第3回熊本読書会 レポート(執筆者・吉村栄師)


今回の読書会、5日前に地元民放TV局の取材のアポを受けたこともあって個人的には大慌てでした。
会場として選んだ熊本市現代美術館(CAMK)で、同局が協賛している展示会が行われていたことで、担当者の目に留まり今回の取材が実現したのです。


受付締切直前に新規の申込みがあったものの、その時点での参加者は5人。
第1回、第2回と連続して参加してくれていた常連の2人が不参加のため、戦力的にも絵的にもいて欲しかった2人を欠く今回は、まさに飛車角落ち。


人数が少ないことを危惧してアポの時点で、事務局の越前さんに相談したり、福岡読書会のO木さんにまたお越いただけないかなど、根回しを試みましたが、何しろ急ということもあり今回は難しいとのお返事。(ホントすみません・・・)


参加者に顔出しOK?インタビューOK?等々、いつもの倍の手間がかかりましたが、なるようになるだろうと思いつつ当日を迎えました。


当日−


あいにくの雨模様でしたが、いつものように30分前に準備に取り掛かります。
今回はTV映えするように、プロジェクターを使うことにしました。
手元の本だけになってしまうと、参加者の目線が下に向いてしまうため、会話がマイクで拾いにくいんじゃないかという判断です。
(その後、私だけは事前にマイクを付けたのですが)


その後、TV局の方がアナウンサーの女性(TVでお見かけしている方です)と他2名でいらっしゃいました。
事前に電話で話はしていたのですが、私も少々緊張気味。
「今日は宜しくお願いします」と関係者にご挨拶し、カメラの位置など話していたところで、参加者1番乗りの方がいらっしゃいました。


「お名前伺ってもよろしいでしょうか?」
「Kです」。
???名簿にない。
それもそのはず、その方はfacebookのイベントから申し込まれたのです。
全くのノーマークでした。取材が入ることはもちろんご存じありません。


しかし慌てるそぶりは見せず、予備のレジュメをお渡しし事なきを得ました。
予想外に参加者が増えたおかげで、新規4名、常連2名の総勢6名。これなら会議体としては十分です。


冒頭でアナウンサーの方から事情を説明していただいて、
顔出しNGの方は、カメラの画角に入らないように大移動。
その結果、私以外の6人は全員対面へ(笑)


ようやく本題に入りましょう。
新規の方が多いので自己紹介をお願いしたのですが、嬉しい誤算というべきか何と今回の初参加の方の中には、伏龍と鳳雛がいたのです!


仮に伏龍をBさん、鳳雛をCさんとしましょう。
両名とも古典・本格モノに詳しいという、喉から手が出るほど欲しかった人材。
あっちこっち漁り読みする私は、実はあまり詳しくないのです。


今回の課題本、「黄色い部屋の謎(秘密)」は、ガストン・ルルーの著作です。
あの有名なオペラ座の怪人を著した作家でもありますが、さてミステリーとしてはどうでしょうか?
電子書籍版をスクリーンで見ながら、ディスカッションをスタート。


【このあと、ネタバレの危険があるレポートになります。白い部分は既読のかたのみカーソルで反転させてお読みください(事務局)】


大きくわけて、序盤の密室殺人未遂、中盤の犯人消失、終盤の犯人消失、そして全般と4つのポイントを中心に進めました。


最後まで読むとトリックが分かるのですが、
ここは、”まだらの紐”すら通る隙もない本当に完全な密室。
となるともう自作自演しかありません。というのが数人の意見。
死ななかったというのもポイントです。


法廷のシーンで、ルールタビーユ記者が自説を披露するのですが、
正直これは意外だったという意見もありましたが、釈然としないという感想も散見されました。


そして、中盤。
ここは犯人を館内の袋小路に追いつめるけれども、見失う場面。
目の肥えた読者ならば、当然すり替わりを疑うでしょう。
しかし、この時点では疑わしき人物が他にもいるので、まだどちらか絞ることができません。


そして終盤、
館の外で、犯人を追いつめるものの、死んでいたのは別の男。
真犯人は角を回った時点で逃げたのですが、
ここでの脱出トリックは失笑というか、正直、微妙。
序盤>中盤>終盤と、段々トリックが陳腐に見えてきてしょうがありません。
作者としては、この別の男にミスリードしようとしたのかもしれませんが、いかんせん伏線が弱い。


しかし、勘違いしてはいけないのはこの作品、1908年に著された一世紀以上も前の作品ということ。
数多の作品を読んだ読者にしてみれば、物足りなくて当然かもしれません。
さらに今回の真犯人は、××してしまったので、余計に釈然としません。
ただし諸所踏まえると、全般的には意外と面白く読めたという感想でした。


多分、本作品は翌年の「黒衣婦人の香り」とセットで読むのが望ましいのですが、
伏龍Bさんの、「ルールタビーユは○○の子供だから□□をかばっていたのでは?」という意見には、「その考えはなかった」と、私も含め感嘆しきりでした。


鳳雛Cさんは、ルブランの「八点鐘」を連想したというお言葉。
クリスティアナ・ブランドがお好きということで、ついでに横浜読書会への参加を勧めておきました。


そもそも「黄色い部屋の”黄色”って黄色であるべき理由って何だっけ?」という
どこからともなく沸いた意見には、一同沈黙。
その後の懇親会で、当日参加のKさんが「キリスト教では裏切りを表わす色」とのコメント。
後で知ったのですが、Kさんはフランス語を嗜んでいらっしゃる貴重なお方。
在野にはまだツワモノがいるようです。
「なるほど〜(一同)」
で、何に対する裏切り?アメリカの元彼(○○)と今彼のダルザックに対してなのでしょうか・・・真相は分かりませんが。


また今回は特別コンテンツとして、4月の授賞式の模様をかいつまんで紹介しました。
来年は同行者が増えるとよいですが。


そして、終了後は私と他お2人に個別インタビュー。
最初は顔出しNGだった初参加のSさんも、最後はなぜかインタビューに答えてくれていました。(感謝)
プロジェクターも活躍し、雨の中重たいPCを運んできたかいがあったというものです。


最後になりましたが今回の取材は、
翌22日に市立図書館で行われたビブリオ・トークの模様と合わせて放送されました。
6/26(木)の夕方には、その模様が熊本県下に放送されたことでしょう。
時間帯的に、ターゲットは主婦層になってしまうと思いますが。

ビブリオ・トークは各自が本を持ち寄るスタイル、方や1冊の本について語るスタイル、
どちらがどうとは言いませんが、熊本の皆様に読書会が広く知られる契機になることを願っています。

これまでの読書会ニュースはこちら

黄色い部屋の謎 (創元推理文庫)

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オペラ座の怪人 (角川文庫)

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