第6回せんだい探偵小説お茶会レポート(執筆者・蒔野正徳)

7月21日、仙台駅から徒歩数分の場所にある会議室にて、せんだい探偵小説お茶会の第6回読書会が開催された。


仙台駅から開催場所に進む道すがらラムフェスタなるラム酒が飲み放題のイベントが開催されており、後ろ髪を引かれながらも開催場所へ。
今回の読書会の参加者は初参加2名を含めた計9名。今回から翻訳ミステリー大賞シンジケート後援を受けるということで、集客効果が未知数であったが結果としてはあまり影響はなかった模様。


開催時間が迫るにつれ、続々と参加者が集合し、いよいよ読書会が開催となった。
せんだい探偵小説お茶会では、ホスト交代制を採用しており、今回のホストは当読書会きってのミステリー通T氏。
満を持してのホスト役ということで、参加者の期待もいやがおうにも高まる中での開会となった。


まずは自己紹介から。初参加の人も緊張気味のようであったが、自分の好きなミステリー作家のことを話すときは饒舌になるようでいい具合に緊張がほどけたところで今回の課題本へ。

死の扉 (創元推理文庫)

死の扉 (創元推理文庫)

課題本はレオ・ブルース『死の扉』。ホストのT氏が敬愛する作家のキャロラス・ディーン物の第1作。
ここで簡単にあらすじを。パブリックスクールの歴史教師キャロラス・ディーンが生徒であるルーパート・プリグリー(作者の分身か?)に唆され、町で発生した二重殺人の犯人を追うことに。殺されたエミリーは町の嫌われ者。容疑者が次々と現れる中で素人探偵キャロラス・ディーンの推理やいかに。


さて、まずは順番に作品の感想と10点満点での点数をそれぞれ発表。
結果は・・・平均6.7点(最低5点、最高9点)という、中々に厳しい結果に。
キャラクター描写やトリックに高評価が集まる一方、解決編での注釈の多用、犯人の動機に関わる部分の説明の希薄さがフェアプレイか?という所に批判が集まった。ホストからは、「フェアプレイを思わせる緻密で論理的な作風に見えるが、謎解きはあまり論理的でなく、ひらめきによるもの」とフェアプレイの謎解きではないことを述べつつも、「読者をミスディレクションするような記述もあるがミステリの技巧としては評価できる」と擁護する意見も。


そんな中、参加者の一人が1957年発行の現代推理小説全集第1巻『死の扉』を持参し、参加者の注目の的に。ホストも持参していたが、既に場に出てしまっていることもあり、注目を集められず悔しがる一面も。


その後、ホストによる解説があり、イギリスが舞台の小説では珍しく、警官嫌いを公言する登場人物が多いことを挙げ、『死の扉』を発表する2年前に同性愛嫌疑のため投獄されていたことが影響しているのでは、という見解を述べた。


また、キャラクターの中では、キャロラス・ディーンの勤めるパブリックスクールの校長ゴリンジャーを押す声が多数。他のキャロラス・ディーン物にも登場しており、同様に耳に関する話をしているとのことで、他作品への興味を抱いた人もいたようである。


様々な意見交換がなされる中で、あっという間に終了時間が近づいてきた。
最後に、ホストと旧知の間柄である翻訳者の小林 晋氏から、本読書会に向けての長文のメッセージを紹介して終了となった。


2時間の読書会ではまだまだ話足りない一行は、場所を替え、アルコールという燃料を補給し更なるミステリー談義へ。
そんな中、話題をさらったのは、福島からの参加者H氏が布教のため持参した水木しげる漫画大全集 ゲゲゲの鬼太郎(1)」。H氏の思惑通り布教活動は成功し、買おうという人が続出。次回の読書会では、水木しげる教という一大勢力が生まれそうな中、夜は更けていった。


せんだい探偵小説お茶会 管理人 M

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月替わりで、国内ミステリーと翻訳ミステリーを課題本に掲げている当読書会。次回、翻訳ミステリーを課題本とするのは、10月の予定です。課題本も日程も未定ですが、続報にご期待ください。

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