第3回札幌読書会レポート・前編(執筆者・畠山志津佳)

  
 
ジーヴスで読書会しますよ〜」と告知をしたその夜。
某探偵よろしく、すすきののバーで馬鹿ッ話に興じていた札幌読書会に激震が走りました。
読書会に・・・・翻訳者さんが来る!しかも更にお二人”内地”の人が来る!・・・うっそ、マジ!?


そしてそれから約1か月。
気持ちばっかりドキドキしてロクな下準備もないままに迎えた読書会当日はなかなかの寒さと雪。
北海道の冬の醍醐味満載ともいえる天候は、万能執事ジーヴスの采配であろうかなどと思いつつ会場へ。


遠路はるばるお越しいただいたのは、国書刊行会ジーヴスをはじめとしたウッドハウスシリーズを翻訳された森村たまきさん。そしてネタバレ円卓会議からtkr2000さん(@tkr2000)と花さん(@nahanohana)二人の刺客(刺客ということを知ったのは数日後でしたが)。
雪も寒さも厭わず熱い気持ちで乗りこまれるジーヴスキャラバンのお三方と我々札幌読書会はうまく噛みあっていけるのだろうか?内地の人だっていうだけで緊張するのに、翻訳家などというハイソな人種にどう接したらいいんだろう??
はてさてご挨拶はなんと申し上げたらよいのか。
課題本の主人公、“紳士様お側つき紳士”であるジーヴスはこれでもかの慇懃口調がトレードマーク。
さぞかし森村さんも言葉づかいとか、正しい尊敬丁寧謙譲語の使い分けとかこだわりがおありだろう。
ホストとして最高のウェルカムトークといえば・・・「ベルサイユは今日は大変な人ですこと」・・・ちがうっ!


内心の動揺を押し隠してCAFEの前で待つこと数分。慣れない雪道で若干よろめきがちな女子2名と引率の先生然とした男性がご到着です。
早速こちらが「ベルサイユ〜」と言いかけた時、ハイソ(と決めてかかっている)な翻訳家の発した言葉は・・・「お腹が空いて死んでしまうかもしれません」。
すごいツカミ。役(訳)者が違うとはまさにこのことです。
聞けば前日の夜から何も食べておられないということで、今にも「パトラッシュ、もう疲れたよ」と言いだしそうなほど憔悴した様子に慌てまして、それならとっととランチ頼んで食べて下さいと、いきなり実際的な会話になだれ込むこととなりました。


そんなわけで、ランチを頼んだ三賢人の周りに一人また一人と蝦夷っ子たちが集いはじめ、「やあやあようこそ、寒くて大変でしょう」などとのっけから気さくな会話で和やかな雰囲気となりました。
いきなり飛び出したのはご当地ネタ。
ランチに鶏の唐揚げ(らしきもの)がついていたのが発端で、(地元民)「それザンギ?」(内地の人)「ざんぎ・・・?」というやり取りから、まずは「ザンギ」とはなんぞやという説明が道産子から得意気に語られました。
(※詳しくは北海道ザンギ連盟オフィシャルサイトをご覧ください→http://douzanren.com/


放っておいたらこんな話ばっかりしてしまうので、気を取り直してまずは自己紹介から。
あらかじめアンケートを実施して皆様にお渡ししていたので、好きな作家や作品などなどの個人データはそちらを参照していただくこととして、お名前とジーヴスを読んだ感想を一人ずつお話ししてもらいました。
以前から愛読していた人、読書会がきっかけでウッドハウスの大海に漕ぎ出た人などさまざまですが、皆さんこの作品がとても好きになったようです。
ツッコミを入れたり議論したりというよりは、いかに楽しんだかを各人が披露するような感じでした。
今回、課題本はジーヴズの事件簿〜才知縦横の巻』(文春文庫)と『比類なきジーヴス』国書刊行会)のどちらでもよいとしましたが、多くの方が両方読まれていたようです。
文春文庫版はコンパクトでありながらも上手に構成されていて、この長〜いシリーズの入門編としては最適との声が聞かれました。

ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻 (文春文庫)

ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻 (文春文庫)

比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

ちなみにアンケート結果はなかなか興味深く、「心に残ったキャラクターは誰ですか?」の問いでは、圧倒的に”金の心を持つ”バートラム・ウースター氏(通称バーティー)強し!でした。
(驚くべきことにジーヴスと書いた人が一人もいないのはなぜ?当たり前すぎるからでしょうか?)
その人気のバーティーについてはtkr2000さんが気を吐いて下さいました。
曰く「本作は一人称、つまりバーティーがこの作品を書いているという形をとっているわけで、本当に頭がいい人だからこそ、自分をわざと間抜けに見せて面白おかしい作品を作り上げいるのであ〜る!」
おお!さすがはホンヤクモンスキーの名を持つ刺客。なんか論理的だわーと口を半開きにしていたら、森村さんが「そんなことありません。バカですよ」とあっさり否定。
作中ではおバカだ、間抜けだと言われているバーティーですが、その馬鹿っぷりの位置づけも読み手で大きく違うようです。
「学力や知識はあるけど、職場にいたらなんの役にも立たない人だよねーー」という辺りが一致した意見でしょうか・・・・。


そして中盤でもご当地ネタ。
「作中の女性陣ってなにかっていうと”手斧をふりかざして”ません?」(そうだ確かに!の大合唱)
手斧なんていうとかなり凶暴なイメージ。日本人だと手斧じゃなくてなんだろう?と考えていたところに、「北海道だったら“デレッキ”だよね」!
デレッキ・・・森村さんと花さんがきょとーーんとするのも無理はありません。
(tkr2000さんはご実家が北海道なので、余裕の笑みでいらっしゃいました)
説明しよう!デレッキとは、金属製で先端がL字型になっているいわゆる火かき棒。石炭ストーブを使っていた時代には必須アイテムでした。子供が再三の注意にも関わらず悪いことをしたりすると、お母さんでもお婆ちゃんでもこういうのです。「デレッキで叩くよ!!」
あんなもので本当に叩かれたら、よくて重症、悪くて死亡。そう考えたら手斧とさして変わんないじゃん(笑)
ちなみにデレッキというのはオランダ語なんだそうです。ロシア語じゃないんだ!という大発見もアリ。


嬉しいことにCAFEサーハビーさんも読書会を盛り上げてくれました。
お店の目玉商品は揚げたてのドーナツ。お願いすると人数分をタワーににしてくれます。
プレートに入れる文字は<Please,Jeeves>としてもらい、「やるな世話人、粋な計らいじゃん」と勝手に悦に入っていたら、お店の方がその上をいくサービスを!


【後編につづく】

 札幌読書会世話人・畠山志津佳

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ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻 (文春文庫)

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比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

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