第7回千葉読書会レポート・前篇(執筆者・kashiba@猟奇の鉄人&高山真由美)

 
第7回千葉読書会レポート・前篇「ビール爺なんかいるものか」あるいは「へえ〜の中のコリアな人々」


みなさま、お久しぶりです。
千葉読書会、しばらくぶりの事後レポートです。
「ここ3回レポないよね?」と、さる筋からチェックが入ったからではなく(それもありますけど)、「レポ楽しみにしてまーす!」と、各方面からマイルドに圧力がかかっているからでもなく(それもありますけど)、今回ゲストもお迎えしたことですし、ちょっといつもとちがうことをしてみたというのもあり、ご報告を上げてみるのもよいかと思いまして掲載をお願いした次第です。


ゲストには、課題〈予期せぬ結末〉シリーズ編者の井上雅彦さん、訳者の植草昌実さん、そして担当編集者のYさんをお迎えしました。


そしてまあ、いつもとちがうとはいっても、ご参加ほぼ半数ずつの2グループに分かれるところまではおなじ。ただし読んできたものがちがったわけです。グループ1では幹事・高橋の進行で『予期せぬ結末1』(ジョン・コリア)の感想を、グループ2では幹事・高山の進行で『予期せぬ結末2』(チャールズ・ボーモント)の感想を話し合いました。


それでですね、最後にはお互い、1の人は「次は2が読みたいな」、2の人は「やっぱり1も読みたいな」と思えるようにお薦めしあえたら楽しいんじゃないかしら、というのが最初の発想だったわけですが。ちょっとその、流行りのビブリオバトルを取り入れてみたいかも、なんていう欲も出てきまして。「じゃ、最後の十分くらいで軽くバトりましょうか!」といったのは、ほとんど思いつきでした、スミマセン(笑)


では前置きはこのくらいにして、まずはグループ1からの現場報告を。ご参加者のおひとり、kashiba@猟奇の鉄人さまよりお寄せいただきました。


予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー (扶桑社ミステリー)

予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー (扶桑社ミステリー)



なぜ、自分がこの闘技場に立っているのか。
判らない。
ただ、読書の愉しみを語りあいたくて、ここにやって来ただけなのに。


持ち物といえば僅か、人数分の44頁の冊子と50冊余の無償配布古本、十冊弱の課題書+参考図書、ゲストの伯爵様にサインいただくための太田出版世にも奇妙な物語10」(初版・帯)ぐらいのものである。


話は1時間前にさかのぼる。
それは、会が始まるや、幹事の高山女史から告げられた。
「今回は、初めての試みで課題書が2冊。片方だけ読んで参加できる形にしてみました。もうすでに、コリアとボーモントに分かれて座って頂いてますが、その中で最初普通に感想などを述べて頂き、適当なところでビブリオ・バトルをやってみたいと思います。」


「えええ、聞いてないよ〜」ざわめくメンバーたち。


「多少、人数に差ができてしまったので、ボーモントチームの中で両方読んでおられる方いらっしゃいます? もし、やっぱりコリアを語ってみたい、という方はどうぞコリアチームの方へ。いらっしゃらない? ではこのままで」


この段階でゲストのお二方を除けば、コリアチーム6名、ボーモントチーム10名、劣勢は明らかである。
いや、しかし数の差は必ずしも戦場での優位を約束するものではない。
「少数精鋭」「烏合の衆」という四字熟語もあるぞ。(>烏合の衆は熟語ではない)


気を取り直して、楽しくコリア談義に入る。
先鋒の感想はこうだ。
「それが、読んでみて全然わからなくて〜」
……


井上伯爵が「どの話あたりが判りませんでした?」と優しい解説モードに入る。
「『完全犯罪』とか…」
「あれは、一種のお笑いネタといいますか、(以下中略)、少し異色な話なので、あえて『ボタンの謎』と一緒にインターミッションとして入れてみたんですね(笑)。」
「…で、結局、死んだんですよね」


場の雰囲気を換えようと乱入する。
「いやあ、本当に昔異色作家短篇集で読んだ時は、コリアもボーモントも判らない話ばっかりで、それに比べると今回のは随分分かりやすくなっているなあ、と思っていたんですね。で、更に異色作家短篇集の方を何十年ぶりに再読したら、まあ、これが判りやすくって、結局年齢が必要ってことですかねえ。わっはっは」


とりあえず、流れを引き戻しつつ、次鋒の感想へ。
「いい読者じゃなくて、これしか読んでいないんですけど、いや、題名がいかにもいい感じで。『ミッドナイト・ブルー』」
「おお、それで、それで?」
「で、読んでみたら、何のことはないマフラーの色で、がっかり」
「……」
「でも、すらすら読めてしまって、何か落語に通じるものがあると。まるで、こう独演会を聞いているような感じでした。」
伯爵が「落語ですか。うーん、それは、目ウロコかもしれない。」といたく感心される。
なるほど、そういう読みもありだな、うんうん。それで?
「以上です」
……


と楽しく、感想披露は続き、「コリアって動物使うの巧いよね」「コリアは全部オチまで書かないんだけれど補助線は全部引いていて、あとは察してくれ、というタイプの作家」「そういうのって今は少ないですよね」「一部の編集者には『読者はバカだと思って』という人もいますからね」「時代の差でしょうか?」「大人向きが許されたってことなのでは」という核心論から、伯爵のウルトラQ談義に自著紹介とコリアを離れた部分でも充実の時間が持たれ、気が付くと小一時間が過ぎていた。


「そろそろ、ビブリオバトルの準備した方がいいんじゃないですか?」とコリア担当幹事の高橋女史に水を向ける。
「あ、そうでしたね。じゃあ、2冊を比べてみましょうか? 両方読まれた方は何人いらっしゃいます。お二人にkashibaさんに私で四人。で、比べてみてどうでした。」


女性が答える。
「まだ、ボーモントは読みかけなんですけど、こっちの方が面白いなあ。と」


!!!


「じ、じゃあ、なんで、コリアチームに?」
「1と2があれば、普通1からかなあ、と」
そ、そんな理由かよっ!


気を取り直して、もう一人の若手男子の方を見る。
「僕も2冊の中ではボーモントの方が面白かったです。」
「じゃあ、なんでコリアチームに?」
「そりゃあ1と2があれば」
「1からだと……」


…まずい。


絶望的にまずい。
たった6名の宇宙鉱物輸送船の中にエイリアンが2匹いるようなものだ。
「で、高橋さんは?」
「私もボーモントの方が判りやすくてえ、」


ちゅどどーーーーーん > ノストロモ号自爆


…判った、もう判った。
ならば、数少ないキーワードでこの場を切り抜けるしかない。
懇談で出たキーワードといえば、、、


ええっと。
「補助線の作家」、
「落語の独演会」、
「大人の読み物」、
「動物」、
「1001秒の恐怖映画 ホラー・ショートショート 」、
「選んで、並べて、語って」
ウルトラQ」、
石坂浩二
「バルンガ」、
ペギラ」、
ウルトラマン」、
怪奇大作戦」、


そうだ!
「タケダ、タケダ、タケダー♪」


…今、ビブリオバトルのファンファーレが鳴り響く。

(続く、もんかい!)


いえいえ、続くんですよ、それが。
後篇へ続く)


kashiba@猟奇の鉄人 (かしば あっとまーく りょうきのてつじん)

古本者。著書に古本&ミステリ雑話『あなたは古本がやめられる』本の雑誌社)がある。兵庫県出身、千葉市在住。ツイッターアカウントは @kashibaTIM

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