【随時更新】ミステリー陪審席【討論歓迎】

私には『ミレニアム』が「無駄が多い」「薄っぺらい」「嘘臭い」「雑多」な小説とは思えない。あるいは、『ミレニアム』を批判する私という存在の謎 その1(執筆者・小山正)

※編集部注:12月8日に酒井貞道さんから寄稿いただいた「問題提起・ミレニアム三部作は本当に傑作なのか?」について、各論者に反論あるいは擁護の打診を致しましたが、執筆のお約束はいただけませんでした。今回の小山正さんご寄稿が、酒井論に対する最初の…

私には『ミレニアム』が「無駄が多い」「薄っぺらい」「嘘臭い」「雑多」な小説とは思えない。あるいは、『ミレニアム』を批判する私という存在の謎 その2(執筆者・小山正)

(承前) 私の場合、『ミレニアム』が本当にすばらしいと思う理由は、単行本『ドラゴン・タトゥーの女』下巻の後書きでも長々と書いたし、昨年刊行された『ミステリが読みたい!2009年版』(早川書房)でもさんざん語ったので、詳細は省略させて戴く。い…

私には『ミレニアム』が「無駄が多い」「薄っぺらい」「嘘臭い」「雑多」な小説とは思えない。あるいは、『ミレニアム』を批判する私という存在の謎 その3(執筆者・小山正)

(承前) また、酒井氏はジャーナリズムの扱いに関し、 「彼らのジャーナリズムや自分たちの立場に対する楽天的な信頼は、二十一世紀の小説にしてはあまりにも能天気である。これは、わかりやすい悪徳企業や政府権力を敵にしたことで、「何が正義なのか」と…

問題提起・ミレニアム三部作は本当に傑作なのか? その1(執筆者・酒井貞道)

スティーグ・ラーソンのミレニアム三部作は、多くのプロの書評家が絶賛し、web上で見かけるアマチュアのレビューも大半が肯定的だ。 このブログでも状況は同じである。北上次郎氏いわく、今年の翻訳ミステリは、スティーグ・ラーソンのミレニアム三部作で決…

問題提起・ミレニアム三部作は本当に傑作なのか? その2(執筆者・酒井貞道)

(承前) 以上のように構成だけでも十分やばいのに、ミレニアム三部作はキャラクター造形でもやらかしてしまっている。 三部作に統一感は希薄だが、実は一つだけ、全体を結合し得る要素がある。それが主人公リスベット・サランデルである。彼女は三部作全体…

問題提起・ミレニアム三部作は本当に傑作なのか? その3(執筆者・酒井貞道)

(承前) 以上、長々と書いて来たが、私の見解を簡単にまとめると、構造・キャラクターいずれの面から言っても、ミレニアム三部作は志が低い。女性への暴力や国家権力の理不尽、そして最終的に打ち出される社会正義の実現など、三部作に用いられた各モチーフ…