムは作家活動のかたわら、無実の罪で死刑判決を受けた死刑囚たちを(DNA鑑定などを通じて)救済する活動にも力を入れています。その活動のひとつの成果が、ノンフィクション『無実』(2006)でしたが、フィクションの面では2010年に『自白』(仮題)The Confession を刊行しました。『処刑室』から15年、ふたたび死刑制度と冤罪の恐怖を見すえたサスペンスです。この作品は新潮社より刊行が予定されています。
- 作者: ジョングリシャム,浅野隆広,石崎洋司
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2011/09/16
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うれしいことにその第1作の邦訳が『なぞの目撃者―少年弁護士セオの事件簿1―』として、岩崎書店から9月15日に刊行されます。翻訳は児童文学やヤングアダルト小説の作家として人気の石崎洋司氏、装丁は浅野隆広氏です。またシリーズ2冊めの『誘拐ゲーム』も、今年11月刊行予定とのこと。“訴訟社会”アメリカの迷路を、愛用の自転車で軽やかに駆けぬける少年弁護士セオの物語が、ひとりでも多くの日本の同年代の読者にとどきますように。
また岩崎書店作成の【少年弁護士セオの事件簿 特設サイト】では、作者や訳者からのメッセージにくわえて、アメリカの裁判所の仕組みのわかりやすい解説や「おもしろ法律」についてのコラムなど、本書を何倍も楽しむための情報が満載。以下のバナーからぜひともアクセスしてみてください。
●岩崎書店『少年弁護士セオの事件簿』特設サイト
●MSN産経ニュース掲載の本書書評→ 裁判という「争い」の魅力〔評・宝田茂樹(文化部)〕
◇白石 朗(しらいしろう)1959年の亥年生まれ。進行する老眼に鞭打って、いまなおワープロソフト「松」でキング、グリシャム、デミル等の作品を翻訳。最新訳書はキング『アンダー・ザ・ドーム』。ツイッターアカウント@R_SRIS) |
- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2003/02
- メディア: 文庫
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- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2003/03
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- 作者: ジョングリシャム,白石朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/11/05
- メディア: 文庫
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- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/06/29
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- 作者: ジョングリシャム,John Grisham,白石朗
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マジカル少女レイナ2 (5) 魔法のスイミング (フォア文庫)
- 作者: 石崎洋司,栗原一実
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2011/09/02
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ほとんど全員集合! 「黒魔女さんが通る!!」キャラブック (青い鳥おもしろランド)
- 作者: 石崎洋司,藤田香,青い鳥文庫編集部
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/07/15
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