文藝春秋1月の新刊

夜がはじまるとき
スティーヴン・キング白石朗安野玲・風間賢二・大森望
Just After Sunset
文春文庫


 スティーヴン・キング最新短篇集!
 巨匠が丹精こめて綴った6つの物語。
 血も凍る恐怖の物語から静かな悲しみの掌編まで。


 長篇『悪霊の島』が「週刊文春ミステリー・ベスト10」にランクインした巨匠、スティーヴン・キング。その当代最高の語りの才能は、長篇だけでなく短篇小説でもまた違ったかたちで発揮されています。本書は最新短篇集『JUST AFTER SUNSET』の後半部となります。ちなみに前半部は『夕暮れをすぎて』として昨秋に刊行されています。


 収録作品は以下の6編です。
 「N」N.
 「魔性の猫」The Cat from Hell
 「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」
  The New York Times at Special Bargain Rates
 「聾唖者」Mute
 「アヤーナ」Ayana
 「どんづまりの窮地」A Very Tight Place

 荒野に佇む異様な岩がもたらす怪異を描いた中篇「N」で開幕――慄然たる恐怖が徐々に高まるようすを凝った構成で描いた本作は、アーサー・マッケンの古典的傑作「パンの大神」(『怪奇小説傑作集1』創元推理文庫)にオマージュを捧げた作品だけに、モダン・ホラーの豪快さよりもニューロティックな不安感が先に立つ恐怖編。クトゥルー神話との関連も見逃せない傑作怪奇小説に仕上がっています。
 つづく「魔性の猫」は、いかにもキングなB級ホラー味で一気に読ませ、うって変わって静かな掌編「ニューヨーク・タイムズ〜」では、深い悲しみを淡彩のスケッチのような筆致で見事に描きあげてみせる。《トワイライト・ゾーン》めいた不穏な情景を一幕芝居のように見せる「聾唖者」、現在準備中とされる『シャイニング』続篇の構想ともつながっていそうな「アヤーナ」にはスピリチュアルと言ってもよさそうな不思議な空気が流れています。
 そして最後を飾る「どんづまりの窮地」。「N」と並ぶ長尺の本作……多くは申しますまい。校正刷りを読みながら、主人公を襲う黒い奔流に悲鳴をあげ、そのなかで幽鬼のごとく舞う名状しがたきものに怖気をふるい、ひょっとするとキング作品でもっとも恐ろしい作品かもしれない、と心底ふるえあがったことのみをご報告します。

 巻末には『今日の早川さん』でSF/ホラー者にはおなじみのcocoさんによる解説が収録されています。スティーヴン・キングは「本を読み始めて以来ずっと心のNO.1の座を占め続けてきた」というcocoさん(cocoさんのサイトhttp://horror.g.hatena.ne.jp/COCO/ より)。「早川さん」のノリとはまた違う、熱のこもった力作解説をお寄せくださいました。
 それに加えて、『「今日の早川さん」特別出張版』書き下ろし2ページも収録! まだ早川さんをご存知ないかたも、是非お楽しみください。キング・ファンには楽しい遊びも隠されています。
文藝春秋翻訳出版部 永嶋俊一郎

夜がはじまるとき (文春文庫)

夜がはじまるとき (文春文庫)

夕暮れをすぎて (文春文庫)

夕暮れをすぎて (文春文庫)

悪霊の島 上

悪霊の島 上

悪霊の島 下

悪霊の島 下

今日の早川さん

今日の早川さん

今日の早川さん 2

今日の早川さん 2