【映画レビュー】三橋曉のミステリ試写室【不定期連載】

Film 17『われらが背きし者』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 16 われらが背きし者 『世界が終わってしまったあとの世界で』と『エンジェルメイカー』が相次いで紹介された息子のニック・ハーカウェイが日本でも注目を集め、孫娘にあたるジェシカ・コーンウェルも『蛇の書』でデビュー。まさに血は…

Film 16『ダーク・プレイス』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 16 ダーク・プレイス 当人のわたしも含めて、すでに記憶の彼方となりかけているこの不定期連載だけれど、久々に吹聴せずにはおれない映画があるので、紹介させていただく。昨年の東京国際映画祭での上映でその面白さに鳥肌が立ち、しば…

Film 15『特捜部Q 檻の中の女』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 15 特捜部Q 檻の中の女 今月から来月にかけて、北欧のミステリ好きには至福のひとときが訪れそうだ。ノルディック・ミステリを原作にした映画の数々が、立て続けに公開される。 まず、5回目となる〈トーキョー ノーザンライツ フェス…

Film 14『誰よりも狙われた男』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 14 誰よりも狙われた男 今年の2月2日午前のこと、ひとりの俳優の急逝を伝えるニューヨーク発の悲報が、海を越え日本の映画ファンのもとにも届けられた。亡くなったのは、フィリップ・シーモア・ホフマン。『カポーティ』で作家トルー…

Film 13『ランナウェイ/逃亡者』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 13 ランナウェイ/逃亡者 失礼ながら、老いてますます盛んとは、まさにこの人のことだろう。かつてウェストレイク原作の〈ホット・ロック〉でドートマンダー役を演じたことや、コンゲーム映画の大傑作〈スティング〉におけるポール・ニ…

Film 12『シャドー・ダンサー』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 12 シャドー・ダンサー 憎しみの連鎖が紛争を深刻なものとした例は世界中に数多あるが、北アイルランド問題もそのひとつだ。1998年に和平協定のベルファスト合意がなされた後も、その火種はくすぶり続けていたが、近年になってエリ…

Film 11『野蛮なやつら/saveges』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 11 野蛮なやつら/saveges 前回紹介したリチャード・スターク原作の〈PARKER/パーカー〉もそうだったが、今年の前半は原作ものの日本上陸がめざましい。この春先に公開されるものだけでも、トム・ブラッドリー原作の〈シャドー・ダンサ…

Film10『PARKER/パーカー』(執筆者・三橋 曉)

ミステリ試写室 film 10 PARKER/パーカー 公開目前のミステリ映画を原作との繋がりから紹介する不定期連載の「ミステリ試写室」だけど、今回の10回目で初めてのケースと遭遇した。というのは、この原作、いや原作を含むシリーズまるごとが、残念なことに…

Film9『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 9 ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 怪談といえば日本じゃ夏の風物詩なのに、海の向こうのゴーストストーリーは居間の暖炉に火が入る冬が似つかわしいのは、コワイ話をめぐるお国柄の違いだろうか。というわけで、日に日に寒さが厳し…

Film8『リンカーン弁護士』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 8 リンカーン弁護士 ずいぶんと待たされた気もするけど、でも調べてみると本国アメリカでの公開は去年の3月でした、マイクル・コナリー原作の〈リンカーン弁護士〉。まぁ、待つ身はツライということでしょうか。デニス・レヘインの「愛…

Film7『ある秘密』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 7 ある秘密 ホロコーストと向き合った文学作品は多いが、フィリップ・グランベールの「ある秘密」は、物語の要に謎があって、それがやがて説き明かされていく面白さがあるという点で、ウィリアム・スタイロンの「ソフィーの選択」(19…

Film6『裏切りのサーカス』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 6 裏切りのサーカス ミステリ好きでも、誰もが一度は途中で挫折した経験があるに違いない作家。そう、スパイ小説の巨匠、ジョン・ル・カレである。かくいうわたしにも苦〜い記憶が。しかも一度ならず二度までも…。 「パナマの仕立屋」や…

Film5『ドライヴ』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 5 ドライヴ ミステリ試写室 #5 ドライヴ まず最初に告白しておかなければならない。映画『ドライヴ』は、ジェイムズ・サリスの原作だが、実はわたしはサリスのいい読者ではなかった。おそらく、過去には好意的とはいえない書評も書い…

Film4『恋人たちのパレード』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 4 恋人たちのパレード 不意打ちのような親の死により、暗転する人生。あれ、最近どっかに似たような話があったなと思ったら、オージー産犯罪映画の「アニマル・キングダム」だった。あちらは、十七歳の少年が犯罪者ばかりの一家に引き取…

Film3『ドラゴン・タトゥーの女』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 3 ドラゴン・タトゥーの女 まずは、この予告編をご覧いただきたい。 昨年の春、忽然とネット上に出現し、目も眩まんばかりの映像と音楽で話題騒然となったデヴィッド・フィンチャー監督の『ドラゴン・タトゥーの女』である。なんでも映…

Film2『ロンドン・ブルバード-LAST BODYGUARD-』(執筆者・三橋曉)

ミステリ試写室 film 2 ロンドン・ブルバード-LAST BODYGUARD- 試写をご一緒した原作の担当編集者氏いわく、「エリザベス・テイラーしかないだろう」。一方翻訳者のS氏は、「僕的には、ジーナ・ローランズかなぁ」。原作をお読みになった読者ならすでにお判…

Film 1 『ゴーストライター』(執筆者・三橋曉)

書評家・三橋曉氏の映画評がはじまります。 記念すべき第一回は『ゴーストライター』。お楽しみください。 ミステリ試写室 film 1 ゴーストライター もしかすると、今年はミステリ映画の当たり年なのかもしれない。夏の終わりから秋にかけての公開作品だけで…