第36回 探偵が許される中国世界『超能力偵探事務所』(執筆者・阿井幸作)

 
 6月30日に「中国網絡視聴服務協会(中国ネットワーク視聴サービス協会)」が発表した『網絡視聴節目内容審核通則(インターネット視聴番組の内容審査通則)』により、ネット番組の内容に今まで以上に厳格で多岐に渡る禁止事項が敷かれ、中国のネットは騒然となりました。これではサスペンスドラマが作れなくなるのでは?と思うほど暴力表現や警察捜査手段の暴露、現実離れした事件の描写が禁止された他、「非正常の性関係や性行為、例えば近親相姦、同性愛、性的倒錯、性犯罪、性的虐待及び性暴力などの表現や描写」を禁止し、尊重されるべき権利と犯罪行為を同列に扱っていることも非難の的になりました。
 また「先審後播(審査してから放映する)」の規則も加わり、今後は自主規制の風潮が更に厳しくなります。ネットドラマは今まで「自審自播(自己判断で審査し放映する)」制度だったから地上波ドラマよりも自由という風潮がありましたが、2016年10月にネットで放映中だったサスペンスドラマ『暗黒者2』『心理罪』がネットから撤去される事態も起きた当時すでに業界も視聴者も表現規制の波を感じていました。しかしこうして明文化されるとは思っていなかったのではないでしょうか。あくまでも一協会が定めた規則でありますが、これにより制作サイドが萎縮するのは明白であり、審査に通らず放映されない恐れのある内容のドラマを敢えて制作することはなくなるでしょうから、冒険的だったり刺激的だったりする内容のドラマは今後ますます減っていくでしょう。
 
 と言うかこの処置、現在の中国のIPブーム(原作のある作品の映像化ブーム)に冷水をぶっかけて自分で自分の首を絞めることになると思うのですが、そこらへんどう考えているんでしょうかね。
 
 今回の件はネット番組業界のみに通達された規則ですが、規制の影響が小説業界に波及しなくても、例えば自分の作品を映像化して稼ごうとしている作家にとって原作がサスペンスやミステリだとそれだけで対象外になる可能性があるので、今後はこの規則におもねる作品を創る、もしくは規則に合わない作品は創らないことを選択するかもしれません。
 規制の中でも面白いものが生まれる余地は十分にありますが、さすがに環境を根本から変えてしまうような規制にはもう頭を抱えるしかないです。例えば「未成年を殺人事件に巻き込んではならない」みたいな規則ができたら学園ミステリの終焉です。もし将来、ミステリが育ち、名作が生まれる土壌を完全に死滅させられた場合、作家は翻訳を通して海外で作品を発表することを選ぶのでしょうか。しかし、作家にとって母国語で作品を発表できないことは何よりの屈辱だと思うので、結局はやはりこの世界で生き残ることを選ぶのでしょう。またはもう諦めるのか。
 
 長々と最近起きた表現規制について書いてしまいましたが、今回は発想のスケールの勝利と言える中国ミステリ『超能力偵探事務所』(著者:陸菀華)を紹介します。
 


 
 私立探偵事務所の開設が認められている中国の架空都市「幻影城」。そこのサーカス団で働くナイフ投げの葉飛刀はナイフが対象に絶対「当たらない」という超能力を買われ、超能力探偵事務所にスカウトされる。その事務所には同じく超能力を持っているメンバーがいたが、葉飛刀を含めた彼らに言えることは、彼らの超能力が決して万能ではなく、捜査にあまり使えないということ。「幻影城」の探偵事務所ランキングで下から数えたほうが早いほど何の成績も残していない彼らは、同じく個性的な他事務所の協力を借りて都市で次々発生する事件の解決に乗り出すが、徐々に「幻影城」の転覆を謀る秘密組織の存在にたどり着く。
 
 シリーズ1巻(写真左)が2016年8月、2巻(写真右)が2017年6月に出た本作は、ジャンル分けをすると「ユーモアミステリ」あるいはバカミスに分類されます。このシリーズをより魅力的にしているのは一つがテンポの良い会話の掛け合い、そしてもう一つが個性的なキャラクターです。
 

■超「無用な」能力

 葉飛刀の絶対「当たらない」という超能力はあらゆるところに発揮され、投げたナイフは当たらず、選択問題も当たらず、推理も絶対に当たりません。則ち、彼が推理によって導き出した答えは絶対に外れているのです。事務所の良心で、本シリーズで一番探偵らしい活躍をする左柔は他人の左のポケットだけ「透視」できる能力を持っています。そして少年の幽幽は「動物と会話」できる非常に有用な能力を持っていますが、彼自身が人間と喋ることは全くなく、意思の疎通はもっぱら絵です。各々、人知を超えた力を持っていますが、それが探偵活動において決定打にはなりません。
 
 物語は主に葉飛刀と左柔の2人で進みますが、超能力を多用したアンフェアな展開になるのではなく、もっぱら左柔の綺麗に組み立てられた推理によって事件が解決します。決して葉飛刀に手当たり次第に犯人を当てさせ、消去法で犯人を導くというものではありません。とは言え、考えるよりも先に言葉が出る葉飛刀のデタラメの推理からヒントをもらうのも左柔のやり方で、彼女にとって「透視」とはなくても良い能力であり、細かな事実から事件像を組み立てて真相にたどり着くというのが彼女の真価です。だから、本作は作者の創造力やスケールの大きさによって生み出された現実離れした人物、組織、場所などが出てきますが、そもそも舞台となる「幻影城」自体が作者によって生み出された架空の世界なので、その世界で発生するどのような事件も一概に「リアリティがない」とは言えないのです。一見するとどれほどおかしいと思える事件や真相であっても、「幻影城」という犯罪をするために用意された都市での出来事と思えば、探偵や読者は受け入れられるのです。実際、とあるホテルに少年漫画でも描けないほどの驚くべき大仕掛けがあるのですが、発生場所が「幻影城」だからそういうこともあっても不思議ではないのです。本作においては、事件が発生する場所一つ一つがミステリ小説には欠かせない完全犯罪のために造られた「館」として見た方が良いです。
 

バカミス特有のテンポ

 もう一つの魅力はキャラ同士の掛け合いです。一部を抜粋して翻訳してみます。
 

・2巻30ページから
「なんだって?」韓決教授は呆気にとられた。
「何で周を殺したんだと言ったんだよ」葉飛刀はさっきのセリフを繰り返した。
「なんだって?」
「ちょっと!山彦が反響してるんだけど!」葉は焦って「頼むからもうちょっとリズム良くいきませんかね?延ばされるとさっき推理したことを忘れちゃいそうなんで」
「わかったわかった」韓教授は姿勢を正して椅子に座り直した。「じゃあ君の推理を聞かせてくれたまえ。何故私が周を殺害した犯人だと?」
「いや、アンタじゃない!」葉は言い返し、「さっきは指を差し間違えた。俺が聞きたかったのは准教授の蘇鳳梨さんだ。何で周を殺したんだ?」
「お前は何を言っているのかわかってるのか?!」韓教授は突然椅子から立ち上がり葉の前を見下ろして彼の胸ぐらをつかんだ。
 
(中略)
 
「うん。ここからが最も重要なポイントだ。犯人は何故殺害前に女子トイレに行ったのか?何故髪の毛が濡れていたのか?」
「そうね。確かにそれがこの事件で一番重要なポイントね」左柔が珍しく葉の意見に賛同した。
「トイレに行って髪が濡れていたのだから答えは簡単だ!犯人は髪を洗っていたんだ!」
「なんだって?か、髪を?!こんなに驚かされたのは久しぶりだ」教職にある韓教授もこの時ばかりは葉のロジックの前に阿呆のように成り果ててしまった。
「ふふふ、男のアンタには女の子の気持ちなんかわからないだろうな」葉は自分がどれほど馬鹿なことを喋っているのか気付かずに話を続けた。

 
 葉飛刀は始終狂言回しとしてストーリー中を自由に駆け回り、推理が「当たらない」という超能力のせいで失敗ばかりしますが、裏表のない性格の直情型の正義漢ですし、悪気はないのでいくら推理を間違えても読んでいて不快感はありません。
 

中国ミステリと「幻影城」の行方

 新刊の2巻では「幻影城」を混乱に陥れようとする「神秘組織」の構成員が探偵事務所に潜んでいることが明らかになりましたが、物語はまだ続きます。1巻を読み終わったときは「神秘組織」の目的も内容も全然わからなかったので消化不良の感が強く、中国の小説ってシリーズだからといって1巻ずつ読者を納得させるストーリーの終わらせ方をする気がないなと思いましたが、こうやって続巻が出てくれて本当に嬉しかったです。
 
 ところで、現実の中国は私立探偵が禁止されています。それは本作も同じで、あくまでも「幻影城」だけ特例として探偵事務所の設立を認める規定が定められているだけで、その結果事務所が乱立して超能力探偵事務所のような弱小組織から、ミステリ小説家だけの組織「三巨頭探偵事務所」、上述の韓決がトップで教授だけで構成される「教授探偵事務所」、頭も良ければ腕っ節も強い「鷹漢組」(鷹漢とは中国語でハードボイルドを意味する硬漢と同じ発音)など実力のある組織が一つの都市にひしめきあっています。
 
 2巻の出版は今年の6月であり冒頭の「通則」とは無関係のわけですが、「私立探偵を認める規定が施行されている世界」を描いた本書の設定が秀逸である一方、現実世界で深刻な表現規制が敷かれていていつミステリ小説の規制がより強化されるのかわからない現在、本シリーズの終わりにはやはり上記の規定が関わってくるのではと考えられます。
 
 実際、2巻になると犯罪者の口から「幻影城」に探偵事務所があるから犯罪を行うという『バットマン』の「ゴッサムシティ」みたいな論理が語られているので、作中で「平和のために探偵事務所を解体する」という展開が描かれる可能性は高いです。
 
 一人の作者に期待を背負わせるのもどうかと思いますが、作者が今後「幻影城」という世界をどのように描くのかが、中国ミステリ小説家の表現規制に対する生き方の表明になると思うので、無事にシリーズが終わってほしいですね。
 


阿井 幸作(あい こうさく)


中国ミステリ愛好家。北京在住。現地のミステリーを購読・研究し、日本へ紹介していく。
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第35回 社会派中国ミステリ『長夜難明』(執筆者・阿井幸作)

 
 ネットでネタを探していたら『流言偵探:活着的死者』(デマ探偵:生きている死者)なる中国産ノベルゲームのニュースを見つけました。
(参考サイト: http://xin.18183.com/201706/867675.html
 


 これは、8人の若者が大学時代に亡くなった友人を偲ぶために雲南省の僻地にある村に集まろうとしたところ、全員が死んだはずの友人から奇妙なショートメールをもらい、村に来てからはその友人が生きているとしか思えないような事件に立て続けに遭遇するというストーリーです。プレイヤーは名探偵Nとなって、8人のうち誰が死んだ友人を騙っているのか、彼らと対話をして真相を明らかにする、と言った内容のようです。
 
 興味深いのは、プレイヤーが微信(Wechat・中国版LINE)に似たアプリを使ってNPCのAIと自由(?)に会話ができるという点です。ノベルゲームだと、ゲームから提示される決められた選択肢からプレイヤーが回答を選んでストーリーを進めるのが一般的だと思いますが、これは各キャラクターと会話をする中でそこから嘘や矛盾点を見つけていくのだと思います。
 
 ニュースにはこのゲームの開発者の「彼は逆転裁判シリーズの大ファンで、遊べるミステリノベルゲームを自分でも作ってみたかった」というコメントが掲載されています。
 私は日本のゲーム業界にも疎いので自信がありませんが、このゲームのようにキャラクターと自由に会話ができるノベルゲームとは珍しいのではないでしょうか。
 このゲームの発売日はまだ未定ですが、環境が許すならちょっと遊んでみたいです。
 
 さて、今回は久々に衝撃を受けた作品のレビューを掲載します。
今回のレビューは作品のネタバレを含みます
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 その作品は紫金陳『長夜難明』(2017年)。タイトルを日本語訳するなら「長い夜は明けない」とかシンプルに「長い夜」だけでもいいかもしれません。
 
 タイトルから察せられる通り未解決の冤罪事件を扱った本作は事件を解決するために活躍する警察官なり検察官なりが出てきますが、その模様が決してスマートではなく、また努力が必ず報われるといった因果応報や勧善懲悪を書いているものでもないので、読書中は一体誰のための捜査なのかという虚しさに襲われます。
 

◆あらすじ

 2013年、地下鉄で酩酊した男の持っていたスーツケースから死体が発見される。スーツケースの持ち主は敏腕弁護士の張超で、死体は彼の元教え子で、賄賂や賭博などの黒い噂が絶えない検察官の江陽だった。取り調べに協力的な張超の自白によって事件はスピード解決を見せたが、法廷で張超は供述を翻すとともに鉄壁のアリバイを提示し、自分がやった犯罪は死体遺棄だけで江陽の殺害には関与していないと主張する。
 思わぬ難関にぶち当たった公安の趙鉄民は元公安のエリート刑事で現在は数学教授の厳良の助けを借りて事件を捜査する。そこで彼らは10年前にある田舎で起きた冤罪事件解決に向けて江陽が並々ならぬ努力を払っていたことに気付き、その事件の再調査をする。
 

◆なりふり構わない正義の執行人

 今作も紫金陳『推理之王』『無証之罪』『壊小孩』)シリーズに登場する数学教授・厳良が登場しますが、今作では彼の推理パートは特になく、主人公はあくまでも江陽です。2013年の現代を舞台にしたストーリーでは厳良らが張超や江陽の事情を探る中で10年前の事件の真相を解き明かし、10年前を舞台にしたストーリーでは若かりし江陽らが友人の冤罪を晴らすために土地のヤクザやヤクザの手下になっている警察官、そして共産党員を相手に勝ち目のない戦いを挑みます。
 本書を途中まで読んだ読者は二つのことに気付くはずです。一つは、正義感溢れる江陽が10年後に賭博や賄賂で問題になる悪徳検察官で有名になり、誰かに殺される結末を迎えることになるとは到底思えないということ。もう一つは、江陽らが冤罪を晴らすために行動したことは10年後何も実を結ばなかったということです。
 
 紫金陳の作品には「目的のためなら手段を選ばない」極端な思考の犯罪者が出て来てきます。例えば『無証之罪』(2014年)では誤って人を殺してしまったカップルを助けるために、駱聞という元法医学者の男が彼らのためにニセのアリバイを用意しますが、実はその行為は単なるボランティアや献身ではなく、駱聞のある目的を成就するためだったことが明らかになります。また、『高智商犯罪』(高IQ犯罪)シリーズの『化工女王的逆襲』(化学工場の女王の逆襲)(2014年)では『化工女王』の異名を持つ甘佳寧が夫を殺した警察官らに復讐するために自分もろとも彼らを爆殺し、彼女の同僚である陳進が彼女の遺族を守るために警察官の遺族を殺していくという話でした。
 
 これらの作品から明らかになるのは、彼らがもはや警察組織や社会正義に絶望し、正当な手段を使って世間に訴えることを諦めているということです。
そして本作の江陽もまた「目的のためなら手段を選ばない」人間であり、江陽が取り組んでいる冤罪事件の背後には警察やヤクザばかりか省の人大代表(共産党員)までいて、生半可な証拠は全て握り潰されてしまうことを理解した江陽は最後、世論を味方につけるしかないと考え、犯罪者を法律で裁くという正義を実現するために自らの命を差し出したのです。
 

◆希望のない『人民的名義』


 中国では今年、『人民的名義』(原作小説は2017年出版)という汚職官僚を取り締まる反腐敗をテーマにしたテレビドラマが大ヒットしました。この作品では侯亮平という高潔で有能な人物が仲間や党上層部の助けを得て党内部の腐敗を一掃する模様、および共産党は絶対に腐敗を許さないというポーズを見事に描いています。
 
 
 しかし『長夜難明』に侯亮平はおらず、人一人の命を使ってようやく虎(汚職官僚)一匹を退治したに過ぎません。『長夜難明』『人民的名義』も出版時期が同じなので影響を受けたということはないでしょうが、『長夜難明』『人民的名義』ブームに盛り上がる中国人へ冷静に現実を見せつけていると言っても過言ではありません。
 
 

◆中国の「恐ろしさ」を描いたミステリ

 私がよく恐怖する中国人の特徴の一つに、彼らの粘り強さがあります。
 例えば、「上訪」(陳情)のために村から北京に来て何年も居座り、ついにはコミュニティすら作って集団で暮らす農民たち、人買いに攫われた子供を取り戻すために自分がホームレスになっても探し続ける母親など、傍目から見たら絶対に叶わない夢のために自分の全人生をかける彼らには狂気を覚えます。本作の江陽も冤罪事件解決のために自身の青春、家庭、将来、名声など全てを犠牲にしますが、何が何でも正義を求める姿には読んでいて恐怖を感じました。
 
 本書は中国社会の矛盾、民衆の怒り、何事にも諦めない人間の良心と正義の他、絶対に妥協しない中国人の性格を描いた中国大陸的な社会派ミステリと言え、またトリックはまったく書いていないものの、中国ミステリが現在どの程度まで表現することができるかその発展度合いを知る上での良い資料でもあります。
  


阿井 幸作(あい こうさく)


中国ミステリ愛好家。北京在住。現地のミステリーを購読・研究し、日本へ紹介していく。
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第34回 中国ミステリ界で活躍する人々(後篇)(執筆者・阿井幸作)

 
第34回 中国ミステリ界で活躍する人々(前篇)はこちら
 
 

■中国ミステリ・ラインナップ

 
 それでは、中国大陸にはどのような作品があるのでしょうか。これまで、私自身もこのコラムで中国ミステリを幾度も取り上げて来ましたが、今回は張舟氏に2000年以降に出版された様々なジャンルの作品を紹介していただきましたので、張舟氏のコメントとともにここに載せたいと思います。なお、一部作品には日本語のタイトルを付けていますが、ほとんどの作品が未邦訳であるため、それらは仮訳であることをご了承ください。
 

【1】本格ミステリ(現代もの)

  • 周浩暉 『死亡通知単』(長編)

→中国本格ミステリの最高峰と思われる作品。サスペンスとしても抜群。
 

  • 紫金陳「謀殺官員」(官僚謀殺)長編シリーズ

本格ミステリと社会派ミステリの融合。人物描写が冴える。
 

  • 天一色『盲人与狗』(盲人と犬)(長編)

『我這様的人』『おれみたいな奴が』稲村文吾氏により邦訳済み)は倒叙もので、どちらかというとコメディー風の社会派ミステリの性格が強い。その一方、『盲人と犬』は作者の恐ろしい本格ミステリの才能を披露してくれる傑作で、三津田信三にも劣らない伏線の量と質に圧倒される。真相が分かった時、作者の淡々たる語り口に人をひどく悲しませる力が潜んでいることに気付く。
 

  • 鶏丁 密室ものの作品すべて

→密室ものの創作に専念する、非常にユニークな作者。カーにはまだ及ばないだろうが、「中国のカー」という称号には恥じない。初期作品にはもちろん稚拙なものがあったが、そこから順に読んでいくと作者の成長ぶりが見える。
 

  • 時晨 『黒曜館事件』(長編)

→お得意のクイーン流ミステリに不可能犯罪の趣向。「島田流!クイーン!新本格!」という非現実的なガジェットてんこ盛りの作風。
  

  • 陸菀華 『超能力偵探事務所』(超能力探偵事務所)(長編)

→ふざけたキャラクターと飛び合うギャグがあり、時々赤川次郎先生の作品を思い出させる。ストーリーは笑えるが、ミステリの部分は笑えない(侮れない)。
  

  • 河狸 『瑞亜的遊戯』(レアーの遊戯)(短編集)

ギリシャ神話の神々の名前を題名に取り入れた端正な本格ミステリ短編集。現代中国本格ミステリの黎明期の秀作。個人的にお気に入りの一冊。
 
 

【2】時代ミステリ(古代中国を舞台にしたミステリ)

 

  • 馬伯庸 『風起隴西』(長編)、『三国配角演義(三国端役演義(短編集)

→いずれも三国時代が背景となっている。『風起隴西』はスパイもので、スリラーの傑作。『三国端役演義は中国で数少ない歴史ミステリの傑作。各作品の末尾に作者による入念な解説が付いている。三国時代の史実も少し分かっている日本読者ならもっと楽しめる一作である。
 

  • 遠寧 「大唐狄公案」短編シリーズ

→ロバート・ファン・ヒューリックのミステリ小説に登場する探偵役・狄仁傑(ディー判事)を主人公とする短編連作シリーズ。ミステリとストーリーのバランスがよく取れていて、安心感を与えてくれる作品集。遠寧氏はミステリ専門誌『歳月推理』の看板作家だった。
 

  • 陳漸 『大唐泥梨獄』(大唐の奈落)(長編)

→中国古典小説『西遊記』をモチーフとした本格ミステリ「西遊秘史」シリーズの第一弾。どこがどう『西遊記』に絡んでいるかは衝撃の真相が明らかになった瞬間に分かる。
 

  • 冶文彪 『清明上河図密碼』清明上河図コード)(長編)

→六部構成の大長編で現在未完結。2017年6月に第四部が刊行される予定。スケールの大きい「真相」を作り上げるとともに、北宋時代の社会全貌図を完成させようとする趣向を持つ野心作。
 

  • 陸秋槎 『元年春之祭』(元年春の祭)(長編)

→緻密な伏線、驚愕な真相、意外な動機、どんでん返し、ペダンティズム、美少女趣味などなど、作者のミステリへの追求と個人趣味がふんだんに注ぎ込まれた渾身の一作。
 
 

【3】武侠ミステリ(武侠小説と融合した中国独自のジャンル)

 

  • 楊叛 「雲寄桑」長編シリーズ

→特にシリーズ最高作『傀儡の宮』本格ミステリ武侠小説の激烈なハイブリッド。武侠ミステリオールタイムベスト級の傑作。結末の派手なアクションシーンも見所。
 

  • 呉纊 『冥海花』(長編)

→ミステリと武侠の融合は少々ぎごちないが、トリック好きの読者は十分堪能できる長編本格ミステリの傑作。
 

  • 三月初七 『緑林七宗罪』(短編連作)

→舞台設定の妙/強烈なサスペンス/衝撃のどんでん返しなどで読者に痛快感を与える。
 
 

【4】その他

 

  • 午曄 「罪悪天使」短編シリーズ

→中国では数少ない、現代工作員(しかも女性)を主人公にしたスリラー/謀略小説。
 

  • 秦明 『法医秦明』(鑑識官秦明)短編シリーズ

→中国では数少ない、鑑識官を主人公にして鑑識現場や微物検査、司法解剖などをリアルに描写するミステリ。それもそのはず、作者本人が現役の鑑識官である。
 
 
 主に4つのジャンルに分けて紹介してもらいましたが、分けようとすれば更に分けることができ、例えば『元年春の祭』は「少女ミステリ」のジャンルを開拓し、『超能力探偵事務所』は「ユーモアミステリ」に分けられます。細分化するとまだ1ジャンルにつき1作家のような先駆者しかいないような現状ですが、作家の想像力のたくましさには国によって違いがないことが伺えます。
 
 現在の中国ミステリの特徴の一つに作家が「若い」という点が挙げられます。また、これは金沢在住の中国ミステリ小説家・陸秋槎氏トークショーで話していたことですが、日本の新本格ミステリ小説家が自身のミステリ好きが高じて自分も作者になるという成長を遂げたように、陸秋槎氏を含む上述した時晨陸菀華らもまた元々熱心な海外ミステリファンであり、読書で培った経験をもとに新本格ミステリを書いています。
 
 上の紹介を読めば「中国にもミステリがあるんですか?!」という質問に答えられるとともに、「何故面白い海外ミステリがあるのに、わざわざ中国ミステリを読むの?」という、まるで変人を見たかのような疑問にも「中国ミステリならではの魅力があるからだ」と答えることができるでしょう。
 
 しかし面白い作品とは言え、大部分の作品は中国語がわからないとその妙味を味わうことができません。もっと手軽に中国ミステリを楽しむ手段はあるのでしょうか。その点に関しては稲村文吾氏の活躍が非常に大きいです。氏は中国大陸、香港、台湾の短編ミステリを収録した作品集『現代華文推理系列』電子書籍の形で現在3シリーズ目まで出しており、上述の天一鶏丁を含む個性的な作家の作品を日本語で読むことができます。
(参照:第29回:『華文推理系列』第三集で気付かされた中国ミステリーの魅力
 
 また、中国語がわかり、そして最新の中国ミステリを読みたいという方にオススメなのが華斯比氏が編集し、毎年刊行されている『中国懸疑小説精選』です。
(参照:第32回:2016年版、読むべき中国短編ミステリ
 
 

■終わりに

 
 本稿ではなぜ「中国にミステリはないのか?」という誤解が生じる原因、そしてその実際の状況を識者のコメントを引用して書きましたが、それでは今後、中国ミステリはどのように成長して行くのでしょうか。
 稲村文吾氏は大陸と台湾の状況を比較し「刊行点数の豊富さに支えられた、いわゆる『本格ミステリ』の扱い方の多様性──台湾ミステリの現況をこうまとめると、ここ最近の大陸ミステリにも同じ流れを感じる私は、『中国にミステリはない』問題もそう悲観的に捉えることはないのではないかと思っています」と述べています。
 
 しかしそれには依然として作者、読者そして出版社の努力が不可欠です。張舟氏は「年末に当年度刊行されたミステリのベスト10を選出するイベントを起こす、業界を盛り上げる推理小説賞をいくつかつくる(現在0というわけではなく、島田荘司推理小説賞や華文推理大賞賽などがある)、毎年どのような作品が刊行されたのか情報をまとめる機構をつくるなどのような業界内の活動を提案しています。
 
「中国にはミステリはない」という思い込みが蔓延(はびこ)っている現在、張舟氏、稲村文吾氏、華斯比氏らのような「物好き」の体系的な活躍は思い込みをなくすのに一役買っているのは間違いなく、彼らの存在が即ち中国ミステリの存在を実証しています。作家も作品も存在しているのにあまり顧みられていない現在において、彼らのような「物好き」の数を増やして「中国にもミステリはある」という認識を常識に変えていくことが、今の中国ミステリに求められているのです。
 
 ちなみに、私事の報告でありますが5月11日に西日本新聞で中国ミステリに関する記事を掲載していただきました。中国ミステリが今後どのように発展を遂げるのか、表現規制などの問題と合わせて日本からミステリ業界以外でも考えられていけば幸いです。

『今天中国〜中国のいま(33)「名探偵」はご法度?』(西日本新聞サイト)

 






今回の協力者のみなさま

 張 舟


 華斯比


 稲村 文吾

 
 

阿井 幸作(あい こうさく)


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第34回 中国ミステリ界で活躍する人々(前篇)(執筆者・阿井幸作)

  
「あなたの常識は世間の非常識」という言葉がありますが、海外で長く生活していると他国の文化や環境に慣れてしまい、帰国しても母国に馴染めず世間ズレを起こしてしまうことがよくあるらしいです。
 
 しかし、北京在住者として私は最近、自分たち北京在住者が知っている中国知識と日本で暮らしている日本人の中国知識にあまりにも差があることに気付いてショックを受けました。
 
 その発端は最近 Twitter で話題になっているというマンガです。
『同僚の中国人お姉さんを描いたマンガに「惚れる」「強くてかわいい」と反響の声』
 この漫画では作者の同僚の中国人社員(チャイナさん)の言動から感じたカルチャーショックが可愛らしいイラストで描かれています。会社でリンゴ丸かじりとか、レストランなのにその日の料理人によって味が違うなんていう「中国あるある」に思わず「あーはいはい、アレね」と頷いてしまう内容なのですが、私が驚いたのは漫画のコマ外にある四川料理とは何かを説明した解説文です。
 
 福建料理浙江料理ならいざ知らず、料理という比較的身近な文化ですら、日本は四川料理に説明がいるほど中国に対して理解が浅かったのかと非常に驚きました。しかし、私がアメリカや韓国の朝食がどのような内容であるのか知らないように、当たり前と思うようなことでも海外事情は案外知られていないのだなと実感し、「自分の(中国)常識は世間(日本)の非常識」なんだなと納得しました。
 
 さて、5月10日、JBPRESSで『中国人が日本のミステリー小説に驚き、ハマるワケ』というタイトルの記事を見つけました。
「ふーん」と読み進めていたのですが、次の文章に自分の目を疑いました。
 

「……(中略)……中国には本当にミステリー作品がないのか疑問に思い、改めて現代小説やドラマ、映画などを見渡してみました。すると確かに推理やトリックを中心に据えたミステリーと呼べそうな作品が見当たりません」

 
 中国では2017年に「我可能XX假YY」(私は多分、ニセYYをXXした)という言葉がネットで流行りましたが、まさか私が今まで読んでいた中国ミステリとは「ニセ中国ミステリ」だったのでしょうか。
 とは言え、この文章を読んだ私が感じたのは「またか…」という諦観でした。
 
 中国国内で海外ミステリの翻訳出版を多く手掛けている新星出版社の編集者・褚盟氏(現在退職済み)が2013年にインタビューで「中国ミステリのレベルはまだとても劣っている」、「幼稚園レベルである」と評したことがあります。
(参照:http://culture.people.com.cn/n/2013/0423/c172318-21243760.html / http://www.chinanews.com/cul/2013/07-16/5048773.shtml
 
 先月も中国人の同僚に私が中国ミステリを読むことを伝えたら「えっ? 中国にもミステリがあるんですか?!」と非常に驚かれたので、私としてはメジャーだと思う作家の名前を挙げてもまったくピンと来てもらえず、結局「そんなことより『三体』※1は読みましたか?」と話を逸らされました。
※1:中国の超有名SF小説。今年10月中国で映画公開予定。
 
 私自身が毎月小説を読んでおり、様々なイベントに顔を出し、交友関係に関係者が多いのでつい誤解してしまいがちですが、褚盟氏が「中国ミステリは幼稚園レベルだ」と断言した2013年から4年経った現在においてもなお、中国ミステリはまだマイナージャンルなのです。
 
 しかし、私ども中国ミステリ読者はこの先いったい何年間「またか……」と気を落とさなければいけないのでしょうか? そして、中国ミステリはまだ「とても劣っている」段階にあるのでしょうか?
 
 そこで今回は、日本在住の日本ミステリ翻訳者・張舟氏と中国ミステリ翻訳者・稲村文吾氏から特別にコメントをもらい、更に中国大陸の評論家・華斯比氏のコラムを引用して、中国ミステリに関係の深い3人により中国ミステリの現在について語ってもらいます。
(ここでは便宜上、中国大陸、香港、台湾のミステリ作品をまとめて『中国ミステリ』と呼んでいます)
 
 

■中国での受容

 
 まず中国における国産ミステリの現状はどういうものなのでしょうか。華斯比氏『2015年度中国懸疑小説精選』の序文『足枷をつけて踊る―中国大陸サスペンス・ミステリ小説の創作と出版について』でこのように書いています。
 

 反対に、大陸のオリジナルの「ミステリ」はますます狭まっていっているイメージがある。崇高な「本格」や「トリック」至上のミステリ小説家や読者は原理主義的な傾向にあり、大勢の人にミステリ小説が「本格であらずばミステリにあらず」という誤解を生み出している。このような排他性がオリジナルミステリをますます狭義なものにし、サスペンス小説と完全に線を引いている。これが大陸でサスペンス小説の読者が多くなる一方で、ミステリ小説がよりマイナーになる主な理由である。
(中略)
 ミステリ雑誌(短編作品が主)で育った作家の大部分は本格ミステリマニアであり、トリックを重視し、ストーリー性や人物描写を無視する傾向にある。これが、作家たちが大勢の人間を引きつける長編ミステリを生み出しづらい原因である。書いたとしても長編の謎解きであり、味気ない文章で魅力が少なく、出版社のお眼鏡に叶うこともなく、市場に恵まれない。
 中国ミステリは短編が主で長編はまれ。作者が限られ、良質なリソースも不足し、原稿料も低い。これが目下の中国大陸のミステリの現状である。
 それに比べ、大陸のサスペンス小説はほぼ正反対の状況であり、長編ミステリが繁栄し、逆に短編ミステリは凋落している。

 
 華斯比氏は「懸疑小説」(ここではサスペンス小説と呼ぶ)と「推理小説」(ミステリ小説)を分けて、ミステリ小説がマイナーな理由を作家と読者のこだわりにあると分析し、また出版環境もそれに輪をかけているとしています。
 
 張舟氏は「なぜ中国ミステリは一般読者に知られていないか」という問いに対して、作者と読者双方の問題をこのように述べています。
 

●作者側

  1. 短編が多く、長編が少ない理由としてはやはり長編ミステリを書ける作者が少ないからだと思われる。その理由は、若い作家は時間があって熱心だが見識が狭く筆力も足りないせいでなかなか長編を書き上げられないし、長編を書くまで成長したときには重い家計負担と安い原稿料が釣り合わず、ミステリを本職にすることが難しいからだ。
  2. 中国の「検閲」制度がミステリを刊行しにくい状況を作った。ミステリはどうしても警察・凶悪犯罪・社会問題などに触れるため、別のジャンルよりも検閲に引っかかるリスクが高い。引っかかっても「敏感」(中国にとってデリケートな問題)な箇所を削除すれば検閲を通る可能性は高いが、それは面倒である。この点について出版社や作者を責めることはできない。他のジャンルより労力を費やすミステリが検閲のためになかなか出版できなかったり、何度も修正をさせられたりするのであれば、よほどミステリに執着する作者でなければ、さっさと諦めて別のジャンルを書こうと思ってもおかしくはない。
  3. 中国ではISBNコードを自由に取得できず、大手出版社にしか分配されない。それ以外の会社が本を出版するためには大手出版社からISBSコードを買う必要があるが、その値段も安くなく、売れる見込みのある作品でない限り刊行に至ることは難しい。また、中国ミステリの出版に熱心な大手出版社は、今のところ新星出版社しかないように思われる。

 
●読者側
 中国のミステリファンは決して少なくないが、国産ミステリの研究者はほぼいない。一応、SNSサイトの「豆瓣」などでレビューを書く人がいるが、系統的な研究はないに等しい。つまり、中国ミステリはアピールする材料があまりに乏しいため、ミステリファン以外の読者がその存在を知るルートが確保されていないのである。ミステリに関する評論・研究における日本と中国の差は、創作における差よりも大きいと言って良い。
 そもそも中国ミステリファンは国産ミステリより海外ミステリに注目する。海外ミステリの方が全体的にレベルが高いからそれも無理はない。出版社も海外ミステリを刊行する際の宣伝に労を惜しまない。また英語や日本語のできる一部のファンは海外のミステリ評論まで目を通し、それを自分で翻訳して中国国内のファンに読ませる。その結果、中国のミステリファンは自国のミステリより他国のミステリに詳しいという現象が起きている。ミステリ読者がこういう状態なので、一般人に中国ミステリを知ってほしいと期待してもそれは無理な注文だろう。

 
 張舟氏は、中国は長編ミステリを書く環境が整っておらず、書き上げたとしても検閲が邪魔をし、検閲を通っても刊行できるかわからない、という中国ミステリ小説家に立ちはだかる3つのハードルを紹介してくれました。
 また国産ミステリと海外ミステリの受容の甚だしい違いも指摘してくれましたが、これこそまさに「中国にミステリはない」と誤解される原因であり、「中国にもミステリがあるんですか?!」と驚かれる原因、ひいては「なんで中国ミステリを読むんですか?」と変人扱いされる原因です。
 
 では中国大陸外の状況はどうなのでしょう。
 稲村文吾氏は台湾の状況についてこのように述べています。
 

 中国(大陸)のミステリのことを知らない中国人が少なくない……というのは、この分野に関わる人々にある程度共通する悩みのようです。
 対して、大陸とは距離を置きながら雑誌や公募の賞を中心に着実に華文ミステリが発展してきた台湾でも、どうやら近い状況が続いてきたように思われます。
 
例えば、昨年刊行された何敬堯『怪物們的迷宮』。どちらかと言うと一般文芸寄りの作者が初めてミステリを意識して書いた高品質な連作ですが、何氏はあとがきで、ミステリは好きだが、台湾のミステリはほとんど読んでこなかったと打ち明けた上で、台湾ミステリ史のおさらいに数頁を割いています。数十年間の積み重ねが決して広く共有されているとは言えない、いい例でしょう。
 また、台湾で有名な匿名掲示板であるPTTなどでも「どうして台湾にミステリはないの?」という質問は定番らしく、台湾のミステリ小説家・林斯諺氏は自身のFacebookで定期的に言及しています。
 
 ですがここ数年で、作品の出版と評価をめぐる状況は好転しています。
 複数の出版社の奮闘によって、5年ほど前では考えられなかった台湾ミステリのひと月複数刊行も当たり前になってきました。またその中でも、他言語版が順調に刊行されている陳浩基『13•67』を筆頭に、新日嵯峨子『臺北城裡妖魔跋扈』天地無限『第四名被害者』のようにミステリのファンダム外からも評価を受ける作品が増えています。
 そしてこれらの作品は、例えば熱心なミステリファンである作家の集まりから生まれた作品が、香港警察の数十年を描く連作に発展した『13•67』、妖怪殺しの謎が中心になり、歴史改変と伝奇小説の要素が作品のトーンを決定している『臺北城裡妖魔跋扈』、大きな逆転を用意しながらも、作品の焦点は過熱報道の告発というテーマにあると作者が言い切る『第四名被害者』というふうに、謎解き本位か、そうでないかという区分がうまく機能しない存在であり──便利な言葉を使えばミステリの「拡散と浸透」が起きているというわけです。

 
 台湾でも大陸と同様の現象が起きており、作者であっても台湾ミステリを読んだことがなく、日本や欧米など海外ミステリを読み、それを参考にしていることが伺えます。しかし、「どうしてうちにはミステリがないのか?」という共通の疑問が出版社の奮闘により解消され、ミステリファン以外からも評価されるジャンルを超えた作品が生まれているという現状は大陸在住者として羨ましい限りです。
 






今回の協力者のみなさま

 張 舟


 華斯比


 稲村 文吾

 
 
 

●第34回 中国ミステリ界で活躍する人々(後篇:■中国ミステリラインナップ)につづく――

  


阿井 幸作(あい こうさく)


中国ミステリ愛好家。北京在住。現地のミステリーを購読・研究し、日本へ紹介していく。
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第33回 中国版『容疑者Xの献身』映画について(執筆者・阿井幸作)

  


注意!

 
 今回の記事では 東野圭吾『容疑者Xの献身』の原作小説、・日本版映画、及び中国版映画の内容に言及しています。(筆者)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 3月31日に中国全土で中国版『容疑者Xの献身』(中国語タイトル『嫌疑人X的献身』)の映画が公開されました。本作はもともと2016年末には公開されると伝えられていましたが、年が明けた1月中旬ぐらいに2017年4月1日に公開されることが決まりました。しかしその後、まるでそれ自体がエイプリルフールのネタだったようにいつ頃か公開日が3月31日に変更されました。
 

(当初のポスターには4月1日公開と書かれている)

 
 本作は台湾の俳優・蘇有朋(アレック・スー)が監督を務めていますが、見どころはやはり日本版では福山雅治が演じた湯川学を王凱が演じる点です。以下に中国版の主要人物の名前と役者名を記します。(左が人物名で、カッコ内が役者名)
 

  • 湯川=唐川(王凱)
  • 石神=石泓(張魯一)
  • 花岡靖子=陳婧(林心如)
  • 岡美里=陳暁欣(鄭恩熙)
  • 草薙=羅苕(葉祖新)
  • 内海=なし

 
 人名が中国人風に変更されています。ちなみに唐川や石泓は前の漢字が名字で後ろの漢字が名前を表しています。
 


(写真左:左が唐川で右が石泓)(写真右:左が陳婧で、右がその娘の陳暁欣)

 
 
 個人的な感想として、中国版は全体的に湿った雰囲気の中で話が進み、役者の演技によってクスリと笑わせられるシーンこそありましたが、非常にシリアスなサスペンスドラマでした。狂言回しの内海が排除された結果、石泓を中心とした唐川との友情及び陳婧・陳暁欣母娘との交流シーンが多く描かれ、まさに石泓に捧げた映画と言っても良いぐらいです。テレビドラマのガリレオ・シリーズ』と比べてコメディ要素がないと言われる日本版ですら、中国版と比べるとまるで踊る大捜査線のような刑事ドラマに見えてしまいます。
 
 

■中国版ならではの改変

 
 日本を舞台にした作品を中国に置き換える上で、本作には様々な改変が加えられました。
 一番大きな改変ポイントは唐川が刑警学院の准教授であり、警察の犯罪捜査顧問であるということです。刑警学院とは警察官を育成する公安部直属の大学です。日本版の湯川が草薙の友人として事件解決に協力しているのに対し、中国版の唐川は羅苕と仕事仲間であり、警察の中で権力を持っています。
 原作及び日本版の湯川が真犯人を見逃しても構わない立場にあるのに対し(その場合は草薙か内海が代わりに役目を果たすが彼らとの関係が壊れる)、中国版の唐川は刑警学院の准教授という立場上それをするわけにはいきません。原作で湯川が草薙に対し「友達であると同時に刑事だ」と吐露したのとほぼ同じく、唐川は石泓にとって「友達であると同時に刑事」なのです。友情と倫理・道徳の他、公務とも葛藤する唐川を見られるのも中国版の魅力です。
 
 

■日本版映画との相違点と共通点

 
 靖子がお弁当屋の店長だったことに対し、陳婧もテイクアウトができる小さな食堂を開いていて娘の名前を店名にしていること、石泓の授業が崩壊していること、唐川と石泓が登山に行くこと(ただし雪山には行かず、単なるハイキングとも言える)など、中国版映画は原作小説ではなく日本版映画をところどころ忠実に再現しています。しかし中国版は単なる日本版のリメイクではなく、中国ならではのオリジナリティもあります。私が映画を見ていていかにも中国映画らしいなと思い、また戸惑ったシーンは原作及び日本版にはないカーチェイスシーンです。
 
 中国版は石泓が素直に自首しません。彼は唐川の研究室に保管されていた、以前逮捕した物理学の教授が使用した凶器(それを再現したもの?)である超音波発生装置を盗み出し、それを車に積んで警察から逃げながら、彼を車で追う唐川の命を狙います。しかし彼は本気で唐川を殺そうとしたわけではなく、出力を最低に下げた装置を唐川に向け、友人を殺すことなく警察に捕まります。
 
 中国映画に詳しい人に言わせれば、このカーチェイスはロケ地へのサービスのようです。そう言えば、以前本コラムで少しだけ紹介した『宅女偵探桂香』(オタク探偵桂香)の映画でもカーチェイスが強調されていました。個人的にはカーチェイスなんか不要だと思うのですが、超音波発生装置のような科学技術を使用してこそ『ガリレオ・シリーズ』だろうという製作側の思惑でもあったのでしょうか。
 
 ところで、中国版製作にあたって以下のようなエピソードがあります
 
(原文)出典:百度百科(嫌疑人X的献身)
苏有朋在与东野圭吾的版权合约条款里有两条规定,一是剧本一定要经过东野圭吾的亲自确认,所以苏有朋必须在与编剧商定剧本后,将剧本翻译成日文发给东野圭吾,再由东野圭吾提出修改意见,发回给苏有朋,苏有朋再请人将剧本翻译成中文后进行修改后再翻译成日文发还给东野圭吾。另外一条就是要改编得跟日本、韩国版本都不一样,所以最后苏有朋与东野圭吾来回反复磨合35版剧本,耗时11个月才最终将中国版《嫌疑人x的献身》的剧本敲定[1] 。
 
(訳文)
 監督の蘇有朋は東野圭吾との契約で2つの約束を交わした。その1つが脚本を必ず東野圭吾に見せることだった。そのため、出来上がった脚本を日本語に翻訳して東野圭吾に見せて意見や修正をもらい、それを中国語に翻訳したものを蘇有朋が見て、改めて東野圭吾に脚本を提出するという流れだった。もう1つの約束は日本版と韓国版と異なる改変をするということで、最終的に蘇有朋は35回も脚本を書き直したとのことだった。
 

 そのような製作側の苦労を知ってか、映画公開一週間前に東野圭吾から直筆の手紙が贈られました。


 
 手紙にある『オリジナリティ』に関して、その最たる例が石神のキャラクターにあると思います。上述した唐川の刑警学院の准教授という肩書は日本人の湯川を中国人の唐川にする上で必要不可欠な改変(処置)でありましたが、石神を石泓に変更する上では製作側の独創性が発揮されていました。
 
 日本版の石神が原作の石神の不気味さを強調しているのに対し、中国版は不器用さを強調しているように見受けられます。石泓が不器用だけど基本的には良い人という印象を陳婧・陳暁欣母娘に与え、事件後当初は石泓に対して好感を持ち、陳婧は身なりを気にしない彼のために新しい服を買おうとし、娘の陳暁欣は部屋で楽器を吹き、隣に住む石泓が壁を叩いて伝えるモールス信号の感想をもらう、といった交流が描かれます。だからこそ、石泓が陳婧から離れるために、自分が卑怯で陰湿な人間であると彼女を脅迫するシーンでの陳婧の絶望感と石泓の悲痛な苦しみが観客の心に強く残ります。
 
『容疑者Xの献身』の実質的な主人公は石神ですので彼をどう描くかという点が監督・蘇有朋の腕の見せ所だったのでしょう。その結果、石泓は陳婧のそばに頼れる男性(工藤)がいるところを見て動揺したり、得意な数学が上手くいかないことを苦にして自殺を図ったりするなど要所で『弱さ』が描かれたので、単なる『オタク』に見えなくもないです。このキャラ設定は個人的に日本版より好きなのですが、中国でも評価が分かれるところであります。
 
 

■中国版は成功したのか?

 
 私はこの映画を公開初日の3月31日(金)の18:30に北京市の西単(天安門の1駅隣のショッピングスポット)にあるシネマで見ました。その日は翌日土曜日が国定の振替出勤日ということも原因か、100人ほど入れる劇場が半分ほどしか埋まっていなかったです。客層は女性多めでカップルだったり女性二人組だったりで、学生の姿は場所柄もあり見えなかったです。
 


(映画館で撮ったポスター)

 
 だから、もしかして失敗か?と心配したのですが、上映から二週間以上経過した4月16日の興行収入を調べると3.9億元という成績が出ていて、映画出演者の一人がそれに対して喜んでいたので収入面から見ると失敗ではないようです(同時期公開した中国サスペンス映画『非凡任務』は1.9億元)。「日本版と比べてここが劣っている」、「原作と比べてこれが不足している」などのレビューを見かけますが、中国映画として考えるとなかなかいい出来だったんじゃないの? というのが私の個人的な総評です。
 
 

■今後も映像化され続ける東野圭吾作品

 
 中国版容疑者Xの献身製作の報は2015年に伝えられましたが、その年から中国における東野圭吾原作の映像化ブームが沸き起こりました。
 映画監督の賈樟柯ジャ・ジャンクー)が設立した映画会社暖流がパラドックス13』を映像化する権利を購入した他、中国ワンダグループと香港エンペラーグループが『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の版権を購入しました。また、2017年には動画サイトYOUKU『秘密』ネットドラマ化及び映画化の権利を購入し、北京天悦東方がゲームの名は誘拐ネットドラマ化権利を購入し、監督やキャストが着々と決定しています。更に雲莱塢という版権交易会社が4月1日にプラチナデータの版権を売った他、『美しい凶器』、『ブルータスの心臓』、『怪しい人びと』、『回廊亭殺人事件』、『白馬山荘殺人事件』、『犯人のいない殺人の夜』、『11文字の殺人』、『ダイイング・アイ』、『カッコウの卵は誰のもの』、『片思い』の10作品を映像化する版権を放出しました。
 
 こうなると次の興味は否が応でも白夜行の映像化に向きます。作品のストーリー的に中国版を作ることが困難だと言われていますが、この作品の映像化が東野圭吾ブームの一つの節目となるような気もします。そしてそれは案外早く訪れるのでは?と思うのです。
 


阿井 幸作(あい こうさく)


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現代華文推理系列 第二集●
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(御手洗熊猫「人体博物館殺人事件」、水天一色「おれみたいな奴が」、林斯諺「バドミントンコートの亡霊」、寵物先生「犯罪の赤い糸」の合本版)
現代華文推理系列 第一集

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第32回:2016年版、読むべき中国短編ミステリ(執筆者・阿井幸作)

 2月25日に台湾で台湾人ミステリ小説家・胡傑さんを囲む読書会が開かれました。当日は第3回島田荘司推理小説賞受賞作『ぼくは漫画大王』(著:胡傑/訳:稲村文吾)の話題を中心に、日本・台湾・香港の参加者が胡傑さんに質問をぶつけ、本書の裏話や創作秘話などいろいろな話を聞くことができて非常に面白かったです。
 私は特に、胡傑さんの新作ミステリ『尋找結衣同學』(仮訳:結衣さんを探して)の誕生秘話に最も興味を持ちました。



 画像を見ていただければわかりますが表紙がライトノベル風です。これに対し胡傑さんは「自分はそんなつもりはなかったが、作品を読んだ編集者が『こうした方が売れる』と考えた結果このような表紙になった」と教えてくれました。
 台湾の出版社の、売るための創意工夫に感心するとともに、そういった思考の柔らかさが中国大陸には欠けているなぁと考えさせられました。こういった些細な考え方の差が、最終的に大陸のミステリ読者に「台湾と比べてうちのところのミステリの表紙は劣っている」と嘆かせる原因になっているのでしょう。





『中国懸疑小説精選』


 さて今回は毎年の中国大陸の短編ミステリを収録する短編集『中国懸疑小説精選』の2016年版及びその編者である華斯比を紹介してみます。



『中国懸疑小説精選』及び『中国偵探推理小説精選』本コラムの第5回で紹介済みですのでここに詳しくは書きません。
 最新版『2016年中国懸疑小説精選』(2017年)には以下の作品が掲載されています。なお、日本語タイトルは全て仮訳です。



擬南芥『一簇朝顔花』(一面の朝顔
 連城三紀彦の『桔梗の宿』(中国語タイトルは『一朶桔梗花』(一輪の桔梗))をリスペクトした短編。


香無『謀殺自己』(自分を殺す)
 東野圭吾を愛する新鋭の女性作家が描く愛憎入り混じったミステリ。


何慕『寒蝉鳴泣』(蝉が鳴く)
 三国志時代を舞台に『寒蝉』という間諜が活躍する歴史ミステリ。


赤膊書生『冥王星密室殺人事件』
 冥王星を舞台にした密室ミステリを描いたSFミステリ。


燕返『胆小鬼的霊感』(臆病者の霊感)
「你」(あなた)の二人称を使用した江戸川乱歩的雰囲気を備えたショートミステリ。


時晨『緘黙之碁』(沈黙の碁)
 有名棋士が関与した密室殺人事件を時晨作品でお馴染みの名探偵陳爝が解決する。


河狸『孤独的孩子』(孤独の子供)
 探偵、警察、子供の三つの視点を利用した叙述トリックミステリ。


方洋『套層空間』(多層空間)
 ある夢遊病者の語る宇宙の話に引き込まれるコズミックホラー的ミステリ。


亮亮『臥底能有幾条命』(スパイは命がいくつあっても足りない)
 盗人、武器商人、警察、殺し屋の様々な視点でスピーディに進むユーモアミステリ。


王稼駿『LOOP』
 タイトルからも分かる通り、時間軸を利用した叙述ミステリ。


鶏丁『天蛾人事件』モスマン事件)
 都市伝説モスマンが起こした多重密室殺人事件に挑むミステリ。


陸秋槎『冬之喜劇』
 作中作の形式を用いた中国ミステリに対する評論的且つ自虐的ミステリ。


梁清散『枯葦余春』(枯れたアシと晩春)
 中華民国時代の事件を文学、歴史、心理学を駆使して解決する総合的なミステリ。


 以上、計13作品の短編ミステリが収録されている本書で華斯比は中国国内に娯楽的なミステリが如何に多いのかということを中国人読者にアピールしています。
 序文『娯楽時代的懸疑推理小説』(エンターテイメント時代のサスペンス・ミステリ小説)で華斯比は最後に「ミステリの本土化は一長一短のことではなく、簡単にできることではない。数世代の作家が共に努力をしてやっと完成に近付くことであり、現在はまだ作者と読者双方の励まし合いが必要だ」と書いていますが、作者と読者の他に華斯比のような紹介者の働きも重要でしょう。
 本書の他に『中国偵探推理小説精選』も毎年出版されていますが、これと比べると本書の特徴がよくわかります。
 一つ目の特徴は編者の序文があり収録作品の傾向がわかるということ。そして二つ目は各作品に作者の簡単な紹介文が記載されていることです。実は2014年版にはこの他に作品に対する作者の後書きもあったのですが、それは出版側の負担が大きいということでなくなってしまいました。
 この点から分かることは華斯比の中国ミステリに対する思い入れの強さと、作者・読者を考えた仕事の態度です。目下、中国ミステリはまだ内部で盛り上がるが必要な段階です。特に、ミステリ専門雑誌が休刊して短編作品の発表の場所が少なくなる現在は更に作者の保護・支持という観点から本書のような短編集が必要になります。しかも映像業界ではミステリがもてはやされているので一部の作者が脚本家に転向してドラマや映画に携わっているようです(本書参照)。中国ミステリ全体が伸びているのに小説業界だけが停滞しているという事態を招くことになるかもしれません。


 本の売上を競うことよりも作品が映像化することが、中国ミステリ業界が現在定めているゴールであるのは間違いありませんが、その風潮の中で作者・読者を考えて本を作ることに労力を払う人間がいることを忘れてはいけません。


 華斯比はこの他に清朝末期から中華民国時代の中国ミステリを研究し、復古運動とも言うべき地道な活動をしています。中国の本屋は、コナン・ドイルがある、江戸川乱歩もある、しかし程小青(民国時代に活躍した中国ミステリの父と呼ばれる作家)が見当たらない、という現状で過去の作品があまり顧みられていません。そのような状況の中で原書を閲覧するために図書館に足を運び、ときには自腹を切って古書を購入し中国推理史をまとめている彼の活動もここでいずれ紹介できればと思います。





阿井 幸作(あい こうさく)


中国ミステリ愛好家。北京在住。現地のミステリーを購読・研究し、日本へ紹介していく。
・ブログ http://yominuku.blog.shinobi.jp/
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戻り川心中 (光文社文庫)

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憎悪の鎚

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現代華文推理系列 第二集

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第31回:中国人ミステリ読者とのインタビュー(執筆者・阿井幸作)

 


 中国では毎年の春節(旧暦の年末年始)に爆竹・花火を打ち鳴らして新年の訪れを慶ぶ風習がありますが、近年は環境保護の観点から煙による大気汚染を防ぐために自粛する傾向に進んでいます。今年の北京は例年以上に締め付けが厳しく、ニュースによると、毎年この時期だけに設営される北京の花火売り屋(写真上参照)の店舗は去年より208か所少なくなったばかりか、ある地区では売ること自体許可されなかったようです。
 
 そのため、北京は春節連休中に快晴が続きましたが、この天気はいわば2017年の中国を象徴するもので、相変わらず手を付けやすい所から規制していくなぁという印象を受けました。今年もつまらないことで困らされることになりそうです。
 
 さて、本稿ではこれまで中国のミステリ小説家、翻訳者とインタビューしてきましたが、今回は読者の1人にスポットを当てました。
 
 今回インタビューを受けてくれたのは辻田秋川(もと棄之竹)というハンドルネームで活動している中国ミステリ界隈では名の知られた人物であり、天津の大学に通う学生で日本語を勉強しています。私は彼とは去年の上海ブックフェアで知り合いましたが、ミステリ小説の知識、とりわけ日本ミステリの読書量に驚かされました。

 
阿井:月に何冊本を読みますか。またその内訳は?
辻田:だいたい30冊ぐらいです。日本の小説が最も多く、原文でも読みます。
 
阿井:原文で日本のミステリ小説を読みますか?
辻田:月に一冊のペースです。
 
阿井:日本のミステリ小説家で好きな作家はいますか?
辻田:大好きな作家は3人います。1人目は江戸川乱歩で中でも『陰獣』が好きです。次に島田荘司占星術殺人事件。そして京極夏彦魍魎の匣です。いずれも刺激的で面白いですから(注:いずれも中国語訳済)
 
阿井:2016年の上海ブックフェアには伊坂幸太郎が来て、2014年には島田荘司麻耶雄嵩が来ています。次に誰が来てほしいですか。
辻田京極夏彦です。
 京極夏彦は非常に魅力的な日本の小説家です。彼が創った妖怪を題材にしたミステリは独創的なスタイルだと言えます。このようなスタイルは中国ではまだ生まれていません。もし京極夏彦が中国に来たらきっと中国の作家に独自の経験を教えてくれるでしょう。それに京極夏彦は中日両国の文化に非常に精通しているので、きっと文化的な交流にも繋がることでしょう。
 
阿井:日本人作家のサイン本もたくさん持っていますが、どのように手に入れるんですか。中でも一番大切なのは誰のですか。
辻田:いろんなサイン会に出て手に入れます。
 一番大切なのは島田荘司のです。大好きなミステリ小説家ですから。
(注:例えば2016年の上海ブックフェアでは吉田修一伊坂幸太郎が来た。島田荘司は2014年の上海ブックフェア以外にもちょくちょく中国に訪れている)
 
阿井:中国では毎年数多くの海外ミステリが出版されていますが、この現状に満足していますか?
辻田:不満です。
 中国には保守的な思想の制限があって、ポルノやバイオレンス描写などがある作品はスムーズに出版できません。あと、中国のミステリ小説市場がまだ小さく、出版社の利益を保証できないので、多くの名作の出版が困難になっています。
 
阿井:中国ミステリの特徴と短所はなんだと思いますか?
辻田:特徴:百花繚乱なこと
 実は中国国内のミステリ小説は長年にわたる進歩と過程を経て相応の実力を持っています。ただ、政策や利益などの問題があるので発展していくのが難しいのです。『唐人街探案』『心理罪』『法医秦明』などのサスペンス・ミステリ映画がヒットしてから、ミステリ―要素は売上をアップさせる上ですでに欠かせないものとなっています。時機(中国の創作活動に対する制限が緩くなるとき)さえ来れば中国ミステリはきっと火山が噴火するかのように様々な作品が生まれると思います。
 短所:傲慢なこと
 作品が粗製濫立されている現状は作者の傲慢な気持ちを表していると思います。
 
阿井:2017年の中国ミステリに何を期待していますか?
辻田:中国ミステリが様々な制限を振り切って素晴らしい作品を生み出すことです。
 
阿井:中国ミステリは将来的に作家も作品もますます増え、発行部数も増していくと思いますが、個人的に内容にはあまり期待していません。中国ミステリはますます公安小説化し、警察を主人公にする物語が占め、名探偵が消えていくと思います。中国ミステリは今後どのような方向に進むと思いますか?
辻田:中国特有の愛国主義的なミステリや警察小説が増えていくと思います。また、ミステリ小説がパターン化していくと思います。つまり、中国のお国柄はさておき、もしも中国の作家や映画会社が東野圭吾または『唐人街探案』だけを倣って利益重視になると、お金を稼げるミステリ小説はパターンが決まっていくことになると思います。
(注:中国ミステリを読んでいると明らかに東野圭吾の、特に『容疑者Xの献身』白夜行を意識した作品に出会うことがある。)
 
阿井:現在、稲村文吾が『現代華文推理系列』『ぼくは漫画大王』などの日本語訳を出し、中国ミステリが徐々に日本に浸透していっていますがこの点について何か意見はありますか?
辻田:非常に意義のあることだと思い、私も嬉しいです。中日両国の文化交流の発展に繋がると思います。
 

阿井:日本語訳が出て欲しい作品はありますか?
辻田清明上河図密碼』清明上河図コード)です。面白いミステリ小説(特にシリーズ作品)に最も重要なのは作品自身の構成です。冶文彪の『清明上河図密碼』は宋の時代を舞台にした歴史サスペンス小説で構成のみならず、考証も素晴らしく、読者から称賛を受けています。この作品は現代中国のサスペンスですので個人的にはこの本の日本語版が出てもっと多くの読者に読まれればと思っています。
(注:清明上河図密碼とは2015年に出版された本で、絵の中に隠された暗号を解き明かすという作品。ダン・ブラウンダ・ヴィンチ・コード(中国語タイトル:達芬奇密碼)のヒット後、中国では『蔵地密碼』山海経密碼』など『密碼』の名の付く小説が出てきたが、本書はこれらとは一線を画すと言われている)
 
阿井:日本の読者にオススメしたい中国ミステリは?
辻田清明上河図密碼』『鏡獄島事件』です。
(注:『鏡獄島事件』は2016年の時晨の作品。第27回で紹介済→ http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20161027/1477525446
 冶文彪清明上河図密碼』はさっき紹介したので時晨『鏡獄島事件』について説明しますと、これは時晨の数ある佳作の中の一つです。時晨の作品は本当の意味で本格ミステリであり、彼自身非常に努力家で長期にわたる創作活動の中で絶えず自身を磨き上げていき、作風もますます際立っていきました。
 中国ミステリと日本ミステリに差があることは私も理解していますが、日本ミステリもブームになる前は欧米ミステリと大きな隔たりがありました。しかし江戸川乱歩横溝正史のような作家がいたため今日の発展を築けました。ミステリ(探偵小説)が抑圧されていた時代にも彼らが絶えず奮闘していた甲斐があって現在の日本ミステリがあります。冶文彪も時晨もどちらも今後の中国ミステリの発展において欠かせない重要な作家ですのでこの二人の作品をオススメしたいと思いました。
 
阿井:以前ネット上で小説を公開していましたが、将来ミステリ小説家になりたいですか?
(注:99話の掌編怪談を執筆した彼の『夏祭百物語』は次のリンクから読めます:目次一覧
辻田:なりたいですがたぶん社会派になると思います。
 個人的に見て本格ミステリは遅かれ早かれパターン化が避けられないので衰退していくと思います。それに「人間性」の謎を深く解き明かす方がトリックよりも面白いです。社会にはネタが無尽蔵にありますし、いま世界で起こっている様々な事件の方が小説よりよっぽど奇妙です。今後、社会派ミステリは単に社会や人間の暗部を暴露する作品ではなく一種の寓話のような存在になると私は考えています。だから、なるのであれば社会派の作家になりたいですね。
 
 
 中国ミステリに閉塞感を抱いている辻田秋川は読者の視点で今後の中国ミステリの見通しを語ってくれました。インタビューに出て来る『パターン化』とはヒット作の話の展開やキャラ設定を真似して、手本となるモデルが出来上がることを指しているのでしょう。中国は現在『IP熱』(原作ブーム。小説や脚本など原作の著作権を買い取って映画・ドラマ化を進めること)ですので二匹目のドジョウ狙い作品がどんどん画一化されていく可能性はあります。
 一口にパターン化が悪いとは言えませんし、パターンができることで新しい作家が新規参入しやすくなるメリットがありますが、中国ミステリってどれも似たような展開ばかりと誤解されてほしくはないので彼の懸念が当たらなければいいのですが。
 
 また、中国の表現規制が緩むことは多くの読者の願いでもありますが、じゃあどうすればいいのか、その方法は読者の手に委ねられておりません。だから表現規制は今後ますます厳しくなることはあるにせよ緩むことはなかなかないと思います。ミステリは儲かるということ、そして中国国外でも受けることを中国政府が理解すればお目こぼしを貰えるかもしれませんが、しかし国情にそぐわない作品がお上に気に入られ、ましてや支持される可能性は低く、結局のところたとえブームが来たとしてもそれは中国ミステリの更なるパターン化・警察小説化に繋がるだけになるでしょう。
 
 辻田秋川のように中国ミステリの現状に不満を持ちながらも将来に期待している読者は少なくないでしょう。大げさかもしれませんが、彼のように海外ミステリと中国ミステリに精通している読者がこの業界を盛り立てていき、作家や出版社を支えていくことが全体の成長の手助けとなります。そのため、辻田秋川にはもっと発言してもらいたいのですが、最近とある事情でウェイボーアカウント(棄之竹名義)を削除されてしまい、あまり無責任に背中を押せないです。
 
 ちなみに辻田秋川という少々奇妙な名前は綾辻行人島田荘司中禅寺秋彦江戸川乱歩から一文字ずつ取ったそうです。是非ともこの名前のままプロ作家としてデビューしてほしいです。
   


阿井 幸作(あい こうさく)


中国ミステリ愛好家。北京在住。現地のミステリーを購読・研究し、日本へ紹介していく。
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