第6回金沢読書会レポート(執筆者・市川史朗)
時は世紀末……世界は核の炎に包まれた!!
だが……人類は死滅していなかった!!
世紀末救世主伝説。
「愛をとりもどせ〜〜!」
……的なアポカリプスSFと今回の課題図書『ステーション・イレブン』は、全く質が違うのである。この作品は、第29回アーサー・C・クラーク賞を受賞した格調の高いSF小説である。著者のエミリー・セントジョン・マンデルは、文芸小説のつもりで書いたとも言っている。
ブ・ン・ゲ・イ? 吾輩は俗世でエロ看護師を生業としておるので、人間の文化には疎いのでアル。〈蝋人形の館〉の歌詞も吾輩はブ・ン・ゲ・イとしてミサで表現しているのでアル。まあ、聖飢魔Ⅱもアポカリプスなのか……。
それはそうと、最も重要なのは今回の読書会の女子率だ。13人の参加者中、10名が女子である(※金沢読書会でこの比率はわりと珍しい)。勿論、ゲストの翻訳家である満園真木先生も美しき女性だ。嗚呼、何と贅沢でエロティックな読書会であろうか。そんなお色気ムンムン、フェロモンじゃじゃ漏れな雰囲気の中、いきなり俺のジュニアが爆ぜたっ!
馳星周ティックな下ネタはさておき、この作品は女性好みのSF小説なのだろうか? それとも、ブ・ン・ゲ・イなので女子ウケが良いのか? 課題図書はSFだが、そこのところはミステリではないかっ! では、その謎を参加者の感想から探ってみよう。
・そんなにSFという感じがしない。
・パンデミック時の大混乱が思ったほど描かれていなかった。
・文芸っぽい(←出た〜! ブ・ン・ゲ・イ)
・淡々とした静かな筆致が最後まで続く。
・ところどころにメロドラマ。
・ノスタルジーが感じられる。
・心の描写が丁寧で、叙情的。
なるほど、殺伐としたパニックSFは苦手という人にも優しい読み心地なわけですな。
ほかに、こんな読み方をした人も。
・一章一章が独立している印象で、オムニバスものっぽい。
・“文芸エンターテインメント群像劇”として読んだ。
・“今あるものがなくなってしまったら”と想像を掻き立てられた(←車を手放そうか考え中の方のリアルなコメント)。
・物語の中心人物のアーサーは“しょうがないやつ”。
・だけど、文明崩壊後の人々の暮らし、崩壊前のアーサーの人生、どちらも物悲しいのがよい。
・映画のようにイメージしやすかった(←映像化権は既に売れているとのこと!)。
ツッコミどころや不満点は……
・関係者が生き延びすぎ!
・物語の中での立ち位置がよくわからない人物もいた。
・パンデミック後のエピソードに想像を超えるものがなく、物足りなかった。
・舞台のシーンからの書き出しは秀逸だが、その後の時系列のシャッフルでどんな効果を狙ったのかよくわからない。
カッコイイと評判だったこの作品タイトルは、作中作のマンガのタイトルでもあるのだが、満園先生は原書のイギリス版付録のイラストで想像を膨らませてその場面を訳したそうだ。そんな翻訳裏話や、“登場人物中のミランダはシェイクスピア『テンペスト』の主人公と同名で、孤島のイメージか”といった解説なども聞けて、参加者は大満足である。吾輩なんぞは2度目にジュニアが爆ぜたのである。
作中の“文明博物館”に感動した人も多く、「人類のめざす場所の象徴のよう」とか、そこに展示される「(生きるのに必要のない)スノードームこそ文明」との名言も出た! 併せて、空港のお土産Tシャツのくだりに笑ってしまうのも確定要素らしいので、未読の方は是非ともシンパシーを感じて欲しい。文明崩壊後の未来について義母と(!)討論したことがあるという参加者もおり、この作品が今後の討論テーマにのぼるのも確定要素である。
この作品を読まずして、世紀末は迎えられますまいっ! いや、(世紀末はまだまだ先なので)パンデミックは乗り越えられますまいっ! しかし、文明があろうが無かろうが人間には希望も性欲もあるよね〜。
ということで、県外からの参加者の方、初参加の方は股の参加をお待ちしております。そしてまだ見ぬエロい読書家たちよ! 金沢読書会に集うべし。我々は選ばれた人間である! ……的なカルト集団も作中に出てきたしね。
ちなみに読書会後の懇親会は、なぜか下ネタ系の話題で沸いた。トルコ○呂という言い方はダメになったのに、フランス書○はいいのか? フランス書○と言えばツイッター面白いよね、などなど……。だって、金沢下ネタ軍団のホームですもの! 満園先生も熱く語っておられた。軍団にアジャストしていただき、本当にアザッス!
エロ看護師
《世話人より追記&第7回予告》
専属ライター氏は下ネタの捻出に困るあまり、閣下に憑依されておりますね。そして最後の一文は地味にダジャレなのでしょうか……?? ゲストの満園さん、私からも重ねて、強力なサポートをどうもありがとうございました。
今回はSFと言いますか、パンデミック/アポカリプス/ディストピア系の小説で新味のあるものをと思い、この作品を選んだのでした。こういう系統大好きなので、そちら方面の話もできて個人的にも満足でした!
さて次回は、11月14日(土)開催、課題図書はトマス・H・クックの『サンドリーヌ裁判』を予定しています。クックがリーガル・サスペンスを書くと、ほう、こうなるか、という逸品にして、夫婦をテーマにした◯◯作でもあります。◯◯に当てはまる語句は読む人によって変わってくるのでは、と世話人は思っているのですが……。ぜひ読書会で、みなさまの所感をお聞かせください。
【8/29追記】諸事情により次回の課題書は『新車のなかの女』(セバスチアン・ジャプリゾ著、平岡敦訳、創元推理文庫)に変更となりました。ご了承くださいませ。
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