ジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた[完全版]』の巻その1(執筆者・東京創元社編集部S)

『鷲は舞い降りた[完全版]』
ジャック・ヒギンズ/菊池光訳
ハヤカワ文庫NV

鷲は舞い降りた (ハヤカワ文庫NV)

鷲は舞い降りた (ハヤカワ文庫NV)

 皆様こんにちは。「冒険小説にはラムネがよく似合う」第四回はジャック・ヒギンズ作『鷲は舞い降りた〔完全版〕』です。あらかじめ宣言しておきますが、今回は長いです! おまけに、とある事情によりいつもよりテンション三割り増し(?)でお送りする所存ですので、読んで引かないで下さいまし!
 さて、とりあえずあらすじを。


 鷲は舞い降りた! ヒトラーの密命を帯びて、イギリスの東部、ノーフォークの一寒村に降り立ったドイツ落下傘部隊の精鋭たち。歴戦の勇士シュタイナ中佐率いる部隊員たちの使命とは、ここで週末を過ごす予定のチャーチル首相の誘拐だった! イギリス兵になりすました部隊員たちは着々と計画を進行させていく……使命達成に命を賭ける男たちを描く傑作冒険小説――その初版時に削除されていたエピソードを補完した決定版(本のあらすじより)


 まずこのあらすじにびっくりですよ! チャーチル誘拐って! よくもまぁ、こんな変な作戦を考えついたものだ……と、舞台設定の巧さにうなりました。しかもこの作戦、完全にヒトラーの単なる思いつきから話が大きくなって、実行にうつされたという設定なんですよ。思いつき、というのが妙にリアリティがあって、「歴史ってこんなふうに成り行きで進んでいくんだろうなぁ……」と感じて面白かったです。しかも、誘拐するためにはイギリスに侵入しなければならないわけですが、その方法が落下傘降下! 最初、タイトルの意味を知らなかったのですが、降下が成功したことを表して「鷲は舞い降りた」と形容すると知って感激しました。おおー、格好いい!
 そして、この突拍子もない作戦を実行にうつす登場人物たちがすごいのです! とにかくみんなキャラクターが立っていて、登場人物が多いにもかかわらず、紛らわしさを感じませんでした。特にお気に入りのキャラクターを挙げるとすれば、まずはやはり主人公のクルト・シュタイナ中佐。彼は落下傘部隊を率いる実動部隊のリーダーです。彼はまさに冒険小説の主人公、といった感じの男気あふれる好人物で、不器用な優しさも併せ持っています。彼の魅力はまた後ほど熱く語りたいと思います!
 そしてチャーチル誘拐となる舞台の村に住み、スパイ活動をしている老婦人、ジョウアナ・グレイ。彼女の生い立ちと、イギリスでドイツのスパイとして活躍することになった経緯もまた壮絶です。魅力溢れる才女で、まわりの人々にも貴婦人として親しまれています。特に地元の名士であるサー・ヘンリーは彼女にメロメロで、思わずチャーチル首相に関する重要な秘密をもらしてしまうことも。いつも犬を連れて散歩している上品な老婦人が、まさかスパイ活動をしているとは思いませんよね。


(つづく)