第6回神戸読書会レポート(執筆者・末原睦美)

 
 夏がもう少し続くかと思いきや、急速にフェイドアウトの様相を呈してきた8月29日(土)に、第6回神戸読書会を開催いたしました。今回取り上げたのは、フレドリック・ブラウンやシャーリイ・ジャクスンらの〈奇妙な味〉を持つ作品を集めたアンソロジー『街角の書店 18の奇妙な物語』。その中から、「赤い心臓と青い薔薇」(ミルドレッド・クリンガーマン)、「姉の夫」(ロナルド・ダンカン)、「街角の書店」(ネルスン・ボンド)の3編を課題作品としました。



 当日の参加者は14名。怪奇小説とミステリー小説の境目に位置するような〈奇妙な味〉の作品をふだんから愛好しているかた、この短編集で〈奇妙な味〉に興味を持ったかたまで幅広くお集まりいただきました。


 課題作3編については、


「赤い心臓と青い薔薇」
・すべてが妄想のよう。しかも誰の妄想なのかはっきりしない
・読み進むのがただただ怖い。読了できないかと思った
オーメン』『ローズマリーの赤ちゃんを思わせる雰囲気
『スナーク狩り』の引用の意図がいまひとつわからないのだが、この短編全体を〈ナンセンスな物語〉と取ればいい、という意図なのかもしれないと思った
・作者はこの作品を書いていて何ともなかったのか


「姉の夫」
・道具立て、話の運びに英国ミステリーの雰囲気を感じるが、整合性には疑問あり
雨月物語を思い出した
姉弟のあまりに密接な関係に、何かありそうに感じてしまう


「街角の書店」
・〈マンハッタン〉〈謎の書店〉という舞台が好みすぎる
・タイプライターを扱った経験があるので、描写が非常に実感できる
・筋立てにはあっさり感づいてしまうものの、主人公のとった行動によって、彼の作品がどうなってしまうのかを考えると悲しい


 と、それぞれの作品の持ち味をくみ取った感想が聞かれました。なかでも「赤い心臓と青い薔薇」のインパクトはやはり大きかったようで、今回のテーマ【晩夏の納涼スペシャル】の目的は達せられたように思います。なお、課題作品の人気投票を行ったところ、こちらでも「赤い心臓と青い薔薇」が1位を独走(参加者のほぼ3分の2)、残りを「姉の夫」「街角の書店」が分けあう結果となりました。


 収録作18編をすべて読了して参加されたかた、課題作3編プラス何編かを読了されたかたと、各参加者の読んだ作品数にばらつきがあったため、司会兼執筆者としてはネタバレを極力かわしながらの進行に気を使うところもありましたが、課題作品のほかには、


「肥満翼賛クラブ」(ジョン・アンソニー・ウェスト):クラブの目的が分かった時点の恐ろしさ、というよりも気持ち悪さが抜群
「お告げ」(シャーリイ・ジャクスン):ジャクスン作品なのに、意外なほどのチャーミングな展開が好印象
ディケンズを愛した男」(イーヴリン・ウォー):ウォー作品安定の、底意地の悪さが光る
「旅の途中で」(ブリット・シュヴァイツァー):ミクロな視点の面白さが落語的
「М街七番地の出来事」(ジョン・スタインベック):チューインガムがしばらく嫌になる


 の5作(収録順に記載)が人気を集めました。ここに挙げた収録作品以外にも「楽しく読んだ」という声がまんべんなく聞かれ、奇妙な味の濃い薄いはあるものの、妙な美食倶楽部にうっかり迷い込んだ感じで楽しめる短編集ではなかったかと思います。


 読書会後の懇親会にビヤガーデンでの開催を予定していたところ、天気が思わしくない方向に進みそうだったうえに、ホール係のお兄さんにもやんわりとキャンセルを勧められたこともあり、土壇場での会場変更となりました。幸い、読書会の延長で〈奇妙な味〉を越えて話が弾みましたが、お天気が決め手となる会場を選ぶのはやはり難しいものです。なお、次回は晩秋の開催予定です。みなさまのお越しをお待ちしております。


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ご遺体 (光文社古典新訳文庫)

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オーメン (河出文庫)

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スナーク狩り (挿絵=ホリデイ)

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改訂 雨月物語 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

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スタインベック短編集 (新潮文庫)

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怒りの葡萄(上) (新潮文庫)

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怒りの葡萄(下) (新潮文庫)

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