年末特別企画2009〜2010年末年始に読みたいこの1冊 その9


(承前)

 続いては、三人の書評七福神が名前を挙げた作家を紹介したいと思います。さすがに、これはという定番の名前が挙げられていますね。


【3人が選んだ作家】
94『狩りのとき』スティーヴン・ハンター/公手成幸訳(扶桑社ミステリー)1998年刊行。
 ハンターのピークとも言うべきアクション小説の傑作。(北上)
狩りのとき〈上〉 (扶桑社ミステリー)狩りのとき〈下〉 (扶桑社ミステリー)
95『ダーティホワイトボーイズ』スティーヴン・ハンター/公手成幸訳(扶桑社ミステリー)1994年刊行
 重犯罪刑務所に収容された終身因の脱走行。ワルたちばかりか追いかける警官含め、それぞれの個性が強烈。細部までの濃い描写とすさまじい活劇。サスペンスを盛りあげる巧みなプロット。もう読みだしたらやめられない。(吉野)
ダーティホワイトボーイズ (扶桑社ミステリー)
96『真夜中のデッドリミット』スティーヴン・ハンター/染田屋茂訳(新潮文庫)1989年刊行
 テロ集団が核ミサイル基地を襲撃。そんな物語に載せて、双肩に世界の命運を負わされてしまった平凡な職業人たちが振り絞るなけなしの勇気をハンターは熱く熱く綴る。全男子必読。ていうか女子も読め。(霜月)
真夜中のデッド・リミット〈上巻〉 (新潮文庫)真夜中のデッド・リミット〈下巻〉 (新潮文庫)


97『最後の一撃』エラリイ・クイーン/青田勝訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)1958年刊行
 「正月に読むミステリ」というお題から最初に思いついたのがこれ。クリスマス・イヴからの12日間、毎日届けられる12の贈り物の謎……。エラリイが解決までに最も長い歳月を要した怪事件。(千街)
最後の一撃 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-14)
98『Xの悲劇』エラリー・クイーン/越前敏弥訳(角川文庫)1932年刊行
 動く密室空間ともいうべきニューヨークの市電の中で起きた、奇妙な凶器による殺人事件。大胆きわまりない伏線と緻密な論理展開、そして最後の衝撃度は、クイーン全作品中でも一二を争う、これぞ本格ミステリのお手本といえる傑作。(川出)
 《レーン四部作》の第一弾という意味もあるが、ダイイングメッセージものとしてもこの一作の切れ味は抜群。どうせなら新訳で読んでみよう。(村上)
Xの悲劇 (角川文庫)


99『大穴』ディック・フランシス/菊池光訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)1965年刊行
 レースで負傷し、引退を余儀なくされた騎手シッド・ハレー。探偵社の調査員としてくすぶった日々を送っていた彼が、ある出来事をきっかけに、悪役との闘いを通じて再生していく物語。ハレーが取り戻していく矜恃が読む者の心を強烈に惹きつける。(村上)
大穴 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-2))
100『興奮』ディック・フランシス/菊池光訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)1965年刊行
 競馬にまったく関心のない者まで夢中になってしまうことで有名な競馬シリーズのなかでも人気の一作。必ずしもスーパーヒーローではない主人公の不屈の闘志を描かせたら、フランシスの右に出るものなし。まさに興奮。(吉野)
興奮 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-1))
101『度胸』ディック・フランシス/菊池光訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)1964年刊行
 競馬シリーズを未読のひとが心底うらやましい。どれから読んでもいいと思うんだが、競馬シリーズの真髄が全部そろった本書をおすすめしたい。理不尽な悪への屈服を良しとせぬ意志の力。それだ。(霜月)
度胸 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-5 競馬シリーズ)


102『三つの棺』ジョン・ディクスン・カー/三田村裕訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)1935年刊行
 密室で撃たれた教授。同じ夜、雪の路上でも不可能殺人が……。とびきりの謎と解決が用意されたカーの最高傑作。登場人物の発言の意味がすべて二重に解釈可能という超絶技巧に注目。(千街)
三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)
103『皇帝のかぎ煙草入れ』ジョン・ディクスン・カー/井上一夫訳(創元推理文庫)1942年刊行
 向かいの家のドアから誰かが出ていった直後、そこに住む婚約者の父が殺害されているのを見てしまったイヴ。容疑の目を向けられるものの、警察に協力することはできなかった。なぜならそのとき一緒にいたのは、別れた夫だったのだから。オカルトと密室の巨匠という先入観を吹き飛ばす、シンプルながら破壊力抜群の本格ミステリ。(川出)
皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)
104『カー短篇全集2 妖魔の森の家』ジョン・ディクスン・カー/宇野利泰訳(創元推理文庫)表題作は1946年発表
 人間消失! 本格ミステリを読む愉しさがぎゅっと凝縮された表題作を堪能せよ。短篇もうまいカーだが、なかでもこの表題作は特に素晴らしい。(村上)
妖魔の森の家 (創元推理文庫―カー短編全集 2 (118‐2))


(つづく)