第8回熊本読書会レポート(執筆者・吉村栄師)

 皆様、ご無沙汰しております。
 サボリ癖がついてきました、熊本読書会の吉村です。
 第8回の課題書は、第3回の『黄色い部屋の謎』以来となるフランス・ミステリ『死のドレスを花婿に』
 しかも今話題のP・ルメートルの作品ということでしたが、『その女アレックス』を先に読まれた方は、たずねたところ全体の3分の1の4名ほど。
 個人的には読んでない方が先入観なしに楽しめると思うので、これはいい傾向でした。


 さて、実は血生臭いのが苦手ということでミステリーを敬遠され、第3回以来約1年ぶりに参加のKさん(唯一柏書房版でご参加)、どうもお久しぶりです。
 便りの無いのが元気な証拠(?)ということで、無事を確認できて私もホッとしました。


 それから初参加の方が2名。
 幻の第1回(私の緊急入院で延期)に申し込まれていたNさんとは、足掛け約2年ぶりの対面を果たし、これまであまり小説を読む機会がなかったという(こちらも)Nさんは、「第1章で主人公の行動が分からなかったが、第2章に入ってからは面白く読めた」との談。


 会も半ばにさしかかった頃――
 フランスに造詣の深い冒頭のKさんが、
「実は第1章の途中までしか読んでないんです」という仰天発言。
 でも大丈夫。会に参加すればもう読んだのと同じですから(笑)
 そんなのお構いなしで会は進行していきます。


 ちなみに本書の第1章では、ガスライティングのような手法で主人公が追い詰められるのですが、第2章では一転、べつの視点から描かれているので、ここまでの段階で勘のいい読者なら先の展開に気づいてしまうと思います。


「危機対処能力の強い女性だなーと思った。この先隠れて生きなければならない主人公の今後が気になった」
「クライマックスのシーンなど、ヴィジュアル的に映画化したら面白そう」
「犯人も完璧でないところや、ギャップが上手く書かれていた」
「主人公の追い込み方が陰湿。ただ、自分で仕返ししようとするあたり、著者の別の作品の主人公がダブった」
「あの罠を壊してしまうくだりに感動した」
「犯人に時間と金があるなと違うところに感心した。疑念から確信に至るくだりが唐突で、刑事コロンボシリーズを連想した」
「本文中に出てくる主人公の読書の趣味(ロシア文学?)が気になった」


といった好意的なご意見のほか、


「人の心理をこうも上手く操れるのか。あまりにも上手く行きすぎでは」
「第1章は冒頭から面白く感じたが、第2章に入り都合が良過ぎる感じで若干興ざめした」
「自分も薬を飲まされているみたいで気持ち悪くなった。犯人が意外と打たれ弱くて拍子抜けした」
「ハラハラするし、読ませる力はある。ただ、真相が明らかになるあたりからちょっと残念な感じがした」


等のツッコミも見られましたが、概ね面白く読んでいただけたようでした。
 また、


「本文中にレイプドラッグと書かれている例の薬、日本では普通に処方されますので、念のため」


という、医療関係に従事されている方の立場からのコメントや、フランス語版までお求めになったOさんからは、


「(2番目の奥さんに当てたと思われる)献辞があるが、邦訳版ではそれがカットされている」
「時間の記述で原書にはない意訳っぽい箇所も散見される」


と、原書と比較された鋭いご指摘も。


 ちなみに電子版は私も入れて4名ほど。kindle、honto率が高かったですね(kobo、kinoppy、bookwalkerも使っている私は異端)。
 タイトルからしてネタバレ的な課題書でしたが、訳はとても読みやすかったです。


 最後に気になったのが、あの行動を主人公は本当にしたのかという点。
 皆さんもおっしゃっていましたが、主人公のこの先の人生が気になるところです……。


 先月末から著者のP・ルメートル氏が来日していらしたようですが、会場が東名阪ということで、直接お話を伺えなかったのが個人的には心残りでした。
『悲しみのイレーヌ』まだ積読本の中に埋もれていますが、年内には読めるといいなぁ。


 では次回、12月にまたお会いしましょう。Au revoir.

これまでの読書会ニュースはこちら


黄色い部屋の謎 (創元推理文庫)

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死のドレスを花婿に (文春文庫)

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その女アレックス (文春文庫)

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悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

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