東京創元社 8月の新刊

ミステリーズ!』vol.72 AUGUST 2015
東京創元社(雑誌)/本体価格1200円/8月12日/ISBN:978-4-488-03072-8
【特別企画】
来日記念 フェルディナント・フォン・シーラッハインタビュー
酒寄進一 シーラッハのロスト・イン・トランスレーション
【ブックエッセイ】
斎藤倫子 私はこれが訳したい Das Fliegende Klassenzimmer Erich Kastner
【評論】
川出正樹 ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 第二十三回

ミステリーズ! vol.72

ミステリーズ! vol.72


『地球の中心までトンネルを掘る』/Tunneling to Center of the Earth
ケヴィン・ウィルソン(Kevin Wilson)/芹澤恵・訳
海外文学セレクション(単行本)/本体価格1800円/8月12日/ISBN:978-4-488-01658-6
【シャーリイ・ジャクスン賞、全米図書館協会アレックス賞受賞作】
これは「あなた」だったかもしれない人たちが織りなす、孤独と共感についての11の物語。代理祖父母派遣会社で引く手あまたの「祖母」として働く女性、人体自然発火現象で死ぬことを恐れながら弟と暮らす青年、折りヅルを使った奇妙な遺産相続ゲームに挑む男たち、ある日突然思いつき、裏庭でひたすらトンネルを掘りはじめた三人の若者……少しだけ「普通」から逸脱した日々を送る人々の、生活と感情の断片を切り取った挿話が、不思議としみじみした余韻をもたらす短編集。解説=倉本さおり

【収録作品】
「替え玉」
「発火点」
「今は亡き姉ハンドブック:繊細な少年のための手引き」
「ツルの舞う家」
モータルコンバット
「地球の中心までトンネルを掘る」
「弾丸マクシミリアン」
「女子合唱部の指揮者を愛人にした男の物語(もしくは歯の生えた赤ん坊の)」
「ゴー・ファイト・ウィン」
「あれやこれや博物館」
「ワースト・ケース・シナリオ株式会社」

地球の中心までトンネルを掘る (海外文学セレクション)

地球の中心までトンネルを掘る (海外文学セレクション)


『シンデレラたちの罪』/Askungar
クリスティーナ・オルソン(Kristina Ohlsson)/ヘレンハルメ美穂・訳
創元推理文庫/本体価格1300円/8月12日/ISBN:978-4-488-19204-4
女の子は座席で眠っていた。途中駅での停車時間にホームに降りた母親を置いて、列車は出発してしまう。そして終点で確認したときには、女の子は消えていた……。捜査にあたったストックホルム市警の敏腕警部は、少女の母親の別れた夫に目をつけた。どうやら母親は元夫に暴力をふるわれていたらしい。だが彼の部下で新人の女性警察官のフレデリカは捜査の方向に違和感を感じていた。世界27か国で刊行、大好評を博したデビュー作。訳者あとがき=ヘレンハルメ美穂

シンデレラたちの罪 (創元推理文庫)

シンデレラたちの罪 (創元推理文庫)


『誘拐された犬 名犬チェットと探偵バーニー2』/Thereby Hangs a Tail
スペンサー・クイン(Spencer Quinn)/古草秀子・訳
創元推理文庫/本体価格1000円/8月21日/ISBN:978-4-488-23007-4
●大矢博子氏――「犬を徹底的にリアルに(でも可愛く)描くことで、それがミステリとしての構造にも寄与しているという、稀有なシリーズ」(解説より)
チェットとバーニーの元依頼人、伯爵夫人と愛犬が誘拐された。事件を取材中のバーニーの恋人も失踪。何が起きたのか? 犬好きのリトマス試験紙ともいうべき傑作犬ミステリ。(単行本版タイトル『チェット、大丈夫か?』改題・文庫化)


『もう過去はいらない』/Don't Ever Look Back
ダニエル・フリードマン(Daniel Friedman)/野口百合子・訳
創元推理文庫/本体価格1040円/8月28日/ISBN:978-4-488-12206-5
88歳のメンフィス署の元殺人課刑事バック・シャッツ。歩行器を手放せない日常にいらだちを募らせる彼のもとを、因縁浅からぬ銀行強盗イライジャが訪ねてきた。何者かに命を狙われていて、助けてほしいという。やつは確実になにかをたくらんでいる。それはなんだ。88歳の伝説の名刑事vs.78歳の史上最強の大泥棒。『もう年はとれない』を超える、最高に格好いいヒーローの活躍! 解説=川出正樹

もう過去はいらない (創元推理文庫)

もう過去はいらない (創元推理文庫)


『怪盗ニック全仕事2』/The Complete Stories of Nick Velvet: Vol.2
エドワード・D・ホック(Edward D. Hoch)/木村二郎・訳
創元推理文庫/本体価格1300円/8月28日/ISBN:978-4-488-20115-9
映画の没フィルム、サーカスのポスター、アパートのゴミ……誰も盗もうとは思わないものだけを、依頼されて盗むユニークな怪盗ニック・ヴェルヴェット。本書にはお馴染みの奇妙な依頼のほか、何を盗むのか不明な話、ニック自身が盗まれる話、何も盗まないよう頼まれる話など、シリーズ屈指の変化球をそろえた。短編の名手ホックが生み出した、比類なき怪盗の文庫版全集第2弾。解説=木村仁良

【収録作品】
「マフィアの虎猫を盗め」
「空っぽの部屋から盗め」
「くもったフィルムを盗め」
「クリスタルの王冠を盗め」
「サーカスのポスターを盗め」
カッコウ時計を盗め」
「怪盗ニックを盗め」
「将軍のゴミを盗め」
「石のワシ像を盗め」
「バーミューダ・ペニーを盗め」
ヴェニスの窓を盗め」
「海軍提督の雪を盗め」
「卵形のかがり玉を盗め」
シャーロック・ホームズのスリッパを盗め」
「何も盗むな」

怪盗ニック全仕事(2) (創元推理文庫)

怪盗ニック全仕事(2) (創元推理文庫)


『まるで天使のような』/How Like an Angel
マーガレット・ミラー(Margaret Millar)/黒原敏行・訳
創元推理文庫/本体価格1200円/8月28日/ISBN:978-4-488-24709-6
山中で交通手段を無くした青年クインは、〈塔〉と呼ばれる新興宗教の施設に助けを求めた。そこで彼は一人の修道女に頼まれ、オゴーマンという人物を捜すことになる。だが彼は五年前、謎の死を遂げていた。平凡で善良な男に何が起きたのか。なぜ外界と隔絶した修道女が彼を捜すのか。私立探偵小説と心理ミステリをかつてない手法で繋ぎ、著者の最高傑作と称される名品が新訳で復活。解説=我孫子武丸


『書店猫ハムレットの跳躍』/A Novel Way to Die
アリ・ブランドン(Ali Brandon)/越智睦・訳
創元推理文庫/本体価格1200円/8月28日/ISBN:978-4-488-28602-6
ニューヨーク、ブルックリンの書店を大叔母から相続した、三十代半ばのダーラ。堂々と書棚を徘徊し、緑色の目で冷たく客を睥睨する黒猫ハムレットが店のマスコットだ。ある日、ダーラは近所の工事現場で常連客の死体を発見してしまう。その脇には動物の足跡が。最近、夜に外を出歩いているらしいハムレットのものなのか? 名探偵猫ハムレット登場の、コージー・ミステリ第一弾。訳者あとがき=越智睦

書店猫ハムレットの跳躍 (創元推理文庫)

書店猫ハムレットの跳躍 (創元推理文庫)

海外ミステリを“楽しく”継承〜『海外ミステリ・ハンドブック』刊行!(早川書房編集部)

 

『海外ミステリ・ハンドブック』のうちあわせの際にカバー&本文デザイナーの森ヒカリさんにお伝えしたカバーのコンセプトは――
「ハンディー、キャッチー、ラブリー」
 ――でした。
 
 想定読者をビギナーさんとし、目玉企画の海外ミステリ作品〈100冊ガイド〉を気軽に楽しんでもらいたい。
 編集部では社内企画が通った時から考え続けました。何度も。
 そして「作品ガイドの紹介枚数は1作品2枚」「客観的なミステリの評価・構造分析ではなく書き手の想いの入ったエッセイで」「本文デザインの文字間・書体にこだわり読みやすく柔かい印象になるように」といった規則にのっとり編集を進めました。
 
 楽しんでもらうということから、今まさに読者が楽しまれている事柄をフックにして紹介するのが一つの方法。SHERLOCKのようにすてきなキャラクターが主人公をはるミステリを集めよう、《相棒》のように二人の友情にきゅんとくるミステリを紹介しよう、そんなふうに入りやすいカテゴライズをしました。
 

1.〔個性豊か〕キャラ立ちミステリ
2.〔新発見いっぱい〕クラシック・ミステリ
3.〔カッコいい!〕ヒーロー or アンチ・ヒーロー・ミステリ
4.〔どこかユーモアがある〕〈楽しい殺人〉のミステリ
5.〔胸にぐっとくる〕相棒物ミステリ
6.〔もはや一大ジャンル〕北欧ミステリ
7.〔風土色豊か〕英米圏以外のミステリ
8.〔読み出したら止まらない〕エンタメ・スリラー
9.〔後味がくせになる〕イヤミス好きに薦めるミステリ
10.〔時代を作る・作った〕新世代ミステリ

 
 二十数年前に刊行した『ミステリ・ハンドブック』にはなかった用語、コンセプトが入っており、時代は変わっていくのだなあとあらためて感じます。
 
 今回の『海外ミステリ・ハンドブック』はこの「マニア向けの」『ミステリ・ハンドブック』があったからこそ刊行ができました。その前を辿ると、ハヤカワ・ミステリ文庫が一九七六年の創刊から今までミステリを出し続けていたから多様な作品群があったわけで、そもそも1945年に早川書房が創立してミステリ編集者がバトンをつないできてくれたからこそ、ミステリのガイドブックを刊行するに到ったわけです。
 
 その意味で、本書は早川書房のミステリ編集者全員で作った本といえます。何人いたかもう数えることもできないくらい多くの編集者の仕事が、つないでつながれて「読者に海外ミステリを楽しんでもらいたい」という想いのこもった1冊のガイドになりました。10年、20年、30年さらにつながれて、100周年100冊ガイドをお届けできたらと思います。

早川書房編集部)   
 
ミステリマガジン 2013年 04月号 [雑誌]

ミステリマガジン 2013年 04月号 [雑誌]

ミステリマガジン 2011年 01月号 [雑誌]

ミステリマガジン 2011年 01月号 [雑誌]

 
ミステリ・ハンドブック (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミステリ・ハンドブック (ハヤカワ・ミステリ文庫)

冒険・スパイ小説ハンドブック (ハヤカワ文庫NV)

冒険・スパイ小説ハンドブック (ハヤカワ文庫NV)

 

東京創元社 7月の新刊

『水の葬送』/Dead Water
アン・クリーヴス(Ann Cleeves)/玉木亨・訳
創元推理文庫/本体価格1320円/7月21日/ISBN:978-4-488-24509-2
シェトランド島の地方検察官ローナは、小船にのせられ外海へ出ようとしていた死体の発見者となる。被害者は地元出身の若い新聞記者だった。本土から派遣された女性警部がサンディ刑事たちと進める捜査に、病気休暇中のペレス警部も参加し、島特有の人間関係とエネルギー産業問題が絡む難事件に挑む。〈シェトランド四重奏(カルテット)〉を経て著者が到達した、現代英国ミステリの新たな高み。解説=若林踏

水の葬送 (創元推理文庫)

水の葬送 (創元推理文庫)


『7は秘密 ニューヨーク最初の警官』/Seven for a Secret
リンジー・フェイ(Lyndsay Faye)/野口百合子・訳
創元推理文庫/本体価格1460円/7月21日/ISBN:978-4-488-25105-5
1846年の真冬。ニューヨーク市警のティムは、黒人の血が混じった女性ルーシーから助けを求められる。妹と息子が悪辣な逃亡奴隷捕獲人に拉致されたのだ。彼女たちを助け出し兄の家に匿ったが、翌々日の朝、その家でルーシーの死体を発見する。唯一の肉親である兄に嫌疑がかかることを恐れたティムは死体を移動させ、犯人を追う。ニューヨーク市初の警官となった青年の奮闘を活写した警察小説! 解説=酒井貞道

7は秘密 (ニューヨーク最初の警官) (創元推理文庫)

7は秘密 (ニューヨーク最初の警官) (創元推理文庫)


『銃を読み解く23講 見る、読む、訳すGUNの世界』/Twenty-Three Stories to Gain Insights Into Guns
小林宏明(KOBAYASHI HIROAKI)
東京創元社(単行本)/本体価格1500円/7月21日/ISBN:978-4-488-01541-1
月村了衛氏推薦――「〈心のガンマン〉&〈心の名探偵〉必読の書。全著作をいつも参考にさせて頂いている小林さんが、ミステリと銃に関するとびきりのエッセイを書かれた。今宵は脳内西部か脳内暗黒街のバーでグラスを傾けながら至福の読書としゃれ込もう」
銃について集めた知識の一端を、やさしく、おもしろく、かつためになるように書いてみようと思う――
近年起きた銃にまつわる事件から、小説・映画・コミック、そして海外ドラマまで、幅広い事例を参照しつつ「正しい銃知識」が身につけられる。
名翻訳家にして銃研究家が案内する、すばらしき「GUN」の世界――「ミステリーズ!」連載に大幅増補を加えた、読書家・創作者のためのやさしい銃講座。


『声』/Roddin
アーナルデュル・インドリダソン(Arnaldur Indrioason)/柳沢由実子・訳
東京創元社(単行本)/本体価格1900円/7月29日/ISBN:978-4-488-01047-8
サンタクロースの扮装でめった刺しにされた男。一人の男の栄光、悲劇、転落、そして死。世界でシリーズ累計1000万部突破。世界を驚愕させた『湿地』『緑衣の女』に続く第3弾。訳者あとがき=柳沢由実子

声


『海辺の幽霊ゲストハウス』/Night of the Living Deed
E・J・コッパーマン(E. J. Copperman)/藤井美佐子・訳
創元推理文庫/本体価格1260円/7月29日/ISBN:978-4-488-25903-7
ニュージャージーの海辺に建つ古い屋敷をリフォームしてゲストハウスにし、9歳の娘メリッサと新生活を始めようとしていたシングルマザーのアリソン。だがひょんなことから、屋敷に取り憑いている前オーナーと私立探偵の幽霊が見えるようになってしまう。彼らから、自分たちの死についての調査を手伝ってほしいと頼まれたのだが……。明るく楽しいコージーミステリ・シリーズ! 訳者あとがき=藤井美佐子

海辺の幽霊ゲストハウス (創元推理文庫)

海辺の幽霊ゲストハウス (創元推理文庫)


『新車のなかの女【新訳版】』/La Dame dans l'auto avec des lunettes et un fusil
セバスチアン・ジャプリゾ(Sebastien Japrisot)/平岡敦・訳
創元推理文庫/本体価格1120円/7月29日/ISBN:978-4-488-14207-0
雇い主の車を乗り回し南仏を目ざした女が巻き込まれた事件。なぜ初めての地で誰もが彼女を知っているのか? そして発見された謎の死体……。鬼才ジャプリゾの傑作を新訳で。訳者あとがき=平岡敦/解説=連城三紀彦

新車のなかの女【新訳版】 (創元推理文庫)

新車のなかの女【新訳版】 (創元推理文庫)


『ユダの窓』/The Judas Window
カーター・ディクスン(Carter Dickson)/高沢治・訳
創元推理文庫/本体価格980円/7月29日/ISBN:978-4-488-11838-9
一月四日の夕刻、ジェームズ・アンズウェルは結婚の許しを乞うため恋人メアリの父親エイヴォリー・ヒュームを訪ね、書斎に通された。話の途中で気を失ったアンズウェルが目を覚ましたとき、密室内にいたのは胸に矢を突き立てられて事切れたヒュームと自分だけだった――。殺人の被疑者となったアンズウェルは中央刑事裁判所で裁かれることとなり、ヘンリ・メリヴェール卿が弁護に当たる。被告人の立場は圧倒的に不利、十数年ぶりの法廷に立つH・M卿に勝算はあるのか。法廷ものとして謎解きとして、間然するところのない本格ミステリの絶品。
ジョン・ディクスン・カーの魅力=瀬戸川猛資鏡明北村薫、斎藤嘉久、戸川安宣(司会)/本座談会と『ユダの窓』について=戸川安宣


『ねじまき男と機械の心』上下/The Curious Case of the Clockwork-Man
マーク・ホダー(Mark Hodder)/金子司・訳
創元海外SF叢書(単行本)/本体価格各1900円/7月29日/ISBN:(上)978-4-488-01456-8(下)978-4-488-01457-5
蒸気馬車や羽ばたき飛行機だけでなく、巨大改変生物に蒸気機関を搭載した多脚機械まで現れ、ますます本来の歴史から逸脱してゆく1862年大英帝国。深夜の帝都に現れた機械人間の騒ぎの陰で盗まれた黒ダイヤ〈ナーガの目〉――世界中に伝承が散らばるこの宝石は、天才科学者バベッジが求める特異な力を秘めていた。その力は、歴史を歪めたかの怪人「バネ足ジャック」とも関わるという……傑作スチームパンク×時間SF! 解説=北原尚彦

ねじまき男と機械の心〈上〉 (大英帝国蒸気奇譚2) (創元海外SF叢書)

ねじまき男と機械の心〈上〉 (大英帝国蒸気奇譚2) (創元海外SF叢書)

ねじまき男と機械の心〈下〉 (大英帝国蒸気奇譚2) (創元海外SF叢書)

ねじまき男と機械の心〈下〉 (大英帝国蒸気奇譚2) (創元海外SF叢書)

東京創元社 6月の新刊

ミステリーズ!』vol.71 JUNE 2015
東京創元社(雑誌)/本体価格1200円/6月12日/ISBN:978-4-488-03071-1
【特集】
作品ガイドと翻訳家エッセイで贈る 新訳・名作ミステリの扉
「更新」されるクラシック・ミステリ ──創元推理文庫・新訳の概況 若林 踏
新訳ミステリ 刊行ラインナップ
新訳ができるまで 翻訳家エッセイ 法村里絵、武藤崇恵、高沢 治、平岡 敦

【読切短編】
北原尚彦  消えた靴磨き少年の事件
●靴磨き少年たちが巻き込まれた事件を、ベイカー街イレギュラーズが追う。ホームズ・パスティーシュ最新作

【ブックエッセイ】
長谷敏司 私の一冊『宇宙消失』グレッグ・イーガン
高山祥子 私はこれが訳したい Claire DeWitt and the Bohemian Highway Sara Gran

【評論】
川出正樹 ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 第二十二回

ミステリーズ! vol.71

ミステリーズ! vol.71


『悪女は自殺しない』/Eine Unbeliebte Frau
ネレ・ノイハウス(Nele Neuhaus)/酒寄進一・訳
創元推理文庫/本体価格1200円/6月12日/ISBN:978-4-488-27607-2
ドイツ、2005年8月。警察署に復帰した刑事ピアを、飛び降り自殺に偽装された女性の死体が待ち受けていた。実際は動物の安楽死に使用される薬物による毒殺で、夫の獣医や彼の働く馬専門動物病院の共同経営者たちが疑われる。だが刑事オリヴァーが指揮を執る捜査班が探るうち、隠された数々の事件が繋がりはじめ……。〈ドイツミステリの女王〉の人気に火をつけたシリーズ第一弾。解説=千街晶之

悪女は自殺しない (創元推理文庫)

悪女は自殺しない (創元推理文庫)


『おかしな遺産』/The Odd Job
シャーロット・マクラウドCharlotte MaCleod) /戸田早紀・訳
創元推理文庫/本体価格1100円/6月22日/ISBN:978-4-488-24628-0
盗まれた名画を捜し海外出張中の夫マックスの留守を預かるセーラのもとに、夫妻にとって因縁浅からぬ「御殿」ことウィルキンズ美術館にて、またも変死事件が起きたとの報が入る。被害者は顔見知りの画家ドロレスだった。その翌日、セーラはひとり事務所にいたところを襲撃され、さらに自分が彼女の遺言執行人に指名されていることを知る。美術館一筋だったドロレスはなぜ殺されたのか? 古都ボストンを舞台にした人気シリーズ最新刊! 解説=大矢博子

おかしな遺産 (創元推理文庫)

おかしな遺産 (創元推理文庫)


『子守唄』/Vyssan lull
カーリン・イェルハルドセン(Carin Gerhardsen)/木村由利子・訳
創元推理文庫/本体価格1100円/6月22日/ISBN:978-4-488-21605-4
眠るようにベッドに横たわる母と二人の幼い子ども。だが喉の傷と大量の血が、彼らが殺されたことを物語っていた。母親は結婚してスウェーデンにやってきたフィリピン女性。夫とは別れ、女手ひとつで子どもたちを育てていた。捜査線上に浮かんだ、被害者と親しかったらしい謎の男性。一家が住む高級アパートを買ったのはその男なのか? ハンマルビー署、ショーベリ警視以下捜査陣は、衝撃の事実にたどりつく。好評シリーズ第3弾。訳者あとがき=木村由利子

子守唄 (創元推理文庫)

子守唄 (創元推理文庫)


『薔薇の輪』/A Ring of Roses
クリスチアナ・ブランド(Christianna Brand)/猪俣美江子・訳
創元推理文庫/本体価格940円/6月29日/ISBN:978-4-488-26203-7
ロンドンの女優エステラ。その絶大な人気は、体が不自由でウェールズに住んでいるという娘との交流を綴った新聞の連載エッセイに支えられていた。エステラの未来は順風満帆に思われた。服役中の危険人物の夫が、病気のため特赦で出所し、死ぬまえに娘に会いたいと言い出すまでは……。勃発した怪事件に挑むのは、警部チャッキー。巨匠の技巧が冴える、本邦初訳の傑作ミステリ! 解説=福井健太

薔薇の輪 (創元推理文庫)

薔薇の輪 (創元推理文庫)

東京創元社 4月の新刊

『犯罪』/Verbrechen
フェルディナント・フォン・シーラッハ(Ferdinand von Schirach)/酒寄進一・訳
創元推理文庫/本体価格720円/4月3日/ISBN:978-4-488-18602-9
本屋大賞翻訳小説部門第1位】
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。──魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作! 解説=松山巖

【収録作品】
「序」
「フェーナー氏」
「タナタ氏の茶碗」
「チェロ」
ハリネズミ
「幸運」
サマータイム
「正当防衛」
「緑」
「棘」
「愛情」
エチオピアの男」

犯罪 (創元推理文庫)

犯罪 (創元推理文庫)


ミステリーズ!』vol.70 APRIL 2015
東京創元社(雑誌)/本体価格1200円/4月13日/ISBN:978-4-488-03070-4
【特集】 
没後50年特別企画 今振り返る、江戸川乱歩
平井憲太郎氏が語る 素顔の祖父・乱歩
江戸川乱歩が選ぶミステリ・ガイド
出版社の特別企画
編集者が行く 旧江戸川乱歩邸&土蔵探検記 
江戸川乱歩邸アクセスマップ
二〇一五年の乱歩関連のイベント一覧
【翻訳】
北原尚彦 シャーロック・ホームズと〈ボーダーの橋〉バザー
●二〇一五年二月二十日、未知の「ホームズ譚」が発見されたと報じられ、世界中が沸き立った。話題の一作を緊急邦訳!
【ブックエッセイ】 
奥泉 光    私の一冊 『毒入りチョコレート事件』 アントニイ・バークリー
ヘレンハルメ美穂 私はこれが訳したい Expeditionen:min karlekshistoria Bea Uusma
【評論】 
川出正樹 ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 第二十一回 
【コラム】 
レイコの部屋 第十五回

ミステリーズ! vol.70

ミステリーズ! vol.70


『エディに別れを告げて』/En finir avec Eddy Bellegueule
エドゥアール・ルイ(Edouard Louis)/高橋啓・訳
海外文学セレクション(単行本)/本体価格1700円/4月13日/ISBN:978-4-488-01657-9
子供の頃に、楽しい思い出はまったくない。この時代に、幸福や喜びの感情を経験したことがないというつもりはない。ただ、痛みがすべてを支配しているから、そこに収まらないものは消されてしまうのだ――フランスのエリート青年エドゥアール・ルイが自らの少年時代を赤裸々に綴った衝撃の私小説。差別主義と力が支配する貧しい村で、同性愛者としての自分に、壮絶ないじめに、貧困に苦しみ、すべてを捨てて、そこから脱出した! 訳者あとがき=高橋啓

エディに別れを告げて (海外文学セレクション)

エディに別れを告げて (海外文学セレクション)


『探偵は壊れた街で』/Claire DeWitt and the City of Dead
サラ・グラン(Sara Gran)
創元推理文庫/本体価格1200円/4月13日/ISBN:978-4-488-16202-3
クレア・デウィットはただの女探偵ではない。独特の探偵術を駆使し、巧みに銃を扱い、困難な調査でも決して諦めない。2007年、ハリケーンの傷痕が残るニューオーリンズで、クレアは失踪した地方検事補の捜索を依頼される。洪水で死んだと思われる一方で、嵐のあとに姿を見た者もおり経緯がわからない。真実によって誰かが傷つくこともある。しかし探偵にできるのは、謎を解決し先に進むことだけだ。傷ついた街と人々に寄り添う女探偵の活躍を描く、マカヴィティ賞最優秀長篇賞受賞作。訳者あとがき=高山祥子

探偵は壊れた街で (創元推理文庫)

探偵は壊れた街で (創元推理文庫)


『誰でもない彼の秘密』/Nobody's Secret
マイケラ・マッコール(Michaela MacColl)/小林浩子・訳
東京創元社(単行本)/本体価格1600円/4月27日/ISBN:978-4-488-01044-7
1845年、アメリカの小さな町。15歳のエミリーは洒落た身なりの美青年と出会う。名のるほどの者ではないと言った、謎めいた彼に惹かれたエミリーは町を案内する約束を交わす。ところが数日後、家の敷地内で男性の死体が発見される。それは先日出会ったばかりの彼だった。彼――ミスター・ノーバディが何者なのか、何が起こったのかを突きとめたい。その一心でエミリーは慣れない調査をはじめる。瑞々しい感性と抜群の観察眼を持つ、偉大な詩人エミリー・ディキンソンの少女時代を描いた鮮やかな力作! 解説=山崎まどか

誰でもない彼の秘密

誰でもない彼の秘密

東京創元社 3月の新刊

『だれがコマドリを殺したのか?』/Who Killed Cock Robin?
イーデン・フィルポッツ(Eden Phillpotts)/武藤崇恵・訳
創元推理文庫/本体価格920円/3月12日/ISBN:978-4-488-11105-2
医師のノートンは、海岸の遊歩道で見かけた美貌の娘に、一瞬にして心を奪われた。その名はダイアナ、あだ名は“コマドリ”。ノートンは、踏みだしかけていた成功への道から外れることを決意し、燃えあがる恋の炎に身を投じる。それが数奇な物語の始まりとは知るよしもなく。『赤毛のレドメイン家』と並び、著者の代表作と称されるも、長らく入手困難だった傑作が新訳でよみがえる! 解説=戸川安宣


『国王陛下の新人スパイ』/His Majesty's Hope
スーザン・イーリア・マクニール(Susan Elia MacNeal)/圷香織・訳
創元推理文庫/本体価格1260円/3月12日/ISBN:978-4-488-25504-6
第二次世界大戦が勃発して約2年。チャーチル英国首相のタイピスト、エリザベス王女の警備役を経て、ついにスパイとしてベルリンに送り込まれることになったわたし、マギー・ホープ。そこで待ち受けていたのは、予想をはるかに上回る困難と、自分自身にまつわる問題だった……。予想を裏切り続ける大胆な展開! 読み出したら止まらない、大好評マギー・ホープ・シリーズ第三弾。訳者あとがき=圷香織/解説=大矢博子

国王陛下の新人スパイ (創元推理文庫)

国王陛下の新人スパイ (創元推理文庫)


『死を歌う孤島』/Inte Ens Det Fouflutna
アンナ・ヤンソン(Anna Jansson)/久山葉子・訳
創元推理文庫/本体価格1320円/3月23日/ISBN:978-4-488-17506-1
大自然の中で一週間を過ごすセラピーキャンプ。海賊伝説が残る無人島でパソコンや携帯電話から隔離され、心と身体のバランスを取り戻す。島に渡ったのは主催者二人を含めた七人の女。だが事情を抱える参加者同士がいがみ合い、いやな雰囲気が漂う。そして主催者の一人が死体で発見された。本土とは連絡がつかず、さらに犠牲者が……。警察官であることを隠し、親友と参加していたゴッドランド島犯罪捜査官マリアにも魔の手が伸びる。訳者あとがき=久山葉子

死を歌う孤島 (創元推理文庫)

死を歌う孤島 (創元推理文庫)


青柳いづみこのMERDE(メルド)!日記』
青柳いづみこ(Aoyagi Izumiko)
東京創元社(単行本)/本体価格2500円/3月23日/ISBN:978-4-488-02745-2
MERDE(メルド)!とは「くそったれ!」という意味のフランス語。怒りの言葉でもあり、幸運を祈るときに投げる言葉でもある。青柳いづみこが、音楽と文筆の二刀流の超多忙な日々を自由自在に綴った、繊細かつ大胆なエッセイ集。トーキョウでメルド! パリでメルド! シチリアでメルド! モノ書きピアニスト、旅するピアニスト、美食家ピアニスト、怒れるピアニスト……の感動的な、そして抱腹絶倒のいつわらざる日常に乾杯! 著者あとがき=青柳いづみこ

青柳いづみこのMERDE! 日記

青柳いづみこのMERDE! 日記

東京創元社

ミステリーズ!』vol.69 FEBRUARY 2015
東京創元社(雑誌)/本体価格1200円/2月13日/ISBN:978-4-488-03069-8
【特集】
いま注目を集める「女性私立探偵ミステリ」 
ブックガイド 女性私立探偵の系譜 大矢博子
『猫とアリス』刊行記念 芦原すなおインタビュー
【ブックエッセイ】 
高田大介 私の一冊『世界短編傑作集4』江戸川乱歩
芹澤 恵  私はこれが訳したい Tunneling to the Center of the Earth Kevin Wilson
【評論】 
川出正樹 ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 第二十回 
【コラム】 レイコの部屋 第十四回

ミステリーズ! vol.69

ミステリーズ! vol.69


『旅のお供に殺人を』/Murder Ole!
コリン・ホルト・ソーヤー(Corinne Holt Sawyer)/中村有希・訳
創元推理文庫/本体価格1200円/2月13日/ISBN:978-4-488-20309-2
入居者向け娯楽活動の不毛さに音を上げた高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉の面々は状況の改善に乗り出し、スペイン語講座、さらにはメキシコへのバス旅行が実現のはこびとなる。アンジェラとキャレドニア以下参加者一行11人は、添乗員つきツアーをおおむね楽しんでいた……新入りの老婦人が、突然の死に見舞われるまでは。老人探偵団が異国の地で大騒ぎする、シリーズ第八弾。訳者あとがき=中村有希

旅のお供に殺人を (創元推理文庫)

旅のお供に殺人を (創元推理文庫)


『漆黒の森』/Schweig still, mein Kind
ペトラ・ブッシュ(Petra Busch)/酒寄進一・訳
創元推理文庫/本体価格1280円/2月13日/ISBN:978-4-488-26003-3
取材で黒い森(シュヴァルツヴァルト)を訪れた編集者のハンナは、トレッキングの最中に女性の死体を発見してしまう。被害者は10年前に村を出て帰郷したばかりの妊婦だったが、胎児が消えていた。村に伝わる“鴉谷(からすだに)”の不吉な言い伝えや、過去の嬰児失踪事件と関わりが? 堅物の刑事と敏腕女性編集者が、閉ざされた村での連続殺人を解き明かす。ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞の清冽なデビュー作! 解説=穂井田直美

漆黒の森 (創元推理文庫)

漆黒の森 (創元推理文庫)


『赤ん坊は川を流れる』/Skjulte Fejl og Mangler
エルスベツ・イーホルム(Elsebeth Egholm)/木村由利子・訳
創元推理文庫/本体価格1280円/2月21日/ISBN:978-4-488-15704-3
夫と別れ学生時代を過ごした町に戻った新聞記者ディクテ。彼女の誕生日を祝おうと集まった親友たちとオープンカフェで盛り上がっている最中、目の前の川を桶に入った赤ん坊が流れてきた。一方親友の一人が勤める産院では、新生児の額に悪戯書きをする事件が発生。さらに別の親友の赤ん坊が誘拐されてしまう。経済担当記者なのに、次々起こる赤ん坊の事件の記事を任され、ディクテはしぶしぶ調査をするが……。北欧版ライトミステリ。訳者あとがき=木村由利子

赤ん坊は川を流れる (創元推理文庫)

赤ん坊は川を流れる (創元推理文庫)


『完璧な夏の日』上下/The Viorent Century
ラヴィ・ティドハー(Lavie Tidhar)/茂木健・訳
創元SF文庫/本体価格各1000円/2月21日/ISBN:(上)978-4-488-75201-9(下)978-4-488-75202-6
第二次世界大戦の直前、世界各地に突如現れた異能力者たちは各国の情報機関や軍に徴集され、死闘を繰りひろげた。そして現在。イギリスの情報機関を辞して久しい異能力者のひとりフォッグは、かつての相棒と上司に呼び出され、過去を回想する。突然の能力発現、仲間との初めての出会い、終わりなき闘いの日々……。新鋭の世界幻想文学大賞作家が放つ、最先端をゆく“戦争×SF”。英ガーディアン紙2013年ベストSF選出作。解説=渡邊利道

完璧な夏の日〈上〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈上〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈下〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈下〉 (創元SF文庫)


『纏う 透き色の 羽住都画集』
羽住都(Hasumi Miyako)
東京創元社(単行本)/本体価格3000円/2月21日/ISBN:978-4-488-01425-4
乾石智子〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ、パトリシア・マキリップ〈イルスの竪琴〉三部作、壁井ユカコ五龍世界〉、テリー・グッドカインド〈真実の剣〉、など繊細で緻密な画風で人気のイラストレータ羽住都、待望の第二画集。自然との一体感を表現しつつファンタジー世界を描くことにかけては右に出る者がいない。二〇〇四年刊行の第一画集以降の作品の中で、ファンタジー寄りのものを集めた作品集。書き下ろし収録。特典付。

纏う透き色の 羽住都画集

纏う透き色の 羽住都画集


『歌うダイアモンド マクロイ傑作選』/The Singing Diamonds and Other Stories
ヘレン・マクロイ(Helen McCloy)/好野理恵・他訳
創元推理文庫/本体価格1160円/2月27日/ISBN:978-4-488-16810-0
輝く謎の飛行体を見た者が相次いで死亡する怪事件──精神科医ウィリングの推理を描いて本格の技巧を示した表題作ほか、荒涼たる世界の終末を美しい筆致で綴り深い感動を呼ぶSF「風のない場所」などの多彩な8篇に、十五年前の事件に決着をつけるため帰還した男が殺人事件に巻き込まれる中篇「人生はいつも残酷」を併録。アメリカ随一の実力派マクロイの魅力を凝縮した傑作選。解説=千街晶之

【収録作品】
「東洋趣味(シノワズリ)」
「Q通り十番地」
「八月の黄昏に」
「カーテンの向こう側」
「ところかわれば」
「鏡もて見るごとく」
「歌うダイアモンド」
「風のない場所」
「人生はいつも残酷」

歌うダイアモンド (マクロイ傑作選) (創元推理文庫)

歌うダイアモンド (マクロイ傑作選) (創元推理文庫)