第4回アガサ・クリスティー読書会(大阪&神戸)レポート【後編】
関西翻訳ミステリー読書会主催
第4回アガサ・クリスティー読書会(at神戸)レポート 7/21
【前編はこちら】
- 作者: アガサ・クリスティー,鳴海四郎
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: Kindle版
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きょうは会議室なので、フレーバーティーとクッキーを出す予定。そこにバターブレンドコーヒーと輸入菓子の差し入れ(学生Tさん、ありがとう)、そして参加者のお嬢さん手作りのクッキーも加わり、鬼に金棒。部屋番号の手違いとか若干もたついたものの、神戸新幹事のMさんとSさんが、てきぱきと準備をこなします。
参加者は14人。男性4名、女性10名。初参加のかた、3名――高校で古典の教諭をされるかたわら名探偵評論をされているGさん。著作もおありなんですね。ご安心ください、シンジケートは怪しい団体ではありません(と思います)。シェークスピアのソネットと野鳥が大好きなNさん。次回はぜひ、クリスティー好きのお友達とご一緒に。京大のミステリ研究会出身、小説家のMさん。シャーロキアンでもいらっしゃる。著作はメルヘンチックな設定です。ね、初参加の人からして、語りそうでしょ。
お茶の準備に手間取って、定刻をちょっぴり過ぎての始まりです。いつものように、自己紹介と本の簡単な感想を述べていただくことに。
やはりドラマや映画を先に見たというかたが多かったです。「映像から入ったので、舞台設定にとまどわず原作を読むのがはかどった」けれど「登場人物が多いのに、あの人物表には怒りを覚えた」確かに。「犯人は覚えていたけれど、枝葉が抜けていたので楽しめた」「ポアロがイメージと違った」「昔懐かしいオーソドックスな作品で、楽しめた」クリスティーについて、「学生のとき、クリスティーの死亡記事を見て、まだ生きてはったんやとびっくりしました。川端康成とクリスティー、E・クイーンの3人の死亡記事が三大衝撃でした」という告白も。そういえばYさんはプロフィールで「このクソ暑いさなかに『フロスト』の新刊ってどうよ?」と書いておられましたが、フロストと同時進行で読みましたというかた、大阪でも神戸でもおられました。下品なユーモア爆裂のフロストと、上品な避暑地のポアロ、そのギャップはすごいですね。現代の作品と比べると、この簡潔さが嬉しかったという意見と、物足りないという意見に分かれました。Nさんは「細かい描写がないほうが想像力が刺激されて、かえってリアルな印象が残って、私は好きです」と弁護派。
初めて参加のGさんから、課題作品以外のネタバレになるような発言はどうなんですかと、最初に質問が。レジュメも二部に分けたことを説明し、前半はできるだけぼかしてやっていく方向になりました。むずかしいですよね、私もいつも口をすべらせてしまいます。というわけで、このあと『白昼の悪魔』におけるメイントリックについて、推理小説全般のトリックの膨らませかたについて、この作品におけるポワロの検証プロセスの弱点について、動機の薄弱さについてetc.、いろいろ熱い意見が出たわけですが、そこはネタバレなしに語りきる自信がないので割愛。「本格物ははじめにトリックありきだから、動機が弱いとかは問題にすべきでない」という翻訳家のHさんの意見も紹介させていただきます。
おもしろい視点の意見も出ました。「地元の図書館の司書が、簡単に借りた本のタイトルを教えているけれど、ありえないです。貸本屋なら別だけど」というのは司書をしているMさん。「そもそもポアロとポワロ、どっちが正しいんでしょうか?」フランス語の読みではポワロという表記が近いそうです。大阪でも出ていたのですが、「5万ポンドって、いまのお金だといくらなんでしょうね?」という疑問。そこ知りたいです。1940年前後の5万ポンドがどれぐらいの価値か、おわかりのかたご教示ください。ドラマのほうは、YouTubeやBSでの放映があったのですが、映画のほうは見損ねたという人が多く、チャンスがあればぜひ見てみたいという声。バーキンの見せ場がラスト近くにあるようなのでお見逃しなく。この日も、結婚退職の話が出て、まあ時代ですかねえ、という結論になりました。お宝アイテムのミステリー・マップと星取表はこの日も関心を集めました。
さて時間になりましたので、読書会はお開きです。二次会は、唐揚げが美味しいと評判のビアホールです(Tさんから炭水化物ダイエットの実践報告を受け、ものすごく心を動かされたのですが、でも生ビールの誘惑には勝てません。あれ、Tさんも飲んでるし……)。第一回神戸読書会の課題書も『解錠師』に決定した模様。ここからおおいに盛り上がったらしいのですが、残念ながら私はバスの時間もあることですし、唐揚げとビールはしっかりいただいたので、お先に失礼しちゃいました。みなさん、次の読書会でお目にかかるのを楽しみにしています。
関西ミステリ読書会世話人 A・K