第4回東東京読書会レポート(執筆者・島村浩子)

 9月7日(土)に清澄白河で開催されました第4回東東京読書会のレポートをお届けします。
 9月――というと、当読書会には記念すべき第1回が、台風の影響で当日急遽延期せざるをえなくなった苦い思い出が……。今回も直前に台風がやってきたのでヒヤリとしましたが、7日は下町名物のスカイツリーもよく見える快晴! 無事に第4回を開催することができました。


 課題書はミネット・ウォルターズの長篇第一作である『氷の家』。英国ミステリ女王の作品は適度な突っこみどころもあって、ディスカッションはいつにも増して盛りあがりました。


氷の家 (創元推理文庫)

氷の家 (創元推理文庫)

イギリスはハンプシャー州の片田舎、メイベリー家所有の邸にある古い氷室で身元不明の死体が発見された。その邸で暮らすフィービと二人の女友達は村人に、さながらマクベスの魔女扱いされ、孤立した生活を送っていた。フィービの夫が十年前に突然、謎の失踪をとげたため、彼女が殺したのではないかと疑われていたのだ。発見された死体は失踪した夫なのか? 失踪事件を調べていた警部との確執、排他的な村人たちとの軋轢のなか、謎めいたふるまいを続ける三人の“魔女”たち。しかし事件は意外な方向へ転換をみせる……。

 ネタバレしない程度にみなさんの発言内容をご紹介すると――「メインの謎より、サブ・プロットのほうがおもしろかった」(!)「ミステリの構造としては、真相が意外と××××」(!!)「登場人物の性格がつかみにくい」「キャラの揺らぎはウォルターズのほかの作品にも共通」「第一印象からの大転換は著者の描きたかったところ」「こういう(登場人物の)多面性描写が好き」「女性問題の扱い方がいい」「虐待が描かれていても光明が見える」「悲惨な事件を扱っているわりにコメディ要素もある」などなど。登場人物の性格やキャラクター設定について言及される方が多かったですね。そんななか、人気があった登場人物はジャーナリストのアン・カトレルやメイベリー家の兄妹ジョナサンとジェイン、使用人夫妻のフレッドとモリーなどでした。アン・カトレルは今年刊行された『遮断地区』をはじめ、ほかの作品にもちらっと登場しているんですが、みなさんお気づきでしょうか? あと、ウォルシュ警部が気に入ったという方もいらっしゃいました。既読の方はおわかりかと思いますが、これ、なかなか果敢な発言(笑)。ほかの参加者さんから「おおっ」という声があがりました。未読で気になる方はどうぞ『氷の家』を読んで、理由をお確かめくださいませね。


 今回はゲストとしてウォルターズ訳者の成川裕子さんがおいでくださり、ディスカッション中に参加者のみなさんからのご質問にお答えくださいました。「『氷の家』でいちばん苦労した訳はどこですか?」という質問に関しては、「冒頭の新聞見出し、”捜査当局、土中に活を求む”」だったそうです。シェイクスピアの文章のもじりで、冒頭の翻訳がいちばんあとになったとか。このほか訳注のつけ方などについての質問も出ました。成川さんには参加者のみなさんと気さくにお話しいただけたので、みなさん楽しそうでした。


 成川さんのほかにも、当日は大人気の名古屋読書会の世話人、大矢さんと千葉読書会の世話人、高山さん、そして北海道、仙台、福島、埼玉、千葉、横浜の読書会のリピーターさんがご参加くださいました。もちろん、当読書会のリピーターさんもいらっしゃいましたよ! 味噌キャラメルと〈白い恋人〉をお土産にいただき、みなさん思わずニッコリ。
 読書会はまったく初めてという方も3名。でも、どの方が初めてでどの方がリピーターさんかわからないくらい、みなさん和気藹々とよくおしゃべりされてました。本会終了後には「初心者にもわかりやすい会でよかった」という嬉しい感想をいただきました。


 今回の二次会出席率はなんと100%! 成川さんがウォルターズの新作『遮断地区』をプレゼントとしてお持ちくださったので、希望者のあいだでジャンケン大会となりました。
 ファストフード店へ場所を移しての三次会にも10名以上が参加。本の話って尽きることがありませんね。


 当日実施したアンケートでは「自分の意見を言うのは勇気がいる。でも、人の感想を聞いているだけでも楽しかった」と書いてくださった方がいらっしゃいました。これ、わかります〜。リピーターさんのなかにも「そういえば、自分も最初はそうだったなあ」と思い出される方、いらっしゃるのでは? ただ、何度か参加して、ほかの方の意見や感想を聞いているうちに、自分も発言したいという気持ちがだんだん強まってくるんですよね。当読書会は誰でも気軽に発言できる雰囲気(ユルユルとも言う?)を大切にしていきたいと思っておりますので、ビギナーの方も安心してご参加ください。そして、興味のある課題書のときにまたリピートしてみてくださいね。それでは、どうぞ次回の告知をお楽しみに!



島村浩子しまむら ひろこ)

東京の下町在住。主な訳書はクリスタ・デイヴィス『感謝祭は邪魔だらけ』、スーザン・ブロックマン『凍てつく夜のささやき』など。好きなこと はミュージカル鑑賞(含む宝塚)。ゆるめのベジタリアン生活実践中。

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遮断地区 (創元推理文庫)

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囁く谺 (創元推理文庫)

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病める狐〈上〉 (創元推理文庫)

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病める狐〈下〉 (創元推理文庫)

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味噌キャラメル ごま入り

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白い恋人 24枚入 石屋製菓

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感謝祭は邪魔だらけ (創元推理文庫)

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凍てつく夜のささやき 上 (ヴィレッジブックス)

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凍てつく夜のささやき 下 (ヴィレッジブックス)

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