第7回『白い僧院の殺人』(執筆者:畠山志津佳・加藤篁)

第7回:『白い僧院の殺人』――不可能犯罪小説のこれぞ王道“雪の密室”!



全国15カ所以上で開催されている翻訳ミステリー読書会。その主だったメンバーのなかでも特にミステリーの知識が浅い2人が、杉江松恋『読み出したら止まらない! 海外ミステリー マストリード100』をテキストに、イチからミステリーを学びます。

「ああ、フーダニットね。もちろん知ってるよ、ブッダの弟子でしょ。手塚治虫のマンガで読んだもん」(名古屋読書会・加藤篁
後期クイーン問題? やっぱフレディの死は大きいよね。マジ泣いちゃったなー。We will rock youuuu !!!」(札幌読書会・畠山志津佳

今さら聞けないあんなこと、知ってたつもりのこんなこと。ミステリーの奥深さと魅力を探求する旅にいざ出発!


畠山:杉江松恋『海外ミステリー マストリード100』をテキストに、翻訳ミステリー読書会の落ちこぼれ世話人2人がミステリー通を目指す「必読!ミステリー塾」。今回もどうぞお付き合いください。
 今回のお題はカーター・ディクスン『白い僧院の殺人』

白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)

白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)

 まずは作者について。
 カーター・ディクスンはジョン・ディクスン・カーの別名義なんですね。なんだか似た名前で紛らわしいなーと思っていたらやっぱりそうだったのか! という感じ。
 一般的にはカーの名前が浸透しているので、本稿でも便宜上「カー」と呼ばせていただきます。
 カーは不可能犯罪(特に密室殺人)を扱った推理小説を多数発表し、江戸川乱歩は彼を高く評価しています。アメリカ人ですが、奥様がイギリス人であったこともあり、イギリスに居を構えて作品のほとんどはイギリスで執筆されたそうです。


 私が読んだことのあるカー作品は『皇帝のかぎ煙草入れ』『帽子収集狂事件』だけ。しかも犯人すら忘れてしまっていて、正直言うとそんなにハマらなかった。そんな私がこの作品を楽しめるのか? と不安を抱えながら手に取った『白い僧院の殺人』はこんな話。

ロンドン郊外にある由緒正しき屋敷「白い僧院」でハリウッド女優マーシャ・テートが頭を打ち砕かれた死体となって発見された。建物の周囲は一面の雪。足跡は発見者のものしかない。どうやって犯人はこの屋敷に入り、そして出て行ったのか。この謎に立ち向かうのは元英国陸軍情報局員にして愛すべき気難し屋のH・M(ヘンリ・メリヴェール)卿。これぞ推理小説! といった内容です。


 誰がいつどこにいたのか、車の音がしたのはいつか、犬は誰に吠えたのか、部屋の明かりがついていたとか暗くて見えないだとかで頭がゴチャゴチャになるうえに、関係者は必要以上にこれ見よがしな言動をしてくれて、「全員一箇所に集まろうよ! ちゃんと話そうよ! 犬は躾けようよ!」と言いたくなる。絶対になにか秘密があると踏んだセリフがあっさりスルーされること幾度か(涙)
 そんな具合で、要らぬ迷走が少々あるようには思ったけれども、最後の謎解きは夢中になって一気読み。密室は「どうやって(how)出入りしたか」と同時に「どうして(why)作られたか」が見どころですね。


 <カー=不可能犯罪小説の巨匠>というイメージが強いので、トリックありきの小説と誤解していましたが、犯行当夜の犯人の心情は読ませるものがあったし、探偵役のH・M卿が気難しいことを言いながら時折人情派の表情をのぞかせるのにも好感を持ちました。
 そして殺されたマーシャ・テート。H・M卿の言葉を借りれば「べらぼうな性的魅力」で野心に満ちた女性。死せる彼女がずっとその場や人々を支配していたようにも思えます。でもなぜか嫌いにはなれない。これがファム・ファタールってやつなんですかねぇ。


 マスターズ警部がこれまたなんとヘタレであることか。絶対的な探偵役がいる場合、警察が頼りなく描かれるのは宿命でもあるのだけれど、それにしても、とっちらかりすぎではないだろうか。意外なところで物真似の才能をみせるという裏ワザがでたのには笑ったのだけど。
 マスターズは前作の『黒死荘の殺人』での功績が認められて昇進したらしく(もちろんH・M卿のお陰であるが)、この人が一体どうやって手柄を立てたのか、あまりに気になって速攻で『黒死荘の殺人』を買って読んでしまったじゃないか!(笑)


 しかし、『白い僧院の殺人』は堪能したものの、どうもこれだけではカーの魅力がわかったとは言い難い。他の作品も読んでみようかと思っていたところに福岡読書会から「“納涼カー祭り”をやりますよ〜(8/23終了)」と告知があったので一も二もなく飛びつきました。きっとカーに造形の深い方がいらっしゃるハズ。いろいろ教えていただこう! しかも課題書は唯一(唯ニ?)既読の『皇帝のかぎ煙草入れ』と『帽子収集狂事件』じゃありませんか。これは重畳! 光の速さでホテルをポチり、航空券をポチり、申込メールを送信(←この順番が大事。在庫と値段の相関関係)。一息ついてからよく告知を読んだら「新訳読んできてね、2冊とも♡」とあって、ちょっと虚血状態になりましたが、そこはそれ「はい!喜んで!」です。


 福岡読書会での様子は後述するとして、加藤さんはこの本をどう読んだのでしょう? 固茹で真っ黒系(ハードボイルド&ノワール)の加藤さんが萌えを感じるようなキャラクターはいなさそうだけど……。


加藤:「必読! ミステリー塾」も気付けばもう第7回。ついに最初の関門がやってきたようです。
 今回の相手は、ジョン・ディクスン・カー
 もちろん、ご高名はかねがね伺っておりましたよ。でもね、なんてーのかな。カーって、ミステリー通の間でもちょっと特別な存在として扱われているイメージじゃありません? なんだかちょっと怖いというか、難しそうというか。
 ハッキリ言って、この連載がなかったら、僕が読むことはなかったと思います。


 しかし、気づけば世は時ならぬカーブーム。といってもカウンタックロータス・ヨーロッパの話じゃないですよ。わかってると思うけど。
 早川からも創元からも新訳が続々と出てるようだし、先月号のミステリーマガジンでも特集されてたし、福岡読書会では「納涼カー祭り」が告知され、畠山さんからは近所のイオンモール小石田純一トレンディーショーでも見に行くようなノリで「タイミングばっちりだし福岡いっとく?」みたいなメールが来るし。なんだか読むなら今しかないんじゃないかという気にはなりました。


 でも、言い訳すると8月はやたら忙しかったんですよ。仕事はいつものことながら要領悪くてバタバタだし、ただでさえイベントは多いし、『ゴーストマン 時限紙幣』やら『自堕落な凶器』やら『ゴースト・ヒーロー』やら面白そうな本がいっぱい出るしってね。まあ、『自堕落な凶器』以外はまだ読んでないんだけど(8/31現在)。


 そんな慌ただしいなかで読んだ初のカー『白い僧院の殺人』でしたが、いやいや意外でした。怖くない。難しくない。意外なくらいにシンプルで分かりやすい。訳がちょっと古いのは辛かったけど、パズル系ミステリーが苦手な僕がこんなにすんなり読めるなんて。身構えていただけに驚きも大きかった。


 雪に閉ざされた館で発見された死体。しかし周囲に足跡は無い。犯人はどうやって侵入し、いかにして逃げ去ったのか。
 ――乱暴に説明すると、このメインの謎が全てという話なのですが、その解答のシンプルさと美しさといったら、ちょっと感動的ですらありました。このような、明かされてみれば「うん、それしか無い。なぜそれに気付かなかったのか」と思えるのが「美しい謎解き」なんじゃないかと思うのです。


 僕はこれまで、本格ミステリーってのは現実の世界ではありえないことを理論の上で楽しむエンターテーメントだと思っていました。
 そんな僕が驚かされたのは、探偵役であるH・M卿が推理を進めるうえで軸に置いた「その時その状況で彼(彼女)は何を考えどう行動したと考えるのが合理的か」という、現実的かつ人間的なアプローチ。
 また、本作の謎=トリックが結果的に様々な要素と複雑に絡み合い、捜査が混乱してゆく過程は、「実際に迷宮入りする事件ってのはこういうものなんじゃないか」と思わされました。
 作者が読者を欺くための作為的な叙述もほとんど見られず、これらによって、舞台はかなり特殊で、設定はいかにもクラシックなミステリーという感じであるにも関わらず、意外なリアリティーを感じさせます。
 ひたすらアクロバティックでトリッキーな展開を予想させる風呂敷の広げ方と、丁寧で説得ある後半の収束の仕方のギャップは凄いの一言。
 いやはや、蒙と一緒に体中の毛穴までがひらかれた思いです。


 これまで、僕のなかでカーといえばカラスだったり、グーだったり、フィリップだったりしたけど、これからはジョン・ディスクンも入れてあげるよ。
 ところで、「旅の恥はナマステ」を地でいく畠山さんは福岡でどんなことをやらかして来たのか、ゆっくり聞かせてもらいましょうか。


畠山:加藤さんが言い訳めいた日々を過ごしている間、私はとにかく手当たり次第にカー作品を読み漁り、福岡に集うであろうツワモノカーマニア(くどいようですけど、カウンタックとか……以下省略)のお話を少しでも理解できるよう準備しておりました。同時期に札幌では『虚無への供物』の読書会をしたので(レポートは→こちら)、もう脳内は密室、密室、また密室。だんだん閉塞感たっぷりになってきて、「被害者諸君! 死ぬ時は広ーーいところで爽快に死んでくれ。湖で逆立ちしちゃうE難度SUKEKIYOでもやってくれ!」と、おかしな逆ギレをしながら乗り込んだ福岡読書会。


 札幌〜福岡は直行便で2時間半。よくネットでネタにされてるけど、北海道では「イオン◯◯店 ここから100km」という冗談みたいな看板があったりするので、その感覚で言えば福岡は近い。飛行機さえ飛べば(冬は危ない)こっちのもの。途中でヒグマもエゾ鹿もでないし(笑)


 どうでもいい話はさておき。
 やはり「ジョン・ディクスン・カー」の名前の威力はすごい。カーには一家言あり! というような熱心なファンの方が数名いらっしゃいました。とても1ヶ月程度の付け焼き刃では歯がたたない〜〜と内心ビビりまり。これはホントに旅の恥をラコステ、じゃなくてかき捨てすることになるかもと冷や汗をかきましたが、カー初心者の方も多くいらしたし、私のくだらない感想でも優しく受け入れて下さったので心の平穏を保つことができました。
 で、肝心な「カーの魅力とはなんぞや」に対する答えですが、私は完全に甘く見ていました。一言で説明してもらえると勝手に思い込んでいました。お話を伺っていると、それぞれに独自のカー論、カー観、カー愛があって、お勧めの本も全然違う答えが返ってきます。
 これはマズイ、奥が深すぎる……と途方にくれているとは全然思えない楽しみっぷりでなだれこんだ宴席でついに天啓が!
 あのエピソードは関係ないんじゃない? あの小道具も要らなかったよね? というツッコミに対して、カーファン曰く「いいんです! それがカーなんです! 必要ないのに歴史的な背景とか推理のうんちくとかオドロオドロしい何かとかを書かずにいられない。そこがいいんです!」
 ……なんとなく靄が晴れました。勢いに押された可能性もなくもないけれど(笑)(※当日の詳しい報告は→こちら
 カーの作品にはいたるところに過去の名作のタイトルや登場人物名がでてきて、思わずニヤリとしてしまう時があります。きっとカーは作家である以前に推理小説やホラー話が好きで好きでたまらなくって、ついついその愛を作中に盛り込んで熱く語ってしまうのかもしれない。その最たるものが『三つの棺』の「密室講義」なんでしょう。
 すごいよね、全くストーリーに関係しない一章が最も熱く、最も有名になるんだから(笑)
敷居が高く感じていたカーが一人の“推理小説好き”としてとても身近に思えてからは、一層作品を読むのが楽しくなりました。


 そしてもう一つ特筆すべきなのが「新訳」。なんだかんだで6人の翻訳者によるカーを読みましたが、これほど新訳の力って凄いと思ったのは初めてです。単に現代的な言葉に置き換えて読みやすくなったというのではなく、新訳はどれも見事なほど鮮やかに艶やかにカーを蘇らせています。言ってみれば“デジタルリマスター版”。もしお読みになるならばぜひ新訳を。
 個人的にお勧めするのは『皇帝のかぎ煙草入れ』の新訳。トリックとか謎解きには興味がないという方にこそ読んでいただきたい。特に女子! この本で女子会したら盛り上がると思います。
 ちなみに和爾桃子さんによるアンリ・バンコランシリーズの『髑髏城』や加賀山卓朗さんによるH・M卿シリーズの『ユダの窓』がこれから控えているようです。心待ちにしましょう♪


 さて、私が博多で天啓を得ていた頃、加藤さんは確か房総半島で“オレのマグナム(手筒花火)”を盛大にぶっ放していたはずなんだけど、どうだったのかしら?(←まるで本の話を聞く気がない)


加藤:凄いな、畠山さん。すでにイッパシのカーマニアじゃないの。
 そうそう、すっかり忘れてたけど、僕も気になってたんですよ。カーってのはもっとオカルトチックでオドロオドロしいというイメージだったんだけど、今回読んだ『白い僧院の殺人』は全然そんなことない。「密室」「不可能犯罪」というウリは前面に出てたけど、それ以外は僕の聞いてたカー像とエラく違うぞって。
 やはり、他のカー作品は基本オドロオドロしいのですね。そこがイイってファンが多いのもなんとなくわかるけど、僕はお化け屋敷もジェットコースターも無理なひとなので、この『白い僧院の殺人』の淡白さは気に入りましたよ。
 シンプルで美しい。まるで僕が揚げる手筒花火のようです。


 え? 手筒花火をご存じない? ご存じないですと? やっとこれから話をマトメにかかろうと思ったのに仕方のない人ですねえ。ちょっと話を中断して説明しましょう。
 実は福岡で納涼カー祭りが盛大に開催されていた日、僕は千葉のイベントで手筒花火を揚げていたのです。
 手筒花火とは、火薬を詰めた筒を人が持って消費する噴出煙火。発祥は400年以上前で、徳川が天下を統べるにあたり、火薬の取り扱いを膝元の三河に集約させたあたりが始まりだそうです。山から竹を切り出し、縄を巻き、中を削って火薬を詰め、点火して消費するという一連の作業を自分で行うというのが特徴といえましょう。その意味では自己完結型といえますが、火の粉を全身に浴びながら、いかに涼しい顔をしていられるかを競うという意味では完全に自己満足型、ただのナルシズムの世界なのであります。手筒花火の揚げ手たちは皆「俺の花火が一番美しく、俺の揚げ方が一番カッコいい」と思っていたりするのですね。
 僕はそんな彼らを客観的に見て、いつも「痛いなー」と思うわけです。「恥ずかしいなー」って。ハッキリ言って馬鹿じゃないかと。周りを見ろと。お前が一番カッコいいわけないだろ。一番恰好いいのは俺なんだから。
 最近はいろんなイベントに出張していますので、機会があったら是非ご覧ください。


 えーと、何の話でしたっけ? そうそうカーです。
 シンプルで美しい『白い僧院の殺人』を堪能しました。H・M卿の世界中を見下したような唯我独尊的なところも嫌いじゃないですよ。ちょっと他人事と思えないところも。
 もちろん、まだまだカーの神髄に触れられたとは思っていませんので、とりあえずもう一冊読んでみようと思っています。KG山さんが訳してる『三つの棺』『火刑法廷』あたりにしようかな。


 改めて考えてみると最初の一冊を読む前と後では、カーに対するイメージが随分変わりました。とにかく怖い、難しい、と思ってたのがウソのよう。これって多分僕だけじゃないのではないかと思うのです。
 僕にとって、初めてのカーがこの『白い僧院の殺人』だったのが良かったのかも知れないけど、未読の方は是非チャレンジしていただきたい。
 僕のようにアッチ方面に嗜好が偏っている読者にもオススメしたいです。


 そんなわけで、「必読! ミステリー塾」序盤の関門をなんとかクリアしました。
あしたのジョーでいえばウルフ金串戦といったあたりでしょうか。(<おお、我ながら分かりやすい例えだ)(※編集部註:分かりにくいよ、と思う皆さんは→このあたりを参考にどうぞ)
 我々の今後の活躍にご期待ください。

勧進元杉江松恋からひとこと

 お二人の感想を楽しみにしていたのですが、なるほど、カウンタックですか。グーですか。
 ギャグに逃げましたね?
 いや、無理もない。
 謎解き小説ファンの間ではカーは特別な存在であり、作家に対する心境を一言で表すなら「問題児であると同時に心の拠り所である」。
 ミステリー・ファンの中に謎解き小説マニアがいて、その中にさらにカー信者がいる。そしてカー信者はそれだけで一ジャンルを為しており、たとえば「どのカー(ディクスン)作品がベストであるか」という問いに対してはそれこそ百家争鳴。統一した見解など望むらくもない、というのが現状であります。そう、みんなの心の中に好きなカーがいる、といった按配でしょう。
 簡単に作家としての流れを説明しておくと、初期作品は自身のフランス洋行経験や、ポーへの傾倒などもあってロマンティシズムの横溢する作風です。畠山さんが書名を挙げてくださっていたアンリ・バンコランものから、スティーヴンソンへのオマージュの性格が強いアラビアン・ナイトの殺人』までの作品にはそういった性格が強いといえるでしょう(途中でファルスに浮気をして『盲目の理髪師』などの作品を書きますが。カーは喜劇映画好きでして、その辺のことは拙著『路地裏の迷宮踏査』にも書いてあります)。


 もともと歴史ものには関心をもっていたようですが、実際の事件に取材した1936年のエドマンド・ゴドフリー卿殺人事件』あたりからそうしたものを書きたいという欲求が強くなり、後年(1950年)1815年のイギリスを舞台にした『ニューゲイトの花嫁』を書きます。以降のカーは現代もの以上の情熱を歴史ミステリーに注ぐようになるのです。
 ミステリー作家としての絶頂期はそのころでしょう。1935年には本文中でも触れられていた『三つの棺』を刊行、その翌年には意欲作『火刑法廷』を世に問います。また、1934年からカーター・ディクスン名義でも作品を発表していますが、1935年には本書と『赤後家の殺人』という、密室トリックの中でも対称的なパターンを用いた二作を世に問うています。カーはアメリカ人ですがイギリス好きが昂じて渡英し、本国にいたらまったくその心配がなかった第二次世界大戦の戦火、ナチスドイツによるイギリス空襲の恐怖にも遭遇します。しかしその経験を無駄にせず、それどころか利用して1944年に『爬虫類館の殺人』を書くのですね。故・瀬戸川猛資は、カーのこの「なんでもあり」の姿勢を『夜明けの睡魔』で絶賛していました。そう、私もカーのこの「誰の挑戦でも受ける」的な姿勢を深く愛しております。もしお読みになるのであれば、初めての方は1935年から1944年の間の作品をぜひ手に取ってみてください。


 さて、次回はパトリック・クェンティン『迷走パズル』ですね。お二人がどう読まれるか、期待しております。




加藤 篁(かとう たかむら)


愛知県豊橋市在住、ハードボイルドと歴史小説を愛する会社員。手筒花火がライフワークで、近頃ランニングにハマり読書時間は減る一方。津軽海峡を越えたことはまだない。 twitterアカウントは @tkmr_kato

畠山志津佳(はたけやま しづか)


札幌読書会の世話人。生まれも育ちも北海道。経験した最低気温は-27℃(くらい)。D・フランシス愛はもはや信仰に近く、漢字2文字で萌えられるのが特技(!?) twitterアカウントは @shizuka_lat43N

どういう関係?

15年ほど前に読書系インターネット掲示板で知り合って以来の腐れ縁。名古屋読書会に参加するようになった加藤が畠山に札幌読書会の立ち上げをもちかけた。畠山はフランシスの競馬シリーズ、加藤はハメットやチャンドラーと、嗜好が似ているようで実はイマイチ噛み合わないことは二人とも薄々気付いている。

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